2002年以来、400万以上のアフガニスタン人が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の援助によってアフガニスタンへの帰還を果たしており、内320万人がパキスタンから、86万人がイランからの帰還者となっています。
現在なお300万人のアフガニスタンが難民認定を受けて避難生活を送っており、内200万人がパキスタン、91万人がイランにいます。
2007年でみると、35万6千人のアフガニスタン難民がパキスタンからアフガニスタン本国に帰還しました。
この本国自主帰還は、冬季は一時的に中断されており、春を迎える今月から再開されます。
これらの数字はUNHCRの把握している者だけですので、実際はこの数字を上回る人々の移動があるものと推測されます。
では、これら帰還難民は、希望して自主的にアフガニスタン本国に戻っているのでしょうか?
どうもそのようではないようです。
UNHCRの報告書によると、パキスタン国内で難民登録された216万人の難民のうちの82%が、近い将来アフガニスタンへ帰国する意志はないと表明しているそうです。
アフガニスタンへの帰国を望まないもっとも多い理由は、治安問題です。
他の理由としては、住む場所がない、食べていける仕事がないということです。
2006年10月から2007年2月にかけて、パキスタン当局とUNHCRは、人口調査に基づき、アフガン難民の登録を実施しました。
それにより、216万人の難民がパキスタン政府に難民登録され、登録証を受け取りました。
UNHCRは、難民登録をしていないアフガン人に、ふるさとへの帰還を勧めています。
本国へ戻りたくないとの理由から、難民登録を済ませていない人々も少なくはないそうですが、法的には難民登録カードを持つ人々だけが、2009年末までパキスタンに留まることができるのです。
パキスタン国内での難民の生活が恵まれている訳ではありません。
上記報告書によると、パキスタンに住むアフガニスタン難民のうち経済活動をしている人々は20%だけです。
そのうち48%は単純労働に従事しているか日雇い労働者です。
子供の教育環境も推して知るべきものがあります。
その難民キャンプでの生活も維持できなくなっています。
近年パキスタン政府は、難民キャンプが過激派の温床になっているという治安上の理由で、キャンプの閉鎖を主張しています。
このため06年、UNHCRおよびアフガニスタンとの間で、難民に関する三者協議が行われました。
その結果、キャンプ四カ所の閉鎖が決定し、昨年9月時点で二カ所で難民の退去がほぼ完了しています。
閉鎖されたキャンプの難民は、UNHCRの支援でアフガニスタンへ帰還するか、パキスタン政府指定の別のキャンプに移動するかの選択を迫られます。
昨年“自主帰還難民”がこれまでより大幅に増加(9月時点で前年同期の三倍増)したのは、帰還への圧力がアフガニスタン難民に重くのしかかっていることの表れでもあります。
イランでも事情は同じです。
イラン政府はアフガンニスタン人の不法入国者を強制退去させアフガニスタンへ帰還するよう強い意向を示し続けています。
そのことは合法的にイランへ移民したアフガニスタン人に対してもさらなる圧力がかかり、アフガニスタン人とその他の外国人たちは、もはやアフガニスタンとの国境沿いにあるイラン東部のいかなる街に住むことは許されないとイラン政府は発表しました。
これを受けてUNCHRと世界食糧計画(WFP)およびその他の国際救済組織が、アフガニスタン帰還難民への緊急支援を始めています。
国家体制の如何を問わず、難民は“厄介者”です。
UNHCRの事業について、そのホームページから若干紹介します。
********************
UNHCRは難民の帰国後の不安を和らげ、スムーズな帰還を推進するため、難民の代表が本国アフガニスタンのコミュニティーを訪ねてその様子を確認する、あるいは、本国コミュニティーの代表が避難しているアフガン人に会うために外国に出かけるといったことを行っています。
UNHCRの支援を得てアフガニスタンに戻りたいアフガン難民は、避難国でUNHCRに申請し、帰還の登録をし、自主帰還用紙に書き込みます。
