ベルギーの“無政府状態”にようやく終止符が打たれました。
ベルギーで民族間の対立から組閣できないという話題をとりあげたのが昨年11月15日でしたが、あれから随分たちます。(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071115)
その時点ですでに組閣ができない状態が150日続いていましたので、昨年6月以来、9ヶ月ぶりの組閣ということです。
ベルギーという国は北部(フランドル地域圏)にはオランダ語系のフラマン語を話すフラマン人、南部(ワロン地域圏)にはフランス語またはワロン語(フランス語の方言的なものだそうです。面倒なので以下、両方まとめて“フランス語”と略します。)を話すワロン人が住んでおり、人口約1050万人のうち、フラマン語のフランドル地域圏に600万人、フランス語を話すワロン地域圏に350万人、フランス語人口が大半を占める首都ブリュッセルに100万人という分布です。。
1人当たりのGDPが世界最高クラスのベルギーですが、工業・サービス業が発達した北部のフランドル地域に比べ、石炭・鉄鋼業が衰退した南部のワロン地域では失業率が2倍以上あります。
政治的には従来フランス語圏が優位な立場を占めていましたが、昨年6月10日の総選挙でフラマン語=オランダ語圏の中道右派政党・キリスト教民主フランドル党(CD&V)が勝利。
フランドル地域圏の自治権拡大を強く要求するCD&Vにフランス語圏政党が反発、連立内閣組閣工作が進まず、チェコとスロバキアの分裂国家のようにベルギーも両語圏に分裂する恐れまでも取りざたされていました。
“分裂”を危惧する国民が自宅の窓にベルギーの旗を掲げるような光景も首都ブリュッセルで見られました。
昨年12月末になってようやく今年3月23日までの期限付き“暫定内閣”が発足しましたが、その期限切れを控えて、今回ようやく正式の内閣が成立することになりました。
首相はフラマン語系のCD&Vのイブ・ルテルム氏ですが、「フランス語圏の人間は、フラマン語を学ぶ知性がない」という問題発言や、昨年の建国記念日に取材でベルギー国歌を口ずさむように求められ、悪ふざけなのか本当に知らなかったのか、フランス国歌を歌うといった軽率な行動などで顰蹙をかっていました。
またフランマン語圏の利害に固執した姿勢が、今回の長期“無政府状態”の原因とも考えられており、国民の人気は芳しくないようです。
首相就任後、「ベルギー社会の多様性を尊重する」と述べていますが、フランス語圏の92%が新首相を「信用しない」としているそうです。【3月22日 毎日】
ベルギー国民は“地域、国家、ヨーロッパ”という3層のアイデンティティーを持っているとも言われますが、昨年11月15日のブログでも、また12月17日の“スコットランド独立”でも述べたように、今後EUの機能が更に拡充していけば、敢えて既存の厄介な“国家”というシステム維持に固執する必要もなくなるのかもしれません。
ベルギーと違って相変わらず決まらないのがレバノン大統領。
しかも、ベルギーと違って、かなり血なまぐさい事件なども起きる展開が続いています。
レバノンは昨年11月以来、議会で欧米や多くのアラブ諸国が支持する多数派とシリア・イランが支持する野党勢力(ヒズボラなど)が対立して、大統領を選出できない状態が続いています。
2月25日に、議会での大統領選を3月11日に延期するという“15回目”の延期が発表されました。
さすがに、ここまで繰り返すと殆どニュースにもとりあげられない状態で、3月11日がどうなったのか確認できませんが、少なくとも新大統領が決まったという話は聞きませんので。恐らく“16回目”の延期に入っているものと思われます。
複雑な宗派が入り組む“モザイク国家”であるレバノンは、大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、国会議長はシーア派からの選出が決まっているなど、宗派に応じてポストや議席数を配分する独特の「宗派主義体制」をとっています。
スレイマン軍司令官(キリスト教マロン派)を新大統領の統一候補とすることで与野党双方が合意しましたが、新大統領就任後に発足する内閣のポスト配分などをめぐる対立が続いています。
