スタートの直前、降雪あり積雪ありの上、足元には消雪パイプの水が流れ、しかも冷たい水とシャーベットのような雪が一緒になってたまっていた。
そんな路上に立っているのに、上から降ってくるあられのような雪が背中に入り、寒さをさらに助長する。
近くにいた、県外から来たと思われるランナーたちの会話が聞こえてきた。
「埼玉では、雪が降ったら中止だったぜ。こんなに降ってんのにやるんかい!?」
…おあいにくさま。
新潟では、特にこの村上市元旦マラソンでは、雪はつきもの。
こんな雪に負けてたまるか、ですよ。
一斉にランナーが走り出すと、前のランナーからはねた水が飛んできた。
隣にいたSNさんのことなどもう気にせず(ゴメンナサイ)、前のランナーが気にならないように、走りながら急いで道の端へ移動し、悪条件の足元にひるんで走っているランナーたちを急いで抜いて行った。
抜いて行くと、当然ながらスピードが上がった。
足元が悪いながら、1kmを1分間で4分29秒で走るスピードが出た。
ちょっと速すぎるが、そんなにすごいスピードを出した覚えはない。
GPSウオッチの異常だろう、くらいに考えた。
まずは、滑らないように、ストライドを伸ばすよりも、リズムよくピッチを刻むように気をつけて走ることにした。
足元が悪くても、1km4分45秒より遅くならないことを心がけて走った。
なぜかというと、それより遅いと、目標の10kmで47分をきることはできない。
1km4分45秒×10km=47分30秒
であり、47分を切ることはできない。
1km4分42秒で10km走れないと、47分にならないのだ。
その時間で走る走力は、まだないかもしれないが、せっかく大会で10kmを走るのだから、挑戦してみたい。
走る道は、雪なのだが、レース前に通った車のわだち(轍)がついたらしく、そのわだちの上を走るランナーが多くいた。
雪の上よりわだちの上の方が、走りやすいように見えるのだ。
私も、実はそうだった。
雪の上を、滑らないようにいつもより足を上げずに、小刻みに進むように心がけた。
顔を上げると雪が顔に当たるので、目線はやや下に向けたままにした。
マラソンの10kmコースは、5kmコースを2周する。
半分の5kmを走り終えたところで、ウオッチを見ると、23分16秒。
ここまで、①4分29秒 ②4分41秒 ③4分41秒 ④4分43秒 ⑤4分50秒
悪コンディションのなかでも、よく善戦していると確認できた。
あとは、後半も同様な走りができるかどうかだ。
気合を入れ直した。
いつも家で走る時は、残り3kmになったら走るペースを上げている。
だから、残り3kmを過ぎてから腕の振りを大きく速くして、ペースを上げた。
今までハイペースで来たので、いつもほどには上げられないが、それでも一生懸命腕を振った。
最後の200mでは、水たまりをはねてがんばって走っている脇を2人に抜かれた。
めげずにスピードを緩めず、フィニッシュ!
自己新記録でゴールしたつもりだったが、時計は47分8秒。
去年よりも4秒遅くなっていた。
こんなにがんばったのに…と思いつつも、悪条件の中でも全力を尽くしたので悔いはなく、爽快感に満ちていた。
暗い雲の下であったが、心は青空だった。
いつものように温かい鮭汁をいただいてから、記録証をもらいに行くと、驚いた。
入賞できただけでなく、なんと、3位という奇跡的な順位!
60歳以上の男子は、58人のエントリーがあったのに、3番目だとは。
後で記録一覧を見ると、1・2位の2人は45分強の1秒違いなのに、そこから2分も遅いのに3位とは、ラッキー。
そのラッキーは、自分のがんばりもあるが、私よりも速いランナーが今年は出場していなかったことと、雪による寒さの厳しい条件とが生んでくれたものだ、と考える。
体育館内に戻ると、先に5kmのレースを終えた息子が、昨年より順位は下がったが、今年も入賞を果たしていた。
そして、SNさんも、私の後にゴールしたが、入賞を果たしていた。
表彰式では、賞状を読み上げてもらうほかに、メダルを副市長さんから掛けてもらった。
重みのある立派なメダルだったことで、感激はさらに増した。
1年の始まりの元旦マラソンを、このうえなくよい結果を出すことができた。
この半日だけでも、明るい初日→暗い雲・冷たい雪→足はびしょぬれ・体も雪まみれ→入賞・メダル…と、山あり谷ありだった。
きっとこんなふうに、今年も1年いろいろ浮き沈みはあるだろう。
だけど、前に進む者だけが、新しい景色を見ることができる。
2019年。いろいろあっても、とにかく、前に進もう。