孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

AIロボットが人間に代わって仕事をする社会が機能するためには・・・・

2017-03-24 23:11:25 | 世相

(【http://jp.techcrunch.com/2017/01/20/20170119ai-software-is-figuring-out-how-to-best-humans-at-designing-new-ai-software/】)

ロボット活用で人間作業を代替
長崎・ハウステンボスに多くのロボットを活用する「変なホテル」という名前のホテルがありますが、千葉県浦安市にも2号店を開業し、経営側は今後この種のホテルを増やしていく方針とか。

****HIS、「変なホテル」100軒体制目指す大胆戦略 投資枠は最大2000億円、ホテル事業に本腰****
旅行会社大手HISがホテル業強化の姿勢を鮮明にしている。同社は3月15日、千葉県浦安市に「変なホテル舞浜 東京ベイ」(以下東京ベイ)を開業すると発表した。

会見したHISの澤田秀雄会長兼社長は「変なホテルは変化し、進化し続けるポリシーで作られたホテル。新しいビジネスモデルを世界に展開していきたい」と語った。

9種類、140体のロボットを投入
HISのグループ会社ハウステンボス(長崎県佐世保市)は、2015年7月に「変なホテル」初号棟(以下、初号棟)を開業。受付やクローク、室内清掃にロボットを活用した作りで話題を集めた。今回、東京ベイは2軒目のロボットホテルとなる。

東京ベイにも9種類、140体のロボットを投入。受付にはベロキラプトルのロボットほか、水槽の魚類ロボット、実物大のティラノサウルスの模型などを配置。全客室にもAIを搭載したコンシェルジュロボットを備えている。(後略)【3月20日 東洋経済online】
*******************

ロボットを活用と言っても、現在のレベルは“昨年秋に記者も初号棟に自腹で泊まってみた。ロボットを活用したとはいうものの、チェックインや部屋の空調・照明設定はタブレットで行い、荷物を運ぶポーターロボットも移動できるフロアが限られている。記者の主観ではあるが、HIS側が強調するほど、ロボットが活躍しているようには思えない。”【同上】ということで、現段階では物珍しさによる“客寄せ”効果を狙ったものようでもあります。

ただ、大規模ホテルの割に雇用者が少ないのは確かなようで、TV報道によれば、浦安市側には雇用対策の効果が限定的となることへの懸念もあるようです。

研究の現場でも、単純作業はロボットに・・・・という試みもあるようです。

****ロボットで働き方改革 実験の単純作業を代行へ*****
研究現場の長時間労働を少しでも減らそうと、九州大学がことし6月、実験に伴う単純作業を国内外の研究者から受注し、ロボットに任せる新たな拠点を設けることがわかりました。

文部科学省科学技術・学術政策研究所が2年前にまとめた調査では、自然科学系を中心に大学の助教の半数近く、ポスドクと呼ばれる非常勤の研究者の3割で、労働時間が週60時間以上となっていて、理系の研究現場では長時間労働が課題となっています。

こうした中、九州大学が、東京のロボットベンチャー企業、RBIとともに、国内外の研究者から単純作業を受注してロボットに任せる新たな拠点を、ことし6月に九州大学の生体防御医学研究所に設けることがわかりました。

拠点に導入されるのは、北九州市の安川電機が開発した2本の腕が自在に動き、物をつかむこともできるロボットで、プログラムを変更すれば、試薬を注入したり移動させたりといった、人が行ってきたさまざまな種類の作業を1台で代行することができます。

また、緊張や疲れで手が震えることなく、ミリ単位で24時間同じ作業を繰り返すことができるため、研究者を単純作業から解放し、研究時間の確保や家庭との両立を可能にしたいとしています。

九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授は「研究者が先のことを考える余裕や、プライベートな時間を持つことができるようになればと期待しています」と話しています。【3月19日 NHK】
******************

進化するAI
単純作業は人間よりロボットのほうが向いているというのは常識的でもあり、製造現場では以前から実現されていますが、今後私たちの生活・仕事のどれだけがロボットに代替されるかは、人工知能AIの発達次第でしょう。

AIへの注目は今に始まった話ではありません。
個人的な話になりますが、まだ会社勤めをしていた30年ほど前(“ワープロ”が活躍する時代で、個人用のパソコンはそれほど一般的ではなかった時代です)、AIや通信の技術革新の影響・重要性について職場の意識を高めるための取り組みを社員研修等で指導するように業務命令されたことがあります。

自分自身訳がわからないまま、いろんな資料など集めたりもしたのですが、その後、通信の方はあっという間にインターネット社会という形で実現しました。

人工知能の方は、当時は“翻訳”が代表的な作業でしたが、箸にも棒にもかからないレベルが続きました。
オンライン翻訳サイトも、ついこの前までは、「どうしてこんな低レベルなのか?」と不思議なぐらいの水準でしたが、最近のgoogle翻訳などは、格段に進化したように思えます。囲碁などでも人間を超えるレベルに達したことは周知のところです。

ようやく実効性のあるAIに向けた技術環境が整ってきたということでしょうか。
こういう技術は、いったん動き出すと、一気に進化する側面もあります。人間ではなく、人工知能プログラムが高度な人工知能プログラムを書けるようになれば加速度的に“進化”します。

****IBMが進める空気が読めるAI開発****
IBMワトソンは2011年にアメリカのクイズ番組ジェオパディに出場し、人間を差し置いて優勝したことで有名になったAIシステム。

それまでにチェス、将棋ではAIが人間に勝利していたが、これらはボードゲームでありゲームのルールを徹底的に教えこむことでAIを訓練できた。しかしクイズ番組は質問内容を的確に理解し、答えを見つける、というより人間の頭脳に近い作業である。

そのワトソン開発に携わったIBMのCTO、ロブ・ハイ氏がサンフランシスコで開催されたAIワールド・コンベンションでワトソンの現在についてのプレゼンテーションを行った。

コグニティブ・インテリジェンス
ワトソンはその後も進化を続けているが、現在IBMが目指す方向は「コグニティブ・インテリジェンス」だ。文字通り人間の認識力を備えたシステムの実現。

人間の会話を理解するだけではなく、そこから合理的な答えを導き、それに基づいた返答、会話への介入を行う。

このところ米国で急速に増えている、会話ロボット「チャットボット」の一種だが、テキストを通してではなく自然に人間の会話に加わり必要とされる作業を自分で見つけ出す、という点が大きな違いだ。(中略)【2016年11月12日 WEDGE】
*******************

こうしたレベルのAIを搭載したロボットが一般化すれば、いろんな仕事をロボットに委ねることも可能になります。

一番、確実な需要が見込めるのは“セックス用ロボット”でしょう。
眉を顰める向きもあるでしょうが、確実・膨大な需要は、他のAIロボット活用面における技術革新の大きな牽引力にもなります。

****人間とセックスするロボット、年内にも市場に*****
ロボットとセックスできる時代はすぐそこまで来ている──昨年末に英ロンドンで開催された、人型ロボット(ヒューマノイド)との関係に関する倫理基準について話し合う国際会議で、ある専門家はこう語った。
 
映画『エクス・マキナ』や米ドラマ「ウエストワールド」などを見ても分かるように、「セックスボット(sexbot)」と呼ばれるロボットのセックスパートナーは最近のSF作品では定番の題材だ。
 
だが一部の専門家たちは、セックスボットはもはやSF世界の話ではないと考えている。今年中には、人間のセックスの相手をするようにプログラミングされた、金属とゴムと樹脂製のセックスボットが現実世界に登場するというのだ。

「セックスボットの第一号の誕生に伴い、ロボットとのセックスは2017年中には現実になる」と、人工知能(AI)の専門家デービッド・レビー氏はロンドン大学ゴールドスミスカレッジで開催された「ロボットとの愛とセックスに関する国際会議」で語った。(中略)
 
■「あなたならロボットを恋人にする?」
一方、レビー氏は、論理的な展開として、次はロボットとの結婚も起こり得ると語った。「ロボットとのセックスが普通になるにつれて、ロボットとの結婚は非常に現実味を帯びてくるだろう」として、早くて2050年にはロボットとの結婚を考える人々も出てくるはずだと主張する。(中略)
 
しかし、今のところはまだ、多くの人々にとってヒューマノイドとの性的な関係は現実離れしたもののようだ。
シティ大学ロンドンとマレーシアのイマジニアリング研究所が共同で行った試験的な調査で、セックスボットに愛情を感じ得るかなど、セックスボットの捉え方に関するアンケートを行ったところ、多くの人が人間がロボットに引き付けられる可能性はあるとの見方を示した。

だが、シティ大学ロンドンでキッセンジャーの開発に携わった博士課程の学生、エマ・ヤン・ジャン氏によれば、「あなたならロボットを恋人にしますか?」という質問には大半の人が「ノー」と答えたという。
 
レビー氏が示唆するように人間とロボットとの愛を受け入れたとしても、いざ自分がロボットと付き合うかと言えば、そこまでの変化は当分起きそうにないとホール氏は言う。
 
一方で、AIに大きな期待を寄せる人々は、今年のいつごろ新世代のセックスボットが市場に出るのかと熱い視線を送っている。【1月17日 AFP】
************************

AIロボットに仕事を奪われる?】
「セックスボット(sexbot)」はさておき、仕事・生活におけるロボットが一般的になれば、「じゃ、人間は何をすればいいのか?」という話にもなります。

ロボットに仕事を奪われて失業する・・・という話も、現実味を帯びてきます。

****22世紀仕事の80%はAIが行う****
11月7-9日、サンフランシスコで開催されたAIワールド・コンベンション。AIの発達は人類の未来になにをもたらすのか、というのは多くの人が関心を持つ分野だろう。11月7日、コンベンションではパネルディスカッションとマッキンゼーの研究者による発表を通し、この点についての分析が行われた。(中略)
 
AIがもたらす未来
ここではAIがもたらす未来の利点が主題となった。パネリストによる主張では AIはヒューマニティに大きな役割を果たす、という。

まず、AIの導入により煩雑な事務手続きが省ける。その分資源の節約に役立つ、という利点がある。従来紙に印刷していたことをデジタル上で処理できることにより、自然資源が節約できる。同時に意思決定までの時間が大幅に短縮できることにより、電気などの資源節約にも役立つ。
 
次に、投資に対するリターンの向上が見込めることで、企業の利益率が改善する。これが従業員の給与にも反映し、全体として豊かな社会の構築につながる。

もちろんAI導入により従業員のカットも考えられるが、この点に関しては「政治的な解決」が望まれる。例えば米国でフルタイム勤務とされるのは週に40時間の労働だが、政府主導でこれを30時間とする、ただし賃金は減額しない、などの労働環境改善により、「AIに仕事を奪われた失業率の増大」を防ぐ可能性がある。
 
もっともAI導入はまず低賃金の仕事にインパクトを与える。たとえば、ライドシェアサービスのUberが商業用自動運転に力を入れているが、この結果トラックドライバー、宅配サービスのドライバーなどが職を失う可能性がある。またファストフードの店員がバーチャルキオスクに置き換えられる、銀行の窓口業務もしかり、など、導入当初は失業率の増加につながる可能性はある。
 
一方で世界の人口は先進国を中心に高齢化している。この社会に対応するために、例えば介護ロボット、あるいは高齢者のコンパニオンという形でのAI 導入は今後の成長が見込める分野でもある。
 
また教育の現場でも、AIによる学生指導、カリキュラムのアシストなども可能性がある分野だ。企業ではデータを最大限に活かすことで意思決定をたやすくし、利益の増大につなげる、企業が抱える問題点の指摘、分析を行う、とAIに期待できる点は多い。

いかに常識を学ばせるか
問題は「いかにAIに常識を学ばせるか」という点にある。折しも米国では大統領選挙投票日でもあり、「次の大統領候補はAIになると思うか」という質問が飛び出すほど、人間に近づいたAI への興味は高い。業界にもテスラCEOイーロン・マスク氏のように「AI恐怖症」を隠さない向きもある。

マッキンゼーの研究者、マイケル・チューイ氏によると、大企業のCEOのような複雑かつ責任の重い仕事でも「AIに置き換えられないことはない」という。もちろんそれが実現するには数十年かかるだろうが、AIによる職業置換はエントリーレベルの仕事から始まり、最終的には研究職、データ・サイエンティストでさえAI が対応できる社会は来る、という。

チューイ氏は「おそらく2100年には80%の仕事はAIが行えるようになるだろう」と予測する。
 
2016年のG19諸国のGDP成長を見ても、全体平均では3.6%の成長、うち雇用の増加に伴うものは1.7%、生産性の向上によるものが1.8%。この数字は数年後には雇用の増加部分が1%以下になる、と見込まれる。つまり先進国はAIによる効率の増大でしか経済成長が見込めない時代はすぐそこまで来ている。(後略)【2016年11月10日 WEDGE】
*********************

ちなみに、機械・AIが奪う職業ランキング(米国)の上位15位は、小売店販売員、会計士、一般事務員、セールスマン、一般秘書、飲食カウンター接客係、商店レジ打ち係や切符販売員、箱詰め積み降ろしなどの作業員、帳簿係などの金融取引記録保全員、大型トラック・ローリー車の運転手、コールセンター案内係、乗用車・タクシー・バンの運転手、中央官庁職員など上級公務員、調理人(料理人の下で働く人)、ビル管理人・・・だそうです。【2016年6月11日 IDEASITY】

現在の「移民が仕事を奪った」という憎しみが「AIロボットが仕事を奪った」という憎しみに変わるのでしょうか?イギリス産業革命当時の、機械打ち壊し運動(ラッダイト運動)をも連想させます。

【「生きがい」「貢献感」にも配慮した「分配」のソーシャルデザイン
そこで重要になるのが「分配」であり、具体的には“ベーシックインカム”のような制度が試行されています。

****AI時代の大問題、労働のない社会は成立するのか*****
カギは「分配」のデザイン
JBpressの記事「人工知能に奪われない最後の2つの仕事とは」にショックを受けた人は多いのではないか。なにせ「人間に残される仕事はイノベーションとコミュニケーションの2つしかない」というのだから。もしその仕事に就けなかったとしたら、失業者になってしまうということになる。(

今の漫才師を見ても、売れるのは一握り。売れ続けるのは奇跡。コミュニケーションで食べていこうとしても、漫才師と同様、食べていくのは相当に難しいだろう。イノベーションにしたって、現時点でも成功者は一握り。つまり、「ほとんどの人が失業する」というご託宣を受けた印象だ。

失業者だらけの社会は成り立つか
そこでふと、不思議に思う。ほとんどの人が失業した社会って、本当に成立するのだろうか?

