万葉集 大伴旅人(おおとものたびと)の歌
今から約1300年前、九州太宰府の長で斜陽貴族の大伴家を率いた方です。もともとは天皇家を守る親衛隊筆頭の家柄でしたが、藤原氏が権力を握りジリジリと追い落とされて行きました。奈良の都から事実上九州へ飛ばされたのでしょう。夫人を帯同した転任でしたが、現地で愛妻を亡くされました。
どうしようもない悲しみをいっとき癒やしたのはどぶろくの宴会と山上憶良や沙弥満誓らとの歌会だったようです。仏教の無常観でない現実重視のドライな歌です。万葉集を編さんした大歌人、大伴家持(おおとものやかもち)の父です。
○験(しるし)なき物を思はずは
一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし
○中々に人とあらずは
酒(さか)壷(つぼ)に成りてしかも酒に染みなむ
○価(あたい)なき宝といふとも一坏の濁れる酒に豈(あに)勝らめや
○生まるれば遂にも死ぬるものにあれば
今生なる間は楽しく有らな
○この世にし楽しくあらば
来む世には虫にも鳥にも我はなりなむ
○生けるひと遂にも死ぬるものにあれば
この世にある間は楽しくあらな
○吾妹子(いも)が見し鞆の浦のむろの木は
常世(とこよ)にあれど見し人そなき
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