迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

傳授の真価。

2020-10-09 18:18:00 | 浮世見聞記


兜の頂きにある穴を「天神座(てんじんざ)」と云ふ──

鎧兜を飾るとき、その穴に御幣を立てることもある神聖な部分である──

だから持ち運ぶ時、間違ってもその穴に指を掛けてはならない──


かつて私は大先輩から、さう親切に指導して頂ひた。

當時大阪に移り住んでゐた私は、東京へ戻ってもっと勉強しなくてはならないことを、この時に深く悟った。

だからこそ、「天神座」のことは鮮烈に印象付けられた。


その大先輩は、先月二十四日に天壽を全うされてゐたことを、今日の訃報で知る。



わが現代手猿樂に、實際に鎧兜を身に着ける作品はない。

が、さういふ設定の作品はある。

演者である私の心のなかには、しかと「天神座」がある。

せっかくあの時に分けて頂ひた本物の知識。


活かしてこそ、

御恩返し。






合掌



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