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(エイズの少女 ウガンダ 具合が悪くて戸外で横になっているのか、ただ涼しい外で昼寝しているだけか,理由があって外で寝ているのか・・・わかりません。 “flickr”より By daveblume
http://www.flickr.com/photos/kioko/2811806353/)
【「安定した状態」】
世界的なエイズ流行は「安定した状態」だそうですが、感染者の絶対数は増加を続けているそうです。
*****世界的なエイズ流行は「安定した状態」****
【7月30日 AFP】国連合同エイズ計画(UNAIDS)が7月29日に発表した報告書によると、27年間にわたって2500万人以上の命を奪ってきたエイズ(AIDS)の世界的流行は、ここにきて安定している。一方で、この状態を維持しエイズの脅威を縮小させるためには、潤沢な資金や予防分野での進展が必要だとしている。
2007年のエイズ関連疾病での死者数は約200万人と2年連続で減少しており、2005年に比べると約20万人も減少している。これは主に、免疫細胞を破壊するエイズウイルス(HIV)を抑制する薬が広く普及したことによるものだという。
07年のHIV感染者数は約3300万人で、新たに感染したのは約270万人だという。
全体的にみて、世界の人口におけるHIV感染者の割合は00年に0.8%となって以来、ほぼ横ばいの状態が続いているという。だが、HIV感染者数自体は増加し続けており、さらなる感染の危険性や対策の必要性は依然として存在している。
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記事にある“エイズウイルス(HIV)を抑制する薬が広く普及”という点に関しては、抗レトロウイルス薬(ART)の導入でHIV感染者の死亡率が約40%減少し、平均寿命が約13年伸びたとする研究結果が7月25日、英医学誌「ランセット」に発表されています。
36.1歳だった感染者の平均寿命が、ART治療により49.4歳までに伸びたそうです。
以前は死に至る病だったHIV感染が、ARTの開発により長期慢性疾患の一種となったと評価しています。【7月25日 AFP】
しかしながら、言うまでもなく、「安定した状態」であろうが、「長期慢性疾患の一種」であろうが、年間約200万人の死者というのは膨大な数です。
新規感染者も270万人。
また、地域的な問題もあります。
全世界のエイズウイルス感染者の3分の2が、サハラ以南のアフリカ地域に集中しています。
南アフリカやジンバブエ、ボツワナ、レソト、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、スワジランド、ザンビアなどの国々では、少なくとも10人に1人がHIVに感染している状態です。
国際赤十字社・赤新月社連盟は、アフリカにおけるエイズのまん延は非常に深刻であり、洪水や飢饉に匹敵する「災害」として分類されるべきであるとしています。【6月27日 AFP】
【世界基金】
ARTで寿命が延びたことは結構なことですが、まずは予防策の徹底により新規の感染を押さえ込むことが必要です。
先月、8月3日から、メキシコの首都メキシコ市で、第17回国際エイズ会議が開催されました。
この会議で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、コンドームや男性の包皮切除などの複合的な対策で、2015年までに120万人のエイズウイルス感染が予防できるとの声明を発表しています。
UNAIDSは、HIV感染予防のユニバーサルアクセス(必要な人は誰でも予防・治療・ケアを受けられる状態)の推進に伴い、HIV対策にかかる費用が2010年までに116億ドル(約1兆3000億円)、2015年までには153億ドル(約1兆7000億円)に上昇すると推計しています。【8月7日 AFP】
エイズに脅かされている国々の多くは途上国ですから、資金面で国際的なサポートが必要になります。
このサポートを行っているのが、2002年に創設された世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)で、これまでに136カ国の550のプログラムに114億ドルを拠出しています。
“1兆数千億円”と言う金額は考えようですが、リニアとか道路・橋などのビッグ・プロジェクトと比べたら、また、結果として得られるものを考えると、それほど巨額とも思えないのですが、各国が国内で抱えるもろもろの資金必要性との兼ね合いになります。
世界基金は世界のエイズに対する支援金の4分の1、結核は3分の2、マラリアは4分の3を担い、世界銀行が理事を務めています。
森元総理が議長を務めた2000年の九州沖縄サミットが契機となったもので、外務省ホームページでは“日本は世界基金の「生みの親」と呼ばれている。”とあります。本当でしょうか。
それはともかく、国際社会の支援はまだ十分ではない状態です。
NGO連合の「Tenemos Sida」が、各国の経済規模に応じた相応の負担を計算して国際エイズ会議で発表していますが、実際に相応だったのはアイルランド、オランダ、スウェーデン、英国でした。
「サイエンス」誌によると支援金が特定の国に偏って配分され、治療を必要とする患者数は増え、予防が効果をあげていないなどの問題があるようです。
エイズ対策が比較的うまく行っている事例として、最近では西アフリカのコートジボワールのケースが報じられています。
****保健所でのエイズ治療が無料に*****
【9月2日 AFP】コートジボワールのHIV/エイズ感染者は、保健所で抗レトロウイルス治療を無料で受けることができるようになった。費用の大半は海外から援助されるという。
AFPが8月29日に入手したレミ・アラ保健・公衆衛生相の署名入りの布告によると、全国の保健所でのHIV/エイズ治療は8月20日から無料になった。費用の大半は、米国のエイズ救済大統領緊急計画、およびジュネーブに本部を置く世界エイズ・結核・マラリア対策基金から拠出されるという。
両団体は、2008-09年の治療実績を7万7000人に設定しているが、2010年までに10万4000人にまで引き上げたい考えだ。
2005-06年の全国調査では、同国のHIV感染者は約75万人で、人口に占める割合は4.7%となっている。
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なお、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の主要ドナーはG7とEC諸国で、今年2月段階では、アメリカ(25億ドル)、フランス(12億ドル)、イタリア(10億ドル)に次いで、日本は第4位の8.5億ドルでした。
基金には各国だけでなく、ゲイツ財団(4.5億ドル)などの民間寄付も含まれています。
日本政府は5月23日、5.6億ドルの追加拠出を表明しています。
単に拠出するだけでなく、その資金がどのように使われているのかを、また、世界にはまだ多くの資金を必要としている現実があることを広く国民に知らせて理解と関心を高めていくことが必要だと思うのですが、なかなかそういう取組みが見えてきません。