ドローンが運送業をするようになり、自動運転でタクシーの運転手も要らなくなり、多くの企業で人工知能やロボットが働いて人がいなくなり、失業者だらけの社会。

失業者にはお金がない。お金がないから買えない。せっかく自動化して商品をこれまでになく安く提供できるようになっても、その安い商品さえ購入できない人ばかり。すると、その自動化システムを維持するだけの売り上げも確保できないのではないか。

コストカットしようとして雇用を減らしたら、商品を買ってくれるはずのお客さんもいなくなるという皮肉。自動化社会は、もしかしたら自滅システムなのかもしれない。(中略)

ならば、「労働」していなくてもお金を配る仕組みを作らざるを得なくなるだろう。働いているかどうかを問わず、一定のお金を配り、みなさんに消費を続けてもらう。ベーシックインカムというやつだ。

お金を渡す条件が「労働する義務」から「消費する義務」に変わるという、現在の私たちにはちょっと想像のつかない大転換となる。(中略)

「分配」が社会を運営する基礎
食糧問題の視点から見ると、「分配」という考え方はカギになる。(中略)食糧危機は、食糧生産の絶対量の不足で起きるというより、分配がうまく機能しないことによって起きるのだ。

これまでの経済システムは、「労働」を分配の条件としてきた。しかし人工知能が労働を消してしまったら、分配不全による食糧危機が発生する恐れがある。(中略)

資本主義社会は「労働」を分配の対価として位置づけることで成功してきた。だが、近年は一部の投資家や起業家にだけお金が集中し、分配不全が起き始めている。このままでは、治療を施さない重い糖尿病患者と同じになってしまうだろう。

新しい「分配」のデザイン
新しい時代の「分配」は、「労働」以外のどんな根拠で行えば、機能不全に陥らずに済むのだろう? ここからは「ソーシャルデザイン」の仕事になる。そしておそらく、ソーシャルデザインには「生きがい」という視点が重要になるだろう。

自動化社会では労働が大幅になくなってしまうから、誰かの役に立つという「貢献感」を得にくい。誰かの役に立っている、だから私は生きていて構わないんだ、私の居場所はここなんだ、という「居場所感」も持ちにくい。

それらがないと、たとえベーシックインカムで生きていくことができるとしても、なんだか生きる甲斐がない。人間というのは「パンのみに生くるにあらず」という、実に面倒くさい生き物なのだ。

貢献感、居場所感を確保しつつ、生きるのに十分な食料を分配し、行き渡らせる。これらの課題にどう辻褄を合わせて社会を設計するのか。人間心理を知悉した、ソーシャルデザインを本気で考えなければならない時代に来ているのかもしれない。【3月24日 篠原 信氏 JB Press】
******************

ベーシックインカムは単に収入を保証するだけでなく、生活のためではなく、貢献感、居場所感を得るための労働をも可能にする制度である・・・という主張(本当かどうかは別にして)については、1月17日ブログ“ベーシックインカム 「人は何のために働くのか?」 フィンランドで試験的導入開始”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170117でも取り上げました。

AIロボットの問題点なども含めて、話はここからですが、例によって長くなりすぎたので、また別の機会に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

徹底される“日本流のサービス”の生む“疲れる社会” “内向き志向”世代の「今の幸せ」

2016-11-30 23:20:36 | 世相

(写真はANAのHPより 私は最近ANAには搭乗していませんので、本文内容とは一切関係ありません。)

【“ガラパゴス化”する感もある心地よい日本流のサービス
一昨日ミャンマー旅行から戻りましたが、その帰国便での出来事などから“中国系航空会社の格安航空券の“チャイナリスク” 乗客サービスへの意識の欠如”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161128を書きました。

その際、“中国で遅延が減少しない根底には、乗客の不便を解消したいという思いが空港・航空会社スタッフに欠如していることもあるのではないでしょうか。”といったことも書きました。

逆に言えば、他者に迷惑をかけないという思い、顧客サービスの徹底、「お客様は神様です」といった行動は、日本社会の美徳として中国でも一定に認識されつつあり、連日その類の記事が報じられています。

実際、帰国して国内フライトや新幹線などで日本流のサービスに接すると、「日本という国はなんと優しい穏やかな、配慮の行き届いた国なんだろうか・・・」としみじみ感じます。

****日本のコンビニに見た「顧客を絶対視するサービス精神」=中国報道****
日本を訪れた中国人旅行客は、日本の百貨店やホテルなどで提供されるサービスを口々に絶賛する。だが、中国人からすれば、日本のサービスの質の高さは決して百貨店やホテル特有のものではなく、コンビニエンスストアのように日常に密着した場所でも実感することができるという。

中国メディアの今日頭条は28日、日本のコンビニは「品揃えが十分で鮮度管理も完璧であり、店内は清潔であるうえ店員の接客態度もすばらしい」と伝え、これらは「顧客を絶対視するサービス精神」があるからこそ実現する要素であると絶賛している。

記事は、日本各地にあるコンビニはすべてが顧客のニーズに基いた経営がなされていることを紹介。例えば、冬に冷麺を食べたいと思っても中国のコンビニでは販売されていないと指摘し、それは「冷麺は夏に食べるもの」という固定概念があり、顧客のニーズを真剣に考えていないためだと論じた。

だが、日本のコンビニは「冬になると屋内は暖房によって温度が上がり、冷たい食べ物を求める人も出てくる」ということまで考え、冷たい食べ物もちゃんと販売されていると紹介し、「こうした品揃えは顧客のニーズを最優先するサービス精神があってこそ」だと論じた。

また、季節に応じて商品ラインナップを変化させるのも日本のコンビニの凄さであり、「顧客のニーズの先を読み、顧客のニーズが顕在した時にはすでに販売されているというのも、まさに顧客志向であり、サービスの質の高さを示す事例」であると称賛した。

中国にももちろんコンビニは存在するが、まだ顧客志向や徹底したサービス意識が低いためか、日本のように「生活に密着した、なくてはならない存在」となってはいないようだ。

記事も「中国人の仕事は心がこもっていない」、「どのような仕事であっても脳を使う必要がある」と指摘しており、製造業でも小売業でも成功するためには顧客に質の高い消費体験を提供するためのサービス精神が必要不可欠であると論じている。【11月30日 Searchina】
********************

****日本を訪れれば誰だって・・・中国人が日本を好きになる理由=中国報道****
反日感情を抱きつつも、日本を訪れたことをきっかけに対日観が一変したという中国人は少なくない。なかには、嫌いだった日本が「好きになってしまった」という中国人もいるようだが、中国メディアの今日頭条はこのほど、中国人が日本を好きになる理由について考察する記事を掲載した。

記事は、「日本を訪れたことのある中国人は誰もが日本を好きになってしまう」と伝えつつ、その理由を考察。

まず1つ目に挙げたのは「日本の清潔さと日本人の親切さ」だ。特に「日本人は他人に迷惑をかけることを嫌う一方で、他人に対しては非常に親切」だと称賛し、助けを求めている人には手を貸すことを厭わないと論じた。(後略)【11月29日 Searchina】
******************

ただ、心地よい日本流のサービス、心遣いではありますが、ときに「そこまでやる必要があるのだろうか?」という戸惑い・疑問も感じます。

空港に到着した際の機内アナウンスで「お席から立ち上がられる際には、頭上の荷物入れにお気を付けください」云々、空港ではゲートを出入りする女性スタッフが待合室の乗客に一礼する様子(スーパーの店員がバックヤードに戻るとき、店内に一礼するのと同じです)など。

一番驚いたのは、国内便機内でCAが飲み物を乗客に配る際でした。
写真入りのメニューを乗客に見せて「どれになさいますか?」と尋ねるのは、外国航空会社ではあまり見ない実に便利なサービス・配慮です。

驚いたのはそのあとで、頼んだ飲み物を受け取るときに聞いた「○○でお間違いなかったでしょうか?」という言葉でした。普段よく聞く言葉であり、自分自身も使いますが、機内サービスでそういった言葉を聞くのは初めてで驚きました。

何十人もの乗客に手早くサービスしながら、そこまで気遣いするというのは大変なことだと感じ入ったのですが、同時に、そこまでの気遣いが必要なのだろうか?という思いも。

なんだか、昔より一段とこうした“日本流のサービス”の徹底が進んでいるように思われます。

もちろん“おもてなしの心”とか行き届いた顧客サービスというのは素晴らしいことで、日本社会が誇るべき美点ではありますが、あまりにそこにのめり込んでいくと、そのことが自己目的化し、早さ・正確さ・効率などを求めている顧客ニースとやや乖離していき、日本特有の“ガラパゴス化”の懸念も感じた次第です。

まあ、何事についても徹底しないと気が済まない・・・というのも、日本社会の特性のひとつではありますが。

【“疲れる社会”の過労死や無理な24時間年中無休
常に心づかい・配慮を要請される社会は、正直なところ“疲れる社会”でもあります。
その極端な事例が過労死でもあります。

“花形企業”とも思われていた電通で起きた過労自殺について、中川淳一郎氏(ネットニュース編集者)は、その「お客様は神様」という日本式発想に疑問も呈しています。

****お客様は神様」変えよう****
電通で起きた過労自殺について、詳細を知っているわけではありません。でも、同じ広告の世界に身を置いた人間として、業界全体の構造的な問題は大きいと思います。
 
広告業界には、「お客様は神様」という文化が染みついている。最大手の電通も、本質は「客に忠義を尽くす出入り業者」でしかないと感じます。クライアントにいかに気に入られるかがすべてです。
 
少し重要な打ち合わせなら、チーム全員で行きます。とにかく数が多い方がアピールになる、そんな発想がある。十数人で行っても、実際にしゃべるのは4、5人で、若手はその場にいるだけ。必要もないのに付き合わされるから、どうしても長時間労働になってしまうのです。
 
ぎりぎりにクライアントから「ちょっと表現を変えて」などと求められても、「無理です」とは言えない。写真だって、ソフトでいくらでも加工できる。技術が発達すれば仕事は楽になるはずなのに、逆にやることは増えている。
 
広告の世界は、一般の人からのクレームを非常に恐れます。ネットの普及で、ものすごく増えました。現場は、法務部やリスク管理部門から厳しくチェックされる一方で、上司のおっさんからは「最近の若いやつは思い切ったことをしない」とか言われてしまう。板挟みですよ。
 
世間的には「いい勤め先」だと見なされる大手広告会社は、給料もいいし、社会的地位も高く、モテます。でも、むしろブラック企業と社会から認定されたほうがいいと思う。そうすれば「どうすれば長時間労働を減らせるか」などと、現実的な話になる。
 
そこで重要になるのが、同じ広告業界でも、下請け企業の過酷な実態にきちんと目を向けることです。大手に比べて下請けは給料が低く、労働時間はもっと長いのが普通です。でも「お客様は神様」という文化は共通だから、クライアントや元請けにかなり気をつかわなきゃいけない。
 
10月にブログで「下請けであるPR会社や制作会社の若者の疲弊にも目を向けてほしい」と書いたら、「あの部分に救われました」といろいろな人から反響がありました。長時間労働を、電通の問題だとクローズアップすると、業界のいちばんブラックな部分が覆い隠されてしまいます。
 
解決策は、コスト意識を持つこと。広告会社は必要以上の数の人間はチームに入れず、下請けまでを含めて、実際の働きに応じて利益を配分する。下請けの若手が書いたコピーが採用されたのなら、その人がたくさんお金をもらえるシステムにするのです。
 
「お客様は神様」という意識と下請けの過酷さの両方を変えないと、どの業界でも長時間労働の改善にはなかなかつながらないと思います。【11月29日 中川淳一郎氏 朝日】
*********************

フランスなどでは日曜営業に対して働く側からの強い抵抗があるようですが、その対極にある日本の「24時間年中無休」にも“無理”があるのでは・・・という指摘も。

****24時間営業」から見る、日本のサービスの極致 そしてその背後にある「無理」=中国メディア ****
先日大手ファミリーレストランチェーンのロイヤルホストが、来年1月までに24時間営業を廃止することを発表したことが伝えられ、24時間営業の意味や是非を巡る議論に火を着けた。

日本の小売業界や外食業界はこれまで営業時間の拡大を進めてきたが、「長い時間営業していれば儲かる」という時代は、どうやら過去のものになりつつあるようだ。

中国メディア・今日頭条は24日、「24時間年中無休に見る、日本の極致のサービス」と題した記事を掲載した。記事は決して24時間年中無休という日本のサービス業界を手放しで賞賛しているわけではなく、むしろ「無理を強いてきたのでは」という観点に立って論じている。

記事は、ロイヤルホストが来店客の変化に基づき、24時間営業の廃止を決定し、定休日の設定まで検討課題となっているとしたことを紹介。人びとの生活習慣が変化し、深夜の客源が減り続けると同時に、労働力不足による賃金上昇が経営を圧迫し始めていると解説した。(中略)

記事は、このような営業形態は「極致」と称される日本のサービスの一部であるとの見方を示す一方、「このような日本式サービスの背後にあるのは、巨大な生理的、心理的圧力という代価である」と解説。「極致」を求めるサービスにより、過労死などといった一連の社会問題も引き起こしていると説明した。

そして、これからサービス業が大きな発展期を迎え、その進むべき道を模索している最中の中国にとって「日本の経験は、研究し参考にすべき価値が非常に大きいのである」と論じた。

ヨーロッパでは、商店が夕方にシャッターを下ろすのが一般的。商売っ気がないのではなく、夜は家族との時間を楽しむべし、という社会的観念によるものだ。

文化や習慣の大きく異なる日本でもそうしろ、というのはあまりにも乱暴でナンセンスな話だが、24時間営業や年中無休が決して「当たり前」ではないとの認識を持つのは悪いことではない。

日本では年々正月休みが簡素化していく。一方、中国では春節(旧正月)期間中に営業する店は、外国人経営の店や外資系ファストフード店やコンビニエンスストア、そして大型ショッピングモールを除けばわずかだ。この時期、軒並みシャッターが閉まる光景に不便さを感じる一方で、「休む時は休む」ことに対する羨ましさも覚えるのである。【11月28日 Searchina】
*******************

自国の居心地の良さを重視する「内向き」志向
更に気になるのは、昨今“日本流のサービス”が一段と強調されるようになっている傾向と、日本人、特に若い世代の自国の居心地の良さを重視する「内向き」志向の間には、何か共通の背景があるのでは・・・ということです。

****奔放から内向へ・・・日本社会はどうしてしまったのか? =中国メディア****
近ごろ、日本人の「内向き志向」や留学離れが、しばしば議論のテーマになっている。一方、国外旅行者や留学生が急増し、富豪による外国移住や外国不動産購入ブームが起こるなど、中国社会は今まさに、「外向き」のエネルギーに満ちている。

中国メディア・環球網は17日、「奔放から内向へ 日本はどうしたのか」とする記事を掲載した。記事は、国外に出て行こうとせず、国内に引きこもる日本の若者に対して、日本国内の学者から将来の経済発展や科学研究能力を憂う声が出ているとしたうえで、「30年以上前には外の世界に対する好奇心に満ち溢れ、世界各地を奔走していた日本人が、どうしてこれほどまでに内向きになってしまったのか」と疑問を提起した。

そして、中国社会研究院日本研究所の専門家が「戦後日本社会の精神状態は、経済発展の軌跡と不可分である」とし、1990年代にバブル経済が崩壊し低成長時代に入ったことで、超富裕層を除く市民の生活水準が低下、これに伴い海外に向けた投資や消費も減り、それまで急増していた海外留学者数も増加にブレーキがかかり、21世紀に入ってからは減少に転じたと解説したことを伝えた。

さらに、バブル崩壊により、それまで日本に充満していた活力や野心が消え去ってしまい、その代わりに、疲弊や将来に対する恐れを抱くようになった、長期にわたる西洋化を経てもなお、日本には保守的な「島国文化」が根強く残っているなどと論じている。

その一方で、同研究所の専門家が、「国際社会における地位の変化とも直接関係している」とし、いわゆる「失われた20年」の中で日本は社会資本の蓄積、技術的な富の獲得、ソフトパワーの充実を進めるとともに、自らの政治や安全保障における戦略的な自主性に関心を持つようになったのだ、と説明したことを併せて紹介。日本人の「内向き志向」は必ずしも退廃的なものではないとの見方を示した。

「外向き」のエネルギーに満ちている今の中国社会から見れば、そのエネルギーが一段落している日本の現状は「衰退」と見えるのかもしれない。

「内向き志向」にはネガティブな部分もあることは否めないが、一方で自国の良さ、居心地の良さを感じている人が増えている、というポジティブな捉え方もできるのではないだろうか。【10月22日 Searchina】
******************

【「希望格差」の国における「今の幸せ」】
“自国の良さ、居心地の良さを感じている人が増えている”・・・・確かに表立った現象としてはそういう流れがありますが、額面通りに受け取っていいのか?

