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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ経済の先行き FRB議長とトランプ大統領、分けれる見方 広がる格差 高齢者の状況悪化

2018-12-31 23:24:31 | アメリカ

【10月16日 安田 佐和子氏 アゴラ】

【トランプ大統領「FRBは、マーケットを感じ取っていない」】
日本を含めた世界の来年の景気がどうなるのかに大きく影響するアメリカの景気は、微妙な段階にあります。

パウエルFRB議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)は、「経済活動は力強いペースで拡大している」という見方を基本として4回目の利上げを行いつつ、2019年の利上げ見通しは前回予測の3回から2回に減らす形で、引き締め休止が近づいている可能性を示唆しています。

****FOMCが今年4度目の利上げ、来年の利上げ予測は2回に減少****
米連邦公開市場委員会(FOMC)は18-19日に開いた定例会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25-2.50%のレンジへ引き上げた。2019年の利上げ見通しは前回予測の3回から、2回に減少した。

利上げは今年に入ってから4度目。最近の株価急落を無視し、トランプ大統領からの圧力に逆らう格好となった。

金融当局は来年の利上げ回数予想を減らすことで引き締め休止が近づいている可能性を示唆したが、予想中央値では2020年にはなお1回の利上げを見込んでいる。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いるFOMCは声明で、「経済活動は力強いペースで拡大している」と指摘。見通しに対するリスクは「おおよそ均衡している」としながらも、世界経済の軟化が及ぼす脅威に注意を促した。
  
声明には「引き続き世界の経済・金融情勢を注視し、経済見通しへの影響を精査する」と記述されている。今回の利上げは賛成10、反対ゼロの全会一致での決定だった。
  
パウエル議長は記者会見で、力強い労働市場や賃金上昇など経済のプラス面と、成長鈍化を示唆する動向の両方を指摘。比較的落ち着いた物価動向により、政策決定には忍耐強くなれる余地があると話した。
  
トランプ大統領はツイッターで前日まで2日連続でFOMCを批判し、金利据え置きを求めていた。景気への不安も強まり、S&P500種株価指数は最近数週間、下落基調にある。
  
パウエル議長は記者からの質問に対し、政治的な配慮は政策決定に一切影響しないと言明。ホワイトハウスからの圧力について問われると、「われわれは、これまで常にやってきた方法で責務を遂行する」と答えた。さらに、金融当局は独自に分析し、「その分析から逸脱すべき根拠は一切存在しない」と話した。(後略)【12月20日 Bloomberg】
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先行きに警戒感を強める市場動向よりも、経済指標が示すものを重視した決定とも評されています。

****FRB議長の賭け:市場より指標が正しい****
経済指標は米経済が好調だと言い、市場は景気後退(リセッション)に向かっている可能性があると話す。
 
米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを決定し、回数は減らしたものの追加利上げを示唆したことは、ジェローム・パウエル議長が他の要素よりも経済指標をずっと重視していることを示す。(中略)

データだけを基にすれば、パウエル氏の選択は簡単だった。経済成長と失業率はFRBの予想した通りに動き、住宅着工や失業保険申請といった比較的弱い一部のデータは最近改善している。
 
来年は成長が鈍化するとみられるが、FRBはそれを見込み、必要としている。でなければ、現在3.7%と既にかなり過熱の領域に入っている失業率は3%近くかそれ未満に低下しそうだ。(中略)
 
FRBに利上げ停止を求める主な根拠は、世界経済成長のつまずきや目標の2%をなお小幅に下回るインフレ率、株価下落やイールドカーブのフラット化がエコノミストの予想以上に急激な景気減速を示唆しているというものだ。

パウエル氏はこうした不安を全て認識している。だからこそFRB当局者らは来年の経済成長と利上げ回数の見通しを後退させた。株価下落と社債利回り上昇を金融環境の引き締まりと表現し、金融政策引き締めをやや緩めることで対応する必要があるとした。
 
だがパウエル氏は、データや各種事例からは読み取れない何かを市場が示しているとは考えていない。「マクロ経済的な見地からすると、1つの市場は単一の圧倒的な指標にはならない」と話している。
 
