孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジョージア  EU加盟交渉を4年間停止決定で連日の抗議デモ 想起されるウクライナ「マイダン革命」

2024-12-01 22:08:50 | 欧州情勢

(【11月29日 BBC】 EU加盟交渉を4年間停止決定するとの政府決定に抗議するデモ隊に警察側は放水銃などで対応)

【10月議会選挙で親ロシア政策を強める与党勝利 野党側・親欧米大統領はこれを認めず】
旧ソ連構成国で、また、親ロシア勢力による未承認国家を抱えるジョージア(旧国名:グルジア)は2008年にはロシアと「南オセチア戦争(ロシア・グルジア戦争、5日間戦争)を戦った過去もありますが、ロシアとの関係は根深いものがあり、近年政権与党である「ジョージアの夢」は「反スパイ法」とか「LGBT規制法」といったロシアに類似した法律を制定するなどロシアへの接近を強めています。

そのジョージアで10月26日に総選挙が行われ、政権与党「ジョージアの夢」は勝利したとしていますが、親欧米路線の野党勢力は、選挙に不正があり、ロシアの介入があったとして抗議行動をとっている、また親欧米派のズラビシビリ大統領は「ロシアによる国の乗っ取りだ」と非難している・・・・といったあたりは、10月29日ブログ“モルドバ・ジョージア  欧米とロシアの間で揺れる両国の選挙 思った以上に根強い親ロシア的なもの”でも取り上げました。

****ジョージア議会選、親露・強権の与党が「勝利」*****
南カフカス地方の旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)で26日、議会選(定数150)が行われた。同国が親ロシア路線と親欧米路線のどちらに進むかを方向付ける重要選挙と位置付けられ、国際的関心を集めた。

中央選管の発表によると、親露色を強める与党「ジョージアの夢」が54%の得票率で勝利した。親欧米路線への回帰を訴えた野党側は開票不正が起きたとし、結果を認めず抗議活動を行うと表明した。

議会選は得票率に応じて各党に議席数が割り当てられる比例代表制で行われた。得票率5%未満だった党は議席割り当ての対象外となる。

中央選管の発表によると、開票率約99%の時点で、「夢」の得票率は54%。親欧米派の主要野党4党は計38%となった。投票率は約59%。

2008年にロシアの軍事侵攻を受けたジョージアは反露を一種の「国是」としてきた。「夢」も12年の政権獲得後、親欧米政策を進め、昨年12月にはジョージアの「欧州連合(EU)加盟候補国」の地位獲得を達成した。ただ、近年はウクライナ侵略に伴う対露制裁に参加しないなど、親露傾向も強めていた。

「夢」のオーナーであるイワニシュビリ元首相はロシアで財を成した大富豪。同氏はジョージア国内の親露分離派地域、南オセチアとアブハジアを巡る領土問題の解決を視野に、対露関係の改善を図ろうとしているとの観測も出ている。

さらに、「夢」は議会選に先立ち、外国から資金提供を受けて活動する団体を規制する「反スパイ法」と、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する「LGBT規制法」を制定した。

両法は類似した法律がロシアで施行され、政治・言論弾圧の手段として使われている。EUは「夢」の強権化を批判し、加盟手続きの一時停止を発表。野党側も「『夢』が勝利すればEU加盟が不可能になる」と訴えていた。

議会選で「夢」が勝利したとの結果が発表されたことで、EUとジョージアは関係悪化が避けられず、同国のEU加盟はさらに不透明になる。

米シンクタンク「戦争研究所」は議会選に先立ち、「ロシアか欧米か」と題するリポートを公表。今回の議会選は「ジョージア独立以来、最も重要な選挙となる可能性が高い」と評価していた。「夢」が勝利した場合、ロシアと「夢」が接近し、ウクライナ侵略以降に欧米が進めてきたロシア孤立政策の打撃になるとも指摘していた。【10月27日 産経】
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【政権のEUへの加盟交渉を4年間停止決定で連日の抗議デモ、警官隊との衝突も】
混乱は今も続いています。親ロシア的な政権とEUとの関係も悪化し、コバヒゼ首相は11月28日、EUへの加盟交渉を4年間停止し、EUからのいかなる財政支援も拒否すると表明しました。