将来に展望が開けていないがために、「今の幸せ」にしがみついている・・・という見方も。

****新卒採用で人生が決まる、日本は「希望格差」の国****
<将来に「希望がある」と感じる日本の20代の割合は、他国と比べると格段に低い。なかでも男性の正規・非正規の間の「希望格差」が突出している>

人は将来を展望して生きる存在だ。今の状況が思わしくなくても、将来に展望が開けていると信じられるならば、それほど苦痛には感じない。前途ある若者の場合は、特にそうだ。

世論調査のデータによると、日本の若者の生活満足度が高まってきている。昨今の若者の厳しい状況を思うと違和感があるが、それは将来に展望が開けていないことの裏返しでもある。「今日よりも明日がよくならない」と思う時、人は「今は幸せ」と答えるのだという(古市憲寿『絶望な国の幸福な若者たち』講談社、2011年)。

逆に言うと、「今日よりも明日がよくなる」という展望が開けているなら、「今は不幸」と感じるとも言える。これからの見通しが開けているのに「今が幸福」と言いきってしまえば、将来の明るい展望に蓋をしてしまうことになるのだから。

未来を担う若者の意識を読み解くには、「希望」に着眼することが重要だ。しかし日本の若者は、他国にくらべて希望を持っていない。20代のうち、「希望がある」または「どちらかといえば希望がある」と答えた人の割合は、日本が54.6%、韓国が87.4%、アメリカが88.9%、イギリスが88.1%、ドイツが80.5%、フランスが80.7%、スウェーデンが89.2%となっている(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。日本の比率は格段に低い。

では、希望を持っていないのはどの層か。20代のサンプルを、性別と「従業上の地位(正社員か否か)」で分けて、グループごとの希望率を計算してみると<表1>のようになる。ここでの分析対象には、在学中の学生は含んでいない。

日本の数値は際立って低く、女性よりも男性、正社員よりも非正社員が希望を持っていない。男性では正社員と非正社員の差が大きく、後者の希望率は3割しかない。性別の役割観が強い日本では、低収入の非正規雇用男性は、結婚などの展望が持ちにくいためだと思われる。まさに「希望格差」だ。

正社員より非正社員の希望率が低いのは他国も同様だが、日本ほどの落差はない。ヨーロッパ諸国では、キャリアが非正規雇用から始まり、徐々に正規雇用に移行していくパターンが主流というが、こうしたキャリアパスの違いにもよるだろう。新卒時に正社員になれるかどうかが重要な日本とは異なる。

「希望が持てない」日本の若者は、自殺率も高い。1990年では主要国で最も低かったが、この四半世紀の間にトップになっている。「失われた20年」は、若者の人生に大きな影を落としている。(後略)【11月30日 舞田敏彦氏(教育社会学者) Newsweek】
*********************

そもそも、若い世代が「今は幸せ」と口にするというのが、私のような古い世代にはなんとも“奇妙なこと”に思えます。

私が若い頃は、若い世代にとって現実世界は矛盾に満ち、自分の受入を拒む“対峙すべき存在”であるという感覚が“常識”でしたので・・・。もちろん、現実世界に飛び込み生きて行かなければならない・・・そこに悶々とした葛藤がありました。

****私達の望むものは****
私達の望むものはあなたと生きることではなく、私達の望むものはあなたを殺すことなのだ
今ある不幸にとどまってはならない まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ
私達の望むものは・・・・【岡林信康「私達の望むものは」】
****************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新技術の話題 「道路をまたぐバス」「セックスロボット」「自動運転車」

2016-08-06 22:11:57 | 世相

(巴鉄(はてつ)1号と名付けられた立体バスの試作車 自動車は「バス」の下をくぐりぬけて走ります 【8月5日 Newsweek】)

【「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明」だが、とにかく試験走行実施
4月15日ブログ「サウジアラビア  変わる社会? エジプトとの間で「紅海に橋を建設」で合意 ついでに領土問題も」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160415で、余談として、中国の世界一長い橋「丹陽-昆山特大橋」(全長165km)や「青島膠州湾大橋」(海上部分約27km)に触れたことがあります。

安全性、環境への影響、住民との問題、経済効率等々、いろんなことはあるのでしょうが、(中国経済崩壊の危険性とか、社会が抱える様々な深刻な問題といった話はさておき)こうしたものを作ってしまう中国経済・社会の活力というか、バイタリティーというか、かつて黒四ダムなどに挑戦していた日本社会が失いかけているものを感じます。

日本は東京五輪のスタジアム建設で揉めている状況ですから。もちろん、それは社会の成熟を示すものでもあり、なんでもかんでもつくればいい・・・という話ではありません。物事にはすべて功罪の二面性があります。

ただ少なくとも、中国の技術水準にについて、「パクリ」「安全性無視」云々の悪いイメージが先行しますが、それだけでもないことは留意する必要はあるでしょう。

そんな中国らしさを感じさせる「新技術」が「道路をまたぐバス」の話題。

****道路をまたぐバス」、中国で、試験走行を実施****
交通渋滞を緩和させる目的で、複数車線をまたぐ立体構造の大型バス「トランジット・エレベーテッド・バス」(TEB)を走らせる構想が、中国で進められている。

このほど試験車両「TEB-1」が完成し、テスト走行を行った。中国国営の新華社通信が8月2日に報じ、米ニューズウィークをはじめ多くの国外メディアも取り上げている。

1台で300人を輸送
報道によると、TEB-1は1両のみの編成で、全長22メートル、全幅7.8メートル、車高4.8メートル。上部の車内には300人の乗客を収容できるという。
 
下半分はトンネル状になっているため、前方の道路が渋滞していても、TEBは止まらずに運行できる。逆に、利用客の乗降時にTEBが停車しているとき、後続の乗用車は車線を変更することなく車体の下を通り抜けられる。
 
TEB-1の試験運行は、河北省秦皇島市で実施された。今回は300メートルの直線道路に設置された軌道の上を走行。なお、現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという。

渋滞を30%緩和、建設費は地下鉄の5分の1
TEBテクノロジー社でチーフエンジニアを務める宋有洲(ソン・ヨウジョウ)氏は、「TEBは交通渋滞を30%緩和できるうえに、建設費も地下鉄を新設する費用の約5分の1で済む」と主張している。
 
TEBの構想は2010年、北京国際ハイテクエキスポで披露され、国際的に広く知られるようになった。新華社によると、ブラジル、フランス、インド、インドネシアの政府がすでにTEBに興味を示しているという。
 
ニューヨークタイムズは5月に掲載した記事で、TEBテクノロジーが秦皇島市のほかにも、南陽、瀋陽、天津、周口の4市と、軌道の敷設を含む試験プロジェクトを実施する契約を結んだと伝えている。【8月5日 高森郁哉氏 Newsweek】
******************

建設期間も地下鉄が5〜6年かかる距離を巴鉄は1年もあれば完成でき、また、クリーンエネルギーを動力として使い、ガソリンを使うバス40台分のエネルギーが節約できるとも。

小池東京都知事は総2階建て車両(駅のホームも2層化)で「満員電車ゼロ」を提唱されていますが、それ以上に非常に大胆・ユニークな発想・技術です。

何がすごいといって、「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという」という試作品をとにかく作ってしまうところがすごいです。

実現可能性は今後の話ですが、今日はそうした「新技術」の話題から。

【「人工知能が人の命を救った国内初のケース」】
AI(人工知能)については、数十年前から期待されてきましたが、囲碁の名人に勝てるようにもなって、ようやく実用化の兆しも出てきたようです。

****人工知能 病名突き止め患者の命救う 国内初か****
東京大学医科学研究所が導入した2000万件もの医学論文を学習した人工知能が、専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病を僅か10分ほどで見抜き、治療法を変えるよう提案した結果、60代の女性患者の命が救われたことが分かりました。

人工知能は、このほかにも医師では診断が難しかった2人のがん患者の病名を突き止めるなど合わせて41人の患者の治療に役立つ情報を提供していて、専門家は「人工知能が人の命を救った国内初のケースだと思う」と話しています。(中略)

このうち60代の女性患者は当初、医師から「急性骨髄性白血病」と診断されこの白血病に効果がある2種類の抗がん剤の治療を数か月間、受けましたが、意識障害を起こすなど容体が悪化し、その原因も分かりませんでした。

このため、女性患者の1500に上る遺伝子の変化のデータを人工知能に入力し分析したところ、人工知能は10分ほどで女性が「二次性白血病」という別のがんにかかっていることを見抜き、抗がん剤の種類を変えるよう提案したということです。

女性は、治療が遅れれば、免疫不全による敗血症などで死亡していたおそれもありましたが、人工知能が病気を見抜いた結果命を救われ、無事退院しました。

こうした病名の診断は、現在、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っていますが、データが膨大なため必ずしも結論にたどり着けるかどうか分からないということです。(中略)

こうした医療分野での人工知能の活用はアメリカで先行していて、すでに複数の病院で白血病や脳腫瘍の治療の支援などに使われています。

広がる活用
人工知能の活用は、自動運転などの注目技術に加え、企業の人事や経営判断、絵画や小説といった創作活動など幅広い分野に広がろうとしています。

このうち自動運転への応用については、トヨタやホンダが人工知能専門の研究拠点を設けるなど、実用化に向けた動きを本格化させているほか、開発をリードするアメリカでは運輸省が人工知能をドライバーとみなす判断まで行い、人工知能を受け入れる環境の整備も進み始めています。

また人工知能は、将来的には私たち一人一人の仕事にも大きな影響を及ぼす可能性が指摘されています。

10年から20年後には今、日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替が可能になるとする報告もあり、すでにコールセンター業務の支援など一部の業種への導入が進められているほか、採用活動など企業の人事や、経営判断にまで人工知能を活用する計画もあります。

さらにこれまで機械が人に代わって行うのが難しいとされてきた、「創造力」の世界にも人工知能の波は押し寄せています。囲碁では、プロ棋士に勝利したほか、絵画などの芸術作品から小説の執筆に至るまで、その活用の可能性は広がりつつあります。【8月4日 NHK】
*****************

医療など専門知識をサポートする技術としてのAI利用は、それこそ数十年前から提唱されてきましたが、今になってようやくその「活躍」が報じられるということは、逆に言えば、それだけ実用化が難しいということでもあるでしょう。

体調が悪いとき、その症状をネット検索すると、いかにもそれらしい難しい病気がたくさん出てきますが、実際は翌日になったら症状はなくなっている・・・というのはよくある話です。

単に、そうした症状をインプットすれば病名が決まるという話でもありませんので、素人がAIに相談して診察してもらう・・・というのは、まだ遠い先の話でしょう。

【「セックスロボット」】
身近な生活場面でAI技術の活用が「期待」されるのはロボットへ応用でしょう。
下世話な話で恐縮ですが、男性としては「セックスロボット」というのはやはり興味をひかれます。

****セックスロボット】数年以内に「初体験の相手」となるリスク、英科学者が警鐘****
英シェフィールド大学で人工知能(AI)とロボット工学を専門とするノエル・シャーキー名誉教授が、数年以内に普及するセックスロボットが青少年の「初体験の相手」になる場合、深刻な悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らした。

10代の人間関係に悪影響を及ぼす
シャーキー教授は、チェルトナム科学フェスティバルの「Robots: Emotional Companions?」(ロボットは心の友?)と題された討論会に登壇。セックスロボットの分野が適切に規制されない場合、「10代の若者がヒューマノイドを相手に童貞や処女を失うリスクがある」と訴えたと、英テレグラフなどが報じている。

かつて国連のロボット工学顧問を務めたシャーキー教授によると、韓国と日本の少なくとも14社が、「子供の世話」用のロボットを製造販売。セックスロボットの性能が向上すれば、数年以内に同分野へ参入する可能性が高いという。

なお、以前に「年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁止を呼びかけ」という記事で取り上げた米新興企業トゥルーコンパニオンの女性型「Roxxxy」(ロキシー)と男性型「Rocky」(ロッキー)は、現在それぞれ9995ドル(約104万円)で販売されている。今後参入するメーカーが増えれば、当然価格は下がっていくだろう。

同教授はこう述べている。「私が心配するのは、本質的に中身がコンピューターの相手と、人々が絆を感じたり関係を持ったりすること。もしそれが、性的な初体験の相手だったら? 反対の性に対してどう考えるようになる?」(後略)【6月17日 Newsweek】
*****************

個人的には、およそ人類の歴史は、必要性の問題がクリアされるにつれて、群れ社会から大家族、核家族と次第に小規模化し、現在は「結婚しない若者」なども増え、将来的には「個人」に細分化していくのではないかと考えています。

その流れにおいて「セックスロボット」は当然に出現しますが、将来的に高度なAIを備えた「セックスロボット」が実現すれば「家族の崩壊」を加速させることにもなるのではないか・・・とも考えています。「東京エレキテル連合」の「朱美ちゃん」ですね。当然、セックスだけでなく、話し相手にもなり、家事もこなすアンドロイドです。

もちろん「ロボット」相手の“人間関係”の問題性は多々ありますが、なんだかんだ言っても生身の人間を相手にするより楽ですから。

おそらく、いろんな問題があっても“果敢に挑戦する”というか、“儲かるなら何でもつくってしまう”中国あたりが大量生産してくれるのではないでしょうか?

