ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「マラソン」(笹山薫著;幻冬舎文庫)

2021-09-08 21:35:17 | 読む


「マラソン」という書名にひかれて、手に取った。
BOOKOFFの100円(110円)コーナーで見つけた。
ただ、内容的に、一般のマラソンそのものから想像することとは全く違うストーリーであった。

表紙からして、もともとの作品は、韓国の物語なのだと分かった。
実際にあったことや人をモチーフにして、映画化したものらしい。
登場する中心人物は、自閉症の息子チョウオン。

物語の前半では、その自閉症の息子を持った母親の苦悩が描かれる。
親でありながら、愛する息子と気持ちが通じ合えない。
息子の引き起こす騒ぎと世間の人たちの冷たいまなざし。
夫までも離れていく、絶対的な孤立。
それでも母親は、その息子が走ることが好きだということを見付け、そこに活路を見出そうとする。
走れるところを探したりコーチをお願いしたりする。

最初はいい加減だったコーチも、チョウオンの障がいを理解するようになって、変わっていくが、今度は母親の心が折れてしまう。

そんないろいろがあって、自閉症の子であっても、自分の意思をもって母を振り切りマラソンを走り出すシーンには成長が感じられ、胸を打つものがある。
最後には、できなかった笑顔でゴールするのだから、感動である。

また、成長するのは、障がいをもつチョウオンだけではない。
彼にかかわる、元名ランナーだったコーチも、そうだ。
名声を得てから人生を踏み誤った彼が、チョウオンとかかわることによって、人間らしい道に戻り、新たな歩みを進めていく。

そう。私たち健常者も、障がいを持つ人とかかわることによって、人として成長していけるのである。
パラリンピックがあった後だけに、障がい者に対する世間の人たちの見方やあり方について、考えさせる部分が多くある作品であった。

コメント
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