****ジョージア首相、EU加盟交渉を4年間停止表明****
(中略)
AP通信などによりますと、旧ソ連の構成国ジョージアのコバヒゼ首相は28日、EUへの加盟交渉を4年間停止し、EUからのいかなる財政支援も拒否すると表明しました。

ジョージアでは先月の総選挙でロシア寄りの与党が勝利しましたが、ヨーロッパ議会は選挙は公正ではなく、民主主義の後退が続いていると非難し、対立が深刻化していました。

ジョージアは去年12月にEUの加盟候補国となりましたが、その後、政権与党が、外国から資金提供を受ける団体を事実上のスパイとみなす法律を成立させるなど、ロシアに似た強権的な姿勢が目立ち、EU側は加盟交渉を事実上、凍結していました。【11月29日 日テレNEWS】
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****ジョージアでデモ隊と警察が衝突、政府のEU加盟交渉延期決定受け****
(中略)
EUは同党が権威主義的な政策を進め、親ロシア的な立場を取っていると批判しており、関係がここ数カ月で急速に悪化している。ジョージアの夢は自らの立場は親ロシアではないとし、民主主義や西側諸国との統合へのコミットメントをうたっている。

トビリシで警察はデモ隊に解散を命じたが、若い参加者が議会に押し入ろうしたため、催涙ガスや放水銃を使った。デモ隊は警察官に花火を投げつけた。

親米欧派のズラビシビリ大統領は、与党が「平和ではなく、自国民や自国の過去と未来に対し戦争を宣言した」と非難した。(後略)【11月29日 ロイター】
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首都トビリシなど各地で連日抗議の大規模デモが行われています。

****ジョージアで2日連続の大規模デモ 150人拘束 EU加盟交渉の停止表明受け****
親ロシア派が政権に就いたジョージアでは、EUの加盟交渉を巡って大規模なデモが続いています。 ジョージアの首都トビリシでは大規模なデモが続いていて、29日には107人が拘束されました。

デモは、先月の選挙で勝利した親ロシア派とされる政権与党「ジョージアの夢」が28日にEU=ヨーロッパ連合への加盟交渉を停止すると表明したことを受けて発生しました。

デモの参加者らはバリケードを築き、投石するなどして治安部隊と衝突しています。 一方、治安部隊は放水銃や催涙弾を使い、デモを鎮圧しています。 当局によりますと、2日間で150人が拘束されました。

独立系メディアによりますと、デモはトビリシにとどまらず、バトゥミなど各都市に広がっているということです。【11月30日 テレ朝news】
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【12月14日に議員による間接選挙で大統領選挙 親欧米のズラビシビリ大統領は離職を拒否】
与党「ジョージアの夢」が主導する議会は、12月14日に議員による間接選挙で大統領選挙を行うと発表しています。

****来月14日に新大統領選出=与党候補は元サッカー選手―ジョージア***
旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)議会は26日、親欧米派のズラビシビリ大統領の任期(6年)満了に伴う大統領選を12月14日に実施すると決めた。

ロシアに融和的な与党「ジョージアの夢」が主導した憲法改正で、今回から国民の直接選挙から議員による間接選挙に変更。与党が新大統領選出を強行する公算が大きい。

現地からの報道によると、ジョージアの夢は27日、与党系のカベラシビリ議員を大統領候補に指名した。カベラシビリ氏は、イングランドのマンチェスター・シティーに所属したこともある元サッカー選手。【11月27日 時事】 
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上記のように議員による間接選挙ですから、与党候補が勝利することになりますが、親欧米路線のズラビシビリ大統領は議会の正統性を否定し、離職を拒否しています。

****親欧米大統領「離職せず」と宣言 旧ソ連構成国ジョージア混乱続く****
旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)で親欧米の立場で知られるズラビシビリ大統領は11月30日、10月の選挙に基づき発足した議会が非合法だと主張し、12月に大統領の任期が切れても職にとどまると宣言した。ロイター通信などが報じた。(後略)【12月1日 共同】
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【想起される2014年ウクライナ「マイダン革命」 与党・ロシアも警戒】
EUとの関係を一つの対立軸とした一連の混乱から想起するのは2014年のウクライナでおきた「マイダン革命」です。

