MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『囁く死美人』

2017-11-26 00:04:55 | goo映画レビュー

原題:『囁く死美人』
監督:村山三男
脚本:目白一夫
撮影:宗川信夫
出演:川崎敬三/万里昌代/花布辰男/緋桜陽子/浜田ゆう子/響令子/堀川真智子/緑愛子
1963年/日本

トリックと精神錯乱の「不均衡」について

 河田病院に勤務している主人公の外科医の菅英一は院長の河田善之助に気に入られ娘の令子との縁談の話が進みだしていたのだが、同病院に勤務している看護婦の丹羽不二子は気が気ではなかった。不二子は英一と密かに付き合っていたからなのだが、病院の後継者にもなれるという縁談話を英一が断る理由はなかった。
 自分の子供を身ごもったと言って執拗に令子と別れるように強要するようになった不二子が煩わしくなった英一は病院の敷地内にあるプールまで鎮静剤で眠っている不二子を担いで溺死させた。
 一週間後に不二子が遺体となって見つかった後に、英一は令子と新婚旅行に行くのであるが、帰ってきてから奇妙な出来事が起こる。しかしここら辺りから演出が怪しくなる。例えば、見知らぬ女が河田家に松葉杖を残して立ち去っていったり、不二子の筆跡のメモを外科医院長の部屋に残していくシーンなどは納得できるが、英一が運転している車のバックミラーに不二子の顔が映り、振り向くと背後には誰もいないシーンや、夜中にうなされて起きると妻の令子の顔が不二子の顔に見えて寝室から追い出すシーンなどは「トリック」としてはありえない。つまり本作は「トリック」の部分が弱くその巧みさと英一の高じる精神錯乱の比率が噛み合わずラストのオチが御座なりのように感じるのであるが、英一を演じた川崎敬三の熱演は高く評価されるべきであろう。


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