親シリアのシーア派組織ヒズボラなどの野党連合は、新大統領就任後の次期内閣の閣僚構成について、内閣の決定に拒否権を行使できる3分の1以上の閣僚ポストを求めています。
スレイマン軍司令官を選出するためには、新大統領選出に先立ち、公職在職者の大統領就任を禁じた憲法の改正案を国会の定足数3分の2以上の賛成で可決する必要がありますから、与党連合単独では改正は不可能で野党の協力が必要になります。
更にシーア派の国会議長が国会の招集権を握っています。
与党側が譲歩しない限り、どうにも審議が前に進まない状況です。
一方、政局の混迷を打開するために解散・総選挙を実施すれば野党側が優勢とみられることから、与党連合はそれにも踏み切れないという八方塞りの状態です。【07年12月23日 産経】
業を煮やしたアメリカ・ブッシュ米大統領は「シリアによる内政干渉」を非難し、与党側に国会での「単独採決」を促したそうですが、これは非合法手続きであり、強行すればレバノン内戦再開にもつながりかねません。
今年2月にはアラブ連盟による調停作業も失敗。
そうこうするうちに、2月12日ヒズボラの民兵組織指揮官の1人、イマド・ムグニエ容疑者がシリアで自動車爆弾によって殺害されました。
ヒズボラ側はイスラエルによる暗殺だと非難、報復を主張してイスラエルとの緊張が一気に高まる事態となっています。(イスラエルは関与を否定)
こうしたレバノン情勢緊張を受けて、アメリカは「地域安定化に対する支援を示すため」レバノン沿岸沖に駆逐艦「コール」を派遣。
殆ど事態打開の目処がたたないどころか、内戦再開の危険すら孕んだ展開となっています。
日本でも与野党対立から日銀総裁が空席となる事態に突入していますが、ベルギーとかレバノンの情勢をみると、“まあ、半月やそこらのことでそんなに律儀にあせらなくてもいいいのかも。代行権者がいるならそれはそれで・・・。それに海外も日銀総裁が誰でも関心ないだろうし・・・。気の済むまでやれば”なんて不埒なことを考えてしまいます。
ベルギーで民族間の対立から組閣できないという話題をとりあげたのが昨年11月15日でしたが、あれから随分たちます。(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071115)
その時点ですでに組閣ができない状態が150日続いていましたので、昨年6月以来、9ヶ月ぶりの組閣ということです。
ベルギーという国は北部(フランドル地域圏)にはオランダ語系のフラマン語を話すフラマン人、南部(ワロン地域圏)にはフランス語またはワロン語(フランス語の方言的なものだそうです。面倒なので以下、両方まとめて“フランス語”と略します。)を話すワロン人が住んでおり、人口約1050万人のうち、フラマン語のフランドル地域圏に600万人、フランス語を話すワロン地域圏に350万人、フランス語人口が大半を占める首都ブリュッセルに100万人という分布です。。
1人当たりのGDPが世界最高クラスのベルギーですが、工業・サービス業が発達した北部のフランドル地域に比べ、石炭・鉄鋼業が衰退した南部のワロン地域では失業率が2倍以上あります。
政治的には従来フランス語圏が優位な立場を占めていましたが、昨年6月10日の総選挙でフラマン語=オランダ語圏の中道右派政党・キリスト教民主フランドル党(CD&V)が勝利。
フランドル地域圏の自治権拡大を強く要求するCD&Vにフランス語圏政党が反発、連立内閣組閣工作が進まず、チェコとスロバキアの分裂国家のようにベルギーも両語圏に分裂する恐れまでも取りざたされていました。
“分裂”を危惧する国民が自宅の窓にベルギーの旗を掲げるような光景も首都ブリュッセルで見られました。
昨年12月末になってようやく今年3月23日までの期限付き“暫定内閣”が発足しましたが、その期限切れを控えて、今回ようやく正式の内閣が成立することになりました。
首相はフラマン語系のCD&Vのイブ・ルテルム氏ですが、「フランス語圏の人間は、フラマン語を学ぶ知性がない」という問題発言や、昨年の建国記念日に取材でベルギー国歌を口ずさむように求められ、悪ふざけなのか本当に知らなかったのか、フランス国歌を歌うといった軽率な行動などで顰蹙をかっていました。
またフランマン語圏の利害に固執した姿勢が、今回の長期“無政府状態”の原因とも考えられており、国民の人気は芳しくないようです。
首相就任後、「ベルギー社会の多様性を尊重する」と述べていますが、フランス語圏の92%が新首相を「信用しない」としているそうです。【3月22日 毎日】
ベルギー国民は“地域、国家、ヨーロッパ”という3層のアイデンティティーを持っているとも言われますが、昨年11月15日のブログでも、また12月17日の“スコットランド独立”でも述べたように、今後EUの機能が更に拡充していけば、敢えて既存の厄介な“国家”というシステム維持に固執する必要もなくなるのかもしれません。
ベルギーと違って相変わらず決まらないのがレバノン大統領。
しかも、ベルギーと違って、かなり血なまぐさい事件なども起きる展開が続いています。
レバノンは昨年11月以来、議会で欧米や多くのアラブ諸国が支持する多数派とシリア・イランが支持する野党勢力(ヒズボラなど)が対立して、大統領を選出できない状態が続いています。
2月25日に、議会での大統領選を3月11日に延期するという“15回目”の延期が発表されました。
さすがに、ここまで繰り返すと殆どニュースにもとりあげられない状態で、3月11日がどうなったのか確認できませんが、少なくとも新大統領が決まったという話は聞きませんので。恐らく“16回目”の延期に入っているものと思われます。
複雑な宗派が入り組む“モザイク国家”であるレバノンは、大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、国会議長はシーア派からの選出が決まっているなど、宗派に応じてポストや議席数を配分する独特の「宗派主義体制」をとっています。
スレイマン軍司令官(キリスト教マロン派)を新大統領の統一候補とすることで与野党双方が合意しましたが、新大統領就任後に発足する内閣のポスト配分などをめぐる対立が続いています。
親シリアのシーア派組織ヒズボラなどの野党連合は、新大統領就任後の次期内閣の閣僚構成について、内閣の決定に拒否権を行使できる3分の1以上の閣僚ポストを求めています。
スレイマン軍司令官を選出するためには、新大統領選出に先立ち、公職在職者の大統領就任を禁じた憲法の改正案を国会の定足数3分の2以上の賛成で可決する必要がありますから、与党連合単独では改正は不可能で野党の協力が必要になります。
更にシーア派の国会議長が国会の招集権を握っています。
与党側が譲歩しない限り、どうにも審議が前に進まない状況です。
一方、政局の混迷を打開するために解散・総選挙を実施すれば野党側が優勢とみられることから、与党連合はそれにも踏み切れないという八方塞りの状態です。【07年12月23日 産経】
業を煮やしたアメリカ・ブッシュ米大統領は「シリアによる内政干渉」を非難し、与党側に国会での「単独採決」を促したそうですが、これは非合法手続きであり、強行すればレバノン内戦再開にもつながりかねません。
今年2月にはアラブ連盟による調停作業も失敗。
そうこうするうちに、2月12日ヒズボラの民兵組織指揮官の1人、イマド・ムグニエ容疑者がシリアで自動車爆弾によって殺害されました。
ヒズボラ側はイスラエルによる暗殺だと非難、報復を主張してイスラエルとの緊張が一気に高まる事態となっています。(イスラエルは関与を否定)
こうしたレバノン情勢緊張を受けて、アメリカは「地域安定化に対する支援を示すため」レバノン沿岸沖に駆逐艦「コール」を派遣。
殆ど事態打開の目処がたたないどころか、内戦再開の危険すら孕んだ展開となっています。
日本でも与野党対立から日銀総裁が空席となる事態に突入していますが、ベルギーとかレバノンの情勢をみると、“まあ、半月やそこらのことでそんなに律儀にあせらなくてもいいいのかも。代行権者がいるならそれはそれで・・・。それに海外も日銀総裁が誰でも関心ないだろうし・・・。気の済むまでやれば”なんて不埒なことを考えてしまいます。