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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チベット  突如現れたイケメンアイドル 便乗する中国政府の思惑

2020-12-07 22:48:21 | 中国

(【12月7日 FNNプライムオンライン】 突如現れたイケメンアイドルが丁真(ディン・ジェン)さん

こういうヤクの群れと一緒の絵などは、いいですね)

 

【進む同化政策 経済効果・脱貧困を強調する中国政府】

ここのところは、チベットやダライ・ラマ14世などをめぐる大きな動きに関するニュースは目にしませんが、中国政府によるチベット同化政策は、新疆ウイグル自治区同様に、「職業訓練」という名のもとに着実に進行しているようです。

 

****中国、チベットでも新疆同様の職業訓練強制か 報告書****

中国西部のチベット自治区で、農業や畜産業の従事者らを対象に、新疆ウイグル自治区内と同様の職業訓練が強制されていると、米研究機関が22日、報告書で明らかにした。

 

仏教徒が多数を占めるチベット自治区の当局は、地方部の労働者を工場での作業に従事させるこの計画について、貧困緩和策の一つと主張。習近平国家主席が掲げる、極度の貧困を年内に撲滅するという目標に沿ったものだと説明している。

 

しかし米国のジェームズタウン財団の研究員らは、今回発表した報告書の中で、この「軍隊さながらの職業訓練」は、同自治区の90%を占めるチベット人に対するイデオロギーの教化と同化の一形態でもあると指摘。

 

今年1〜7月に訓練を受けた人は、地方部の労働者、主に畜産業者らや自給自足の農家ら50万人以上に上り、各地区に人数のノルマが課されていたとしている。

 

報告書に引用されている中国政府の昨年の行動計画によると、この職業訓練計画は「労働規律、中国語、労働倫理」を教え込むことを目的にしているとされる。

 

同報告書には、訓練する人数のノルマを達成した企業に50万元(約770万円)が支給されることや、畜産業者や農家に対し、家畜や農地を国営の大規模な協同組合に譲渡することが奨励されていると記されている。

 

報告書の執筆者で、在米の共産主義犠牲者記念財団の研究員のエイドリアン・ゼンツ氏は、「中国政府による少数民族の同化推進政策という文脈で見ると、これらの政策は、言語、文化、宗教上の遺産の消滅をもたらす可能性がある」と懸念を示している。 【9月23日 AFP】

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少数民族などでは往々にして「労働」に対する現代社会的な理解が十分ではなく、その結果、経済的に劣後する地位に置かれている・・・といったこともあるでしょうから、「労働規律、中国語、労働倫理」を教えることが一概に悪いこととも言えないと思いますが、問題はその方法であり、民族文化・宗教などへの配慮でしょう。

 

現在チベットで行われていることは、苛烈な新疆ウイグル自治区とは差異もあるようです。

 

****“新疆化”するチベット、同化政策進める中国の論理****

9月22日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「新彊モデルがチベットに来ている。北京は悪待遇を否定しているが、監視されない訪問者を禁止している」との社説を掲載し、対ウイグル弾圧のやり方がチベットにも適用されている、もしそうでないのなら、外からの人が自由に状況を見えるようにせよ、と中国を批判している。

 

この社説は、中国がウイグル人に対して行っていることをチベットでも行っていることを告発したものである。チベット人「弾圧」の様子は、チベット入域が厳しく制限される中、外からはなかなか窺い知ることができない。

 

アドリアン・ゼンズは、中国の諸文書、メディアの報道をよく調べ、今回のジェームスタウン財団の報告書をまとめたが、こういう地道な作業は重要である。

 

彼の報告書を読んだが、チベットで新彊におけるウイグルに対する施策と同じことが行われているとまでは言えないように思われる。

 

新彊では、警備の強化された強制収容所のようなものがあるが、チベットの「職業訓練所」はそれほどのものではない。新彊では、ウイグル族の若い女性に不妊手術が行われている(中国政府は否定せず、本人の希望によるとしている)との報道があるが、チベットについてはそういうことは報道されていないし、ゼンズも言及していない。

 

中国側の文書で明らかなのは、中国政府がチベット人を労働力として利用することに大きな関心を有しており、そのためにチベット人の意識を変えて、工場などでも働くように仕向けたいと考えていることである。