パウエル氏は、市場が正しく、指標が悪化しかけている可能性にFRBが備えている印象を与えるため、将来の利上げに関してずっとあいまいな声明を発表することもできた。
 
だがそうしなかったことは、経済にとってもパウエル氏個人にとってもリスキーだ。リセッションに陥ったらドナルド・トランプ大統領は責任を同氏に負わせる公算が大きい。

市場と経済指標がかけ離れることはよくある。株式市場は過去5回の景気後退のうち9回を予想したというのは古いジョークだ。だが実際にはかなりの好成績である。FRBは1回も予想していないのだから。【12月20日 WSJ】
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このFRB・パウエル議長の判断に、“直観”を重視するトランプ大統領が「アメリカ経済が抱える唯一の問題だ。FRBは、マーケットを感じ取っていない」、「FRBは、勘が悪くてパットが下手な力任せのゴルフ選手のようだ」と激しく反発し、議長の解任まで云々される状況にあることは報道のとおりです。

****トランプ氏「FRBは利上げ急ぎすぎ」 株急落で改めて非難****
ドナルド・トランプ米大統領は25日、連邦準備制度理事会による金利引き上げが株価急落の原因だとし、FRBの通貨政策を改めて非難した。

株式相場が12月としては世界恐慌以来の急ペースで下落する中、トランプ大統領はFRBによる米経済のかじ取りに批判を続けている。

トランプ大統領は毎年クリスマスに行われる米兵との電話会議の後、記者団の質問に答え、FRBは「利上げを急ぎすぎている。経済がとても好調だと考えているからだ」と指摘。その上で「だが、彼らもすぐに分かるだろう」と述べた。

中央銀行として政府からの独立が建前とされるFRBだが、トランプ大統領は「常軌を逸している」「制御できていない」などとこき下ろしている。

休日明けのアジア市場はトランプ大統領の発言に先立ち、米国の経済情勢や政府機関の閉鎖への不安から大幅に下げ、4日続落を記録していた。(後略)【12月26日 AFP】
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来年がどうなるかはわかりませんが、ほかのことに関してはともかく、こと景気動向に関しては“ビジネスマン”トランプ大統領の「直観」もそれなりのものもあるかも。

と言うか、市場が先行きに不安になっている原因は、トランプ大統領の仕掛けている米中経済戦争の行方であり、また、最近では政府機関閉鎖です。さらに、トランプ大統領のFRB議長解任云々といった介入姿勢もそのひとつです。

要するに、市場の不安の根源はトランプ大統領の存在自体にあるといってもよく、その張本人のトランプ大統領が「FRBは、マーケットを感じ取っていない」云々と批判するのも奇妙な話です。

世界経済のもうひとつの牽引車、中国でも米中貿易戦争を受けて、悪化の兆しが出ています。

****中国製造業の景気悪化、2年10カ月ぶり低水準 米中貿易戦が影****
中国国家統計局は31日、製造業の景況感を示す12月の購買担当者指数(PMI)が前月比で0・6ポイント低い49・4になったと発表した。PMI悪化は4カ月連続。2016年2月以来、2年10カ月ぶりの低水準だった。
 
好不況を分ける節目の50を割り込んだのは16年7月以来、2年5カ月ぶり。
 ト
ランプ米政権が中国からの輸入品に追加関税を課し、中国側も報復関税をかけるなど米中貿易戦で輸出入が振るわず、製造業が設備投資や資材調達を縮小したことが影を落とした。(後略)【12月31日 産経】
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【世界ナンバーワンなのかと思えるほど足元は脆弱】
話をアメリカに戻すと、好景気が続き、失業率は現在3.7%と既にかなり過熱の領域に入っています。
その一方で、経済格差が深刻化しているのは従前から指摘されているところです。

****経済好調も増えるホームレス、病魔に侵された米社会 ****
年の瀬になって、米政府から暗い内容の報告書が公表された。米住宅都市開発省(HUD)がまとめた「2018年版ホームレス評価報告書」である。
 
2年連続で米国内のホームレス人口が増えたという内容だ。いまさら米国のホームレス人口が増えたことに驚かれる方は少ないかもしれない。ただバラク・オバマ政権時代が終わるまで、ホームレス人口は減少傾向にあった。

