孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン 中国で2回目の和平協議の予定 タリバン指導部に路線対立も

2015-07-29 22:17:43 | アフガン・パキスタン

(イスラムの祝日イード・アル=アドハーに、おもちゃの銃で遊ぶアフガニスタンの子供たち “flickr”より By quasuo https://www.flickr.com/photos/qua_suo/10314623056/in/photolist-gHt95y-o7Viwt-fat2WR-6n93dx-akb6cx-8MBDdG-bmvuhc-826pQJ-9XFYMp-38HXzB-9Y4ob2-tnS9H-9yBcNs-aqUFTa-5tYEGj-af5mxJ-3oAgja-fbrXhZ-jjRLgu-af2CVp-af5mHq-eqQSKE-9LWyWC-79C32M-8rZ3hf-84ySLH-9c3JXu-9MEjBb-9NNs8w-cL6HoN-4TFvcX-2j8cwJ-4eEJ4P-9NNs8o-af2Cs2-8dhocH-bF8GV8-bV8XK3-af2z7p-af2CBz-af5qGG-9dJwTR-9FzPiQ-7HEUbT-7XyES5-eqQST9-epUCoH-7HEXm4-fCU1Zs-p2pKpR)

国内イスラム教徒対策のためにアフガニスタンの安定化を求める中国
アフガニスタンの政府代表団と反政府武装勢力タリバンの幹部らが今月7日夜、パキスタンの首都イスラマバード近郊で和平協議を行ったことについては、7月9日ブログ「アフガニスタン政府とタリバン、パキスタンで直接交渉 今後も継続」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150709)で取り上げました。

和平協議が実現した背景には、タリバンに影響力を持つパキスタンの意向、更には、新疆ウイグル自治区などでイスラム教徒との問題を抱える中国の意向があると言われています。

****アフガン政府とタリバン、初の公式和平協議 次回はラマダン明けに****
・・・・パキスタンでは、タリバンと同盟関係にあるイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」によるテロが相次ぎ、シャリフ政権は昨年、対話路線からテロ掃討に方針転換した。

外交筋や専門家によれば、治安悪化に業を煮やした軍が、支援を与えてきたタリバンに対し、和平協議開催に応じなければ、パキスタン国内での潜伏を許さないと警告していた。

背景には、アフガン政府に、アフガン内に逃げ込んだタリバン運動を掃討するよう求める狙いや、経済協力を進めつつイスラム過激派のテロに悩まされる中国からの圧力がある。テロによる混乱が、カシミール問題で対立するインドに付け入る隙を与えることも、軍は強く警戒している。(後略)【7月8日 産経】
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予定どおりなら、明日30日には、2回目の協議がアフガニスタンへの関心を強めている中国で開催されるようです。

****アフガンへ影響力強める中国、タリバンとの和平協議、30日に中国で開催***** 
アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンとの和平を担当するアフガン政府高等和平評議会のカシミヤー氏は24日、産経新聞に対し、政府とタリバンの2回目の公式和平協議が今月30日に中国で開かれると明らかにした。

タリバンに停戦を要求する。中国は、和平協議などを通じ、アフガンやパキスタンへの影響力を強めつつある。【7月24日 産経】
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タリバンへの影響力をパキスタンと、そのパキスタンへの影響力を持つ中国が和平協議に関与を強めれば、難航が予想される協議にも、若干は期待が持てます。

生存が不明のオマル師 序列2位と3位で路線対立
しかし、当事者であるタリバンの組織的に統一された形で協議に臨んでいるのかは疑問があります。

一応、生存が明らかでない最高指導者オマル師が和平協議を支持していることを明らかにしてはいますが。

****タリバンのオマル師が和平交渉の正当性を表明 「政治努力は不可欠*****
アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンの最高指導者オマル師は15日、間もなくラマダン(断食月)終了を迎えることへの祝賀メッセージをインターネット上で発表し、「武力によるジハード(聖戦)と同時に、神聖な目標達成のための政治的努力や平和的な道を探ることは正当なイスラムの信条であり、預言者ムハンマドの政見の不可欠な要素だ」と述べた。今月始まったアフガン政府との公式和平協議の正当性を初めて表明した形だ。