“ウクライナでは10年前、EUとの関係強化が進んでいましたが、当時のヤヌコビッチ大統領が突如、EUとの関係強化を棚上げしました。これに市民が反発し2014年に大規模デモ「マイダン革命」が行われ、親ロシア派のヤヌコビッチ政権の崩壊につながりました。”【12月1日 ABEMA Times】

これまでの経緯は非常に似通ってもいますが、与党側もそのあたりを意識して連日の抗議デモは欧州側の介入だと批判しています。

****親ロシア派政権、EU加盟交渉停止を宣言 ジョージアで大規模デモ続く****
ジョージアの首都トビリシでは30日夜、3日連続となる大規模なデモが行われています。

独立系メディアなどによりますと、市の中心部に数千人が集まりました。親ロシア派とされるコバヒゼ首相は30日、連日行われているデモはヨーロッパによる操作だと主張しました。コバヒゼ首相は「ジョージアを『ウクライナ化』できなかったヨーロッパの政治家たちが社会に対立を起こそうとしている」などとしています。(後略)【12月1日 ABEMA Times】
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ロシアも欧米の介入による政権交代といった事態を強く警戒しています。2014年ウクライナ「マイダン革命」はロシアにとっては「米欧の陰謀」の象徴でもあり、現在行われているロシアのウクライナ侵攻の背景ともなっています。

アメリカは与党「ジョージアの夢」がEU加盟交渉の停止を決定したことをめぐり「国民との約束を反故にした」と批判しています。

****ジョージア与党を米政府が非難 EU加盟交渉の停止「国民の約束を反故」「ロシアの影響下に置いた」****
旧ソ連のジョージア政府がEU=ヨーロッパ連合への加盟交渉の停止を決定したことをめぐり、アメリカ国務省は「国民との約束を反故にした」として、親ロシア派の与党を非難する声明を発表しました。

アメリカ国務省は声明で、ジョージアのEU加盟に向けた交渉の停止について「EUとNATO=北大西洋条約機構への完全な統合を目指すという国民との約束を反故にした」などと非難しました。

その上で、親ロシア派の与党「ジョージアの夢」について、交渉停止によって「ジョージアをロシアの影響下に置いた」と指摘。アメリカとジョージアとの「戦略的パートナーシップ」の中断を表明しました。【12月1日 TBSテレビ】
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ロシア及び欧米双方の、合法・非合法を含め、「介入」というのか「支援」というか、あるいは「影響力行使」というのか・・・そうしたものが行われているのは事実でしょう。

与党「ジョージアの夢」が力で批判を封じ込めるのか、あるいは、2014年ウクライナ「マイダン革命」の再現となるのか・・・12月14日に大統領選挙が予定されていますので、混乱は少なくともその選挙後までは続きそうです。

【親ロシア派地域「アブハジア共和国」においても政治混乱】
なお、ジョージアの混乱と直接の関係はないと思われますが、ジョージアにある未承認国家である親ロシア派地域「アブハジア共和国」においても政治混乱が起きています。

****ジョージアの親露派支配地域で「大統領」辞任 投資協定巡り対立****
ジョージア(グルジア)からの一方的な独立を宣言している親ロシア派地域「アブハジア共和国」のブジャニヤ大統領が19日、辞任した。

ロシアとの投資協定の批准に反対する野党支持者らが15日に中心都市スフミにある大統領府や議会に乱入して以降、緊張が高まっていた。タス通信などが報じた。

投資協定は、黒海周辺地域の不動産へのロシアの富裕層による投資を可能にする内容だった。野党側は、ロシアとの関係維持自体には反対しないが、ブジャニヤ氏が協定を利用して自身の体制を強めようとしているなどと批判し、退陣を要求していた。

ブジャニヤ氏は協定を撤回すると発表したが反発は収まらず、「安定と憲法上の秩序を維持するため」として辞任を決め、議会に承認された。 グンバ副大統領が大統領代行となる。次期大統領選の日程は今後、議会で決めるという。
アブハジアはソ連崩壊後の1992年、ジョージアからの独立を一方的に宣言。2008年にジョージアに侵攻したロシアは、国家として承認するとともに軍を駐留させて後ろ盾になっている。【11月20日 毎日】
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