低失業率なのになぜか増えるホームレス
改善の流れがあったにもかかわらず、ドナルド・トランプ政権になって再びホームレスが増え始めたのだ。
実数にすると55万3000人。
 
ホームレス人口は経済と密接にかかわっている。不景気になり、企業倒産が増えて失業者が町に溢れればホームレスも増えることになるが、今年の米経済は悪くない。
 
12月に入って株価の急落はあったが、GDP(国内総生産)は年3%成長を達成できそうだし、失業率も現在3.7%と低率である。
 
ほかの経済指標も良好で活況と言っても差し支えない。それなのにホームレスが増えているのはなぜなのか。
 
同報告書によると、トランプ政権になっても米社会の格差は埋まらず、低所得者層の賃金が増えていないばかりか都市部での住宅価格が高騰し続けているからだという。
 
さらに約4300万人が貧困ラインから下の経済環境で生活している。給料が1回から数回滞っただけでホームレスに転落する危険性がある人たちだ。
 
いまでも米国の経済規模は世界一だが、本当に世界ナンバーワンなのかと思えるほど足元は脆弱なのだ。

11万円が払えない米市民が約4割
さらに驚くべきことは、医療費や自動車修理代などで1000ドル(約11万円)の出費が発生した時に支払えない米市民が39%もいるという。
 
一般的に、米国人は日本人より貯蓄をしない国民であると言われているが、こうした数字に如実に表れている。
 
ホームレスといっても、すべての人が失業者というわけではない。約25%は仕事をしている。
収入はあるが、家賃を払い続けるだけの稼ぎがないことから路上やホームレス支援センター、自動車の中などで寝起きをせざるを得ないのだ。
 
全米低所得者住宅連合の調査によると、「最低時給賃金の仕事だけでは大都市で2LDKのアパートを借りることはできない」という。(中略)

それでは55万3000人というホームレス数をどう解釈すべきなのだろうか。
 
米国の人口が約3億2000万。その中の約55万人なので、580人に1人だけがホームレスという言い方もできる。だが日本との比較では多いと言わざるを得ない。

ホームレス比率は日本の100倍
厚労省が今年6月に発表した2017年のホームレス人口は5534人。自立支援策などが功を奏して近年は減少傾向にある。ただネットカフェなどで生活している人を含めると実数はもっと多い。
 
米国でも数字の漏れはあるが、それを考慮しても米国の55万人は多い。単純比較するとほぼ100倍である。米国の人口が日本の約3倍であっても相当な数字である。
 
実は日本でも2000年前後は約2万5000人のホームレスがいた。だが減少している。
 
全国の自治体が施策を講じて自立支援センターを設置して、寝る場所や食事を提供してもいるので、米国とでは状況が変わってきた。(後略)【12月31日 堀田 佳男氏 JB Press】
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【高齢者の就職難 音楽が止まったとき、経済のクレバスが大きな口を・・・】
“本当に世界ナンバーワンなのかと思えるほど足元は脆弱な”アメリカ経済社会ですが、特に脆弱なのが退職年齢の高齢者です。

****アメリカ人の中間層、850万人が退職年齢時に貧困レベルへ?****
米国は4%成長を謳歌し、経済は絶好調そのものいった感が漂います。

しかし、シティグループのチャック・プリンス元最高経営責任者(CEO)の言葉を借りれば、音楽はいつか鳴り止むもの。その時には、現状見過ごされている経済のクレバスがさらに大きな口を開けていないとも限りません。

労働市場の指標が最大限の雇用の接近あるいは到達を示唆しても、働き盛りの労働参加率がなかなか改善しないのは、経済のミスマッチの現れといっても過言ではないでしょう。

2017年の家計所得が2年連続で過去最高を更新したものの、中間層の50%と上位5%の格差が過去最大を記録したことも、記憶に新しい。

中間層のアメリカ人に対し、こんな調査結果も飛び出しました。シュワルツ・センターによれば、アメリカ人の4割を占める中間層で、退職年齢に差し掛かると共に貧困層に陥るリスクが高まっているというではありませんか。

