孤帆の遠影碧空に尽き

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フランス  極右政党RNが倒閣も視野に圧力強化 ルペン氏は裁判結果次第では大統領選挙出馬不可

2024-11-28 23:24:48 | 欧州情勢

(裁判所に到着したマリーヌ・ルペン氏=13日、仏パリ【11月15日 CNN】)

【国民連合(RN) 「政府は監視下にある」と豪語】
フランスでは6月及び7月に行われた総選挙の結果、極左が中心の左派、マクロン大統領与党の中道、ルペン氏率いる極右の三すくみ状態となり、マクロン大統領は左派の切り崩しに失敗、中道右派の共和党と連立してバルニエ首相の少数内閣が発足しました。

左派と極右が内閣不信任案などで協調すれば直ちに内閣は倒れてしまう不安定な政局ですが、ルペン氏率いる極右・国民連合(RN)は直ちには倒閣には動かずしばらくは静観の構えをとりました。

****フランスの極右、倒閣に同調せず=左派は抗議デモ****
フランスの極右政党・国民連合(RN)のバルデラ党首は7日、「民主主義の混乱にくみしたくない」と述べ、バルニエ新内閣の発足後直ちに倒閣を目指す構えの左派に同調しない考えを示した。新内閣は中道と中道右派による少数与党となる見込みで、不信任を回避できるかは極右に懸かっている。

民放テレビTF1のインタビューで語った。バルデラ氏は、RNが唱える治安強化や移民抑制などの政策が「尊重されることを望む」とした上で、5日に首相に任命されたバルニエ氏に「マクロン大統領の政治を続ければ、新内閣は頓挫する」と警告した。

7月の総選挙では左派4党連合が下院の最大勢力となったが、政党単位ではRNが初の第1党に躍り出た。バルデラ氏は7日、記者団に「バルニエ氏はRNの監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」と訴えた。

バルニエ氏はこれに対し「私は全国民の監視下にある」と指摘。極右が新内閣に及ぼす影響力は限定的だと反論した。

一方、左派を率いる急進政党「不屈のフランス」は7日、政権批判の抗議行動を各地で展開し、支持者や学生運動の活動家らが参加。内務省によればデモ隊は約11万人(主催者発表30万人)に上った。【9月8日 時事】 
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国民連合(RN)党首バルデラ氏の「バルニエ氏はRNの監視下にある。(マクロン政権は)われわれなしでは何もできない」という発言が、フランスの政治情勢を表しています。

実際、10月に左派から出された内閣不信任案には国民連合(RN)は同調しませんでした。

****仏下院、内閣不信任案を否決=左派提出も極右賛成せず****
フランス国民議会(下院、定数577)は8日、先月発足したバルニエ内閣の不信任決議案を否決した。左派4党連合(193議席)が提出したが、第3勢力の極右(141議席)は賛成しなかった。

採決結果は賛成が197で、可決に必要な過半数(289)を大きく下回った。左派はバルニエ内閣が「総選挙の結果を否定する」存在だと主張。一方、極右は「混乱を招きたくない」と同調を拒否した。【10月9日 時事】
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【国民連合(RN) 倒閣も視野に政府への圧力を強める】
ただ、ここにきて予算案に関して国民連合(RN)は政府への圧力を強めています。
政府は国民会議)の採決なしで予算法案を成立させることは憲法規定で可能ですが、その場合内閣不信任案が出されるのは必至です。

****フランス極右政党RN、政府に独自予算案の受け入れ要求****
フランスの極右政党、国民連合(RN)のジョルダン・バルデラ党首は16日、政府が先週提出した2025年予算案に対抗してRNが策定した予算案の受け入れを政府に要求するとともに、拒否されれば発足したばかりのバルニエ首相率いる新内閣を不信任案で退陣に追い込む姿勢をちらつかせた。

政府の25年予算案には、膨張しつつある財政赤字に対処するため、歳出削減や富裕層と大企業に対する増税などによる600億ユーロ(656億8000万ドル)の収支改善策が盛り込まれた。

