MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『イニシェリン島の精霊』

2023-03-08 00:59:12 | goo映画レビュー

原題:『The Banshees of Inisherin』
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
撮影:ベン・デイヴィス
出演:コリン・ファレル/ブレンダン・グリーソン/ケリー・コンドン/バリー・コーガン
2022年/アイルランド・イギリス・アメリカ

「戦争」という名の友情について

 舞台設定は1923年のアイルランド諸島の孤島であるイニシェリン島で、島の向こうではイギリスから独立するかどうかでアイルランド内で起こっている内戦が続いている。まるでその内戦と呼応するかのように、それまで仲が良かったパードリック・スーランウォーンとコルム・ドハティが仲違いすることになる。正確を期するならば、パードリックはいままで通り友人でいたいのだが、コルムが「パードリックは退屈で今後は作曲に専念したい」と宣言して絶縁するのである。
 2人とも若ければ理解できなくもない話だが、2人は新たな友人を見つけられるほど若くはなく、孤島だから尚更なのだが、コルムの決心は固く、納得できないパードリックが泥酔してパブでコルムに絡むと、翌日コルムは自分の指を一本切断してパードリックの家に投げつけてきたのである。フィドルを弾いて作曲すると言っている人間が指を切断したのだから、その信念の重さは押して図るべきであろうが、パードリックはコルムの考えを認めるわけにはいかない。ユーモア(humor)が無いということは人間性(human)の否定につながるからである。
 ここでマコーミック夫人の「島に二つの死が訪れる」を検証してみる。一つ目は湖畔で水死体で発見されたドミニク・キアニーで、マコーミック夫人に導かれて父親のピーダーが見つけることになる。もう一つはパードリックが飼っていたロバのジェニーで、ジェニーはコルムが切ってパードリックの家に投げ捨てていた指を誤飲して死んだのである。ここには戦争にまつわる二つの暗喩があると思う。一つは「相手」がいなくなれば「戦争」は終わるということで、もう一つは時に戦争は無関係の者を巻き込んでしまうということである。ラストにおいてパードリックの方が「戦い」を終わらせないと言う理由は、「戦い」が終わるということは二人の関係そのものが終わることを意味するからであろう。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_88492


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『アントマン&ワスプ : クア... | トップ | 『フェイブルマンズ』 »
最新の画像もっと見る

goo映画レビュー」カテゴリの最新記事