原題:『アルキメデスの大戦』
監督:山崎貴
脚本:山崎貴
撮影:柴崎幸三
出演:菅田将暉/柄本佑/浜辺美波/笑福亭鶴瓶/小林克也/小日向文世/橋爪功/田中泯/舘ひろし
2019年/日本
場違いな山本五十六について
1933(昭和8)年、海軍では今後の戦略として嶋田繁太郎・海軍少将と平山忠道・造船中将が企てる「巨大戦艦派」と、山本五十六・海軍少将と永野修身・海軍大将が企てる藤岡喜男・造船少将による「航空母艦派」が主導権争いをしていた。山本と永野は「巨大戦艦派」の不正経理を暴くために、天才の名を欲しいままにしていた元帝国大学の数学科に在籍していた櫂直を招聘して全く知識の無い造船に関して一から勉強して、平山が描いたであろう設計図をほぼ忠実に書き上げる。
会議の最後で櫂は平山の予算の不正を暴くことができたのだが、驚くことに平山は、予算を低く見積もった理由は、大きな予算を公表すると相手が警戒するために敢えて見積もりを低くしたと強弁しだすのであるが、櫂に船の欠陥を指摘されると落胆した平山は自ら計画を取り下げるのである。
その後、平山に呼ばれた櫂は平山が作った頓挫したはずの「大和」のミニチュアを見せられる。戦争を終わらせるためには日本の象徴となるものを失った時が日本が戦争を止める時だと平山に言われ、以前から数学者として「大和」の「美しさ」に魅せられていた櫂は言葉を失ってしまう。
ここまでは良かったのだが、ラストシーンは奇妙なもので、「大和」に海軍中佐として櫂が乗船しているのはともかくとして、「大和」建造に反対していた山本五十六が指揮を執るために乗船しているのはどうしたことなのか? もちろんこの意見は史実と違うということではなくロジックが間違っているという意味である。しかしもしもその時まで生きていたら天皇陛下と並ぶほど戦争のアイコンとなっていたはずの山本が指揮を執る大和が沈むことこそが櫂が見ていた夢だったのかもしれない。