 

それでイデオロギー教育や中国語教育を行い、愛国心を高めようとしている。中国政府はそれがチベット人の貧困状況の改善のためであると主張している。

 

中国は、今の傾向が続くと労働力不足に直面することは明らかであり、余剰農村人口の利用を考えることは当然であろう。しかし、チベット人の自発性、文化等を尊重したうえで行うべきことであり、強制的にそうすることはよろしくないだろう。

 

中国は、漢民族が90%以上を占めるが、少数民族も50以上いる。中国人は自治区その他で少数民族の文化尊重などを掲げているが、同化政策と少数民族の文化尊重の間のバランスが最近、同化政策に力点をおくように変化している嫌いがある。内モンゴル自治区の小学校では中国語で教育するなどはその表れだろう。

 

一度中国人とチベット問題を話し合った際、先方からあなたは原始奴隷制支持者ですかと言われたことがある。中国人の文化的優越感は極めて強く、それゆえに文化破壊に至る政策を「善意」で押し付ける危険性がある。(後略)【10月14日 WEDGE】

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中国政府としては、もろもろの施策によって、チベット住民の経済的レベルを大いに引き上げてきた・・・との自負もあります。

 

****チベットは「貧困脱却」と宣言 区都ラサで自治区トップ****

中国チベット自治区のトップ呉英傑共産党委員会書記とナンバー2のチザラ主席が15日、区都ラサで内外メディアと記者会見し、中国で最も貧しい同自治区は基本的に貧困状況を脱却したと宣言した。同自治区のトップ2人が現地で会見するのは比較的珍しい。

 

チベットは、31ある省・直轄市・自治区の中で唯一、自治区全体が特別貧困地区に指定されている。「脱貧困政策」に取り組んだ結果、自治区内の74の貧困県・区にいる62万8千人は平均年収が9328元(約14万6千円)となり「全員貧困から脱却した」とした。呉書記は「習近平総書記の特別な配慮があった」と繰り返し礼賛した。【10月15日 共同】

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【中国批判のカードとしたいアメリカ】

一方、アメリカは、中国政府による民族文化破壊を人権問題の観点から重視して、新疆やチベットの現状を批判しています。

 

ほとんど人権問題には関心もないトランプ政権ですが、こと中国の新疆・チベットに関しては、中国に対して攻勢を強める「カード」として重視しているようです。

 

****チベット亡命政府、米ホワイトハウスを初訪問…公式な招待****

チベット亡命政府のロブサン・センゲ首相は21日、米国の公式な招待を受けて米ホワイトハウスを訪問したと、ツイッターで明らかにした。亡命政府の首相がホワイトハウスを訪れるのは初めて。

 

中国の習近平シージンピン政権は亡命政府を「分離独立主義」と見なしており、米国に対する強い反発が予想される。

 

米トランプ政権は、チベット問題担当の特別調整官を先月に任命するなど対中圧力を強めてきた。亡命政府は1959年にインドに亡命したチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が設立。センゲ氏は2011年から首相を務めている。【11月23日 読売】

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【イケメンのチベット青年 一夜のうちに爆発的人気】

そんなチベットで、突如現れたイケメンアイドルが丁真(ディン・ジェン)さん、20歳。

 

****中国に突如現れた素朴イケメン、母親が変化を語る「正直言って…」―中国ネット****

丁真(ディン・ジェン)さんは2000年生まれのチベット族の少年で、現在は四川省カンゼ・チベット族自治州理塘県で暮らしている。

 

伝統衣装を身にまとい、アイドルのような澄んだ瞳とさわやかな笑顔の丁さんが、馬を自由自在に操り大地を駆ける10秒ほどの動画がSNSにアップされたことがきっかけで、一夜のうちに爆発的人気となった。

 

丁さんの今後の進路などについてさまざまな情報が流れたが、丁さんのSNS投稿などにより、地元の国有企業が丁さんを観光大使に抜てきしたことが明らかになった。

人民網などの中国メディアの報道によると、丁さんの人気に火がついて以降、故郷の理塘県に多くのネットユーザーが注目しているという。

 

