
近くに住む甥が大学受験を迎えた。
彼なりに精一杯努力する姿を間近に見てきただけに、応援する方も力が入る。
合格したらお祝いは何にしようなどと考えていた。
ところが残念、桜は咲かなかった。それでも彼は初志貫徹、志望大学を目指して浪人することを決めた。
こんな場合、叔父としてどのような慰めを、またどのような激励の言葉を贈るのだろうか。聞く耳を持ってくれるのだろうか、気を揉んでいた。
そんな折り、私の勤めていた岩国工場が機関誌に掲載する随筆を募集した。
これ幸い、つたないながらも一筆書いて、機関誌の活字を通して激励文を贈ることを思いついた。
「人生模様に色付けする絵筆を握るのはまだまだ先の話。焦るなよ…」といったようなことを書いたと思う。
あれから33年。彼は初志を貫き今を築き上げ、高校生と中学生の親となった。
彼なりの人生に確かな彩りを添える絵筆を握っている最中である。
彼の受験をきっかけに、はからずも随筆に挑戦することを決めた私は、その時以来定年を迎えて8年になる今も、趣味のひとつとしてペンを握り続けている。
くじけそうな気持ちを自ら立て直した彼。書くことで新たな生き方を見つけた私。
あのときが二人にとって、もう一つの出発点になったようだ。


満開を誇った桜も、少しずつ青い芽を吹き始めた。
今年の花を散らし、早くも来年のつぼみをつける準備に入ったのだろうか。
新学期を迎えた孫二人。4年生と2年生、それぞれクラス替えがあり、淋しかったり嬉しかったり。
兄ちゃんは、20数年前私のセガレが教わった先生が担任という偶然があった。
その頃はPTAバリバリの現役であった。今度はジジとして相まみえる不思議を感じている。
弟カー君は、新任の女先生で、まだ名前がよく分からないと言う。
そんなこんなで、二人も新たなスタートラインに立った。
( 写真 : 満開の花影で早くも青い芽を吹き始めた桜 新学期の兄弟 )