【「AIの暴走・反乱」は?】
そうなると、当然のごとく出てくる問題が「AIの暴走・反乱」の話です。

****グーグル、人工知能の暴走を阻止する「非常ボタン」を開発中****
人工知能(AI)が人類の敵になることへの懸念を表明する著名人が増えている。

こうした懸念に応え、グーグルは、AIが人類に反逆しそうな場合に人為的な操作で回避する「非常ボタン」のような仕組みを開発中だと発表した。(後略)【6月10日 Newsweek】
******************

ただ、進化したAIが素直に「非常ボタン」でストップされるのを座視するだろうか・・・という点については、“将来的にAIが非常ボタンを無効化する方法を学習しないよう、手動による中断操作を偽装して、AIが自らの判断で挙動を変更したように「思い込ませる」仕組みについても説明している。”【同上】とも。

それで“謀反を起こした”AIに対抗できるか・・・・SF小説・映画の世界の話が現実のものになるかも。

【「自動運転」車に問われる「究極の選択」】
すでに実用化テストが始まっている技術が「自動運転」
今後、高齢化社会がどんどん進みますので、高齢者ドライバーの事故を防ぐためにもぜひとも実用化が望まれる技術です。

「自動運転」技術については、5月に「テスラ」の自動車が高速道路を自動走行中に、側道から出てきたトレーラーと衝突し、運転手が死亡した事故が注目されました。

ただ、この「テスラ」に関しては、そもそも「自動運転車」ではなく、ハンドルから手を放すことに問題があるとも指摘されています。

****死亡事故のテスラは自動運転車ではなかった****
<事故で死亡したドライバーが乗っていたテスラ車は「運転支援」は搭載しているが当局規定の「自動運転車」ではない。例え運転支援機能があっても、ドライバーは注意を怠ってはならないし、この事故によって自動運転の開発が滞ることもあってはならない>

今年5月にフロリダ州で発生した交通事故で、運転支援機能が搭載されたテスラのセダンのドライバーが死亡していたことについて、多くのメディアが「自動運転で初めての死亡事故」と報道した。

ここで理解しておかなくてはならないのが、事故にあったテスラは自動運転車ではないことだ。アメリカ運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が「レベル4」や「レベル3」と区分している自動運転車、つまり「走行中に、安全上必要なすべての動作を自動で行う」ものでも、「特定の状況で、安全上必要なすべての動作を行う」ものでもない。

「手を離していい」故の勘違い
このテスラに搭載されていたのは「高度運転支援システム(ADAS)」という機能で、走行中のハンドルや速度の調整は自動で行うが、ドライバーは安全確認を継続しなければならない。

これはNHTSAの区分では、運転中の主要な動作を少なくとも2つ自動で行う「レベル2」に区分され、テスラの場合、前の車への衝突を回避する「クルーズ・コントロール」と車線の外に出ていかないようにする「レーン・センタリング」機能のことだ。

BMWやメルセデス・ベンツなど他の自動車メーカーもこれらの運転支援機能を搭載した車を販売している。しかし他社は、ドライバーが数秒以上ハンドルから手を離すことを許していないが、テスラはそれを許している。

このためテスラのドライバーは、自分の車が「特定の状況で安全上必要なすべての動作を自動で行う、レベル3」の自動運転車だと勘違いしてしまうのだろう。(後略)【7月8日 Newsweek】
***************

それはともかく、「自動運転」技術に関して興味深いのは、事故回避に係る「究極の選択」についてです。
前方に多くの歩行者がいて、事故を避けるためには自分が道路から飛び出して木に激突するしかない・・・という場面です。

そうしたケースにどのように「自動判断」するかをプログラミングしておく必要があります。

「そのまま突っ込んで大勢を跳ね飛ばすべきか(その場合、運転者は助かります)、それとも車が木にぶつかって大勢を救うべきか(その場合、運転者は死亡します)」と訊くと、多くのひとは「自動運転車が木にぶつかる形で事故回避すべき」と答えるそうですが、「では、そのようにプロミラミングされた車を買いますか?」と訊くと「・・・・・」という話です。

*****歩行者とドライバー、自動運転車はどちらを守る*****
<自動運転は交通事故死を減らせる「夢の車」かもしれないが、歩行者と搭乗者のどちらの人命を守るべきかという究極のジレンマも突きつけている>

道路を走る自動運転車の前に突然、数人の歩行者が現れた。ここでの選択肢は2つ。歩行者の間に突っ込むか、それとも進路を変えて木に激突し、車に乗っている人を死なせるか。

これは先月末、科学誌サイエンスに発表された「自動運転車の社会的ジレンマ」と題する研究論文の質問だ。この調査に協力した人々は、車に歩行者を守る選択をしてほしいと答えた。

でも、車に乗っているのが自分だったら......。この自己防衛本能が社会的ジレンマを生み、さらに新たな輸送技術の導入を遅らせ、防げるはずの何十万もの交通事故死につながる可能性があると、論文は指摘する。

「多くの人は、事故の犠牲者数を最小限に抑える車のほうがいいと考えている」と、論文の共著者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のイーヤド・ラーワン准教授は述べる。「しかし誰もが自分の車には、どんな犠牲を払っても自分を守ってほしいと考えている」(後略)【7月22日 Newsweek】
********************

人間の行動は曖昧で、非論理的で、場当たり的です。そうした人間の行動をAIで代用しようとするといろんな問題が浮かび上がってくるようです。「人間とは何か」が問われることにもなります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本政府  特定秘密保護法の現状などに関する国連調査を来年秋以降に延期

2015-11-20 23:17:56 | 世相

(秩父神社の「お元気三猿」 【秩父ナビ http://秩父.1epi.info/post_2.html】)

【「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」?】
「どうして?」と首をかしげたくなるような話。

****表現の自由」調査、突如延期=日本政府が国連報告者に要請****
国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者(表現の自由担当)が12月に予定していた日本での現地調査が、日本政府の要請で突如延期になったことが20日、明らかになった。ケイ氏は2013年に成立した特定秘密保護法の現状などを調査する予定だった。

岸田文雄外相は「予算編成作業などで十分な受け入れ態勢を整えることが困難なため」と説明した。ケイ氏の前任のフランク・ラ・ルー特別報告者は13年、特定秘密保護法について「秘密の範囲が非常に広範で根拠が不明確」と懸念を示していた。

ケイ氏は12月1日から8日まで日本政府やNGO関係者と会い、表現の自由に関する調査を予定していた。しかし、ケイ氏のブログによれば、ジュネーブ国際機関日本政府代表部から今月13日に、来年秋まで訪日を延期してほしいという要請があった。ケイ氏は日本側に再考を求めたが、受け入れられなかったという。【11月20日 時事】 
*******************

“外務省人権人道課によると、ケイ氏側の希望に沿って12月1日から8日までの訪日で調整していたが、11月中旬に同省から「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」と延期を求めたという。その際、「国会などの時期は避けてほしい」とも要求し、事実上、来年秋以降の時期を提示した。”【11月20日 朝日】

「来年秋以降」ということは、1年近く先延ばしということです。「予算編成などで担当者のスケジュールが合わない」という理由でそんな先延ばしするというのは奇妙な話です。

要するに、特定秘密保護法に批判的な結果になることも予想される調査は受けたくないということでしょう。
「来年秋以降」というのは、来年の参院選が終わってからということでしょうか?

支持率で自民党が圧倒的に高く、野党が壊滅状態にあることに加え、改選議席の点でも民主党の大幅減が予想されることなどから、自民圧勝が予想される参院選ですが、これ以上一極集中してどうするのでしょうか?改憲を実現するためには更に上乗せしたいということでしょうか?

あるいは、先日、国連の「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者が来日した際の記者会見で「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」と発言して、「どこからそんな数字が出るのか?」と問題となった件もあって、政府には国連調査に対する拒否感があるのでしょうか。

(この「援交」報告に関して言えば、「13%」という数字は論外ですが、その点を問題にするのではなく、日本において「援助交際」のような現象が実際に多々見られること、それが国際的には奇妙な社会現象に見えることなどから、あらためて「どこか変では?」と、日本の現状を見直すきっかけにしていいものに思えます。
発言については、11日に特別報告者本人から「13%という数値を裏付ける公的な最近のデータはなく、誤解を招くものだった」との趣旨の書簡が日本政府に届いたそうです。)

政府・与党サイドは、特定秘密保護法のような法律はどこの国でも存在するものだと常々言っていましたが、そうであるなら、その旨を国連調査において縷々説明すればいいだけの話でしょう。
それとも、あれこれ詮索することも許されない、特定秘密保護法の現状は「特定秘密」に該当するということでしょうか?

東京地裁 特定秘密保護法違憲訴訟で合憲・違憲判断に踏み込まず
特定秘密保護法については、違憲訴訟が起こされていましたが、東京地方裁判所はこの訴えを退けています。

****特定秘密保護法 違憲訴訟 訴え退ける****
去年12月に施行された特定秘密保護法に反対するフリージャーナリストなどが、「国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は「立法によって取材が困難になったとは認められない」などとして訴えを退けました。

特定秘密保護法は、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を特定秘密に指定し、漏えいした公務員らに最高で10年の懲役を科すもので、去年12月に施行されました。

これについて、フリージャーナリストやフリーライターなど42人は、「取材活動を萎縮させ、国民の知る権利を侵害し、憲法に違反する」と主張して、法律の無効や賠償を求めていました。

18日の判決で、東京地方裁判所の谷口豊裁判長は「原告らの主張は、将来、罰則を適用される可能性があるという抽象的なものにすぎない」として、裁判の対象にならないという判断を示し、法律の無効を求める訴えを退けました。また、賠償を求める訴えについても、「立法によって取材が困難になったとは認められない」として退けました。

判決について、原告の代理人の弁護士は「憲法違反かどうかの判断に踏み込んでおらず、納得がいかない」と述べ、控訴する考えを示しました。【11月18日 NHK】
******************

この判決の意味するところは、特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では判断しようがないという趣旨のようです。

****特定秘密保護法違憲訴訟、原告の訴えを「肩すかし」で却下、違憲・合憲の判断を避ける****
・・・・谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が実際に適用された具体例が存在しないことを理由に、現在の段階では「法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない」として、原告の請求を退けた。(中略)

■解説/特定秘密保護法の性質を無視した判決
この訴訟は、2013年12月に成立し、1年後に施行された特定秘密保護法が憲法に違反するという認定を求めた憲法裁判である。

ところが日本の司法制度の下では、実際に発生した具体的事件で、取り締りの根拠となった法律が適用された場合に限って、違憲か合憲を判断するのを原則としている。

従って特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では、同法が違憲か合憲かを具体的事件にそくして判断しようがないから、原告の訴えを却下したというのが、この判決のポイントである。

谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が違憲であるとも、合憲であるとも判断せずに、原告の訴えを「肩すかし」というかたちでかわしたことになる。

この種の司法判断をするのは、いわゆる憲法裁判所の役割という立場のようだ。その憲法裁判所は、日本の司法制度の中には組み込まれていない。存在しない。

ちなみに特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ないという見解は、特定秘密保護法の危険な本質をよく理解していない証にほかならない。たとえば理解していても、故意に隠したとしかいいようがない。

と、いうのも特定秘密保護法の下では、公権力が言論を規制する事件を起こしたとしても、その行為が特定秘密保護法に基づいたものであることが公言されることはないからだ。警察は、「特定秘密保護法に基づいて逮捕する」とは宣告しない。起訴後の裁判でも、この点は秘密にされたまま審理が進む。

当然、逮捕された側は、その根拠が分からず、ロシアの作家・ソルジェニーツィンのように「えっ、どうして私が?」と自問することになる。シリアで消息を絶っているジャーナリストの安田純平氏に関する報道が皆無なのも、特定秘密保護法による規制を疑うより仕方がない。つまり、特定秘密保護法が原因で不可解な事態が生じたとしても、それを立証することは出来ないことになっているのだ。

このような事態が発生することが特定秘密保護法の大きな落とし穴であり、問題点であるとすれば、こうした法律の制定行為自体が、憲法の精神を無視した行為にほかならない。事件である。当然、その行為が行き着いた先にある特定秘密保護法が違憲か否かを判断しなければならい。

施行されたばかりの法律の違憲性を問うた今回の裁判を、「門前払い」にした谷口判例は、TPP違憲訴訟や今後に予想される安保関連法案の違憲訴訟にも影響を及ぼしそうだ。こうして日本はファシズムへ向かって進んでいく。【11月19日 MEDIA KOKUSYO】
********************

海外では、司法判断で重要施策が否定されたり、ときには政権が崩壊するなど「司法クーデター」とも思える事例が見ら、ときに「いかがなものか」という感もあります。

一方で、日本の司法は殆ど憲法判断に踏み込むことがなく、これまた「いかがなものか」という感もあります。
どっちに転んでも微妙な問題です。

ただ、上記記事が指摘するように、具体事例について特定秘密保護法が原因であることが明らかにされないにもかかわらず、「特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ない」というのであれば、不可解な論理と言えます。

国際的には問題も指摘されている日本の「報道の自由」】
特定秘密保護法の成立を受けて、日本の「報道の自由」については芳しくない評価もあります。
国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」では、2015年に日本は順位を前年の59位から61位に更に下げています。

****報道の自由度」ランキング、日本はなぜ61位に後退したのか****
日本大学大学院新聞 学研究科教授・福田充

国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」で、2015年に日本が順位を61位まで下げたことが大きく報じられた。その理由は何なのか。言論・報道の自由が保障されている「はず」の日本に対して、なぜそのような評価がなされるのか。その背景を考察したい。

世界報道自由度ランキングとは?
「国境なき記者団」(Reporters Without Borders, http://en.rsf.org/ )は、世界の報道の自由や言論の自由を守るために、1985年にパリで設立された世界のジャーナリストによるNGOである。活動の中心は、世界各国の報道機関の活動と政府による規制の状況を監視することであり、その他にも、世界で拘束された記者の解放や保護を求める運動や、戦場や紛争地帯で危険に晒された記者を守る活動など、幅広い活動が展開されている。

その中心的な活動である世界各国の報道機関と政府の関係についての監視と調査の結果をまとめた年次報告書が「世界報道自由度ランキング」(World Press Freedom Index)である。

これは2002年から開始された調査報告書であり、世界180か国と地域のメディア報道の状況について、メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制などの側面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキングである。

つまり、その国のメディアの独立性が高く、多様性、透明性が確保されていて、インフラが整備され、法規制や自主規制などの規制が少ないほど、メディア報道の自由度が高いとされる指標である。

2002年から2015年までの間で13回発表されているが、国際的には、フィンランド、ノルウェー、デンマークなどの北欧諸国の報道がランキングの上位を占めてきた。一方で、毎年の変動はあるものの、アメリカやイギリス、フランスといった先進国は、その時代情勢によって10位代から40位代の中間よりやや上位を推移している。

また、中国や北朝鮮、ベトナム、キューバといった社会主義諸国のランキングは170位代前後を推移し、常に最下位レベルである。中東のシリアやイラン、アフリカで紛争の続いたソマリアやスーダンなどのランキングも常に最下位レベルである。

このように、国家の体制により、または国内の政治情勢により、政府とメディアの関係は大きな影響を受け、メディア報道の自由度が決まってくるという考え方である。同報告書では、2014年に報道の自由が世界的に低下したとされており、その一因をイスラム国やボコ・ハラムなど過激派組織の活動によるものと指摘している。

日本の評価は?
日本のランキングは2002年から2008年までの間、20位代から50位代まで時代により推移してきたが、民主党政権が誕生した2009年から17位、11位とランキングを上げた。2008年までの間は欧米の先進諸国、アメリカやイギリス、フランス、ドイツと変わらない中堅層やや上位を保っていたが、民主党政権誕生以降、政権交代の実現という社会的状況の変化や、政府による記者会見の一部オープン化もあり、2010年には最高の11位を獲得している。

しかしながら、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の発生の後、2012年のランキングでは22位に下落、2013年には53位、2014年には59位を記録した。そして今年2015年にはついに過去最低の61位までランキングを下げる結果となった。自由度を5段階に分けた3段階目の「顕著な問題」レベルに転落した状況である。

なぜ日本の順位は後退したのか?
世界報道自由度ランキングのレポートでは、日本の順位が下がった理由を解説している。ひとつは東日本大震災によって発生した福島第一原発事故に対する報道の問題である。

例えば、福島第一原発事故に関する電力会社や「原子力ムラ」によって形成されたメディア体制の閉鎖性と、記者クラブによるフリーランス記者や外国メディアの排除の構造などが指摘されている。

戦争やテロリズムの問題と同様に、大震災や原発事故などの危機が発生したときにも、その情報源が政府に集中することにより、「発表ジャーナリズム」という問題が発生する。政府が記者会見で発表した情報をそのまま鵜呑みにして報道する姿勢である。

また、同様に戦場や被災地など危険な地域に自社の記者を派遣しないで、フリー・ジャーナリストに依存する「コンプライアンス・ジャーナリズム」の問題も重要である。メディアとしての企業コンプライアンスによって、危険な地域に自社の社員を派遣できないという状況から、危険な地域に入るのはフリー・ジャーナリストばかりになるという構造的問題である。