自主帰還用紙は、パキスタン、イラン、その他の受け入れ国にある自主帰還難民センターで入手することができます。
アフガニスタンに着くと、ふるさとまでの交通費と再定住のための資金を受け取るため、難民はエンキャッシュメントセンター(Encashment Center)に行きます。
そこでは、地雷回避訓練から、子供のためのポリオやはしかの予防接種、基本的な医療支援、法律上の支援、一夜を過ごすための仮住居の提供など、様々なサービスも提供しています。
パキスタンやイランの難民に交通費として与えられる補助金は、アフガニスタンのふるさとまでの距離に応じて一人あたり10ドルから23ドルです。
交通費とともに、すべての難民は再定住するための資金として一人当たり83ドルが支給されます。
これによってさしせまって必要なものや、目的地のふるさとについた後すぐに必要なものなどを買うことができます。
アフガン難民の5年間の自主帰還で、UNHCRは間接的に$80,000,000をアフガニスタン経済に投入したことになるそうです。
**********************
こうして、本国に帰還した難民を待っている現実は厳しいものがあります。
アメリカの報告書によると、アフガニスタンの失業率は現在少なくとも40%、そして今後もアフガン難民の帰還により毎年増加する傾向にある、としています。
国内の深刻な食糧難が更に追い討ちをかけます。
最近の世界的な食糧価格の高騰により帰還民たちは直接大きな打撃を受けています。
近年、アフガニスタン政府を悩ましているのが麻薬中毒患者の急増です。
アフガン帰還民を含む仕事に就けない貧しい人々が麻薬や犯罪に手を染めていきます。
アフガニスタンの麻薬中毒者の数は現在、およそ100万人に上るそうです。
「アメリカは『アフガニスタンの復興』よりも『敵を殺すこと』を優先している」とアフガニスタンのメディア関係者のひとりは訴えています。
「このままの状態が続くようであれば、多くの若者がタリバンに流れ、政情不安は益々悪化するだろう」とアフガニスタンの将来に懸念を示す意見もあります。【3月12日 IPS】
現在なお300万人のアフガニスタンが難民認定を受けて避難生活を送っており、内200万人がパキスタン、91万人がイランにいます。
2007年でみると、35万6千人のアフガニスタン難民がパキスタンからアフガニスタン本国に帰還しました。
この本国自主帰還は、冬季は一時的に中断されており、春を迎える今月から再開されます。
これらの数字はUNHCRの把握している者だけですので、実際はこの数字を上回る人々の移動があるものと推測されます。
では、これら帰還難民は、希望して自主的にアフガニスタン本国に戻っているのでしょうか?
どうもそのようではないようです。
UNHCRの報告書によると、パキスタン国内で難民登録された216万人の難民のうちの82%が、近い将来アフガニスタンへ帰国する意志はないと表明しているそうです。
アフガニスタンへの帰国を望まないもっとも多い理由は、治安問題です。
他の理由としては、住む場所がない、食べていける仕事がないということです。
2006年10月から2007年2月にかけて、パキスタン当局とUNHCRは、人口調査に基づき、アフガン難民の登録を実施しました。
それにより、216万人の難民がパキスタン政府に難民登録され、登録証を受け取りました。
UNHCRは、難民登録をしていないアフガン人に、ふるさとへの帰還を勧めています。
本国へ戻りたくないとの理由から、難民登録を済ませていない人々も少なくはないそうですが、法的には難民登録カードを持つ人々だけが、2009年末までパキスタンに留まることができるのです。
パキスタン国内での難民の生活が恵まれている訳ではありません。
上記報告書によると、パキスタンに住むアフガニスタン難民のうち経済活動をしている人々は20%だけです。
そのうち48%は単純労働に従事しているか日雇い労働者です。
子供の教育環境も推して知るべきものがあります。
その難民キャンプでの生活も維持できなくなっています。
