四季の歌と暮らす

 年齢ごとに「一度っきり」の四季と、
旬(しゅん)のヨコハマを味わう「くりごとの集」です。

芭蕉さん残暑に苦しむ

2012-08-22 13:26:38 | 俳句

  深川を出て知らぬ地を日に約30余km、わらじ履きで歩きぬかれた気力に驚かされます。太平洋側から奥羽山脈を横断し、日本海側の新潟から金沢までは陽暦の「暑甚だし」い8月でさすがに疲労がたまり、しばしば体調不良が曾良日記に多くなります。

おくのほそ道にも「暑湿の労に神をなやまし、病おこりてことを記さず」と。しかし名吟、荒海や佐渡によこたふ天河 が生まれました。

 8月の炎暑を翁の旅で今体感すると、「かかる病覚束なしといへど、羇旅辺土の行脚、捨身無常の観念道路にしなん、是天の命なり」とあるのが大げさではないと実感されます。腹の病と痔の病気持ちですから、野垂れ死に、野ざらし(しゃれこうべ)を天命だと諦観した覚悟がわかります。自らを命がけの土俵際に追い込んでまで美的感覚を研ぎ澄ます風狂にはたじろぐばかりです。

新潟を横断して富山県高岡へ8月28日に着く。「翁、気色よからず。暑きわめてはなはだし」 曾良日記。

金沢9泊の滞在中、曾良の体調不調が4日間も日記に記されています。「予、病気故したがはず」、「高徹に逢、薬を乞う」、「予、病気故、未ノ刻ヨリ行。先達テ帰」、「予、病気故行かず。徹ヨリ薬請」など。

 曽良はとうとう山中温泉滞在中の陽暦9月18日、芭蕉翁に別れます。「曾良は腹を病みて伊勢の国長島と云うところにゆかりあれば先立ちて行くに

ゆき行きてたふれ伏すとも萩の原  曾良

夜もすがら秋風聞くやうらの山  曽良」。

 別行動となった為に以降、曽良日記で芭蕉さんの旅程を正確に確かめることが出来なくなりました。幸いに二人はおくのほそ道結びの地、大垣で再会することになります。


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