このような日本のメディアの状況下で一昨年に成立した特定秘密保護法の成立が日本の順位下落に拍車をかけた形である。特定秘密保護法の成立により、戦争やテロリズムに関する特定秘密の存在が自由な報道の妨げになるという評価である。日本が置かれる国際状況や、日本国内の政治状況が大きく変化している現在こそ、日本のメディア、ジャーナリズムに自浄作用と改革が求められている。【3月4日 THE PAGE】
******************

この種の「ランキング」には、「幸福度」のように、数値化された順位にどれほどの意味があるのかよくわからないものあります。

先日、スイスの民間研究機関「世界経済フォーラム」が発表した男女平等の度合いを比較した2015年版のランキングでは、日本は101位ということで、「そんなにひどい状態だろうか?」という素朴な疑問もわきます。

ただ、内部の人間には当たり前に思えていることも、外部の視点で見ると当たり前ではないことも多々あります。
それらを鵜呑みにする必要もありませんが、貴重な参考にはなるでしょう。

外部の視点からは、あまり芳しくないとの評価がある状況で、国際的な調査は先延ばしにする、司法は判断を避けるということでは・・・・。

日常生活との直接的つながりが明確でないこの種の問題に関しては、私を含め、普通の人々には判断が難しいところがあります。
それだけに、国際的な評価とか司法の判断が参考として求められるのですが、それも提供されないのが日本の現状ということでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジンバブエの有名ライオン「セシル」射殺への非難の嵐 もっと関心を向けるべきことも・・・

2015-08-06 22:47:42 | 世相

(ジンバブエの国立公園で観光客の人気を集めていたライオンのセシル(手前) 【8月3日 AFP】)

なぜ数々の殺害事件や拷問、レイプより、ライオンの死に関心が集まるのか
“ジンバブエ、ワンゲ国立公園で10年以上にわたって注目を集めたライオンがいた。訪れた観光客は、ライオンの中である1頭が際立っていることに気が付く。黒く長い豊かなたてがみを持つ、堂々たる体格のオスだ。観光客の間で人気となり、「セシル」という名前が付くまでになった。”【8月4日 Natinal Geographic】

その有名なライオン「セシル」がアメリカ人ハンターに射殺された件で、世界中から非難の声があがっています。

****ライオン「セシル」が狩猟愛好家に殺された問題を捜査 米当局*****
米当局は30日、ジンバブエの国立公園で観光客の人気を集めていたライオンのセシルが殺された問題について捜査を開始した。セシルを射殺した米国人の狩猟愛好家で歯科医師のウォルター・パーマー氏には世界中から非難の声が寄せられ、同氏は現在、姿を隠している。

米魚類野生生物局(FWS)は、セシルの狩猟に関する捜査を開始したと発表。ツイッター上に、「われわれは、ライオン『セシル』が殺されたことについて捜査している。真相を解明していく。パーマー医師またはその代理人は、直ちにFWSへ連絡を」と投稿した。

しかしパーマー氏は、ミネソタ州で開業している歯科医院の前にライオンやトラ、サルなどのぬいぐるみが多数残され、入り口のドアには「Rot in Hell(地獄でくたばれ)」と書かれた紙が張り付けられるなどしており、公の場に姿を見せていない。

ジンバブエのワンゲ国立公園にいたセシルは公園の外に餌でおびき寄せられ、今月1日にパーマー氏に殺された。

同氏の狩猟の世話をした地元のプロのハンターは、「違法な狩猟行為を防げなかった」としてすでにジンバブエで起訴されている。一方、30日に裁判所で行われるはずだった、狩猟を許可したとされる土地の所有者に対する審問は延期された。

一方、パーマー氏が所属していた国際的な狩猟愛好家団体「サファリ・クラブ・インターナショナル(SCI)」は捜査への支持を表明するとともに、同氏の会員資格を一時停止したことを明らかにした。

同団体は声明で、「SCIは直ちに、本件に関与したハンターとその案内役だったプロのハンター両名の会員資格を停止する措置に踏み切った。捜査の結果が出るまで、資格停止処分のままとする」と発表した。【7月31日 AFP】
********************

個人的には、ハンティングという行為自体になじめないものを感じますので、当然「セシル」射殺に対しては憤りも感じます。

ただ性格がゆがんでいるせいか、この種の動物虐待などが大きな話題となることに関しては、素直に共感できないところもあります。

確かに忌むべき行為だけど、世界には、あるいは、自分の身の回りには、自分たちと同じ人間が苦しみ、死んでいく悲劇がいくらでも溢れているではないか・・・そうしたことには声を上げないのか・・・

ジンバブエで言えば、「セシル」以上に問題なのは、ムガベ大統領のもとで圧殺されている多くの人々ではないのか・・・・。

****セシル」射殺になぜ怒るのか****
あなたは人間よりペットを大切に思うだろうか?
その愛情をほかの動物にも感じるだろうか?

そうだとしても珍しいことではない。ある実験では、重い病気の子供を助けるより、犬を助けるための寄付に2倍の金額が集まったという。

先月初旬、ジンバブエ西部のワング国立公園で野生の雄ライオン「セシル」が射殺された。
殺したのは米ミネソタ州の歯科医で狩猟愛好家のウォルター・パーマー。狩猟が禁止されている公園から誘い出して射殺した後、頭部を切断し皮を剥ぐという違法で残虐な行為に世界中から非難が殺到している。

ライオンの死、しかも不法に殺されたとなれば不快で残念なこと。だが、これは悲劇なのか。

世界では1分に1人が武力紛争で、4秒に1人の子供が貧困による飢餓や病気で死んでいる。
妊娠・出産関連の合併症で亡くなる女性は毎年50万人以上。
シリア内戦ではこれまでに22万人以上が犠牲になった。

なぜ数々の殺害事件や拷問、レイプより、ライオンの死に関心が集まるのか。スターリンの言うように「1つの死は悲劇で、100万の死は統計」だからか。

それには1つの理屈がある。人間の苦しみには限度がある、ということ。
私たちは身近な人間やペットなどに、何より共感するが、それ以外のものにまで関心を向けていられない。

だが今回の要因はほかにもある。死んだのはただのライオンでなくセシルだった。立派なたてがみの、英オックスフォード大学の研究対象にもなっていたライオン。ある人はセシルをアイドルと呼んだが、彼はそれ以上の存在、いわばセレブだった。 

問題の核心はここだ。人も動物も、有名なほうがその死を悼まれやすい。残りの者たち・・・アメリカの獄中にいる75万人以上の黒人、児童結婚するバングラデシュの何万人もの少女、マラリアで日々亡くなる3000人のアフリカの子供・・・の苦しみはほとんど見向きもされない。【8月11日 Newsweek日本版】
******************

世界で起きている多くの悲劇は、自分たちの手ではどうしようもない(と思われる)ことが多いのに対し、「セシル」のような件は容易に犯人を吊し上げることができる・・・ということもあるでしょう。

さきほど“世界には、あるいは、自分の身の回りには、自分たちと同じ人間が苦しみ、死んでいく悲劇がいくらでも溢れているではないか・・・そうしたことには声を上げないのか・・・”とは書きましたが、実際のところ、自分自身がそういう悲劇を見聞きしても殆ど何も感じることなく生活しているのが現実です。

すべての悲劇的な事柄に共感を感じていたら、一瞬たりとも正気を保てないでしょう。
自分以外のことがらに関しては鈍感になれることで、生きていけるとも言えます。

ただ、ときおり、“世界では1分に1人が武力紛争で、4秒に1人の子供が貧困による飢餓や病気で死んでいる。妊娠・出産関連の合併症で亡くなる女性は毎年50万人以上。シリア内戦ではこれまでに22万人以上が犠牲になった。”“アメリカの獄中にいる75万人以上の黒人、児童結婚するバングラデシュの何万人もの少女、マラリアで日々亡くなる3000人のアフリカの子供”といった現実に対する錆びついた自分の感性を改めて研ぎなおすことも必要なことかと思います。

【「彼らにとっては石の像の方が人間より大切なのだ」】
動物関連と似た話に世界遺産破壊があります。

ISなどイスラム過激派による世界遺産破壊が大きな話題になりますが(私もそうした話題を取り上げることがありますが)、どんなに貴重な遺産以上に重要なのは、名を知られることもなく傷つき死んでいく多くの人々の苦しみ・悲しみでしょう。

かつて、アフガニスタンにあるバーミアンの大仏をタリバンが破壊しようとしたときの、あるタリバンが語ったという言葉が記憶に残ります。

*********************
今、世界は、我々が大仏を壊すと言ったとたんに大騒ぎを始めている。だが、わが国が旱魃で苦しんでいたときに、彼らは何をしたか。我々を助けたか。

彼らにとっては石の像の方が人間より大切なのだ。そんな国際社会の言うことなど、聞いてはならない。
【「大仏破壊」高木徹氏】
*********************

高木氏は、“この理屈は正しくない。これまでにも、アフガニスタンに数多くの国や人が援助の手とお金を差し伸べてきた・・・・”としながらも、“だが、そうであるにしても、この言い分に、わずかではあるが、説得力の断片を認めるのは私だけだろうか。「大仏の前に巨大な壁をつくる。国外に移送してもよい」とまで言うお金とエネルギーを、そして何よりも強い関心をこの国にもう少し前から向けることはできなかったのか。”とも書いています。

原爆投下から70年
国際関係は、「国益」と称する国家間の利害関係、あるいは国家・民族の威信・メンツなどによって動かされていきます。

今日は広島「原爆の日」です。
戦争の犠牲となった我が国の多くの人々、日本の統治下、侵略のもとで犠牲となった多くの国々の人々、あらためてそうした悲劇に対する錆びついた感性を研ぎなおす日でもあるでしょう。

****原爆投下から70年 広島「原爆の日****
人類史上初めて核兵器の惨禍に見舞われた広島は、6日、原爆投下から70年となる「原爆の日」を迎えました。広島市の平和公園には多くの被爆者や遺族などが訪れ、追悼の祈りをささげています。

広島市は、70年前のきょうと同じ、朝から暑い1日となっています。原爆投下から70年の節目を迎えた平和公園には、多くの被爆者や原爆で亡くなった人の遺族などが訪れ追悼の祈りをささげています。

爆心地から1.5キロの自宅で被爆したという76歳の男性は「核兵器を2度と使わせないことを、亡くなった人たちに誓いました。被爆当時を知っている最後の世代としてあの日のことを伝える活動に残された時間をあてていきたい」と話していました。

また、原爆の日に合わせて初めて広島を訪れたという東京の19歳の男子大学生は「平和に関するさまざまな議論があるなかで、原爆が投下された広島を実際に見て感じたいと思い来ました。誰もが幸せと感じられるような社会を作っていく努力をしていきたいです」と話していました。

6日の平和記念式典は、安倍総理大臣や海外から過去最多となる100か国の代表が参列し、このあと午前8時から始まります。式典では、この1年間に亡くなった人や新たに死亡が確認された人、5359人の名前が書き加えられた29万7684人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められます。

そして、原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげます。

このあと、広島市の松井一実市長が「平和宣言」を読み上げ、核兵器を「絶対悪だ」としたうえで「核兵器禁止条約」の交渉開始に向けた流れを加速させるため全力で取り組む決意を表明することにしています。

被爆者の平均年齢は、ことし初めて80歳を超え、高齢化がますます進むなか、若い世代に被爆の惨禍をどう伝えていくかが課題となっています。

原爆投下から70年を迎えたきょうは、原爆の犠牲者を追悼するとともに、国内外に平和な世界の実現に向けた被爆地・ヒロシマの誓いを発信する節目の日となります。【8月6日 NHK】
******************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本のヘイトスピーチ問題 フランスでは差別発言に異例の厳しい判決

2014-07-17 22:55:49 | 世相

(「トビラは政府ではなくて木にでもぶらさがっているほうがいい」との差別発言を受けたフランスのクリスチャーヌ・トビラ法務大臣 “flickr”より By Parti socialiste https://www.flickr.com/photos/partisocialiste/8557076111/in/photolist-e3afB2-e3ahzB-e3aqpM-e3asBi-e3a9xz-e3fPiA-e3fNDs-hUYcwG-eaeG1X-hUJNLN-hUNseq-hUK4QA-hUNLqL-hUK7Gq-iazJjD-c4Btzb-ninU6B-c4BtFm-c4Bu6m-c4BeMb-c4B9Jy-fLuqjH-fLLYih-geYoMr-bBaYs5-hUJMNV-hUNZWn-dePgyt-dePgvc-deN7Qa-deN7wC-o79QmT-nPYAGk-nPXUVN-9CvjMU-fZcc8u-4mDV5o-4mDV83-cqf1MS-dRYPnS-iYwFhF-iYwF6D-c4BtsU-c4GeZh-c4Bzd3-c4Baub-c4BgAE-c4BtTA-c4Bsf1-c4BaWS)

日本政府:国連人権委でヘイトスピーチ規制に慎重姿勢
日本では、「朝鮮人を日本海にたたき込め!」といった類の“人種や民族などを理由に差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)”自体を取り締まる法律は存在しません。

******************
ただ、刑法において、一般的にヘイトスピーチとされる「特定人物や特定団体に対する偏見に基づく差別的言動」は、侮辱罪や名誉毀損罪の対象であり、差別的言動の被害が具体的になれば、事例によっては脅迫罪や業務妨害罪の対象となる。

しかし、ヘイトスピーチであっても、特定しきれない漠然とした集団(民族・国籍・宗教・性的指向等)に対するものについては、侮辱罪や名誉毀損罪には該当しない。(中略)

法規制の必要性の是非については、ヘイトスピーチが「表現の自由」を逸脱した人権侵害に当たるとして法規制が必要であるとする意見や、「表現の自由」に基づく正当な言論活動が規制される可能性への懸念から法規制は不要であるとする意見がある。【ウィキペディア】
*******************

国連人権委員会でこの問題が取り上げられています。

****国連人権委:ヘイトスピーチに懸念 日本政府に法整備促す****
ジュネーブで開催中の国連のB規約(市民的、政治的権利)人権委員会は16日までの2日間、日本の人権状況を審査した。

人種や民族などを理由に差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)が広がる現状に懸念が示され、日本政府に法整備など具体的な対策を促す声が上がった。

イスラエルのシャニイ委員は、日本で昨年、在日コリアンらを排斥するデモや街宣が360回以上行われたとの報告があると指摘。ヘイトスピーチを禁止する「具体的な法律はないのか」とただした。

日本政府の代表は、不特定多数の集団に向けられたヘイトスピーチ自体の規制は「表現の自由との関係から慎重に検討する必要がある」と答弁。差別や偏見の解消に向けた啓発活動に努めているとの説明に終始した。

シャニイ委員は「人種的憎悪の唱道」を法律で禁止するとした国際人権規約の条項に触れ、「被害者が提訴できない場合もあり、国が抑制するのが好ましい」と述べ、刑法改正などによる取り締まりが必要と指摘した。

複数の委員が袴田事件に触れ、死刑制度や代用監獄の問題が指摘されたほか、特定秘密保護法がメディアを萎縮させるとの懸念も出た。

従軍慰安婦を「性奴隷とするのは不適切」とした日本政府の見解に傍聴席から拍手が起き、委員長が苦言を呈する一幕もあった。

対日審査は2008年以来6年ぶり。改善勧告などを盛り込んだ「最終見解」を今月下旬に公表する。(後略)【7月17日 毎日】
******************

「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ。日本人は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはず。どんなときも礼儀正しく、寛容で謙虚でなければならないと考えるのが日本人だ」(安倍首相)と言いつつも、「『正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとること』を検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の扇動が行われている状況にあるとは考えていない」(外務省)というの現在の方針です。【ウィキペディアより】

