原題:『Before Sunset』
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター/イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー
撮影:リー・ダニエル
出演:イーサン・ホーク/ジュリー・デルピー/アルバート・デルピー
2004年/アメリカ
小説と歌による男女の愛の交歓について
本作は前作『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』(リチャード・リンクレイター監督 1995年)を観ておかなければ意味が分からないと思う。何故ならば主人公のジェシー・ウォレスが小説家になって書いた小説『This Time』は9年前の2人の出会いを描いており、さらにもう一人の主人公であるセリーヌの部屋で流れるニーナ・シモンの「Just In Time」もセリーヌ自身がラストで歌う「A Waltz For A Night」も2人の出会いを歌ったものだからである。以下、それぞれの和訳。
「Just In Time」Nina Simone 日本語訳
ちょうどタイミング良くあなたは私を見つけてくれた
あなたが来る前は私は何もかも上手くいっていなかったの
私は勝ち目の無いサイコロを振って負けていた
私の橋の渡し先はどれも行き場所を無くしていた
今はあなたがいてくれるから私は自分が進むべき道が分かっている
もう疑うことも恐れることもなく私は自分の道を見出せる
あなたの愛がタイミング良く来てくれたから
ちょうどタイミング良くあなたが私を見つけてくれたから
私の孤独な夜を幸福な日へと変えてくれた
Nina Simone - Just In Time (1962)
「A Waltz For A Night」Julie Delpy 日本語訳
あなたのためにワルツを歌わせて
どこからともなく私の考えも及ばなかったワルツを
あなたのためにワルツを歌わせて
あの一夜限り恋のワルツを
あの夜、あなたは人生において私がいつも夢見ていた全てだったけれど
あなたは行ってしまった
あなたは遠くあなたの雨の島へ行ってしまった
あなたにとってはただの一夜の出来事だったけれども
あなたは私にとってはそれ以上だった
ただそれだけのこと
あなたに関する噂を聞いた
あなたの素行の悪さの全てを
でも私たちが一緒にいた時には
あなたが遊び人のようには全く見えなかった
私は噂なんか気にしない
あの日、あなたは私にとっては重要だったのだから
私はただもう一度チャンスが欲しかった
私はただもう一晩欲しかった
例えそれが間違っているように見えても
あなたは私が今まで出会った人の中で最も大切な人だった
ジェス、あなたと一晩過ごすことは
他の誰かと千夜過ごすほどの価値がある
私は苦しくはない
私はあの夜の出来事を決して忘れはしない
明日になっても、他の人の腕の中でも
死ぬまで私の心はあなたのそばにある
あなたのためにワルツを歌わせて
どこからともなく私の憂鬱も及ばなかったワルツを
あなたのためにワルツを歌わせて
あの素敵な一夜限り恋のワルツを
Before Sunset (10/10) Movie CLIP - A Waltz for a Night (2004) HD
つまり男は散文で、女は歌で愛を表現しているのであるが、そんな2人の愛の結末は『ビフォア・ミッドナイト』(リチャード・リンクレイター監督 2013年)で描かれている通りである。