近年パキスタン政府は、難民キャンプが過激派の温床になっているという治安上の理由で、キャンプの閉鎖を主張しています。
このため06年、UNHCRおよびアフガニスタンとの間で、難民に関する三者協議が行われました。
その結果、キャンプ四カ所の閉鎖が決定し、昨年9月時点で二カ所で難民の退去がほぼ完了しています。
閉鎖されたキャンプの難民は、UNHCRの支援でアフガニスタンへ帰還するか、パキスタン政府指定の別のキャンプに移動するかの選択を迫られます。
昨年“自主帰還難民”がこれまでより大幅に増加(9月時点で前年同期の三倍増)したのは、帰還への圧力がアフガニスタン難民に重くのしかかっていることの表れでもあります。
イランでも事情は同じです。
イラン政府はアフガンニスタン人の不法入国者を強制退去させアフガニスタンへ帰還するよう強い意向を示し続けています。
そのことは合法的にイランへ移民したアフガニスタン人に対してもさらなる圧力がかかり、アフガニスタン人とその他の外国人たちは、もはやアフガニスタンとの国境沿いにあるイラン東部のいかなる街に住むことは許されないとイラン政府は発表しました。
これを受けてUNCHRと世界食糧計画(WFP)およびその他の国際救済組織が、アフガニスタン帰還難民への緊急支援を始めています。
国家体制の如何を問わず、難民は“厄介者”です。
UNHCRの事業について、そのホームページから若干紹介します。
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UNHCRは難民の帰国後の不安を和らげ、スムーズな帰還を推進するため、難民の代表が本国アフガニスタンのコミュニティーを訪ねてその様子を確認する、あるいは、本国コミュニティーの代表が避難しているアフガン人に会うために外国に出かけるといったことを行っています。
UNHCRの支援を得てアフガニスタンに戻りたいアフガン難民は、避難国でUNHCRに申請し、帰還の登録をし、自主帰還用紙に書き込みます。
自主帰還用紙は、パキスタン、イラン、その他の受け入れ国にある自主帰還難民センターで入手することができます。
アフガニスタンに着くと、ふるさとまでの交通費と再定住のための資金を受け取るため、難民はエンキャッシュメントセンター(Encashment Center)に行きます。
そこでは、地雷回避訓練から、子供のためのポリオやはしかの予防接種、基本的な医療支援、法律上の支援、一夜を過ごすための仮住居の提供など、様々なサービスも提供しています。
パキスタンやイランの難民に交通費として与えられる補助金は、アフガニスタンのふるさとまでの距離に応じて一人あたり10ドルから23ドルです。
交通費とともに、すべての難民は再定住するための資金として一人当たり83ドルが支給されます。
これによってさしせまって必要なものや、目的地のふるさとについた後すぐに必要なものなどを買うことができます。
アフガン難民の5年間の自主帰還で、UNHCRは間接的に$80,000,000をアフガニスタン経済に投入したことになるそうです。
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こうして、本国に帰還した難民を待っている現実は厳しいものがあります。
アメリカの報告書によると、アフガニスタンの失業率は現在少なくとも40%、そして今後もアフガン難民の帰還により毎年増加する傾向にある、としています。
国内の深刻な食糧難が更に追い討ちをかけます。
最近の世界的な食糧価格の高騰により帰還民たちは直接大きな打撃を受けています。
近年、アフガニスタン政府を悩ましているのが麻薬中毒患者の急増です。
アフガン帰還民を含む仕事に就けない貧しい人々が麻薬や犯罪に手を染めていきます。
アフガニスタンの麻薬中毒者の数は現在、およそ100万人に上るそうです。
「アメリカは『アフガニスタンの復興』よりも『敵を殺すこと』を優先している」とアフガニスタンのメディア関係者のひとりは訴えています。
「このままの状態が続くようであれば、多くの若者がタリバンに流れ、政情不安は益々悪化するだろう」とアフガニスタンの将来に懸念を示す意見もあります。【3月12日 IPS】