ネット上では“人種差別思想の流布や人種差別の扇動”としか言えない罵詈雑言にあふれているようにも見えますが・・・。

もっとも、新大久保などコリアタウンでの「在特会」などによるヘイトスピーチに関しては、現在ではむしろこれを敵視する「レイシストをしばき隊」や「男組」など「反ヘイト団体」の威圧的、時に暴力的行為が問題化している・・・との報道もあります。
(“「反差別」という差別が暴走する”【6月24日号 Newsweek日本版】)

また、日本からすれば、中国・韓国において、反日デモで見られるような反日ヘイトスピーチが放置されていることは承服しがたいものがあります。だから日本でも許されるというものでもないでしょうが。

もてはやされるポリティカリー・インコレクトな発言をする人々
欧米各国も差別的表現の問題はあります。

アメリカは人種のるつぼですから当然に人種差別には敏感ですが、人の心の中に巣食う差別の根は深く、しばしば差別的言動が問題となっています。

ドイツでは、ナチスにつながる表現、ホロコーストの否定などが問題となります。

フランスでは、かつてのアフリカ植民地支配、奴隷制度に関する言動が問題となります。

2001年には、フランスが「過去の奴隷制度は人道に反する罪であった」と認める法が成文化され、公立学校では奴隷制に関する授業や討論会を義務づけられるようになっています。

この施策を推進したのがフランス領ギアナ出身の黒人女性であるクリスチャーヌ・トビラ法務大臣ですが、彼女に対する差別的発言が大きな問題となっています。

この問題は、「黒人女性大臣への差別発言が示すフランスの人権感覚」(2013年12月13日 プラド・夏樹氏 WEBRONZA http://webronza.asahi.com/global/2013121300004.html)に詳しく紹介されています。

昨年10月25日、アンジェ市を訪れたクリスチャーヌ・トビラ法務大臣が、11歳の女の子に「このバナナは誰のでしょう?雌猿のです!」と野次られた事件がありました。

この発言は11歳子供の発言でもありますが、これに続いて極右翼政党「国民戦線」のアンヌ・ソフィー・ルクレール氏が「トビラは政府ではなくて木にでもぶらさがっているほうがいい」とツイートし、極右翼雑誌『Minute』は「猿のように賢いトビラはバナナをみつける」というコメント入り表紙を発表するという差別表現が相次ぎました。

アンヌ・ソフィー・ルクレール氏は「国民戦線」所属の地方議会選挙の女性候補者でした。

プラド・夏樹氏の記事によれば、当時のフランス国内の反応は鈍かったようです。
しかし、さすがに次第に大きく取り上げられるようになり、ルクレール氏は提訴され、「国民戦線」は彼女を除名しました。

提訴の具体的内容は知りませんが、この裁判の判決は「禁固9か月」という極めて厳しいものでした。
(“French ex-National Front member jailed for chimpanzee image” 7月16日 BBC http://www.bbc.com/news/world-europe-28326179

今朝のフランスTVニュースでも取り上げていましたが、これまでの差別発言にかんする訴訟の多くは罰金刑であり、司法がこの種の問題に新たな前例をつくろうとしていることの表れと論じていました。

ルクレール氏は上告し、「国民戦線」も判決を批判しています。

フランスにおける差別的表現は、サルコジ政権時代に目立つようになりましたが、プラド・夏樹氏は前出記事で以下のように指摘しています。

*******************
同時期に、元左派でありながらサルコジ元大統領の思想に賛同して右傾化した人々、ネオ・コンセルヴァタールと呼ばれるインテリ層やジャーナリストが、それまでタブーとされていたヘイトスピーチを露骨にメディア上で行うようになった。

彼らは、「ポリティカリー・コレクトなことばかり言っていても仕方ない、みんなが心の底で思っていることを敢えて言おう」というスタンスで、イスラム教徒やユダヤ人、ロマ人や黒人に対する、以前ならば禁句であったショッキングな差別的発言を行ない、注目を浴びるようになった。

いまや、ポリティカリー・インコレクトな発言をする人々が、テレビのプライムタイムでスターとなっている。
【「黒人女性大臣への差別発言が示すフランスの人権感覚」(2013年12月13日 プラド・夏樹氏 WEBRONZA http://webronza.asahi.com/global/2013121300004.html)】
*********************

ポリティカリー・コレクトとは「政治的に公正」といった趣旨ですが、いわゆる“建前”のような意味合いでしょう。

日本でも、本音の議論とか毒舌と称するものが大流行りです。
特に、リベラルな理念などは嘲笑の対象としかなっていません。

しかし、本来どうあるべきなのかという議論をなおざりにして、“みんなが心の底で思っていること”をぶつけあうところからは、増幅された憎しみしか生まれないように思います。
その増幅された憎しみが更に理念の実現を難しくする・・・という悪循環です。

“日本人は和を重んじ、排他的な国民ではなかったはず”ですが・・・・。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パプア・ニューギニア  頻発する「魔女狩り」 近年強まる魔術信仰

2013-06-07 22:34:11 | 世相

(パプアニューギニア・ラバウルのマーケット 「魔女狩り」を行うのは、観光パフォーマンスで目にするような鼻に骨を刺して腰みの・羽根飾りを着けた人々ではなく、こうした普通の暮らしをしている人々です。 “flickr”より By Rita Willaert )

貧困によるストレスが魔術を口実にした弱者攻撃の要因になっているとの指摘も
呪術・魔術といったものに頼ることが多いのは、別に科学知識のなかった過去の社会、あるいは現在の未開社会だけの話ではなく、日本を含めた世界に共通する現象です。
科学技術の進んだ現代社会にあっても、世の中の出来事の多くは人の努力だけではどうにもならない部分があり、人々が人知を超えたものに願いを託すというのは人類共通の文化人類学的事象でしょう。

そうは言っても、生命にかかわる話となると放置はできず、厳しい対応が必要になります。
このブログでも何回かとりあげたことがあるのは、アフリカ南部・中部でアルビノ(先天性白皮症)の人々の体の一部を使った魔術が横行し、そのためにアルビノの人々が襲われ、その体が売買されるという風潮です。

****選挙間近、当選祈願で狙われるアルビノ住民 政府に保護要請****
今年後半に総選挙が予定されているアフリカ南東部スワジランドで、アルビノ(先天性白皮症)の人々が、体の一部を当選祈願の呪術の「護符」に使われる恐れがあるとして政府に保護を求めている。

スワジランドを始めとする一部のアフリカ諸国では、伝統薬や魔術を駆使する呪術師が「万能」の存在とみなされている。こうした呪術ではアルビノの手足や体の一部が魔よけとして使われるため、アルビノ襲撃事件が後を絶たない。

南部ンランガーノのアルビノ・コミュニティーのリーダー、Skhumbuzo Mndvoti氏は、AFPの取材に「当局はわれわれの安全を保障しなければならない」と訴えた。「アルビノの人々や、アルビノの子を持つ親たちは、くれぐれも注意する必要がある」

ンランガーノでは、2010年にアルビノの人たちが相次いで殺害され遺体の一部を切り取られる事件が起きている。特に子供2人が首を切り落とされて殺された事件では、地元住民らがパニックに陥った。

シフォ・ドラミニさん(28)は、アルビノ殺害は常態化しているにもかかわらず、これまではアルビノ住民の慣習と関連付けて実態がごまかされてきたと指摘する。「昔から、アルビノの人たちは死期を悟ると誰にも見つからない遠いところへ行って死ぬのだと言い伝えられてきた。でも、本当は彼らは殺されていたんだと思う」

Mndvoti氏は呪術医たちが、アルビノの人体の部位を護符にすれば選挙で勝利したり仕事がうまく行くなどという迷信を人々に植え付けたと非難。アルビノの人々は選挙期間中、「子ども達は集団で登下校し、1人で自宅にいることがないようにするべきだ。大人も、夜間は出歩くのを避けるほうがいい。アルビノ襲撃事件は外が暗くなってから多発している」と警告している。

ンランガーノのアルビノ住民たちは、政府が特別な安全対策を取らない場合は投票をボイコットすると主張している。【5月24日 AFP】
*********************

アフリカ以外で、魔術絡みの殺人を最近よく聞くのが、南太平洋のパプア・ニューギニアです。
TV番組「奥様は魔女」を観て育った世代のため、魔女と言うと何か可愛げなものをイメージしたりもしますが、現実世界の「魔女狩り」は残酷です。

****魔女狩り:20歳女性が焼き殺される パプアニューギニア****
 ◇現場で警官も制止できず
南太平洋・パプアニューギニア西部の山岳部にあるマウントハーゲンで6日、他人の子供を魔術で殺したとして20歳の女性が群衆に焼き殺された。
同国は魔術を違法としているが、魔術を信じる風潮が残り「魔女狩り」が後を絶たない。

国連人権高等弁務官事務所は同国政府に「このような犯罪を止め、加害者を裁き、国際法に従って迅速かつ公平な調査を実施する」よう求めた。

AP通信などによると、きっかけは5日に病院で病死した男児(6)の親族が、ケパリ・レニアータさん(20)という女性の魔術で殺されたと主張したこと。レニアータさんは翌朝、子供を含む多数の住民環視の中、服をはぎ取られ、焼きごてを当てられた。縛られたままガソリンをかけられ、ごみやタイヤの山の上で火を付けられ焼死した。

警察官がいたが、制止できず、誰も逮捕できていない。レニアータさんの夫も容疑者に含まれているとされるが、男児の親族との関係は不明。レニアータさんが殺害を認めたとの情報もある。

約800の部族から成るパプアでは精霊信仰が残る。政府は71年に法律で魔術を禁じたが、人口の8割は今も信じているとされる。マウントハーゲンでは09年にも若い女性が火あぶりにされた。一方、貧困によるストレスが魔術を口実にした弱者攻撃の要因になっているとの指摘もある。【2月11日 毎日】
********************

上記事件が起きたマウントハーゲンでは、その前週に8歳の女児が性的暴行を受けて殺害された事件があり、魔術で女児を殺した疑いがかけられた高齢女性2人が拷問され、火あぶりにされかけたところを2月11日に警察によって救助されたとも報じられています。【2月19日 AFPより】
“こうしたパプアニューギニアに残る「魔女狩り」の風習については、国連や米国、オーストラリアが非難を表明。パプアニューギニアのピーター・オニール首相も「野蛮」な慣習と強く批判している。パプアニューギニアでは魔術が広く信じられており、不幸や人の死を自然なこととして受け止められない人が多いなか、警察は国民に対し、自らの手で物事を裁く慣習をやめるよう繰り返し呼びかけている。”【2月19日 AFP】

しかし、この種の「魔女狩り」事件は後を絶たないようです。

****パプアニューギニアでまた「魔女狩り」、女性2人が首はねられる****
南太平洋のパプアニューギニアの村で先週、高齢女性2人が魔術を使ったとして、3日間にわたる拷問の末に首をはねられて公開処刑された。地元紙が8日、報じた。

地元紙ポストクーリエによると、現場には警察官が駆け付けたが、感情的になった多数の群衆を前に処刑を止められなかったという。ブーゲンビル州の警察当局者は、同紙に対し「警察は無力だった。なす術がなかった」と語った。駆け付けた警察官らが2人を解放するよう交渉したが、逆に命の危険を感じる状況だったという。

この当局者によれば女性らは、最近死亡した元教師を魔術で殺したと疑われ、遺族らに2日に身柄を拘束された。2人は縛られてこの元教師の出身地であるLopele村に連れていかれ、3日間にわたってナイフや斧で傷つけられた後、公開処刑で首を切り落とされたという。

パプアニューギニアでは数日前にも、魔術を使ったと疑われた女性6人が、熱いアイロンを押し付けられて虐待される事件が起きたばかり。また3月には、20歳の女性が魔術を使ったとして火あぶりの刑で公開処刑されている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、同国における魔術をめぐる暴力を止めるよう訴えている。【4月8日 AFP】
*******************

魔術の使用を禁じる「魔術法」を廃止
パプアニューギニアでは、こうした「魔女狩り」殺人のほか、今年4月だけでも、オーストラリア人男性が射殺され、一緒にいた女性が集団レイプされる事件、夫、地元ガイドが縛られ、アメリカ人の女性研究者が集団レイプされる事件などの暴力事件が起きています。

政府はこうした暴力事件の横行に対し、死刑復活を含めた厳罰化、「魔術法」廃止を決めています。
これまで魔術の使用を禁じる「魔術法」が存在し、これが「魔女狩り」に悪用されることが多かったようです。

****パプアニューギニア、死刑復活へ 「魔術法」は廃止****
南太平洋パプアニューギニアのピーター・オニール首相は1日、暴力犯罪の撲滅には厳罰が必要だとして、死刑の復活や強姦(ごうかん)罪への終身刑の適用など、現行法を改正する方針を閣議決定したと発表した。
また、物議を醸していた魔術の使用を禁じる「魔術法」を廃止するほか、麻薬やアルコール絡みの犯罪を厳罰化するという。

今回の法改正の焦点は、これまで国家反逆罪、海賊行為、故意の殺人に限られていた死刑の適用範囲を拡大することだ。パプアニューギニアでは1954年以降、死刑は執行されていない。改正後の死刑の方法としては、「薬物注入や電気椅子より人道的で安価だ」として、銃殺刑を検討しているという。

また、「魔術法」廃止に伴い、今後は魔術を行ったことを理由にした「処刑」行為は、通常の殺人と同様に裁かれることになる。1974年に制定された「魔術法」は、敵を陥れるために悪用されているとして国際社会が撤廃を求めていた。

パプアニューギニアでは今年に入ってから、魔術で殺人を行ったとして20歳の女性が火あぶりにされたり、高齢女性が斬首される事件が発生。外国人女性を標的とした集団レイプが相次ぐなど、女性が犠牲となる事件が頻発している。世界各地の人権団体などから改善を求めて100を超える請願書がパプアニューギニア政府に寄せられている。 

法改正は5月末の議会での承認を経て発効する見込み。【5月2日 AFP】
*********************

強まる魔術信仰 魔術によって何らかの経済的な利益を得る人々がいることが原因
“不幸や人の死を自然なこととして受け止められない”ことからの「魔女狩り」とか、“貧困によるストレスが魔術を口実にした弱者攻撃の要因になっている”といったことは、ある程度想像もできますが、“人々が魔術を使ったと非難されることを恐れて事業などで成功したがらないため、これが経済発展の妨げになっている”というほど事態は深刻なようです。
こうした事態は、近年むしろ強まっているようです。

****南太平洋の国々で魔術信仰が増加、研究者らが懸念****
魔術を使って息子を殺したと疑われた女性が火あぶりで殺害される事件があったパプアニューギニアなど南太平洋の島国で、魔術や魔力を信じる傾向が高まっていると、専門家らが警告している。
ソロモン諸島国立博物館の元館長、ローレンス・フォアナオタ氏は、オーストラリアの首都キャンベラで開かれる魔術信仰の問題点を協議する会議を前にAFPの取材に応じ、ソロモン諸島で魔術を信じる傾向が高まっていることへの危惧を示した。魔術によって何らかの経済的な利益を得る人々がいることが原因だという。

こうした傾向について、特に若者の間で早い段階で手を打たなければ、パプアニューギニアのようにソロモン諸島でも実際に殺人に走る人々が出てくると同氏は懸念する。パプアニューギニアでは今年2月、魔術を使って6歳の息子を殺した疑いをかけられた20歳の女性が、服をはぎとられて縛られた上、見物人の前で火をつけられて殺害された。その後も4月に、黒魔術を使ったとして高齢の女性が公開処刑で首をはねられる事件が起きている。2月の事件を受けてパプアニューギニア政府は、暴力犯罪の撲滅には厳罰が必要だとして現行法を改定し、死刑を復活させる方針を打ち出しているが、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや国連はこれを批判している。

文化研究機関、メラネシアン研究所のジャック・ウラメ牧師は、パプアニューギニアに広がる魔術信仰を一掃するために、キリスト教団体はもっと大きな役割と果たせるはずだと語る。「世代間の断絶が原因で、キリスト教の価値観が次世代に引き継がれていない。それで人々は病気や死の理由付けとして伝統的な魔術信仰に回帰している」またキャンベラで共同議長を務めたオーストラリア国立大学のミランダ・フォーサイス氏は、パプアニューギニアやソロモン諸島、バヌアツなどでは、人々が魔術を使ったと非難されることを恐れて事業などで成功したがらないため、これが経済発展の妨げになっていると指摘した。【6月7日 AFP】
*******************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「殺人ロボット兵器」は「道義的責任の欠落」か?

