旅も4日目。利尻島で迎える朝も、今朝で最後だ。
今夜の宿は、稚内市内にとってある。
この利尻・礼文の最終日、どこへ行こうか?ということになった。
昨日は、礼文島で花をたくさん見たのだけれど、心にひっかかっているのは、レブンアツモリソウをこの目で見ていないこと。
レブンアツモリソウの開花時期は、とっくに過ぎてはいるのだが、礼文島の高山植物園では、開花時期を遅らせて咲かせているものがある、とのこと。
見たい。
ここまで来たのだから、実物を見てみたい。
ここで見に行かないと、ずっと後悔しそうな気がする。
後悔は、したくない。
レブンアツモリソウを見た後は、バスで戻って、礼文林道コースを歩いてみよう。
そのコースには、レブンウスユキソウの群生地もあるということだし。
…ということを妻に話し、2日連続して、礼文島に渡ることにした。
鴛泊への道も、少し見慣れた感がある。
毎日が、思い出の道。
初日の夕方、路線バスでホテルまで行ったこと。
2日目の、自転車でサイクリングロードを約25km行ったこと。帰りは、強い向かい風の中を帰ったこと。
3日目は、朝、ホテルのバスに乗っていくと、鴛泊港まであっという間に着いたこと。
そして、4日目。今日も、ホテルのバスで行く。
今日も、沓形方面からは、霧や雲で利尻山が見えなかった。
それどころか、鴛泊方面からも、厚い雲に覆われて見ることができなかった。
利尻山に、別れが言えなかったヨー…。
そんな感傷はともかくとして、今日もフェリーは、礼文島・香深港に着く。
地面には、レブンアツモリソウをこんなデザイン化したものも。
さっそく観光案内所で、
・高山植物園に行ってレブンアツモリソウを見に高山植物園に行きたいこと
・稚内行きのフェリーが出るまでに礼文林道を歩いてみたいこと
などを話した。
案内のおネエさんは、私も前もって調べていた路線バスの時刻表を取り出し、
・10:50発のバスでスコトン行きに乗ると、「第3上泊」に11:21頃に着くので、そこから15分ほど歩くと高山植物園に着くこと
・また歩いて第3上泊に戻ると、スコトンから折り返す路線バスが12:25頃に通るので、手を上げると、乗せてくれること
・12:30過ぎに着く香深井という停留所で降ろしてもらい、40分ほど歩くと林道の入り口に着くこと
・そこからがんばって歩くと、16:10発の稚内行きに乗れること
などを教えてくれた。
さて、第3上泊で降りてみると、目指す高山植物園は、登りの坂道の上にあった。
15分歩いてもまだ着かず、妻は、「話が違う。」とヒーヒー言っていた。
(実は、この時はまだ楽だったと、後で気付くのである。)
20分ほどかけて、たどり着いた高山植物園。
入ってみると、小さな建物の中には、4つの植木鉢に咲いているレブンアツモリソウが展示されていた。
これが、今日の努力の成果だ、実物のレブンアツモリソウ!
清純な白さ。ふっくらして、上品だ。
名前の由来が、「平敦盛」だけあって、ひょっとして「平安美人」?
植物園の庭には、レブンソウ
や、イブキジャコウソウ
カセンソウ他、この地特有のいろいろな植物が植えてあって、少し花の名を知る助けとなった。
園内を見るのもそこそこに、また20分かけて、坂道を今度は下って降りる。
途中には、以前は「上泊小学校」だったらしいところが「想い出ミュージアム」と名づけられて残っていた。
日本中どこも少子化で、学校統合が進み、閉校となっているところが多い。
ここも例外ではないわけだ。
なぜかクレヨンしんちゃんの立て看板のあるそばで、再びバスに乗った。
運転手さんは、行きのバスでも会った運転手さん。
香深井で降ろしてもらい、歩き始めた。
やけにカラスの鳴き声が多く、不吉に聞こえたのは、これからのわれわれが遭う災難の前兆だったのであろうか。
「どこかで昼食にしよう」なんて話しながら歩いていたら、林道が近づくほどに、われわれ2人の周囲が騒がしくなってきた。
ブーン、ブンブンブン、ワーンワンワン…。
私たちの周囲に何十匹、いや百匹を越える山アブが、―。
林道に入り、歩いても歩いても、追いかけてくる。
それだけでなく、脚を中心として私らの体にくっついてくる。
手を振って歩いていると、その手にバチバチと当たる。
2人の体に、脚に虫よけスプレーをかけてみた。
効果がない。
前を行く妻の後ろ姿、太ももやふくらはぎの裏に何匹も山アブがついている。
そして、体の前後左右に、無数に飛び回っている。
2人とも、ただただ前を向いて、林道を歩いた。
樹木があろうとあるまいと、日光が当たろうと当たるまいと、虫たちはようしゃなくブンブンと飛ぶし、まとわりつく。
3か所ほど手や耳の一部をさされてしまって、かゆくなった。
いつになったら、いなくなるんだ?
