原題:『The Sisters Brothers』
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール/トーマス・ビデガン
撮影:ブノワ・デビエ
出演:ジョン・C・ライリー/ホアキン・フェニックス/ジェイク・ギレンホール/リズ・アーメッド
2018年/アメリカ・フランス
挫折を逃れた「アメリカン・ニューシネマ」について
1851年のゴールドラッシュ時、兄のイーライと弟のチャーリーのシスターズ兄弟はチャーリーが家族に暴力を振るう父親を殺したために実家を出てから殺し屋として生計をたてているのだが、アメリカ西海岸を舞台としたストーリーの基本設定は「アメリカン・ニューシネマ」に通じるものがある。
シスターズ兄弟は雇い主のコモドアの命を帯びて、ハーマン・カーミット・ワームを追っている。ワームは金を見つけるための薬品を調合できる化学式を発見したまま行方をくらましたのである。ジョン・モリスもワームを追っていたのだが、2人は手を組んで逃走を試みる。
ここで気になるシーンは、イーライとモリスが歯を磨いているところで、金を薬品で見つけ出そうとする試みも含めて時代は確実にモダンへと移行しているのであるが、薬品の扱いに失敗しモリスとワームは亡くなり、チャーリーも片腕を失い、モダンになったが故に起こる新たな問題に彼らは直面するのである。
これまでの「アメリカン・ニューシネマ」であるならば、主人公たちは「大人」たちのルールによって挫折してしまうのであるが、本作ではストーリーは意外な展開を見せる。決死の覚悟を持ってコモドアを殺しに向かっていたのだが、兄弟が手をかける前にコモドアは死んでおり、その後兄弟は母親が一人で暮す実家に家出後初めて戻るのである。タイトルが「姉妹の兄弟」という意味で男性原理から逃れた「アメリカン・ニューシネマ」を観ることができる。