2013-06-01 22:32:09 | 世相

(「殺人」ではなく、運搬用の「LS3」と名づけられたアメリカの犬型軍用ロボット 4本の足があり、直立歩行できるほか、180キログラム以上の物を背負って約32キロメートル移動できるそうです。 人の指示に従って黙々と荷物を運ぶ様子は可愛げもあります。ただ、これにマシンガンがついて、更に自動化されると「殺人ロボット兵器」にも発展します。【2012年9月15日 チャイナネット】

これまでも何度か取り上げたように、最近の戦闘では無人機が非常に重要な役割を担うようになっており、その是非については多くの議論があるところです。

無人機はそれでも一応人間がコントロールしていますが、高度な人工知能などを備え、敵の識別、状況判断、殺傷まで全自動で実行する自己完結型の殺傷機能を持つ機械「殺人ロボット兵器」の出現が懸念されています。

“米国を中心に先駆的な兵器開発が進んでおり、部分的に自己完結型の殺傷機能を持つ機械が実現。韓国は北朝鮮との軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)に歩哨ロボットを試験配備した。”【5月26日 日刊スポーツ】

体制側の「殺人ロボット兵器」と反政府「人間組織」が戦うという、ハリウッドSF映画のような事態も、そう遠くない将来のことかも・・・。
そこで、そうした「殺人ロボット兵器」の開発を禁止しようとする動きもあります。

****殺人ロボット兵器:国連理事会に報告書「開発一時停止を*****
米国などが研究開発する「殺人ロボット兵器」について国連人権理事会(ジュネーブ)のクリストフ・ヘインズ特別報告者(超法規的処刑問題担当)は30日、「ロボットに生死(決定)の権限を持たせるべきでない」として研究開発の一時停止を求める報告書を初めて提出した。

殺人ロボット兵器については複数の国際平和・人権団体が4月に禁止キャンペーンを開始しており、導入への反対の動きが草の根レベルで広がりつつある。

殺人ロボット兵器は、頭脳にあたる組み込みコンピューターや、感覚器にあたる各種センサー装置を装備。人間などの標的を自動的に攻撃・殺傷する「自己完結型」への進化が懸念されている。

米国がアフガニスタンなどで使用する無人機は人間が遠隔操作しているが、殺人ロボット兵器は人の関わる度合いが無人機に比べ圧倒的に低くなる。

報告は、この兵器について、「戦時、平時を問わず生命保護の面で懸念が高まっており、国際人権法に反する可能性もある」と指摘した。そのうえで、「ロボットに生死(決定)の権限を与えるべきでない。法的責任の観点からも配備は受け入れられないかもしれない」とした。

また、各国に研究開発の一時停止を求め、国際社会が明確な政策を作るためにハイレベル委員会を設置することを推奨した。【5月31日 毎日】
***********************

“人間を殺すかどうかの判断を機械に委ねるのは「道義的責任の欠落」”とのことです。

****殺人ロボット兵器」で討議****
・・・・勧告をまとめたのは国連のクリストフ・ヘインズ特別報告者(超法規的処刑問題担当)。人権理を通じ、殺人ロボット兵器の試験、生産、使用などの凍結を宣言するよう各国に要請。専門家を交えた検討委員会を開くことも要求した。

勧告を盛り込んだ報告書では、ロボットが人間の遠隔操作ではなく、組み込まれたコンピューターのプログラムやセンサー装置により、敵の識別、状況判断、殺傷まで全自動で実行する「自己完結型」に進化することへの懸念も表明した。

敵兵のうち、戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人まで殺す危険性を指摘。国際人権法や人道法の順守が困難になり、人間を殺すかどうかの判断を機械に委ねるのは「道義的責任の欠落」と批判した。ロボットを使えば自国兵が死傷する危険がないため、投入への心理的歯止めが弱まり、紛争頻発を招くとも述べた。

報告書によると、「完全な自己完結型の殺人ロボット」はまだ配備されていない。現時点では無人機のほか、物資輸送用の4足歩行ロボットや小型無人戦車などが開発されているが、いずれも人の手で遠隔操作されている。

英シンクタンクによると、無人機は昨年夏時点で11カ国が保有し、計56機種に上る。無人機の軍事利用はかつて米国やイスラエルにほぼ限られていたが、最近は中国などの新興国も活用。開発競争は過熱している。無人兵器への依存は、殺人ロボット兵器件導入へつながる可能性が高い。

人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのスティーブ・グース氏は、殺人ロボット兵器について「道徳と法の一線を越える。意思決定には常に人間が関わるべきだ」と指摘。4月から同兵器の禁止キャンペーンに乗り出している。【5月26日 日刊スポーツ】
*********************

「殺人ロボット兵器」には“敵兵のうち、戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人まで殺す危険性”がるとの批判は理解できます。

理解はできますが、今現在使用されている兵器も似たようなものだ・・・という感もあります。
爆撃機から投下される爆弾は、“戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人”はもちろん。民間人まで含めて一網打尽に殺戮します。投下後は、殺す相手の選別などに人間は関わっていません。
数十km先から撃ち込まれるミサイルも同様でしょう。
核兵器などその極致です。

地雷だって、いったん敷設されると、戦闘員・非戦闘員の区別なく殺戮します。(対人地雷は多くの国で禁止されていますが)

敵兵を殺すように教育された兵士も、「殺人ロボット兵器」と大差ないようにも思えます。

自動小銃での殺し合いならよくて、なぜ核兵器や「殺人ロボット兵器」が悪いのか?
所詮殺し合いである戦争の存在を前提にして、その道具である兵器に、道徳的観点、人道的観点を持ち込むと、よくわからなくなってきます。

「正義の戦争」と同様に、道徳的・人道的な兵器も幻想のように思えます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界の食糧難を救う「昆虫食」と「3Dプリンター」 銃も3Dプリンターで自宅製造

2013-05-23 22:49:13 | 世相

(3Dプリンターで作った食べ物 いかにも“宇宙食”といった無機質な感じですが、もっと食欲のわくような形状も可能なのではないでしょうか。 【5月23日 Gingazine  http://gigazine.net/news/20130523-3d-printed-food/】)

世界の飢餓撲滅のために、家庭でもレストランでも昆虫を積極的に食べよう!】
昆虫食の話。
タイなどではよく食べるようで、市場や屋台でよく見かけるとか。私は旅行中はそういうものは見ないようにしているので、よく知りませんが。(確認のためにネット検索していて、ちょっと胃がムカムカしてきました)
もちろん昆虫食は世界各地で行われていますし、日本でも内陸部では貴重なタンパク源となっています。

***************
いなごの佃煮(いなごのつくだに)とは、バッタの仲間であるイナゴを利用した佃煮。
山形県の内陸部、群馬県、長野県、福島県など、海産物が少ない山間部を中心に多く食用とされる。
他にも蜂の子やざざむし、ゲンゴロウなどを佃煮として食べる地方がある(長野県伊那谷地方など)。また、イナゴを炒めた「なご炒り」という料理もある(長野県大町地方など)。【ウィキペディア】
***************

将来的な人口増加・食糧難が予測されている中で、国連が「世界の飢餓撲滅のために、家庭でもレストランでも昆虫を積極的に食べよう!」と呼びかけているそうです。

****国連のおすすめは栄養満点の昆虫食****
世界の飢餓撲滅のために、家庭でもレストランでも昆虫を積極的に食べよう! 国連がそう呼び掛けている。

国連食糧農業機関(FAO)が先週発表した報告書によれば、世界人目の約3分の1に当たる20億人以上が日常的に昆虫を食べている。栄養価が高くて、おいしいからだ。
しかし多くの欧米諸国では、「人々の嫌悪感」が昆虫食の普及を妨げている。

FAO林業局のエバーミューラー林業経済政策・林産品部長は報告書の発表会見で、「昆虫は豊富に存在し、貴重なタンパク源でありミネラル源」と述べた。昆虫レシピを開発したりレストランのメニューに取り入れるなどして、食品業界を挙げて「昆虫の地位向上」に取り組んでほしいと訴える。
「ヨーロッパの大都市のレストランでは、カブトムシやバッタなどを使った料理が出され始めている」

国連の報告書によれば「昆虫はどこにでもいて、繁殖スピードが速い」ので「環境への負荷が少ない」。良質な脂質を含み、カルシウムや銅、鉄分、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛の豊富なものが多く、食物繊維まで取れる栄養食だ。
昆虫が、牛や豚に代わって食卓に上る日も近いかも?【5月28日号 Newsweek日本版】
*******************

世界で食べられている昆虫料理は、検索すればいくらでも画像が出てきますので、興味のある方はどうぞ。
ただ、個人的にはアウトです。

未来の食べ物として既存の食事に置き換わる可能性
「話はわかるけど、昆虫は・・・・」という方に、おすすめは3Dプリンターの話題。

****3Dプリンター食品」が食糧難を救う*****
NASAが3D食品プリンターに開発費を供与、世界と宇宙の食料事情が変わる?

未来の食品?
クリック一回で食べ物を「プリントアウト」できる日が来る?
SF映画のような話だが、そんな話が近く現実になる可能性がある。NASA(米航空宇宙局)が世界初の3Dフードプリンターの研究に資金を投入すると発表したからだ。

機械工学エンジニアのアンジャン・コントラクターが発案したこの新しい技術を使えば、数年間の宇宙ミッションに出る宇宙飛行士の「調理」に使えるだけでなく、アレルギー向けなどの特別食を「プログラム」することも可能になるという触れ込みだ。

さらに重要なのは、世界の食糧難を解決する可能性もあるということ。
「現在の食糧供給体制では、将来120億人に増える人口を十分に食べさせることはできないと、多くの経済学者は考えている」と、コントラクターは言う。「最終的には、何を食べ物とみなすかという考え方を変えるしかないだろう」

第一弾は「ピザ」プリンター
コントラクターが勤めるシステムズ・マテリアルズ・リサーチ・コーポレーション(SMRC)社は、この計画を進めるためにNASAから6カ月分の開発費12万5000ドルを提供されることになった。

この3Dプリンターは、たんぱく質や炭水化物、砂糖などの原料を使い、既存の3Dプリンターと同じような手法で、層を何枚も噴射して重ねていくことで栄養のある食べ物を作り出す。
最初の試作品は、3D「ピザ」プリンターになる予定。コントラクターによれば、今後数週間で組み立てを開始したいとしている。【5月23日 Newsweek】
*********************

こちらは昆虫食と違って抵抗はさほどありませんが、正直なところ「プリンターで食べ物をつくる?なんのこっちゃ?」と、話についていけません。

そもそも「3Dプリンター」とは、“コンピュータ上で作った3Dデータを設計図として、断面形状を積層していくことで立体物を作成する。液状の樹脂に紫外線などを照射し少しずつ硬化させていく、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていく、粉末の樹脂に接着剤を吹きつけていく、などの方法がある。”【ウィキペディア】というもので、“製造分野では製品や部品などの「デザイン検討」「機能検証」などの試作やモックアップとして、建築分野ではコンペやプレゼン用の「建築模型」として、医療分野ではコンピュータ断層撮影や核磁気共鳴画像法などのデータを元にした「術前検討用モデル」として”【同上】として使用されているそうです。

その「3Dプリンター」を使用した食品製造に関しては、「3Dプリンターで食べ物を印刷へ、既存の食事を置き換える可能性もあり」【5月23日 Gingazine  http://gigazine.net/news/20130523-3d-printed-food/】に、もう少し詳しく紹介されています。

【5月23日 Newsweek】にもあるように、“たんぱく質や炭水化物、砂糖などの原料を使い、既存の3Dプリンターと同じような手法で、層を何枚も噴射して重ねていくことで栄養のある食べ物を作り出す”訳ですが、“30年は保存のきくパウダー状の材料から作られるため、食べ物のムダをなくすことが可能。パウダーには砂糖や炭水化物・プロテインといった成分から構成され、それを水や油と混ぜて3Dプリンターで出力する仕様で、未来の食べ物として既存の食事に置き換わる可能性を秘めています。”【5月23日 Gingazine】とのことです。

年配の男性なら炭水化物は少なめ、スポーツマンは反対に炭水化物が大めでカルシウムが少なめ、 妊娠中の女性はオメガ3脂肪酸を十分にとって……ということがパウダーの配合で簡単に調整できるようになるそうです。
火星探査など、長期にわたって宇宙を旅する際の食事手段としても利用される予定です。

“(開発者の)Contractorさんは「もしジェットエンジンや美術品を作成する機械と同じものから作られた食べ物に抵抗があるならば、それはあなた食べ物に困っていないからです」と語ります。多くの経済学者が言うように、現在の食料システムは120億人という人口を支えるには不十分であり、私たちが食物と見なすものの認識を変える必要があるとのこと。”【5月23日 Gingazine】

私はさほど抵抗はありませんが(美味しそうとは思いませんが)、グルメの方などは「昆虫食の方が、自然でおいしい」と思うかも。そこは個人の自由です。
まあ、昆虫由来のパウダーを3Dプリンターで調理・・・という方法もあります。

ピザが具体化の候補になっているのは、“ピザは個々のレイヤーに分けてプリントできるため、作りやすいのが理由で、生地はプリントと同時に熱したプレートで焼かれ、その後、トマトのベースの作成に入ります。そして最後にピザのトップに牛乳や動植物から作られた液体を使ったプロテインレイヤーを乗せたら完成。”【同上】とのことです。
ピザなら、本物に近い食感のものができそうな感じもします。

なお、将来的には“ソフトウェアを使ってレシピを入力し、水や油に溶かしたパウダーをセットすれば、好きな料理を作ることも可能になります”とのことです。

家にいながら銃を「プリントアウト」】
「3Dプリンター」に関しては、銃の製造方法がネット上に掲載され、誰でもダウンロードできる状態になったことが議論を呼んでいます。

