原題:『Loving Vincent』
監督:ドロタ・コビエラ/ヒュー・ウェルチマン
脚本:ドロタ・コビエラ/ヒュー・ウェルチマン/ジャック・デーネル
撮影:トリスタン・オリバー
出演:ダグラス・ブース/ロベルト・グラチーク/エレノア・トムリンソン/ジェローム・フリン
2017年/ポーランド・イギリス
兄のものよりも気になる弟の死因について
フィンセント・ファン・ゴッホが描いた郵便配達人のジョゼフ・ルーランの息子のアルマンを狂言回しとしてゴッホの死の謎に迫るサスペンスとして面白いものだと期待して観に行った。どこから拳銃を入手したのか、何故頭部ではなく腹部を撃ったのか、どうして弾道が低かったのか、何故銃弾が腹部を貫通しなかったのかなど多くの疑問が提示されるのだが、結局オチは誰もが予想できるくらいの平凡なものだった。
それでもゴッホの筆のタッチが好きな人ならば誰でも楽しめるものではあるのだが、個人的には本作を観て逆に疑問が生じてしまった。それはゴッホの死因ではなくてゴッホの弟のテオの死因である。本作ではテオは梅毒で亡くなったとしており、さらにテオはゴッホが生きていた時点で「ステージ3」の重篤な症状だったようである。妻も幼い子供もおり経済的に困窮していたテオがどうして梅毒を患ったのか? 寧ろ自分の先が見えてしまい、なおかつ家族にも伝え難い梅毒という病気を患ったテオが自分が死ぬ前に家族の「お荷物」となっていた兄を殺そうとした「テオ犯人説」が有力になるのではないだろうか? 妻のヨハンナはその後再婚もして62歳まで生きているからテオから梅毒をうつされなかったようだし、ゴッホよりもテオの方が気になってきた。