そう思いながら、汗だくになりながらゆるやかな登り坂の林道をひたすら歩いた。
写真を撮りたくなるほどの植物もなく、車が1台楽に通れる林道だ。
1時間半近くも歩いて礼文滝方面との分かれ道に来た。
ここまで来て、ようやく虫たちの大群も、数匹になって、やれやれだった。
ここで、パンを食べ、14:00。
元地方面出口まで3kmとの標示。
ここまで、誰ともすれ違っていないし、追い越されてもいない。
誰も来ないの?
不安になっていたら、地元のパトロールの人が車に乗って通り過ぎていった。
向かい側から、バイクが1台走り去って行った。
ここって、完全に、車向けの林道だよなあ。
歩いている人は誰もいない。
だから、山アブたちには、格好の獲物だったのだろうか、私たちは。
やっと、レブンウスユキソウの群生地にたどり着いた。
そこは、昨日の桃岩コース同様に多くの植物たちが咲いていた。
でも、「群生」というほど、レブンウスユキソウは多くない。
もう季節はずれになりそうなのだろう。
でも、昨日見た数多くの花々に「再会」できたのは、うれしかった。
また、さすがにここには、花見に訪れた団体が2つ3つあり、久々に人間に会うことができた。
月の丘という小高い展望台に登り、海を眺める。
植物を眺める。
まもなく、礼文の旅も終わる。
昨日今日の礼文であったことを思い出し、少し感傷的になった。
だが、疲れた足で下り道に入り、やがて舗装された道路に出たら、その感傷も吹っ飛んだ。
まっすぐ向こうに港が見えるのに、道がそこにスッといかないのだ。
舗装道路は車道なので、山をぐるりと回るようにくねくねと大きく曲がっている。
人間の足には、この遠回りは疲れる。
まして、山アブに追いかけられてあれだけ急いで歩いた足だ。
この3日間、歩きに歩いている足だ。
そして、16:10発のフェリーの時刻が迫ってきているのだ。
舗装道路を必死で歩いて30分、なんとか15:50に香深港に着くことができた。
フェリーの船室では、汗にまみれたリュックを下ろし、服を着替えた。
やがて、フェリーは、懐かしい(?)鴛泊港を経由して
18:50に無事稚内港に着いた。
普通なら歩いて7分という距離では、決して使うことを許さない妻が、タクシーに乗ることに同意した。
着いた稚内市内のホテルでは、筋肉痛の妻の足腰に、買ったばかりの鎮痛薬を塗布することが、夫としての私の務めであった。
なんてったって、結婚30周年記念旅行なのだから。
今夜の宿は、稚内市内にとってある。
この利尻・礼文の最終日、どこへ行こうか?ということになった。
昨日は、礼文島で花をたくさん見たのだけれど、心にひっかかっているのは、レブンアツモリソウをこの目で見ていないこと。
レブンアツモリソウの開花時期は、とっくに過ぎてはいるのだが、礼文島の高山植物園では、開花時期を遅らせて咲かせているものがある、とのこと。
見たい。
ここまで来たのだから、実物を見てみたい。
ここで見に行かないと、ずっと後悔しそうな気がする。
後悔は、したくない。
レブンアツモリソウを見た後は、バスで戻って、礼文林道コースを歩いてみよう。
そのコースには、レブンウスユキソウの群生地もあるということだし。
…ということを妻に話し、2日連続して、礼文島に渡ることにした。
鴛泊への道も、少し見慣れた感がある。
毎日が、思い出の道。
初日の夕方、路線バスでホテルまで行ったこと。
2日目の、自転車でサイクリングロードを約25km行ったこと。帰りは、強い向かい風の中を帰ったこと。
3日目は、朝、ホテルのバスに乗っていくと、鴛泊港まであっという間に着いたこと。
そして、4日目。今日も、ホテルのバスで行く。
今日も、沓形方面からは、霧や雲で利尻山が見えなかった。
それどころか、鴛泊方面からも、厚い雲に覆われて見ることができなかった。
利尻山に、別れが言えなかったヨー…。
そんな感傷はともかくとして、今日もフェリーは、礼文島・香深港に着く。
地面には、レブンアツモリソウをこんなデザイン化したものも。
さっそく観光案内所で、
・高山植物園に行ってレブンアツモリソウを見に高山植物園に行きたいこと
・稚内行きのフェリーが出るまでに礼文林道を歩いてみたいこと
などを話した。
案内のおネエさんは、私も前もって調べていた路線バスの時刻表を取り出し、
・10:50発のバスでスコトン行きに乗ると、「第3上泊」に11:21頃に着くので、そこから15分ほど歩くと高山植物園に着くこと
・また歩いて第3上泊に戻ると、スコトンから折り返す路線バスが12:25頃に通るので、手を上げると、乗せてくれること
・12:30過ぎに着く香深井という停留所で降ろしてもらい、40分ほど歩くと林道の入り口に着くこと
・そこからがんばって歩くと、16:10発の稚内行きに乗れること
などを教えてくれた。
さて、第3上泊で降りてみると、目指す高山植物園は、登りの坂道の上にあった。
15分歩いてもまだ着かず、妻は、「話が違う。」とヒーヒー言っていた。
(実は、この時はまだ楽だったと、後で気付くのである。)
20分ほどかけて、たどり着いた高山植物園。
入ってみると、小さな建物の中には、4つの植木鉢に咲いているレブンアツモリソウが展示されていた。
これが、今日の努力の成果だ、実物のレブンアツモリソウ!
