原題:『The Fabelmans』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・スピルバーグ/トニー・クシュナー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:ガブリエル・ラベル/ミシェル・ウィリアムズ/ポール・ダノ/セス・ローゲン/ジャド・ハーシュ/デイヴィッド・リンチ
2022年/アメリカ
映画の「真実」について
主人公のサミー・フェイブルマンの映画初体験はアメリカのニュージャージー州に住んでいた1952年に観た『地上最大のショウ』(セシル・B・デミル監督 1952年)で、サミーは列車の模型を集めるところから始めて8mmカメラを回すようになる。ここではサミーが撮った映画を巡る印象的な二つのエピソードを記しておきたい。
一つは1957年に引っ越し先のアリゾナ州のフェニックスでサミーが家族のキャンプ旅行を撮って編集した『エスケープ・トゥ・ノーウェア(袋小路)』である。フィルムを編集している内に母親のミッツィと、父親のバートの同僚でミッツィの親友でもあったベニーとの関係がただならぬ関係だったことにサミーが気付き、ベニーとの関係を上手く隠していたつもりのミッツィ自身もヴィデオでカットされていた映像を見て驚いたのではないだろうか。これほど映画は真実を明らかにしてしまうのかと。
もう一つは再び引っ越したカリフォルニア州のサラトガにある高校のプロムパーティー用にサミーが「シニアスキップデー(おサボり日)」で撮ったフィルムを編集した映画が会場で公開された時である。自分をイジメていたチャド・トーマスの間抜けな様子が映されて生徒たちの爆笑をかっさらっていたのだが、同じように自分をイジメていたローガン・ホールに関しては彼のヒーローのような勇姿が映されていたのである。誰もがローガンを称えたのだが、何故かローガン本人が納得せずに、サミーに詰め寄る。誰も気が付かなっかったのだが、ローガンには自分の「真の姿」が見えて恐れおののいたのである。サミーも別にローガンの機嫌を取ろうと思ってローガンをヒーローのように映したわけではなく、編集する過程でどうしてもそうなってしまったのである。ここにも誰にもどうしようもない映画の「真実」が物語られていると思う。
最後にジョン・フォード監督が出てきたことには驚いたが、去年『ジョン・フォード論』を上梓した蓮實重彦に本作の感想を訊いてみたいところではある。
ところで日本語字幕に関してなのだが、フェイブルマン家がカリフォルニア州に引っ越してきて最初に室内を見た際に、家族が家の感想を言っていたと思うのだが(たぶん誰かの名前を言っていたと思うのだが)、何故か日本語字幕では「アッ」としか書かれておらず、全く意味が分からなかった。ネット上に他の人も同じことを指摘していないか探してみたが見つからなかったことにも驚いた。
gooニュース
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