地下街への入口あたりで、一昔前に亡くなったはずの“先輩”とすれ違って驚き……、
いや、もちろんそれは、“先輩”とよく似た人だった。
しかし、あれから年齢を重ねたら、たぶん現在はああいふ容貌だらうと、年齢相應さにおいても、よく似てゐた。
街なかで、健在の人に似た人を見ることはあっても、故人と似た人を見ることは、私はまず無かった。
すれ違ったあとで、振り返りはしない。
後ろはすべて過去。
帰らぬ過去。
地下街を通り抜けた先で、貴重な物が手に入った。
過去とは、今日と未来(あす)を學ぶための教科書なのだ。