清純な白さ。ふっくらして、上品だ。
名前の由来が、「平敦盛」だけあって、ひょっとして「平安美人」?
植物園の庭には、レブンソウ
や、イブキジャコウソウ
カセンソウ他、この地特有のいろいろな植物が植えてあって、少し花の名を知る助けとなった。
園内を見るのもそこそこに、また20分かけて、坂道を今度は下って降りる。
途中には、以前は「上泊小学校」だったらしいところが「想い出ミュージアム」と名づけられて残っていた。
日本中どこも少子化で、学校統合が進み、閉校となっているところが多い。
ここも例外ではないわけだ。
なぜかクレヨンしんちゃんの立て看板のあるそばで、再びバスに乗った。
運転手さんは、行きのバスでも会った運転手さん。
香深井で降ろしてもらい、歩き始めた。
やけにカラスの鳴き声が多く、不吉に聞こえたのは、これからのわれわれが遭う災難の前兆だったのであろうか。
「どこかで昼食にしよう」なんて話しながら歩いていたら、林道が近づくほどに、われわれ2人の周囲が騒がしくなってきた。
ブーン、ブンブンブン、ワーンワンワン…。
私たちの周囲に何十匹、いや百匹を越える山アブが、―。
林道に入り、歩いても歩いても、追いかけてくる。
それだけでなく、脚を中心として私らの体にくっついてくる。
手を振って歩いていると、その手にバチバチと当たる。
2人の体に、脚に虫よけスプレーをかけてみた。
効果がない。
前を行く妻の後ろ姿、太ももやふくらはぎの裏に何匹も山アブがついている。
そして、体の前後左右に、無数に飛び回っている。
2人とも、ただただ前を向いて、林道を歩いた。
樹木があろうとあるまいと、日光が当たろうと当たるまいと、虫たちはようしゃなくブンブンと飛ぶし、まとわりつく。
3か所ほど手や耳の一部をさされてしまって、かゆくなった。
いつになったら、いなくなるんだ?
そう思いながら、汗だくになりながらゆるやかな登り坂の林道をひたすら歩いた。
写真を撮りたくなるほどの植物もなく、車が1台楽に通れる林道だ。
1時間半近くも歩いて礼文滝方面との分かれ道に来た。
ここまで来て、ようやく虫たちの大群も、数匹になって、やれやれだった。
ここで、パンを食べ、14:00。
元地方面出口まで3kmとの標示。
ここまで、誰ともすれ違っていないし、追い越されてもいない。
誰も来ないの?
不安になっていたら、地元のパトロールの人が車に乗って通り過ぎていった。
向かい側から、バイクが1台走り去って行った。
ここって、完全に、車向けの林道だよなあ。
歩いている人は誰もいない。
だから、山アブたちには、格好の獲物だったのだろうか、私たちは。
やっと、レブンウスユキソウの群生地にたどり着いた。
そこは、昨日の桃岩コース同様に多くの植物たちが咲いていた。
でも、「群生」というほど、レブンウスユキソウは多くない。
もう季節はずれになりそうなのだろう。
でも、昨日見た数多くの花々に「再会」できたのは、うれしかった。
また、さすがにここには、花見に訪れた団体が2つ3つあり、久々に人間に会うことができた。
月の丘という小高い展望台に登り、海を眺める。
植物を眺める。
まもなく、礼文の旅も終わる。
昨日今日の礼文であったことを思い出し、少し感傷的になった。
だが、疲れた足で下り道に入り、やがて舗装された道路に出たら、その感傷も吹っ飛んだ。
まっすぐ向こうに港が見えるのに、道がそこにスッといかないのだ。
舗装道路は車道なので、山をぐるりと回るようにくねくねと大きく曲がっている。
人間の足には、この遠回りは疲れる。
まして、山アブに追いかけられてあれだけ急いで歩いた足だ。
この3日間、歩きに歩いている足だ。
そして、16:10発のフェリーの時刻が迫ってきているのだ。
舗装道路を必死で歩いて30分、なんとか15:50に香深港に着くことができた。
フェリーの船室では、汗にまみれたリュックを下ろし、服を着替えた。
やがて、フェリーは、懐かしい(?)鴛泊港を経由して
18:50に無事稚内港に着いた。
普通なら歩いて7分という距離では、決して使うことを許さない妻が、タクシーに乗ることに同意した。
着いた稚内市内のホテルでは、筋肉痛の妻の足腰に、買ったばかりの鎮痛薬を塗布することが、夫としての私の務めであった。
なんてったって、結婚30周年記念旅行なのだから。