澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「日本の戦争 天皇と戦争責任」(山田 郎 著)

2019年10月22日 10時59分27秒 | 読書

 「日本の戦争 天皇と戦争責任」(山田郎 著 新日本出版社 2019年)を読む。

 「即位の礼」の当日、こんな本の感想を書くことには、別に他意はない。その証拠に、今朝は「虎の門ニュース」を見ていたし…。

  

  先日終了した「愛知トリエンナーレ」における「表現の不自由展」で、昭和天皇の写真が燃やされ、問題になったことは記憶に新しい。このとき、保守派あるいはTouTube系の論者は、天皇の「御真影」が燃やされたと騒いだ。「御真影」は限定的な概念であり、そもそも戦前においても、天皇の写真(印刷物)の処遇は各自の判断に委ねられていた。中国の文化大革命期、毛沢東の写真が載っている新聞紙を包み紙に使っただけで、死刑になったというような国ではないのだ。

 さて、本書だが、左翼史観の立場から昭和天皇の戦争責任を問いかける。目次は次のとおり。

第一部 大元帥としての昭和天皇
 第一章 近代天皇制における天皇
 第二章 昭和天皇の満洲・朝鮮観と膨張主義思想
第二部 昭和天皇の戦争指導
 第三章 昭和天皇と軍事情報:大本営による戦況把握と戦況奏上
 第四章 昭和天皇の戦争指導・作戦指導
第三部
 第五章 徹底検証「昭和天皇独白録」
 第六章 徹底検証「昭和天皇実録」
 第七章 天皇の戦争責任を考えることの意味

 この中で特に興味深いのは、第三部。昭和天皇の「独白録」「実録」を通して、「昭和天皇=平和主義者」のイメージが拡大再生産されてきたと指摘する。映画「日本のいちばん長い日」は、天皇の「ご聖断」の録音盤をめぐる宮廷内騒乱を描き、反乱将校vs.平和主義者・昭和天皇というチープな図式を印象付けた。

 「『実録』における歴史叙述は、従来からの『昭和天皇=平和主義者』のイメージを再編・強化するためのものであり、そのストーリー性を強く打ち出したものである。……ここであえて記述されなかった部分を補ってみると、むしろ非常にはっきりと何を残したくなかったかが浮き彫りになってくる。『実録』は、私たちが掘り起こし、継承し、歴史化していかなければならない《記憶》を逆説的に教えてくれるテキストであると言えよう。」(p.230)

 本書の売れ行きは、おそらく芳しくないだろう。一方、「日本国紀の天皇論」(百田尚樹+有本香 著 産経出版社 2019年)はベストセラーだ。後者の意義を否定するものではないが、本書はやはり「歴史の風化」に対するブレーキ役にはなるに違いない。


  

【DHC】2019/10/22(火) 百田尚樹×有本香×居島一平【虎ノ門ニュース】



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