だが連立与党は国民議会の議席数が半数に満たないため、バルニエ氏は国民会議(下院)の採決なしで予算法案を成立させる憲法の規定を使わなければならなくなる公算が大きい。こうした措置が取られれば、内閣不信任案が提出されそうだ。

RNが16日提出した「対抗予算案」には、外国人に対する一部の社会福祉関連給付金の削減や、自社株買いと富裕層を対象とする増税などが盛り込まれた。RNはこれによりさらに150億ユーロ収支を改善できると主張している。

バルデラ氏はパリ自動車ショーの会場で記者団に「もしバルニエ氏がマクロン大統領の政策に追従し続けるなら、この政府は陥落するだろう」と述べ、RNは「大惨事をもたらすような」マクロン氏の財政政策に終止符を打つよう要求すると付け加えた。【10月17日 ロイター】
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国民連合(RN)が政府への圧力を強めている背景には、指導者マリーヌ・ルペン氏自身の裁判も絡んでいるとも。

****仏極右ルペン氏、政権に退陣要求も 生活費高騰に予算対応なしなら****
フランス極右政党、国民連合(RN)の指導者マリーヌ・ルペン氏は20日、政府予算案にRNの生活費高騰を巡る懸念が反映されない場合、バルニエ首相率いる内閣を不信任投票で退陣に追い込む考えだと警告した。

ルペン氏は、欧州連合(EU)欧州議会から資金を不正受給したとされる疑惑を巡る公判で、フランス検察から5年間の公職追放を求刑されている。同氏は疑惑を否定している。

裁判所が有罪と判断し、求刑通り公職追放を言い渡した場合、2027年の大統領選に出馬できなくなる。このため、現政権の退陣を早期に目指すのではないかと見方が出ている。

ルペン氏は「フランス国民の購買力が再び打撃を受けることは容認できない。このレッドライン(越えてはならない一線)を越えれば不信任投票を実施する」とRTLラジオに語った。

バルニエ氏は、分極化が深まる国民議会(下院)で、憲法の規定を使って採決なしで予算法案を成立させる可能性を示唆している。強行すればRNや左派勢力による不信任投票が必至となる。

ルペン氏はまた、家計や企業家、年金生活者への増税にRNは反対で、これまでのところ、この要求が予算案に反映されていないとした。

急進左派「不服従のフランス(LFI)」による年金改革撤回の提案にRNは賛成票を投じるとも語った。左派勢力は不信任案を提出する方針を明らかにしており、RNが棄権すればバルニエ氏は退陣を回避できる。【11月21日 ロイター】
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マクロン大統領は政権崩壊止む無しの予測を側近に語ったようですが、公式にはこの発言は否定されています。

****フランス大統領府、マクロン氏の「政権崩壊」発言を否定****
フランス紙パリジャンはミシェル・バルニエ政権について、極右の支持を取り付け不信任案が成立する結果、近く崩壊するだろうと、エマニュエル・マクロン大統領が語ったとする記事を掲載した。これを受け大統領府(エリゼ宮)は26日、報道内容を否定、火消しに躍起になっている。

同紙は、マクロン氏が25日、エリゼ宮の庭で側近に「政権は倒れるだろう。彼女(極右・国民連合のマリーヌ・ルペン前党首)はいずれ不信任動議に賛成票を投じ、(政権崩壊は)われわれの想定よりも早くなる」と語ったと報じた。

ルペン氏は同日、来年の予算案をめぐる対立を背景に、バルニエ政権の崩壊につながる可能性のある不信任動議を支持すると話していた。

報道を受け大統領府はX(旧ツイッター)の公式アカウント@Elyseeを使って、記事内容を否定するという極めて異例の動きに出た。

大統領府は「エリゼ宮はそのような発言があったことを否定する。大統領は時事問題の解説者ではない。政府は機能しており、国は安定を必要としている」と投稿した。

それに対し同紙のマリオン・ムルグ政治部長はXで、「記事は複数の情報源によって裏取りされている」とし、内容を支持する姿勢を示した。

今夏の総選挙後、少数与党連合から成る政権の首相に、マクロン氏に任命された中道右派のバルニエ氏が就任して以来続いている政治的緊張は、予算案をめぐりピークに達している。予算案は依然、議会承認されていない。 【11月27日 AFP】
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まあ、マクロン大統領の「本音」は当然のところでしょうが、公式には認める訳にはいきません。
それと、何とか予算案を通そうとしているバルニエ政権にしては、後ろから撃たれたような感もあるでしょう。

