川崎市のカルッツ川崎で行はれた、「沖縄芸能大会 第82回公演」を観に行く。
番組の初めは大勢の演者が会しての「古典音楽斉唱」、その背景には大道具で再現された首里城正殿。
沖縄の芸能のあれこれが詰まった約三時間半の公演で常に満ちてゐるのは、“前向きな明るさ”。
戦後に沖縄県から川崎市へ移住した人々が、故郷を忘れないために始めた歴史ある公演で、私も沖縄──琉球の藝能には大いに関心があるだけに一度観に行きたいと思ひながら毎年予定が合はず、さうかうしてゐるうちに、首里城が焼失する悲報に接す。
いつか必ず訪れたいと願ってゐた琉球文化の粋を襲った悲劇、そして再建に向けた動きに、
「自分は傳統藝能をやってゐるのだから、沖縄の傅統芸能を観に行くことで、自分なりの支援になれば……!」
との思ひで、今回初めて会場へ出かける。
何もする気の無いことを、「祈ってゐる」といふ言葉にすり替へるやうなマネは、決してしたくはない。
ましてや口先だけの「寄り添ふ」など、言語道断である!
当日入場券¥1200のうち、釣銭はそのまま受付の方へ「再建費用に」と託し、ロビーに設置された募金箱へ、改めて自分の気持ちを託す。
番組の初めは大勢の演者が会しての「古典音楽斉唱」、その背景には大道具で再現された首里城正殿。
その前で奏でられる「かぎやで風節」の厳かにして優美な旋律に、つひ涙がこぼれさうになる。
女性の繊細な心をしなやかな手の動きで体現化した女踊り、
逞しい動きのなかに高い品格を見せる男踊り、
素朴で陽気で、つひ踊り出したくなるやうな数々の民謡──
沖縄の芸能のあれこれが詰まった約三時間半の公演で常に満ちてゐるのは、“前向きな明るさ”。
沖縄県人会の方の挨拶にもあった、
『(首里城の姿が変はっても、)私たち沖縄の人間はいつまでもメソメソしていません!』
この前向きな自力本願の精神こそ、
さらなる混迷に陥った現今を生き抜き生き延びるための、
いちばんの術ではないだらうか──?
今日は却って自分が励まされたやうな、
そして素晴らしい“お土産”を頂ひた、
有意義なひとときに出逢ふ。