オマル師は、こうした政治的努力を「外国の支配を終わらせ、わが国に独立したイスラムによる制度を打ち立てるためのものだ」と訴えている。

一方で、「旧ソ連に対する聖戦の成功の果実は、多くの派閥を生むという不可避の結果となり失われた」、「すべてのイスラム聖戦士に対して団結を保つとともに、不和を作りだし、聖戦に損害を与えたり聖戦士を分散させようとしたりする分子を強く阻止するよう指導した」と表明し、和平協議に反発する意見があることや、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」への構成員離脱への危機感をにじませた。【7月15日 産経】
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ただ、なにぶんオマル師が生きているのか死んでいるのか明らかではありません。
これだけ長く本人が表にあらわれないところを見ると・・・・とも思われます。

上記の“オマル師のメッセージ”は、少なくともオマル師の代理を務める中枢勢力が和平協議に前向きであることを示しているとは言えるでしょう。

ただ、タリバン内部には和平に反対する強硬派も存在すると言われています。

****タリバン指導部に亀裂=オマル師死亡?和平に影響も―アフガン****
アフガニスタン政府との和平交渉をめぐり、反政府勢力タリバンの指導部に亀裂が生じている。パキスタン情報筋が28日、明らかにした。

最高指導者オマル師の死亡もささやかれており、同筋は「穏健派と強硬派のどちらが主導権を握るかで和平の行方は大きく左右される」と話している。

タリバンは今月上旬、パキスタンの仲介で政府代表団と和平に向けた初の公式協議を行った。米中両政府の関係者が同席する中、双方は交渉継続で合意。交渉の正統性を「承認」するオマル師の署名が入った声明も発表され、和平に向けた機運が高まっていた。

しかし、パキスタン情報筋はオマル師が既に死亡したか、指導力を発揮できない状態にあると指摘。「序列2位のアフタル・マンスール師が事実上の指導者として和平を推進するだけでなく、オマル師の名を使って交渉を後押しする声明を出したとみられる」と話す。

一方、2007年までキューバの米海軍グアンタナモ基地収容所に収監されていた序列3位のザキール師ら強硬派はこうした動きに反発。パキスタン南部カラチの神学校を卒業したオマル師の長男ヤクーブ師(26)を後釜に据える準備を進めているという。

パキスタンに潜伏中ともされるオマル師をめぐっては、過去にもたびたび死亡がうわさされていたが、真偽は確認されていない。ただ、長らく肉声が公表されておらず、指導部内の権力争いが表面化していることから、死亡説は信ぴょう性を増している。

アフガン政府は今月末、タリバンと2回目の和平協議を予定している。だが、同筋は「近頃パキスタンから帰国したヤクーブ師は和平に応じないよう各派閥に呼び掛けている。指導部の分裂が進む中、協議が予定通り開かれるかは不透明だ」と話している。【7月28日 時事】 
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“オマル師の長男ヤクーブ師(26)を後釜に据える・・・”
どこの世界でも、血筋が正当性を主張するうえで分かりやすい手段となりますが、タリバンも例外ではないようです。

和平協議自体もどのように進むか問題ですが、仮に協議が前進してもタリバン全体がその方向で進むという訳でもなさそうです。

大人の暴力沙汰と子どもたちの戦争ごっこ
最近のアフガニスタン関連の記事で目についたものが下記の記事です。

*****アフガニスタン結婚式で銃撃戦、20人死亡*****
アフガニスタン北部バグラン(Baghlan)州で開かれていた結婚式の会場で銃撃戦が起き、少なくとも20人が死亡、10人が負傷した。地元警察当局が27日、AFPに明らかにした。

警察によると、銃撃戦があったのは26日夜。武装した男たちが口論を始め、次第に激しくなったため地元治安当局者が空に向けて発砲したところ、銃撃戦が始まったという。死亡したのは全員、結婚式の招待客で14歳~60歳の男性だという。【7月27日 AFP】
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別に戦闘でも何でもなく、単に結婚式における喧嘩にすぎませんが、その結果が“銃撃戦で少なくとも20人が死亡”というのが、銃と暴力が日常化しているアフガニスタンの現状を示しているように思えます。

アフガニスタンでは、お祝いごとの際に空に向かって銃を撃つ習慣があるようで、多くの出席者がカラシニコフを肩にかけているのでしょう。
“戦闘で20人が死亡”という話より、根深い病根を示しているようにも。

