孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ガザ地区の飢餓状況を悪化させる支援物資略奪 それを黙認、あるいは保護するイスラエル軍

2024-11-26 23:13:59 | パレスチナ
(イスラエルは、再び解放された西エレズ検問所から運び込まれる分を含め、ガザに入る支援物資の量が大幅に増えたとしている【11月13日 BBC】)

【人道支援活動が妨げられ飢餓状態に】
イスラエルによる激しい攻撃にさらされているパレスチナ・ガザ地区では“ガザ地区の死者数だけとってみても、ガザ保健当局の発表では約4万4000人となっているが、イギリス・ガーディアン紙の推計によると死者は既に約33万5000人に上るとされる。”【11月24日 TBSNEWSDIG】という多くの犠牲者が出ており、今も増加しつつあります。

そうした空爆などによる直接の攻撃に加えて、生きている厳しい状況に置かれ、飢餓に苦しんでいます。
背景には、人道支援活動が阻害されている現状があります。

****ガザ、飢餓のリスク続く 「最悪のシナリオ」懸念=国連IPC分析****
国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」は17日、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは地区全体が依然として飢餓の危機にさらされ、緊急レベルにあるとの分析結果を公表した。

イスラエル軍の激しい軍事作戦が懸念を強め、人道支援活動が妨げられていることが要因にある。

ガザ地区約230万人の住民の184万人が深刻な食料不安に直面し、そのうち13万3000人が最も深刻な「壊滅的」レベルにあるとした。

6月の報告からは減少したものの、今後数カ月の間に倍増するとみられている。5月以降、ガザ地区への食料の流入が増えたが、9月に人道支援が再び縮小し始めたと指摘した。

IPCは「ガザ地区全体で飢餓のリスクが続いている。最近の敵対行為の高まりを踏まえると、最悪のシナリオが現実となるのではないかという懸念が高まっている」と記した。

IPCによると、イスラエルがこのほど出したガザ地区からの退去命令で人道支援活動が中断され、度重なる避難によって食料や水、医薬品へのアクセスや対応が悪化している。24年9月─25年8月に小児の急性栄養失調が6万件発生すると推定されている。【10月18日 ロイター】
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イスラエルを支援するアメリカも、イスラエルに対し事態の改善を求めてはいますが改善されていません。
しかし、それをもって、アメリカがイスラエルへの武器支援を止めるとか、そういった行動はとられておらず、工連安保理でも依然としてただ1国、イスラエルを支援し続けています。

****イスラエル、ガザへの支援物資増の米要求を満たさず 国連現地機関が指摘****
パレスチナ・ガザ地区で活動する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は12日、アメリカがイスラエルに求めたガザへの支援物資の搬入の増加を、期限までにイスラエルが実行しなかったと説明した。アメリカは要求が満たされなければ、イスラエルへの軍事支援を減らすとしていた。

アメリカはアントニー・ブリンケン国務長官の10月13日付の書簡で、イスラエルに対して11月12日までに、毎日最低350台のトラックがガザに入るのを許可するよう求めていた。

これに関し、ガザ中部に拠点を置くUNRWAのルイーズ・ウォータリッジ上級緊急調整官は12日、イスラエルが期限までに十分なことをしたのかと問われると、単刀直入に「ノー」と答えた。

そして、「ここでは支援が足りない。物資が足りない」、「地域によっては、大勢が飢えている。みんなとてもお腹を空かせている。小麦粉の袋をめぐって争いが起きている。ともかく物資が足りない」とBBCに話した。

国連によると、ガザに運び込まれる支援物資の量は現在、ここ1年で最低レベルに減っている。国連が支援した調査の報告書はこのほど、ガザ北部に過去1カ月、物資がほとんど搬入されておらず、飢餓の恐れが迫っていると警告している。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は、過去1カ月間にガザに入ったトラックの台数を、1日平均40台強としている。

イスラエルは大幅増と主張
これに対しイスラエルは、ガザに運び込まれる支援物資の量を大幅に増やしたと主張している。
また、OCHAによるトラック台数のデータは不正確だとして、物資が搬入されても十分に配布されていないと国連機関を非難している。

イスラエルはさらに、同国とガザの境界のガザ側には、支援物資の荷物が何百ケースも滞留し、支援機関による引き取りを待っている状態だと主張。

支援物資を運ぶトラックの一部は、武装した人々に略奪されているとしている。

しかし、国連はこれを否定。ガザにおける支援物資の安全で円滑な運搬は、ガザを占領しているイスラエルが責任をもつべきだとしている。また、イスラエルの軍事行動によって状況が危険すぎるなら、支援物資の配布はできないとしている。

イスラエルは1年以上にわたり、アメリカが設定する「一線」のほとんどを越えてきた。(中略)

アメリカは、イスラム組織ハマスと戦うイスラエルを支援するため、武器を供与している。ガザでの死や破壊の多くは、そうしたアメリカ製の武器によって引き起こされてきた。

BBCのガザ特派員を2009~2013年に務めたジョン・ドニソン記者は、ジョー・バイデン米大統領の任期が残り少なくなり、パレスチナ人4万3000人以上の命が失われた現在の状況で、米政府がイスラエルへの武器の供給を打ち切ることはないだろうとみている。【11月13日 BBC】
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“(11月20日)国連の安全保障理事会で、ガザ地区での戦闘をめぐり、無条件での即時停戦と人質全員の解放を求める決議案を、日本を含む非常任理事国10か国が提出しましたが、アメリカによる拒否権で否決されました。”【11月21日 NHK】

特に北部での状況が懸念されています。

****ガザ一帯で攻撃続く 国連「北部に40日支援届かず」 米特使がイスラエル入り****
イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ガザ北部のベイトラヒヤ地区など人口密集地を爆撃し、ロイター通信はイスラム原理主義組織ハマスの系列メディアの情報として57人が死亡したと伝えた。20日には住民の避難先になっているガザ中部の学校や、「人道エリア」に指定された南部の一角も攻撃されたもようだ。

国連によると、イスラエル軍は10月6日にガザ北部の一部を包囲して攻撃を強化して以来、申請した支援案件の大半を承認していない。40日以上にわたりベイトラヒヤなどの住民6万5千人以上に支援が届かない状況が続いている。(後略)【11月21日 産経】
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【国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動禁止で更に悪化が】
こうした状況を更に悪化させる事態も。
イスラエルは、ガザ地区における支援活動を担っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動をハマスとの関連を理由に禁止することに。

****イスラエル、UNRWAとの協定破棄を国連に通告 活動禁止法案巡り****
イスラエルのカッツ外相は4日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を認める協定の破棄を正式に国連に通告したと明らかにした。

UNRWAはイスラエル軍の戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区で避難民に人道支援を提供しているが、イスラエル政府の協力がなければ支援が続けられなくなるとみられ、人道危機に拍車がかかるのは必至だ。
 
イスラエルはガザ地区のイスラム組織ハマスの戦闘員がUNRWAに雇用され、昨年10月のハマスの越境攻撃にも参加していたと主張してきた。

イスラエル議会は10月28日、UNRWAの活動を禁ずる法案を可決。3カ月後に発効する予定で、完全に履行されれば、UNRWAは「いかなる活動」もできなくなる。【11月5日 毎日】
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【イスラエル極右 ガザ地区の住民200万人を飢えさせるのは「公正で道徳的な行為かもしれない」】
もともと、イスラエルの極右勢力はガザ住民を飢えさせることを「道徳的」とも主張しています。

****イスラエル閣僚、ガザ200万人を飢えさせるのは「道徳的」 ただし「世界の誰も許さず」****
イスラエルのスモトリッチ財務相はこのほど、イスラエル人の人質が帰還するまでパレスチナ自治区ガザ地区の住民200万人を飢えさせるのは「公正で道徳的な行為かもしれない」が、「世界の誰も我々にそれを許さないだろう」との認識を示した。

極右閣僚のスモトリッチ氏は5日、イスラエル中部の町の会合で行った演説で、イスラエルがガザ地区内の支援物資の配給をコントロールすべきだと言及。地区内の配給ルートはハマスによって支配されていると主張した。

さらに「今日の世界の現実では戦争遂行は不可能。市民200万人を飢えと渇きに追い込むことは世界の誰も許さないだろう。ただ、彼らが人質を解放するまでは、それが公正で道徳的な行為なのかもしれない」と述べ、ハマスではなくイスラエルが支援の配給をコントロールしていれば戦争は既に終わり、人質も帰還しているはずだと付け加えた。【8月7日 CNN】
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イスラエル人の根底にこういう認識がありますので、ガザ地区の窮状への対応も“それなり”のものになり、ときに窮状を悪化させることを厭わないことも。

【支援物資を略奪するギャングを黙認する、あるいは保護するイスラエル軍】
人道支援を阻害し、ガザ地区の状況を悪化させている要因の一つが支援物資を狙い、これを略奪するギャングの存在です。

****ガザで食料援助トラック強奪被害、100台近く 国連機関が明らかに****
パレスチナ人向けの食料を積んだ100台近いトラックが、16日にパレスチナ自治区ガザに入った後に強奪被害に遭っていたことが分かった。国連機関が18日、ロイターに明らかにした。戦争開始から1年1カ月経過したガザでは飢餓が悪化しており、最悪の援助物資被害の一つとなった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と国連世界食糧計画(WFP)から提供された食料を輸送していた車列は、ケレムシャローム検問所から不慣れなルートで急遽出発するようイスラエルから指示されたという。

UNRWAのシニア・エマージェンシー・オフィサー、ルイーズ・ウォータリッジ氏によると、トラック109台のうち98台が襲撃され、何人かの輸送員が負傷した。

同氏は「援助物資をガザ南部・中部に運ぶことの難しさを浮き彫りにした。早急な介入がなければ、深刻な食料不足はさらに悪化し、生きるため人道援助に頼っている200万人以上の命がより危険にさらされることになる」と述べた。

イスラム組織ハマスのTVチャンネル「アルアクサ」はガザのハマス内務省筋の話として、援助トラック略奪に関与した20人以上のギャングメンバーが、ハマス治安部隊が部族委員会と連携して実施した作戦で殺害されたと伝えた。

また、このような略奪行為に手を貸した者が捕まった場合は「鉄拳」で処分するとしている。

WFPの広報官は略奪を確認し、ガザの多くのルートは現在、治安上の問題で通行不可能になっていると明らかにした。【11月19日 ロイター】
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こうした支援物資を略奪するギャングはハマスではなく別の勢力で、イスラエル軍はこうした略奪行為を黙認しているとの指摘もあります。

****戦争犯罪で逮捕状が出たICCのネタニヤフの誤算、「トランプ復権」でおののくイラン、混迷の中東情勢の行方は?****
イスラエル軍の無差別攻撃が激化するガザで、武装集団が国連などの人道支援トラックへの襲撃を繰り返し、食料や水を強奪する事件が相次いでいる。

同軍が犯行を黙認しているもようで、パレスチナ住民は深刻な飢餓に直面している。しかし、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪で逮捕状を出されたイスラエルのネタニヤフ首相にガザの治安悪化を止める考えは全くない。

国連援助の半分奪われる
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、ガザで11月16日、食料を運んでいたトラック109台が武装集団の襲撃を受け、98台が強奪された。この事件をはじめ、10月初めにはトラック100台が襲われ、80台が奪われた。この際、運転手4人が射殺されるなど犯行の凶悪ぶりがエスカレートしている。
 
犯行の多くはガザへの支援物資の搬入口であるケレムシャローム検問所から約3キロ付近で行われ、武装集団が道路を封鎖して待ち伏せしている場合がほとんどだ。

国連によると、夏以降に強奪された物資は2550万ドル、日本円にして約40億円にも上っており、「世界国連食糧計画」が南部から搬入した食料支援の半分が盗まれたという。
 
ガザの政情はイスラエル軍の攻撃激化で、治安を維持してきたハマスの警察力が弱体化、2月ごろから急速に悪化した。

支援トラックへの襲撃は当初、飢えに苦しむ住民らの犯行が多かったが、次第に組織的な犯罪集団によるものに変わった。特にイスラエル軍が南部ラファの検問所を閉鎖し、搬入口をケレムシャロームのみに限定したころから武装集団の強奪が横行するようになった。
 
武装集団の狙いは支援物資の缶詰などに隠されてエジプトから密輸されるタバコだった。タバコはガザの住民にとっては現金にも匹敵するような貴重品。現在は20本入り一箱で1000ドル(15万円)近くにまでは跳ね上がっているという。

当初ギャング団はタバコ以外の食料などについては、そのまま放置していたが、トラックごと強奪し、闇市場で売却を始めた。

イスラエル軍は黙認
米ワシントン・ポストによると、ギャング団の黒幕はガザ南部やエジプトのシナイ半島に根を張るベドウィンの「タラビン部族」のヤセル・アブシャバブ一家。約100人の配下がいる。アブシャバブは襲撃を認めたものの、食料強奪は否定している。ハマスには長年抑えられてきた関係だ。

襲撃が行われたのはイスラエル軍の支配地域だが、問題は同軍が強奪を目撃しながら事実上黙認していることだろう。

トラック輸送の安全を確保するよう求めた国連からの要請も無視したとされる。イスラエルはハマスに食料などが渡ることを恐れて支援物資のガザ搬入を渋ってきた経緯がある。

国連はイスラエル軍が武装集団の活動を“保護”していると疑っている。武装集団がハマスの復活を阻む勢力になることを期待する思惑があるようだ。

物資強奪の横行はガザの食料不足にとって最大の障害になっているが、人道支援関係者は「ガザはもはや無法地帯。特に北部の飢餓は深刻だ」と指摘している。ガザではイスラエル軍の攻撃で住民の犠牲は4万4000人を超えた。(後略)【11月26日 WEDGE】 
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支援物資の半分がギャングによって略奪され、こうした略奪をイスラエル軍は黙認している、あるいは保護している・・・民間人犠牲を厭わない爆撃にくわえて、ネタニヤフ首相への国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を正当化するものでしょう。
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