統計によると、「理塘」への注目度は11月20日から急上昇し、11月最後の一週間の「理塘」の検索回数が620%増と激増し、国慶節(建国記念日、10月1日)の連休時より4倍多い数字となっている。

 

また、日本のテレビ朝日のニュースでは、丁さんの人気により「四川省に向かう航空便の利用者が2割増える社会現象となった」と伝えている。

CCTVのニュース動画で丁さんは「なぜ人気なったのかは分からないけど、注目してもらえたことで、故郷のPRの仕事がたくさんできるのでうれしい」と述べ、今後は「まずは勉強。会社が手配してくれる仕事一つ一つをきちんとこなしたい。乗馬のチャンピオンにもなりたい」と語った。

丁さんの母親はマスコミの取材に対し、「人気者になる前の息子の仕事は、主に放牧した馬や牛の世話でした。息子が国有企業に雇われて、正直言って収入がとても安定しました。今後も息子には故郷に貢献してほしい」と答えたという。

ネットユーザーからは、「お母さんも息子も純朴な一家だ」「前向きで良い」「三観(世界観・価値観・人生観)がゆがんでいない」「応援するよ」「ご家族にまで取材しなくても」「丁真は故郷の経済に貢献している」「勉強しても国有企業に入るのは大変なのに、こういう方法で就職できるのか」などのコメントが寄せられている。【12月3日 レコードチャイナ】

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この「スター」の経済効果「イケメン経済」も半端ないようです。

 

****偶然撮影されたチベット族の青年が巻き起こした中国の「イケメン経済」―中国メディア****

(中略)中国メディアの界面新聞によると、丁さんは11月11日、カップラーメンを買いに行くところを偶然ショートビデオで撮影され、その動画がSNSに投稿された。

 

イケメンで純真な性格から瞬く間に人気検索ワードに入り、同月22日には丁さんに関する「超話(スーパートピックス=コミュニティーのようなもの)」の閲覧数が8000万回に上った。

 

その後、理塘県国有資産監督管理委員会傘下の理塘文化・旅行会社と出勤不要という条件の月収3500元(約5万6000円)で契約を結んだという。さらに、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などから得た収入は直接丁さんの収入にできる他、同社が標準語の家庭教師を派遣する。

また界面新聞によると、四川省カンゼ・チベット族自治州の冬季観光キャンペーンが始まると、現地に向かう航空便の利用者が前年同期比2割増となり、11月17日の予約数は前年同期比90%増となった。

 

さらに、日用品、教育・娯楽、ウェブサイトなどを扱う多くの企業が丁さんの人気に目をつけ商標登録の動きを見せており、理塘文化・旅行会社はすでに「丁真」を商標登録したという。

さらに、頭条新聞の微博アカウントによると、丁さんが動画の中で付けていたイヤリングが大人気商品になり、数日のうちにイヤリングを付けた若い人が2〜3割から6〜7割に増えたといい、その人気ぶりがうかがえる。【12月4日 レコードチャイナ】

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【弾圧イメージ払拭に利用したい中国政府】

このブームを放っておかないのは経済界だけではありません。

 

先述のような、アメリカや国際世論の厳しい批判にさらされている中国政府は、このブームにのっかってチベット政策のイメージ改善を狙っているようです。

 

****“チベット族イケメン青年”動画1200万回再生と突如スターに…宣伝する中国当局の狙いは?****

SNSに約10秒の映像が投稿されると、甘いスマイルで人気に火がつき、PRビデオが制作されたり、観光宣伝大使になったりと、今中国で大人気の“チベット族のイケメン青年”がいる。

 

チベット族というと、宗教問題などで中国では敏感な存在だが、国営テレビがインタビューを報じるなど宣伝色も帯び、「チベット族イケメン青年で民族融和をアピール」しているという。一体どういうことなのか?

 

地元ホテル予約9割増“チベット族イケメン青年”とは?

