原題:『Colette』
監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
脚本:ウォッシュ・ウェストモアランド/レベッカ・レンキェヴィチ/リチャード・グラツァー
撮影:ジャイルズ・ナットジェンズ
出演:キーラ・ナイトレイ/ドミニク・ウェスト/エレノア・トムリンソン/デニース・ゴフ
2018年/アメリカ・イギリス・ハンガリー
初期の女性小説家の「葛藤」について
フランス人の女性小説家であるシドニー=ガブリエル・コレット (Sidonie-Gabrielle Colette)(1873年ー1954年)がこれほど奔放な人生を送っていたことに驚く。本作を観て思い出すのは2人の作家であろう。一人は一世代前の女性小説家であるジョルジュ・サンド(George Sand)(1804年ー1876年)で、2人とも「男性名義」で小説を発表したことに、当時の女性の立場の厳しさが想像できるのであるが、コレットがバイセクシャルであるのに対して、サンドは服装倒錯者という違いはある。
もう一人がフランツ・カフカ(Franz Kafka)(1883年ー1924年)である。ラストでコレットの夫であるアンリ・ゴーティエ=ヴィラール、通称「ウィリー」が秘書にコレットの生原稿を焼却するように頼むのであるが、秘書が焼却しなかったおかげで、その後コレットは夫が売り払ってしまった自分の初期作品の著作権を取り戻すことができたのである。これはカフカが遺稿を友人のマックス・ブロートに焼却するように頼んだものの、結局、公刊されたことで広く知られるようになったことと符合するのである。ウィリーがコレットの原稿を焼却できなかった理由は、コレットの原稿に自分が推敲や校正した筆跡が残っていたためだと思う。