MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『長いお別れ』

2019-06-14 12:56:55 | goo映画レビュー

原題:『長いお別れ』
監督:中野量太
脚本:中野量太/大野敏哉
撮影:月永雄太
出演:蒼井優/竹内結子/松原智恵子/山﨑努/北村有起哉/中村倫也/杉田雷麟/蒲田優惟人
2019年/日本

「心」を取り戻す無益な方法について

 東芙美今村麻里が母親の東曜子に呼ばれて実家を訪れ、父親の東昇平(鄧小平!)が認知症を患っていると知らされたのは、麻里の夫の今村新が言った「一年と七カ月と二日」というアメリカの研究所に赴任してからの期間から判断するならば、2007年11月の初めであろう。
 昇平が何度も繰り返す「家に帰りたい」という言葉に家族は翻弄されるのであるが、結果的には、かつて曜子とまだ幼かった2人の娘たちが訪れていたのだが、途中で雨が降り出して3人がびしょ濡れになっていることを心配した昇平が3本の傘を持って珍しくわざわざ足を運んだ遊園地だったのである。
 しかし逆に考えてみるならば、中学校の校長も務めた昇平はおそらく娘たちの世話など妻に任せっきりで仕事一筋だったことが災いして、他に家族との楽しい想い出がなかったのだとも想像できる。ここで重要なのは昇平が読んでいる本で、それはアルベルト・アインシュタインの岩波文庫の『相対性理論』よりも夏目漱石の『こころ』の方であろう。家族を労われなかった斬鬼の念がかなり記憶がおぼろげな昇平に『こころ』を一頁ずつ破って食べさせたはずなのである。


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『エリカ38』

2019-06-14 00:58:57 | goo映画レビュー

原題:『エリカ38』
監督:日比遊一
脚本:日比遊一
撮影:高岡ヒロオ
出演:浅田美代子/平岳大/窪塚俊介/山崎一/小松政夫/木内みどり/古谷一行/樹木希林
2018年/日本

予算不足でストーリーが単調になってしまった作品について

 主人公の渡部聡子(エリカ)も騙された側だという意見はなかなか納得しかねるもので、例えば、聡子はレストランで偶然知り合った伊藤信子の仲介で平澤育男と知り合い、スナックを辞めてカンボジアへの支援を名目に高利回りの配当があると嘘を言ってお金を騙し取ることになるのであるが、聡子は騙された振りをして平澤を利用したことは疑いないことであろう。
 平澤を紹介した後の伊藤の行動が描かれておらず、伊藤の目的が何だったのか分からないのだが、さらに分からないのは、玉木亮介が自殺した原因である。玉木は聡子が所有していたアンリ・マティス(Henri Matisse)の『緑の筋のあるマティス夫人の肖像(Portrait of Madame Matisse. The Green Line)』(1905年)を偽物だと見破りながら、聡子の素性を疑わないということが解せないのであるが、聡子を演じた浅田美代子の「キャラ」に頼りすぎているきらいがある。
 タイに住む聡子の恋人のポルシェの説明によるならば聡子は1958年生まれで、60歳を過ぎていることになっている。つまり事件が起きた年は2018年以降ということになり、実際に聡子たちはスマホを使っているのだが、17歳の聡子が描かれるシーンにおいてラジオから「EXPO'70」という言葉が聞こえてくるのだから、聡子が17歳の時は日本万国博覧会が開催された1970年になり、そうなると聡子は1953年生まれになる。
 一応、渡部聡子にはモデルが存在するのだが、モデルになった人物の人生はもっと破天荒のようで本作のように単純に主人公のファザーコンプレックスだけが問題ではない故に、結果的に騙された方がバカに見えてしまう。


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