****バルニエ仏内閣が崩壊危機、来年予算案巡る議会との折衝難航で****
フランスのバルニエ首相が率いる内閣は2025年予算案の議会承認に向けた折衝で難航しており、前途が危ぶまれている。

複数の政界関係者の話では、極右政党の国民連合(RN)と左派連合のどちらも不信任案で賛成に回った場合、内閣がクリスマス前か、早ければ来週中にも崩壊する可能性がある。

これらの関係者は、バルニエ首相が続投できるとしても、今のところ内閣を支持しているRNから要求されている歳出削減の取り組み圧縮を受け入れた場合に限られると指摘。そうすればフランスの財政基盤をさらに弱め、投資家にとってのフランスの魅力を低下させかねないとの見方を示した。

バルニエ内閣はフランスが半年前のような政治危機に再び陥るのを避けようと、RNや他の政治勢力と精力的な交渉を続けているものの情勢は流動的だ。

バルニエ首相は26日のテレビのインタビューで現在の状況について「極めて憂慮される」と語り、内閣が倒れれば金融市場で非常に深刻で荒れた事態が生じると警告した。

地元紙パリジャンは26日、マクロン大統領が側近に「内閣は崩壊する」と告げたと伝え、大統領府が慌てて否定する場面もあった。

市場ではフランス国債のリスクプレミアムが2012年のユーロ危機以来の大きさになり、銀行株が足を引っ張る形でCAC40指数が下落した。

600億ユーロ(628億5000万ドル)の増税と歳出削減を通じて財政赤字拡大に歯止めをかける措置が盛り込まれた来年予算案は,国民議会(下院)で否決された。現在は元老院(上院)で審議されている。

予算成立期限が12月半ばに迫る中で、バルニエ首相は憲法上の規定を用いて議会の採決を得ずに予算承認手続きを終える意向を示唆。ただ、これを強行すれば不信任案が提出されるのは確実だ。

RNを事実上率いるマリーヌ・ルペン氏と同氏の支持者は、家計や中小企業、年金受給者らの生活を守るためにRNが掲げている要求が通らなければ倒閣に動くとバルニエ氏に圧力をかけている。【11月28日 ロイター】
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まあ、遅かれ早かれ・・・という感も。極右政党・国民連合(RN)は「兵府は自分達の監視下にある」と豪語するような政権が長続きする訳がありません。

【ルペン氏 裁判結果では大統領選挙に出馬できない苦しい事情も】
上記のように倒閣も視野に政府に圧力をかける国民連合(RN)ですが、指導者マリーヌ・ルペン氏も自身の裁判で苦しい状況にあります。

マリーヌ・ルペン氏が公金を不正に受給したとされる疑惑を巡る公判が27日、パリの裁判所で結審しました。判決は来年3月31日に言い渡されますが、ルペン氏は公金不正流用罪で禁錮5年と5年間の公職追放などを求刑されており、判決次第では2027年の大統領選に出馬できない可能性があります。

****フランス極右指導者ルペン氏、5年間政治活動禁止の求刑 大統領選出馬に暗雲****
フランスの検察は、極右「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏に禁錮5年と5年間の政治活動禁止を求めた。判決次第で2027年の大統領選に出馬できなくなる可能性がある。

ルペン氏とRNおよび20人以上のRN党員は、フランスで実質的に同党のために働いていた職員への給与支払いに欧州議会の資金を流用したとされている。ルペン氏らは容疑を否認している。

パリの刑事裁判所での約6週間に及ぶ審理の後、検察は13日、ルペン氏に禁錮5年(執行猶予3年)と5年間の政治活動禁止を求刑すると発表した。

検察はRNに200万ユーロ(約3億3000万円)、ルペン氏に30万ユーロの罰金を科すことも求めている。
検察はさらに、不適格判決の「仮執行」を求めた。つまり判決は即時に執行され、判決に対する上訴を行ったとしても、ルペン氏は執行期間中、新たな選挙に立候補できないことになる。