FNN北京支局長・高橋宏朋氏:
今、中国では丁真(ディン・ジェン)さんという、チベット族の20歳のイケメンが大ブレークしているんです。
アイドルのような顔立ちで、ついたニックネームは「甜野男孩(てんやなんがい)」いわば、“甘い野性的な男の子”という呼ばれ方をしている。

 

「丁真(ディン・ジェン)の世界」と題されたプロモーションビデオは、配信初日だけで1200万回再生されています。

 

もともとは家族の広告などの仕事を手伝う極普通の青年でしたが、この地を訪れた写真家がたまたま彼を撮影しSNSに投稿したことで、突如として人気に火がついて、今や中国全土に知れ渡るほどの有名人になったのです。

 

この人気ぶりから、地元国営旅行会社の観光大使になりまして、月給3500元(約5万6000円)・各種社会保障付きと、こんなことまで話題になっています。(中略)

 

最近では国営メディアも、本人のインタビューを交えて取り上げるようになりました。こうしたことの背景には、おそらく「宣伝部門の意向」が働いているという風に見られます。

また、中国外務省の華春瑩報道官のTwitterでは、英語で「明るい純粋な笑顔でソーシャルメディアのスターになった」と投稿したりしているんです。いわば国をあげたアピールのようになってきている。

 

国をあげたアピールの裏側にある2つの思惑

FNN北京支局長・高橋宏朋氏:
中国政府には、主に2つの狙いがあると思います。1つはこうした「民族融和」。

中国には56の民族があるんですけれども、チベット族を含む55民族の割合はわずか9%程度なんです。建前上は「全民族は平等だ」というふうになっているんですけれども、実際は漢民族中心の社会になっており、少数民族の不満を背景とした問題がたびたび起きています。(中略)

 

中国では宗教問題以外にも、少数民族に対する徹底した監視ですとか、職業訓練を名目としたいわゆる再教育施設に収容しているなどといった問題が、諸外国から批判されています。

 

こうした問題は力で抑え込みつつも、丁真(ディン・ジェン)さんのように「民族は違っても同じ中国人として親近感を感じることができる対象」は、民族団結や社会の安定を目指す中国当局にとって、良いアピール対象になるわけです。

 

もう1つの狙いは、「脱貧困」です。
中国は習近平国家主席の大号令で、「貧困撲滅」を目指しています。まさに、この農村地区の観光振興というのは、この習近平指導部の一丁目一番地の政策とも合致するという背景もあるんです。

 

加藤綾子キャスター:
高橋支局長ありがとうございました。柳澤さんは中国のこのような国策についていかがですか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
少数民族に対する人権抑圧というのは、国際社会から相当強く批判されていますから、そういった批判をかわしたいという狙いがアリアリだと思うんですよね。

 

うちも趣味で海外放送、中国の北京放送も聞いているんですけど、少数民族に対する中国政府の配慮をアピールするような企画がたくさん流れていたりする。

 

アメリカも今度はバイデン政権になって、人権に対する配慮が相当前面に出てくる可能性がありますから、その辺をとにかくうまくかわして、広告塔にこういう少数民族の青年を使いたいってことはアリアリだと思いますね。

 

加藤綾子キャスター:
本当の意味で、民族融和につながってくれるといいんですけどね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
政治的に反論するための材料にしか、使ってないような気がしますね。(「イット!」12月7日放送分より)【12月7日 FNNプライムオンライン】

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中国政府の便乗思惑はともかく、日本では好感を持って迎えられた丁真さん、イケメン自慢の韓国では・・・

 

****日本では絶賛、でも韓国では…チベット族のイケメンに対するネットユーザーの反応に違い―中国メディア****

(中略)一方で、お隣の韓国でも聯合ニュースやインサイトなどのメディアが「丁真って誰?チベット族のイケメンが中国全土で話題に」「太陽のようなイケメンぶりで女性たちのハートを盗む」などと好意的に報じたものの、ネットユーザーの反応は「日本と比べると“鼻持ちならない”という感情に満ちていた」と説明。

 

聯合ニュースの記事の下のコメント欄では、「大したことはない」という反応が大多数だったとし、「韓国の田舎にいっぱいいるレベル」「このくらいの顔に熱くなる中国人の悲しさよ。まったく美しくない」「この程度で人気になるようなら、わが国のウォンビンが中国に行ったら、かっこよすぎて中国人民は全員卒倒するのでは?」などのコメントが共感を集めていたと伝えている。(後略)【12月2日 レコードチャイナ】
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ケチ付けないと気が済まないというか、「おらが国が一番」というか・・・

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