9月半ば 黄金色に染まる「実り」 6月 小雨けぶる緑の「早苗」
移り行く季節の中で、四季折々それぞれの「いろ」に出会う。
燃え立つように気合いの入る色もあれば、フーッと大きく深呼吸、芯から安堵する色もある。
襟を立て、少し前屈みな気持ちになる色もある。 人それぞれの思いがそこにある。
秋半ば、盛り上がるように実った黄金色の稲穂。気持ちの奥底から湧き上がる安堵の色でもある。
自分が作るわけでもなく、八十八の手間ヒマかけると言われる苦労を知るわけでもない。それでも、一面に広がるパッチワークを思わせる実りの色、段々に伸びる棚田の黄金色、いつ見ても何度見ても、飽きない心温まる色でありロマンを誘う景色である。
我が家からちょっと足を伸ばせば出会える棚田風景。田んぼに張られた水に爽やかな初夏の風が吹き渡る。植えられたばかりの早苗が心細く風に揺れる。少し頼りないが何かしら夢を抱かせる薄緑色。あれから4ヶ月。見事な変身を遂げた秋の色。
間もなく刈り取り、脱穀、精米へと作業は進んでいく。
「オーイ、出来たよー」と声がかかる。大地主に養子に入った同級生からの、「米を取りにおいで」という連絡である。昔で言う1俵の玄米を購入、必要な分だけコイン精米して美味しくいただく。
豊かに実った黄金色の稲穂は大好きな色である。が、同じ企業戦士として大企業を支え、定年退職してそこからお米作りに精を出す彼。少し痩せ気味の友の姿を思うと、手放しで喜べない複雑な色にも見える。「元気でぼつぼつやって、またイッパイやろうや…無理をせんように…」と声をかける主の頭をよぎるのは、駅前のネオンの灯りの色でもある。 友よ おつかれさん!!