ルペン氏は審理後、記者団に対し、これは民主主義への攻撃であり、検察が同氏を政治の場から締め出そうとする試みだと主張。検察はフランス人から投票したい人に投票する権利を奪おうとしていると訴えた。

ルペン氏はすでに大統領選に3回出馬しており、毎回得票率を伸ばしてきた。12年には3位で得票率は17.9%だったが、17年と22年はマクロン大統領に敗れたものの得票率はそれぞれ33.9%と41.5%だった。【11月15日 CNN】
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次回大統領選挙にはマクロン大統領は出馬できませんので、こんどこそ極右に対する壁を突き破って大統領に、そのために国民連合(RN)ぼ極右体質を薄めて一般国民にも支持される政党に変革してきた・・・・というルペン氏ですが、苦しい状況です。

何より「仮執行」により“判決は即時に執行され、判決に対する上訴を行ったとしても、ルペン氏は執行期間中、新たな選挙に立候補できない”というのがルペン氏にとっては痛い。

アメリカではこういう「仮執行」はないのか? あれば、有罪判決の出ていた「口止め料」訴訟(結局、量刑言い渡しが無期延期になり実質的にトランプ氏の勝利)でトランプ氏の立候補も阻止できたのでは?

まあ、トランプ氏は国民の現状不満の代弁者であり、そういう手段で国民の不満を封じ込めるのは悪手でしょう。

フランスでも司法によって政治家が封殺されるのをよしとしない政敵からも司法批判が。

****極右ルペン氏、政敵が擁護 大統領選出馬危機で―仏****
フランスの極右・国民連合(RN)が欧州連合(EU)から巨額の公金を横領したとされる事件の公判で、検察がRNを実質的に率いるルペン前党首(56)の被選挙権停止を求刑した。

判決次第では、2027年の次期大統領選に立候補できない可能性がある。出馬をうかがうライバルには好都合な事態のはずだが、聞こえてくるのは司法批判や、ルペン氏を擁護する声だ。

「出馬できなくなれば非常にショックだ」。マクロン大統領を支える中道政党「再生」所属のダルマナン前内相(42)は13日、SNSでルペン氏をかばう異例の投稿を行い、波紋を呼んだ。

ルペン氏は12年、17年、22年と過去3回連続で大統領選に出馬。全て敗北したが、マクロン氏と一騎打ちを演じた22年の決選投票では得票率が40%を超えた。RNは今年の総選挙で政権批判の受け皿となり、下院第1党に躍進。波に乗るルペン氏は次期大統領選で最有力候補の一人に数えられる。

一方のダルマナン氏は、今年のパリ五輪を万全の警備で成功に導き、名を上げた。大統領選への意欲は公然の秘密だ。SNSでは、政治家は選挙によって裁かれるべきだと主張。「エリートと大多数の市民の溝を深めてはいけない」とも記し、司法に世論との乖離(かいり)を警告した。

検察は13日の公判で、判決確定を待たず被選挙権を停止できるよう、仮執行の宣告を求めた。ルペン氏はこれが「政治的な死刑」の求刑に等しいと猛反発。死刑を仮執行すると取り返しがつかないと訴えた。EU側の弁護士すら、推定無罪の原則との兼ね合いから「一般論としては仮執行に反対だ」と述べた。

急進左派「不屈のフランス」を束ね、こちらも大統領選出馬を見据えるメランション氏(73)は、政治家に対する司直の裁きに世界中で「不信がある」と指摘。仮執行で被選挙権が停止されれば「政治危機は悪化し、社会に何の得もない」と強調し、犬猿の仲のルペン氏に塩を送った。【11月16日 時事】
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まあ、本音はわかりませんけどね。もし大統領選挙に出られれば、今度こそ極右ルペン大統領誕生の可能性も高く、フランスにとどまらずEU・欧州政治に極めて大きな変革をもたらします。
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