そんなアフガニスタンで、こんな話題も。

****アフガニスタン、玩具銃販売を禁止 大勢の子ども負傷で****
アフガニスタン内務省は21日、カラシニコフなどの銃器を模したおもちゃの販売を禁止した。

イスラム教の断食開けの祭り「イード・アル・フィトル」の期間中、こうした玩具銃で大勢の子どもが負傷したことを受けた措置で、政府は暴力が横行する文化の抑制を図っている。

アフガニスタンでは断食明けの祭りの期間中、ゴム弾やプラスチック弾を発射する玩具銃を持った子どもを見かけることが珍しくなく、売り上げは年々急増している。

内務省が保健当局の統計を引用したところによると、祭りが行われていた19日までの3日間、目を負傷した子どもは100人余りに上った。

同省発表によると、ヌールハク・ウルミ内相は、玩具銃が心身を傷つける恐れがあるとして、警察部隊に玩具の銃を全て没収するよう指示した。

アフガニスタン政府は、こうした玩具が子どもの心に与える影響を抑えたい意向にある。周辺諸国では、アフガニスタンの子どもたちの戦争ごっこと、大人の暴力沙汰の共通性を指摘する意見が多い。

断食明けの祭りでは、大人が子どもにお小遣いを渡す習慣がある。こうしたお金は、カラシニコフの自動小銃「AK47」や連発拳銃の模造品、プラスチック製のライフル銃のおもちゃの購入に広く使われている。

仮に施行が徹底された場合、今回の禁止は勃興期にある国内の玩具業界にとって打撃になりそうだ。ただ、インターネットのソーシャルメディアでは禁止が大方歓迎されており、アフガニスタンが戦争の傷痕に苦しんでいることから、本物の武器の販売も規制するよう求める意見もある。

交流サイト大手「フェイスブック」ユーザーのアブドゥル・シャヒードさんは、「子どもたちが大人になった時、本物の武器を手にするのを抑止する上で前向きな一歩だ」と投稿した。【7月26日 AFP】
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非常にささやかではありますが、正しい方向への一歩でしょう。

ちなみに、銃による子供の事故が多発しているアメリカではこんな話題も。

****10代が自作した銃を撃つドローンを調査 米FAA****
米連邦航空局(FAA)は21日、拳銃が取り付けられた手作りの無人機「ドローン」が、コネティカット州郊外の町で実際に発砲する様子を映した動画をめぐり、このドローンが連邦航空規則などに違反していないかどうか調査を行っていると発表した。動画はインターネット上で動画サイトで人気を呼んでいる。

この動画は今月10日、ユーチューブに投稿された「空飛ぶ銃」というタイトルが付けられた14秒間の映像で、再生回数は約200万回に達している。その大半がいまだに規制されていない米国の民間ドローンをめぐっては新たに論争が起きている。

動画は、拳銃が取り付けられた複数の回転翼を持つ手作りのドローンが、ホバリング中に激しい音を立てながら、画面には映っていない標的に向かって4回、発砲する様子を映している。

このドローンを制作したのは、大学で機械工学を学んでいるコネティカット州クリントン出身の18歳の学生だとみられている。だが、学生の父親は息子がドローンを制作したことを否定している。

「リモコン(RC)で操作するおもちゃなら、何十年も前から、みんな遊んできたじゃないですか」と父親はAFPの電話取材に答え、さらに、「これの正しい名称はRCクアッドコプターで、メディアは恐怖感を生じさせるために誤った単語(ドローン)を使っている」「なぜこれほど大騒ぎするのか分かりません。目新しいことではないでしょう」と話した。【7月22日 AFP】
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アフガニスタンにおける人権問題を云々することも多いアメリカですが、「空飛ぶ銃」が「なぜこれほど大騒ぎするのか分かりません」ということでは・・・・。

追伸
****オマール最高幹部の死亡説流れる アフガン和平協議前に****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバーンのトップ、オマール最高幹部が「2〜3年前に病死していた」とする情報が29日、アフガン大統領府周辺から流れ、近く予定されているアフガン政府とタリバーンの2回目の和平協議を前に臆測を呼んでいる。(後略)【7月29日 朝日】
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協議も延期されるかも。

なお、次回開催は中国で・・・との記事を紹介しましたが、“パキスタンの治安関係筋は29日、オマル師の死亡情報は臆測にすぎず和平を妨害する試みだと非難した。次回協議は、パキスタンで行われるとしている。”【7月29日 産経】とも。

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