迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

初芝居酔躍。

2024-01-09 23:45:00 | 浮世見聞記




京都驛ビル内の京都劇場にて、前進座の初春特別公演を觀る。

令和六年の初芝居見物が、なにも現状(いま)の前進座でなくてもいいぢゃァないか、と思はなくもないが、目的はあくまでも河原崎國太郎の女形を觀ることにあり。



狂言は「魚屋宗五郎」、昨年五月の國立劇場公演をそっくり移したものだが、女房おはまの國太郎の世話女房ぶりもいよいよ手に入り、甲斐甲斐しいなかにも華を覗かせる安定ぶりで、これからはそこに“深み”が加はることだらう。


(※右から、尾上卯三郎の太兵衞、十五代目羽左衞門の魚屋宗五郎、二代目猿之助の小奴三吉、三代目秀調の召使おなぎ、六代目門之助の女房お濱 大正三年六月 歌舞伎座)

別にどふでもいいことだが、魚屋宗五郎の藤川矢之輔は前回の初役にくらべて臺詞の聲量が落ちて運びも惡くなり、妹を殺されて陰に入ってゐる役作りのつもりだとしたらとんだ失敗、ただ老けたとしか見えない。

今回も山崎辰三郎が老父太兵衞で脇を締めてゐるが、歌舞伎の親爺方の芝居をしっかり自分のものにした矍鑠たる藝とは好對照だ。


(※三代目尾上菊次郎の愛妾おつた 大正六年八月 帝國劇場)

魚屋宗五郎内の場では唯一白塗り女形のおなぎサン、臺詞に泣きを入れるのがちょっと早いネ。


三十分の幕間を挟んで今度は景事で「七福神宝之入船」、七福神に“貧乏神のちに歳神”が絡む喜劇仕立ての舞踊劇にしたかったやうだが、そもそも役者がツマラナイのだから、いくら時事ネタを盛り込んだところで盛り上がるはずもない。


(※「御祝儀 七福神」 大正九年一月 帝國劇場)

そもそも藤川矢之輔の貧乏神が登場早々に大盃で酒を飲み干す件りは、前幕の魚屋宗五郎と芝居がツクとは思はないのだらうか?

歌舞伎劇ではツクことを嫌ふ約束事を忘れてゐるのだとしたら、いよいよ前進座もこのあたりが限界か。

後半に河原崎國太郎が、錦祥女そっくりの綺麗な扮装(こしらへ)の乙姫で登場し、私の不平不満をすっかり拂ったところで九人の総踊りとなり、



カーテンコール中の冩真撮影を許可するお年玉をもって、賑やかにお開き。


冩真撮影と云へば、幕間中に客席で冩真を撮ろうとした人に、客席係の若い女性が、「場内で冩真撮影はダメです」と注意してゐたが、あの場合「場内での冩真撮影はご遠慮願ひます」と云ふのが正解だらう。

どふせ派遣アルバイトか何かなのだらうが、接客係がコトバを知らないのは困る。


ロビーには、能州地震の義援金募金箱が置かれてゐたので、



帰りに非力ながら協力する。








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