*****3Dプリンターは銃社会をどう変えるか*****
世界初の「プリントアウト銃」がもたらすのは銃拡散の悲劇、ではなくそれを使う者の悲劇だろう

先週、アメリカの大学生コディー・ウィルソンが、世界で初めてとされる「3Dプリンターで作った銃の使用」に成功した。

ウィルソンが「リベレーター(解放者)」と名付けたこのプラスチック銃は、銃規制に風穴を開けかねない技術として、銃支持派と反対派の双方に論争を巻き起こしている。
ウィルソンが立ち上げたNPO法人ディフェンス・ディストリビューテッドのウェブサイトでは、この銃の製造方法が掲載されていて誰でもダウンロードできる。つまり、家にいながら銃を「プリントアウト」することができるのだ。

警察官など治安を守る側にとってやっかいなのは、プラスチック銃は金属探知機に反応しないこと。セキュリティーが厳しい建物への持ち込みも考えられる。
ただ実際は、銃全体が3Dプリンターで作られているわけではない、とウィルソンは言う。アメリカの連邦法は、金属探知機に反応しない銃器を禁止しているため、ウィルソンはあえて何の機能も果たさない金属を銃に取り付けている。もちろん自宅の3Dプリンターで銃を作る時には省くこともできるが、その銃はあくまで違法だ。

また近年は空港のセキュリティーチェックでも金属探知機よりもX線スキャナーを使うことが多く、純プラスチック製だったとしても金属製の銃と同じように形でバレてしまうだろう。

それに、3Dプリンターでは製造できない部品がもう1つある。火薬を起爆させるために必要な部品である撃針だ。「いろいろな種類のプラスチックで試したけどね」とウィルソンは言う。「どれも柔らかすぎて雷管に当たった衝撃で変形してしまう」

銃を自宅で作る選択肢
だがウィルソンにとってそんなことは問題ではない。彼の目的は、金属探知機に反応しない銃を作る事ではない。「この銃はたまたまプラスチック製だったというだけ」とウィルソンは言う。「(自宅の3Dプリンターで)金属製の銃を作ることができたら、同じように興奮するね」

だが、このリベレーターを使って犯罪を犯すのは考えものだ。うまく発射しないのだ。IT系のブログサイト、テッククランチのジョン・ビグスはこう説明する。「この銃はピストルというより単純な手製の銃だ」。自分の面前で暴発することなく何度も撃てるピストルに比べれば、粗雑で信頼もおけない単発銃だと言う。

それでもウィルソンが使った3Dプリンターはeベイで10000万ドルもする。もっと安いメーカーボット社のもあるが、暴発リスクをお忘れなく。

ウィルソンは、銃を自宅で作る選択肢をもたらした。彼はウェブサイトを通じて3Dプリンター製の銃を広めようとしている。
幸い、「自家製の銃」が現実的な武装オプションになる日はまだ遠い。その前に、この銃を使って犯罪を犯そうとする人は、おそらく彼自身が最初の犠牲者になっしまうだろう。【5月8日 Newsweek】
*********************

暴発リスク云々については、改良を重ねればおそらくすぐに克服されるのではないでしょうか。
また、銃の心臓部にあたる「ロアレシーバー」と呼ばれる部分(アメリカでも売買が規制されており、一般に販売するのであれば銃器製造業の免許が必要)のみを「3Dプリンター」で作成した銃では、600発以上の連射も可能とか。【3月8日 Gingazine】

すでに、この銃コピー方法は世界中に広まっているようです。
“団体がデータを公開した直後、米政府は武器管理規則に違反する恐れがあるとして公開の中止を命令。団体は応じたが、その間に、団体のウェブサイトにはスペイン、ドイツ、英国、ブラジルなど世界中からアクセスがあり、設計データは10万回以上ダウンロードされたとみられる。スウェーデンのサイトが設計データを転載するなど、インターネット空間に広く出回る事態となっている。”【5月18日 読売】

なお、上記読売記事によれば、プリンターの価格については、“数十万円相当で購入できる3Dプリンターにデータを入力すれば、製造できることになる”とのことです。

本物の銃が安価で手に入るという現実世界で、テロ・犯罪目的の特殊なプラスチック銃以外に、あえて「3Dプリンター」で銃をつくる意味がどこにあるのか・・・という話はありますが、そうした情報を嬉々として公開し悪びれる様子もない無邪気さに怖いものを感じます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「お金はあればあるほど幸せ」か? 富・所得と幸福度の関係

2013-05-03 22:01:08 | 世相

(幸せって何だっけ、何だっけ♬ ポン酢醤油のあるウチさ♬)

【“人々は自分の所得が増えるのを見ると、より幸せに感じると言う傾向にある”】
「幸せとは何か?」というのは人類普遍かつ永遠の問いではありますが、個人的には、昔の映画(山田洋次監督の「幸せの黄色いハンカチ」、もしくはそういった雰囲気の映画だったような・・・)のなかで、町工場の工員ふうの二人が、「仕事が終わって、駅前の定食屋でトンカツにソースをたっぷりかけて食べるとき幸せなんだ」といった趣旨のことを話すシーンが妙に印象に残っています。

(いろいろ検索したのですが、映画のタイトル・キャストはわかりませんでした。俳優一人の顔はわかっているのですが、名前が出てこず、ちょっとイラッとしています)

あと、もうひとつ挙げれば、86年頃に放映されていた明石家さんまのポン酢醤油のCM「幸せってなんだっけ?」でしょうか。

どっちにしても、悲しいほどにいじましいイメージではありますが、“お金があれば幸せになるってもんじゃないだろう・・・”というのが“貧乏人の慰め”でもあります。
そんなささやかな慰めを打ち砕く、「お金はあればあるほど幸せ」という非情な研究が発表されたとか。

****お金はあればあるほど幸せ」米研究*****
幸せはお金で買え、しかもお金が多いほど多くの幸せが手に入る──米ミシガン大学の経済学者による研究が、29日発行のアメリカ経済学会の専門誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」5月号「Papers and Proceedings」に発表された。

財産と満たされた生活の関連性は驚くべきことではないが今回、米ミシガン大のベッツィー・スティーブンソン氏とジャスティン・ウォルファーズ氏による研究の注目点は、収入が基本ニーズを満たすレベルを一定超えるとその効果は薄れていくとした従来説を否定していることだ。

2人は論文の中で、所得と幸福感の相関関係に「飽和点」を示す証拠はないとし、「イースタリンの逆説」や類似の学説は誤りだと主張している。2人の論文は激しい議論が交わされている分野の最新研究で、現在は南カリフォルニア大学に所属する経済学者リチャード・イースタリン氏が1974年に発表した「イースタリンの逆説(Easterlin Paradox)」とは矛盾してみえる。

日本に関する調査におおむね基づいたイースタリン氏の研究では、日本は奇跡的な経済成長を遂げたにもかかわらず、国民の幸福度にはほとんど変化がなかったとしている。
また後年の研究では、年収が米国では7万5000ドル、それよりも貧しい国々では8000~2万5000ドルの範囲を超えると、お金が幸福度に影響を及ぼさなくなることが指摘されている。

両氏は米調査機関ピュー・リサーチ・センターが実施した調査「ピュー・グローバル・アティテュード」とギャラップ世界世論調査、さらに国際社会調査プログラム(ISSP)の3調査による国際比較研究データを分析した。両氏によれば「一国の中では、平均幸福度と平均所得の間に明らかな相関関係がみられた」という。

さらに国が豊かになると所得から得られる満足感は下がっていくが、なくなることはなく、また国全体の所得が倍増すれば国民の幸福度に与える影響は等しく、それは当初の所得にかかわらないという。【4月30日 AFP】
*********************

上記記事だけでは研究の内容がよくわかりませんので、同じ話題を取り上げたウォール・ストリート・ジャーナルの記事も紹介します。

****金もうけに、きりはない」—米経済学者が実証*****
「王冠を賭けた恋」で知られるウィンザー公爵夫人(ウォリス・シンプソン夫人)はかつて「You can never be too rich or too thin=金もうけとダイエットはきりがない)」と辛辣な冗談を飛ばしたが、少なくとも半分は正解だったようだ。

米ミシガン大学の経済学者ベッツィー・スティーブンソン氏とジャスティン・ウォルファーズ氏の新たな研究によると、金持ちも貧乏人も同様に、所得が増えるにつれて幸福感が増大することが分かった。

両氏の論文は米経済学会の学術誌「American Economic Review, Papers and Proceedings」の5月号に掲載される予定だが、これは、一定の基本的なニーズが満たされると、所得が増えてもそれに応じて幸福感が増大するとは限らないという通念に反している。

この1970年代の通念は、経済学者のリチャード・イースタリン氏にちなんで「イースタリンの逆説」と呼ばれている。平均所得の上昇は、平均的な幸福感の上昇につながらないという考え方だ。
スティーブンソン、ウォルファーズ両氏は、他の研究者たち(ただしイースタリン氏ではない)がこの逆説を微調整し、所得が人々の基本的なニーズに応えるための一定の「しきい値(threshold)」水準に達した場合にこの考え方が当てはまる、つまり幸福感の増大が止まると説明してきたと指摘した。

ブルッキングス研究所上級フェローであるウォルファーズ氏によると、この考え方はその後一般的になっていったが、今まで調査の対象になったり、証明されたりすることはなかった。
そこで同氏とスティーブンソン氏は、世界銀行やギャラップ・ワールド・ポールといった情報源から150以上の国のデータを集め、「しきい値」となる所得水準、つまり「飽和水準」のようなものが存在しないと結論付けた。

両氏は「収入が1ドル増えることで感じられる幸福感は、金持ちよりも貧乏人の方が大きいが、飽和水準は存在しない」と指摘した。これは収入が増えれば、貧乏人も金持ちもより幸福に感じることと、そして、金持ちの幸福感を増大させるにはより多くのカネが必要なことを意味する。

これは富裕国と貧困国の両方に当てはまり、そういった国々の富裕な個人と貧しい個人の両方に当てはまることが証明されたという。両氏は「貧困国における幸福感と所得の関係は、富裕国でもほぼ同等に言える」ことを突き止めた。

ウォルファーズ氏は、この研究論文の意図は因果関係を示すのではなく、相関関係を示すに過ぎないと指摘する。より多い所得がより大きな幸せをもたらすかは不明瞭だ。人々は自分の所得が増えるのを見ると、より幸せに感じると言う傾向にあるにすぎないという。【4月30日 The Wall Street Journal】
*********************

所得水準と生活満足度(well-being)はある時点の一国内ではゆるく相関しているが、時間を超えた2時点や地域を越えた2地点ではほとんど相関がないとする「イースタリンの逆説(Easterlin Paradox)」なるもの、それが戦後日本の経済成長が幸福度を増大させなかったという研究に基づいていること・・・初めて知りました。(戦後日本の事例と、結論の間にはかなりの飛躍があるようにも思えますが・・・・)

スティーブンソン、ウォルファーズ両氏の主張は最近のものではなく、以前からなされているもののようです。
両氏の主張は、追加的1単位の富がもらす限界効用が、富が増大するにつれ逓減はするが、ゼロになることはないという内容にも思えます。そうであれば、極めて常識的と言えるでしょう。
(蛇足ながら、富がもらす限界効用は逓減しますので、お金持ちから貧乏人の私に所得の再配分を行えば、国民全体の満足度・効用は増大します)

むしろ、「しきい値(threshold)」水準とか「飽和水準」の概念のほうが、お金儲けに精を出す金持ちを見ていると、直観的には「本当だろうか?」という感じがあります。

経済成長が重要なのは幸福を増すからというより、不幸を減じるから
幸福度とお金・所得・富の関係については、個人レベルで言えば価値観・人生観の問題になりますが、下記は国家単位での両者の関係に関するシンプルで明快な指摘であるように思えます。

****幸せはお金で買えるか(所得水準と幸福度の国別相関*****


・・・・(所得水準と幸福度の)相関度をあらわすR2値は0.3071であり、ゆるい相関が認められる。しかし、相関図を見て、より印象的なのは、所得水準の高い国では幸福度がある一定水準以上に収斂している(不幸と感じている者はそれほど多くない傾向がある)のに対して、所得水準の低い国では、幸福度に大きなばらつきが認められる点である。

比較的所得水準の低いインドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアといった東南アジアの諸国は幸福度90%以上であり、所得水準からはこれらの国々を圧倒して高い米国の幸福度とそれほどの違いはないが、他方、これら東南アジアの国と所得面ではそれほど違いがないイラク、ザンビア、ルーマニア、モルドバでは幸福度が50%台と非常に低くなっているのである。(中略)

所得水準が高まれば不幸と感じる人の割合が大いに減じるということから、幸せはお金で買えるといえるが、だからといって所得水準の低い国で不幸な者が多いとは限らないのである。
お金持ちでも不幸かも知れないよ、という貧乏人の慰めは、事実に反するが、貧乏でも幸せに暮らそうという態度は十分な合理性を持っているといえよう。

また、経済成長が重要なのは幸福を増すからというより、不幸を減じるからであるということが分かる。(中略)

先進国においては経済成長と所得再配分のどちらが優先されるべきかという議論の中で幸福と所得の非相関が主張されるが、途上国側からはこれを途上国に当てはめられても迷惑だという意見の食い違いが生じる。片相関は相関ありと相関なしの同時存在なのでこうした混乱が生じるのだと思われる。(後略)
【本川 裕氏 「社会実情データ図録」 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9482.html
***********************

上記グラフからは、東南アジアやラテン諸国の“陽気な気質”がうかがわれます。
そういう気質面で言えば、日本人はあまり満足感・幸福感を表面に出さない傾向があります。イースタリン氏の研究でそのあたりがどのように考慮されたのでしょうか。

【「最も悲しい日」は?「最も幸福な日」は?】
幸福度を実証的に把握することは困難というか、不可能ですが、短期間の同一地点の比較であれば有効にも思われる研究の紹介がありました。

****ツイッターで社会の幸福感の推移を測定、米研究****
米マイクロブログのツイッター(Twitter)に投稿されたコメントを集め、分析プログラムで解析すると、ある都市、ある州、ある国の「気分」を把握することができる――このようなツールを開発したと米研究チームが発表した。

このツール、「ヘドノメーター」はいわば、幸福度測定器だ。先月30日に公開された「www.hedonometer.org」でのプロジェクトは、5年間にわたってデータを収集し、ツイッターに書き込まれた気分の浮き沈みを測定してきた。

このツールは、英語で投稿された全てのツイートのうちの約10%ほどを解析している。米国のツイートが中心とはいえ、インターネットコミュニティーの気分を把握することが可能だ。研究チームによると、ボストン・マラソン爆発事件があった4月15日は、過去5年間で観測された最も悲しい日だった。コネティカット州ニュータウンの小学校銃乱射事件の日よりもわずかに悲しみが上回ったという。
一方、最も幸福な日は、クリスマスや感謝祭などの休暇だった。

ヘドノメーターは、約1万単語の幸福度を1~9の範囲で数値化。
たとえば「happy(楽しい、うれしい、幸せ)」は8.30ポイント、「hahaha(笑い声)」は7.94、「cherry(良いもの)」が7.04。一方で、「crash(衝突)」は2.60ポイント、「war(戦争)」は1.80、「jail(監獄、拘禁)」は1.76などだ。

ヘドノメーターは現在は英語のツイートのみを対象にしているが、研究チームはグーグルトレンドや米紙ニューヨーク・タイムズ、CNNの書き起こしテキスト、URL短縮サービス「Bitly」に書き込まれた単語などのデータの解析も近いうちに始める予定。また、12言語のデータを解析する計画だという。【5月2日 AFP】
*********************

“約1万単語の幸福度を1~9の範囲で数値化”というのが、何を根拠に・・・という感もありますが、社会の「気分」を数量的に把握するという点でなかなか面白い研究です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする