インド、パキスタンなどに蔓延する臓器密売の話。
1月末、腎臓密売グループが摘発されました。
****インド:国際腎臓密売組織を摘発…600人以上被害か****
首都ニューデリー近郊で約15年にわたり欧米などから顧客を集めて違法に腎臓移植をしていたグループが摘発された。
国内各地の貧困層の人々をだまして半ば強制的に腎臓を摘出しており、被害者は600人を超えるとみられる。
警察は医師1人を含む5人を臓器移植法違反で逮捕、主犯の医師ら3人を指名手配した。主犯は西部ムンバイでも同様の腎臓密売をしていた。
グループは貧しい人に日雇い仕事を持ち掛けて監禁し、内部を改造したハリヤナ州グルガオンの3階建て住居で手術を行っていた。
供述では、腎臓を摘出した人には5万~10万ルピー(約14万~28万円)を報酬として与え、移植を受けた顧客には180万~250万ルピー(約500万~700万円)を請求していた。(共同)【1月27日 毎日】
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指名手配された主犯の医師の名はアミト・クマール、通称“Doctor Kidney”。
2月7日、ネパールの小都市で逮捕されました。
逮捕時、14万5千ドルの現金と90万ユーロの小切手、それに相当のネパール・ルピーを持っていたそうです。
日本円に換算すると1億円を超える金額です。
仕事にあぶれた労働者を誘い込み、睡眠薬で眠らせ、腎臓を摘出するようなこともあったようで、目が覚めたら、腎臓がなくなっていた、という証言が出ています。
摘出腎臓は、デリーをはじめバンガロール、チェンナイなど数都市の病院に送られ、アミト以下の医師たちが直接、施術した場合もあります。
手術料は正規の施療費よりかなり安いようです。
こうした臓器を各都市の病院で待っていた患者は、インド人ばかりではなく、英国、米国、トルコ、ネパール、ドバイ、シリア、サウジアラビアから患者が訪れていたようです。
インド、パキスタンを中心とする同地域には “医療観光”という特別ツアーもあるそうです。
インドでも臓器移植は法規制があり、一定の親族以外からの提供は禁止されています。
外国人患者たちは、脱法行為であることを認識しながら施術を受けていました。
「臓器のスーパーマーケット」として知られる法規制が緩いパキスタンでも同様な社会現象があり、年間2000件の腎臓移植が行われ、うち500件は患者が国立病院で家族から生体腎移植を受けるケース。
残る1500件が私立病院で他人の臓器を移植されるケースで、このうち約900~1000件を中東、北米、欧州、南アジアの20か国以上から来る患者が占めているといわれます。
なかでも圧倒的に多いのがサウジアラビアです。
パキスタン国内での売買額は年間10億ルピー(約19億円)に上るとか。
被害に遭うのは、実質的に奴隷のような状態で働かされている人々。借金を払って自由の身になりたいとの思いから臓器を売り渡すケースが多いそうです。【07年8月21日 AFP】
そのパキスタンで、昨年9月臓器移植規制大統領令が出されました。
貧しい者達が臓器売買を強要されているとの異議申し立てを受け、最高裁判所が政府に対し規則制定を命じたものです。
新法ではパキスタン人が外国人に臓器を販売することを禁止。また、許可なくヒトの臓器を売買した者に対し禁固10年と多額の罰金を科すよう定めています。
ただ、多くの抜け穴があるそうで、例えば、強要、脅迫を伴わない“自発的な”提供であれば、親族以外の腎臓提供を認めています。
このため、「貧しいドナーと健康な腎臓が必要な金持ちがいる限り、臓器売買は続くだろう。臓器売買仲介者が、貪欲になりドナーに約束した金を払わなくなるまで、臓器売買に異議を唱える者はいなかった」と語るかつての腎臓提供者(妻の帝王切開費用をつくるため自分の腎臓を売却)もいます。【07年10月3日 IPS】
お金に困った貧者が自分の臓器を自発的に売って必要なお金を得る、結果、金持ちがその臓器を買って長生きする・・・この図式を禁じるべきかどうかについては個人的には微妙なものを感じます。
もちろん、金に困った貧者が臓器を売らずにすむようにできれば話は簡単ですが、現実問題として臓器を売ることでしかお金を得られないとしたら、それがどうしても必要なお金だったら・・・。
日本でも昔(ほんの数十年前ですが)“売血”の制度がありました。
数年前、アメリカの推理小説を読んでいて、“自分の命を投資対象にする”非常に面白い制度があるのを知りました。
ガンだかエイズだかで余命幾ばくもないと分かった身寄りのない患者が、自分にかけられた生命保険を“投資家”に売ることができ、それを仲介するブローカーが存在するそうです。
これにより、患者は生きているあいだに大金を手にできます。
“投資家”は、保険料を払い続けますが、その患者が死ねば短期間で投資額を大きく上回る資金を回収できます。(これこそ“ハゲタカファンド”ですが)
当時は、法的にはOKでけど、投資対象の患者が死ぬのを今か今かと待つようなイメージがあり、社会的には眉をひそめる人が多いということでした。
現在どうなっているのかと少し検索してみると、アメリカにはライフ・セツルメント(生命保険の買取)市場というものがあるようです。
過去5年間にライフ・セツルメント市場は2倍に急拡大しており、ライフ・セツルメントは今やファイナンシャル・プランニングにおける 重要な一つの手法となりつつあるそうです。
顧客対象が末期のエイズ患者(バイアティカル・セツルメント)から、 70代以上の高所得者層に移ったことにより市場の拡大が促進されたそうで、利用者は売却代金を老後の医療・介護資金に充当することが主な目的とか。
(日本では、契約先保険会社での転換制度により生存保障型の保険に見直す方法が多く利用されています。)
(http://www.surety.co.jp/topics/usa.htm)
現実には、投資家が高齢者をクルーズで“接待”して生命保険に加入してもらい、お金を貸して掛け金を払わせ、すぐに買い取る、買った生命保険は、証券化してさらに転売される・・・といったことも起こっているとか。
もちろん「人生の晩年に、体が資産になるなんて」と喜ぶ人もいます。
投資家が早期資金回収のため被保険者を殺害するというのは論外ですが、何より困っているのは、保険会社だそうです。
生命保険は通常、保険金が払われる前に解約する人、契約そのものを忘れる人を計算に入れて成り立っていますが、これが投資となると、すべて満期を向かえ莫大な保険金支払いが必要になるとか。
(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/109381/)
日本でも埼玉県のがん患者の男性(51)が都内の買い取り業者に売却しようと、保険会社に対し名義変更に同意するよう求めた裁判があり、控訴審判決で東京高裁に棄却されています。
話が臓器密売からだいぶずれてきましたが、生命倫理にまつわる問題といったところでしょうか。
1月末、腎臓密売グループが摘発されました。
****インド:国際腎臓密売組織を摘発…600人以上被害か****
首都ニューデリー近郊で約15年にわたり欧米などから顧客を集めて違法に腎臓移植をしていたグループが摘発された。
国内各地の貧困層の人々をだまして半ば強制的に腎臓を摘出しており、被害者は600人を超えるとみられる。
警察は医師1人を含む5人を臓器移植法違反で逮捕、主犯の医師ら3人を指名手配した。主犯は西部ムンバイでも同様の腎臓密売をしていた。
グループは貧しい人に日雇い仕事を持ち掛けて監禁し、内部を改造したハリヤナ州グルガオンの3階建て住居で手術を行っていた。
供述では、腎臓を摘出した人には5万~10万ルピー(約14万~28万円)を報酬として与え、移植を受けた顧客には180万~250万ルピー(約500万~700万円)を請求していた。(共同)【1月27日 毎日】
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指名手配された主犯の医師の名はアミト・クマール、通称“Doctor Kidney”。
2月7日、ネパールの小都市で逮捕されました。
逮捕時、14万5千ドルの現金と90万ユーロの小切手、それに相当のネパール・ルピーを持っていたそうです。
日本円に換算すると1億円を超える金額です。
仕事にあぶれた労働者を誘い込み、睡眠薬で眠らせ、腎臓を摘出するようなこともあったようで、目が覚めたら、腎臓がなくなっていた、という証言が出ています。
摘出腎臓は、デリーをはじめバンガロール、チェンナイなど数都市の病院に送られ、アミト以下の医師たちが直接、施術した場合もあります。
手術料は正規の施療費よりかなり安いようです。
こうした臓器を各都市の病院で待っていた患者は、インド人ばかりではなく、英国、米国、トルコ、ネパール、ドバイ、シリア、サウジアラビアから患者が訪れていたようです。
インド、パキスタンを中心とする同地域には “医療観光”という特別ツアーもあるそうです。
インドでも臓器移植は法規制があり、一定の親族以外からの提供は禁止されています。
外国人患者たちは、脱法行為であることを認識しながら施術を受けていました。
「臓器のスーパーマーケット」として知られる法規制が緩いパキスタンでも同様な社会現象があり、年間2000件の腎臓移植が行われ、うち500件は患者が国立病院で家族から生体腎移植を受けるケース。
残る1500件が私立病院で他人の臓器を移植されるケースで、このうち約900~1000件を中東、北米、欧州、南アジアの20か国以上から来る患者が占めているといわれます。
なかでも圧倒的に多いのがサウジアラビアです。
パキスタン国内での売買額は年間10億ルピー(約19億円)に上るとか。
被害に遭うのは、実質的に奴隷のような状態で働かされている人々。借金を払って自由の身になりたいとの思いから臓器を売り渡すケースが多いそうです。【07年8月21日 AFP】
そのパキスタンで、昨年9月臓器移植規制大統領令が出されました。
貧しい者達が臓器売買を強要されているとの異議申し立てを受け、最高裁判所が政府に対し規則制定を命じたものです。
新法ではパキスタン人が外国人に臓器を販売することを禁止。また、許可なくヒトの臓器を売買した者に対し禁固10年と多額の罰金を科すよう定めています。
ただ、多くの抜け穴があるそうで、例えば、強要、脅迫を伴わない“自発的な”提供であれば、親族以外の腎臓提供を認めています。
このため、「貧しいドナーと健康な腎臓が必要な金持ちがいる限り、臓器売買は続くだろう。臓器売買仲介者が、貪欲になりドナーに約束した金を払わなくなるまで、臓器売買に異議を唱える者はいなかった」と語るかつての腎臓提供者(妻の帝王切開費用をつくるため自分の腎臓を売却)もいます。【07年10月3日 IPS】
お金に困った貧者が自分の臓器を自発的に売って必要なお金を得る、結果、金持ちがその臓器を買って長生きする・・・この図式を禁じるべきかどうかについては個人的には微妙なものを感じます。
もちろん、金に困った貧者が臓器を売らずにすむようにできれば話は簡単ですが、現実問題として臓器を売ることでしかお金を得られないとしたら、それがどうしても必要なお金だったら・・・。
日本でも昔(ほんの数十年前ですが)“売血”の制度がありました。
数年前、アメリカの推理小説を読んでいて、“自分の命を投資対象にする”非常に面白い制度があるのを知りました。
ガンだかエイズだかで余命幾ばくもないと分かった身寄りのない患者が、自分にかけられた生命保険を“投資家”に売ることができ、それを仲介するブローカーが存在するそうです。
これにより、患者は生きているあいだに大金を手にできます。
“投資家”は、保険料を払い続けますが、その患者が死ねば短期間で投資額を大きく上回る資金を回収できます。(これこそ“ハゲタカファンド”ですが)
当時は、法的にはOKでけど、投資対象の患者が死ぬのを今か今かと待つようなイメージがあり、社会的には眉をひそめる人が多いということでした。
現在どうなっているのかと少し検索してみると、アメリカにはライフ・セツルメント(生命保険の買取)市場というものがあるようです。
過去5年間にライフ・セツルメント市場は2倍に急拡大しており、ライフ・セツルメントは今やファイナンシャル・プランニングにおける 重要な一つの手法となりつつあるそうです。
顧客対象が末期のエイズ患者(バイアティカル・セツルメント)から、 70代以上の高所得者層に移ったことにより市場の拡大が促進されたそうで、利用者は売却代金を老後の医療・介護資金に充当することが主な目的とか。
(日本では、契約先保険会社での転換制度により生存保障型の保険に見直す方法が多く利用されています。)
(http://www.surety.co.jp/topics/usa.htm)
現実には、投資家が高齢者をクルーズで“接待”して生命保険に加入してもらい、お金を貸して掛け金を払わせ、すぐに買い取る、買った生命保険は、証券化してさらに転売される・・・といったことも起こっているとか。
もちろん「人生の晩年に、体が資産になるなんて」と喜ぶ人もいます。
投資家が早期資金回収のため被保険者を殺害するというのは論外ですが、何より困っているのは、保険会社だそうです。
生命保険は通常、保険金が払われる前に解約する人、契約そのものを忘れる人を計算に入れて成り立っていますが、これが投資となると、すべて満期を向かえ莫大な保険金支払いが必要になるとか。
(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/109381/)
日本でも埼玉県のがん患者の男性(51)が都内の買い取り業者に売却しようと、保険会社に対し名義変更に同意するよう求めた裁判があり、控訴審判決で東京高裁に棄却されています。
話が臓器密売からだいぶずれてきましたが、生命倫理にまつわる問題といったところでしょうか。