1982年、昭和56年の今日、憧れを抱いた作家向田邦子さんの、突然の訃報を耳にした日である。
正直「遅かったか」と嘆いた思い出が、今も少しだけ気持ちの片隅にある。
あれから40年を経て尚、作品の多くが色あせぬまま、輝きを失わず人々から愛されている。存命なら御年92才。返す返すも惜しい早世の人ではある。
そこにもいるここにもいる、そんな普通に生活する人々の日々の営みや哀感、迷ったりあがいたりする家族の絆や大人の恋を、限りなく明るく描いた数々の名作を世に送り出した。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「阿修羅の如く」。どれも名作で、彼女独特の視線と鋭い洞察力、温かなまなざしは、いまも多くのファンを引きつけてやまない。テレビドラマ全盛期の陰の主役であったような。視聴率も高かった。何を隠そう小生もそ大ファンの一人である。
その経歴たるや蒼々たるもので、1970年代には「倉本聰」「山田太一」と並んでシナリオライター御三家と呼ばれていた。彼女の作品が最初にNHKで放映されたドラマが「桃から生まれた桃太郎」だったという。こればかりはあまり印象に残っていないので、彼女の手によって小説出版されたようだから、なんとか手に入れて読んでみたいものだ。
遠く及ばない思い出話なので少し小さい声で言うが、何かのコラム欄に載っていた彼女のエッセイやテレビドラの面白さに魅せられて「オラTOKYOさ出て彼女に弟子入りするだ。カバン持ちでもいい。」という儚い夢を持ったことがあった。が、行動も何も起こさないまま消えた単なる夢だから話にもならないが、「すごいな」と思った作家が、没後40年の今も皆さんに愛されているのは、なんかしら嬉しい気がするもんだね~。おそまつさま。