ジュリウス・カッチェン(ピアノ)とマントヴァーニ・オーケストラが共演するこのアルバムは、ガーシュイン「ピアノ協奏曲ヘ長調」とのカップリングで1955年リリースされた。ステレオレコードが市販されたのは1958年だから、もちろんこれはモノラル録音。しかも、クラシックの名ピアニストとポピュラー音楽で名を馳せたマントヴァーニ楽団との異色の組み合わせ。そのためか、CD化されたのは、数回しかないと思われる。
マントヴァーニ楽団が伴奏するからと言って、曲そのものが「ムード音楽」風に改ざんされたりしていない。ジュリウス・カッチェンは伸び伸びとガーシュインを弾いているという感じ。ただ、マントヴァーニのカラーが加えられている個所もある。序奏の弦楽部分や11:10前後の弦の響きは、彼のトレードマークである「カスケーディング・ストリングス」の手法が用いられている。
「ラプソディ・イン・ブルー」はクラシックとジャズの境界をつなげたような、いかにも米国製の作品。「ムード音楽」で一世を風靡したマントヴァーニがこの曲を伴奏したとしても何ら違和感はない。このアルバム発売当時は、おそらく文句をつける評論家も多かったに違いない。だが、いまになってみると、ダイナミックでウィットもあるピアノ、マントヴァーニの懸命な伴奏は一聴に値すると思う。
ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」(ピアノ; ジュリウス・カッチェン オケ;マントヴァーニ・オーケストラ)