調査によれば、50〜60歳の労働者が仮に62歳で退職した場合、同年齢ゾーンの中間層のうち約4割の850万人の所得レベルが、独身世帯で1万8,000ドル、夫婦の世帯で2万9,500ドルへ下がるといいます。

そのうち、260万人が貧困層の分水嶺(独身世帯で1万1,670ドル、夫婦で1万5,730ドル)を割り込むとの試算も。①賃金の下落、②資産の下落、③医療費の上昇——がその背景にあります。

米国では公的、民間ともに年金制度は資金不足も深刻化の一途をたどります。同調査では、退職年齢とされる65歳以上になっても、アメリカ人の74%が労働を余儀なくされると指摘していました。

事実、働き盛り世代の労働参加率が低下する半面、55歳以上の労働参加率は高止まり中。9月は40.1%と、約5年ぶりの高水準を示します。さらに65歳以上に至っては9月に19.9%と、1961年以来の20%乗せに迫りました。

リカレント教育の必要性が指摘される半面、高齢者の労働環境は改善の余地を残します。こちらで紹介したように高齢者の働き口が必ずしもそれなりの賃金を約束するものではありません。(後略)【10月16日 安田 佐和子氏 アゴラ】
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4%成長(第2四半期 年間では3%程度)のアメリカ、一方で長期的経済拡大といわれながらも、ここ20年間実質ほとんど横ばいのような日本・・・何が違うのか?そこらは、また別機会に。

年金をもらって広場でダンスを踊るのが理想(?)の中国人が日本社会に感じる疑問の一つは「なぜ、豊かな日本の高齢者は働いているのか?」ということですが、アメリカの高齢者も年金をもらって優雅な退職後の生活を・・・とはいかなくなっているようです。

****米高齢者の就職難、崩壊する老後モデル ****
800万人近い高齢労働者が失業中か低賃金に甘んじている状況

年配の米国人の中には、引退前の数年で貯金を増やしたり債務を減らしたりして老後に備えようとする人もいる。その機会を得られない人は多い。
 
環境エンジニアや契約管理の仕事をしていたグレッグ・ミラーさん(65)は、2017年に解雇された。400通を超える履歴書を送ったが、正社員になることを最近あきらめた。(中略)

こうしたキャリア終盤の就職難が目立つ一方、老後資金の不足は数十年で最悪の状況にある。
 
高齢労働者の失業率は公式には3%だが、実際の雇用環境は驚くほど悪い。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が公式統計を分析したところ、800万人近い高齢労働者が、失業しているか、老後の備えがほとんどできない質の低い仕事に甘んじていた。
 
この数字には、失業者、正社員の仕事が見つからずパートタイムで働いている人や、求職を断念した人が210万人近く含まれている。

残りの580万人(55歳以上の正社員の23%)は、エコノミストの言う「悪い仕事」に就いている。医療保険を提供せず、多くは賃金が低い仕事だ。ミネソタ・ポピュレーション・センターがまとめた国勢調査データによると、この割合は10年前には約20%だった。
 
ボストン大学退職研究センターのアリシア・マンネル所長は「こうした仕事は、合っている人もいるだろうが、賃金が低く、引退に向けた貯金の機会にはほとんどならない」と述べた。

失業した年配者は職探しに長い時間がかかり、家計が悪化するケースが多い。
 
ストーニーブルック大学の経済学者デービッド・ウィクサー氏の分析によると、1カ月以上失業していた労働者が新しい仕事で得る賃金は、30歳未満では平均7%増えるのに対し、56歳以上では27%減る。(中略)

年配者にとって最大のセーフティーネットも消えつつある。ボストン大学退職研究センターによると、年金制度に加入している55~64歳の労働者の割合は16年には17%と、1992年の33%から減少している。(後略)【12月31日 WSJ】
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“音楽はいつか鳴り止むもの”・・・・もし来年、景気が悪化すると“その時には、現状見過ごされている経済のクレバスがさらに大きな口を・・・・”という深刻な不安を抱えるアメリカ経済です。
もちろん、日本経済の方も他人事ではありませんが。


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