昼の陽射しはまだ強くても、風はすっかり秋、過ごしやすくなったのはありがたい。
あのベットリとした“熱さ”がやうやく去り、城の窓から眺むる景色にも、世情への不安、といふより、腹立ちを覺えつつ地元密着生活を始めた四月下旬の頃を思ひ返させる。
この頃は謠ひにも、讀書にも意欲的になれるのは、やはり涼しさの訪れによるものか。
浮世では、いまの人災疫病をますます人災化させる方向に動いてゐるやうだ。
「不要不急」も、「気の緩み」も、今や言ひ出した當人が破棄して死語となった有様。
しかし、そんな世情など私にはどうでもよい。
我が身は我が身で護る──
ただそれだけのことだからだ。
みずから望んで疫病のお客サマになった尻輕どもの生死など、いまや私の知ったことではない。
旅に出たければ、
部屋で静かに地図帳をひろげよ。
そしていまのこの時間に、
創像力を養っておくのだ。