孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ガザ地区の停戦合意第1段階が終了するも、見えないその先 戦闘再開の可能性も

2025-03-03 23:49:21 | パレスチナ
(ガザの「将来」とされる「中東のリビエラ」でくつろぐトランプ大統領とネタニヤフ首相【2月26日 毎日】)

【第1段階の期間が終了 これからどうする? 見えない第2段階】
ウクライナはトランプ・セレンスキー両大統領の公開バトルで近日中の停戦は難しくなり、アメリカの武器支援停止も現実味を帯びる中で欧州がどこまでウクライナを支えられるのか、ウクライナとアメリカの関係修復は実現するのか・・・といった混迷が深まっています。

パレスチナ・ガザ地区の戦闘も、ハマスの人質33人解放、イスラエルはパレスチナ人週百人を解放、その他、駐留イスラエル軍は東に移動、ガザ住民の帰還、救援物資輸送トランクの通行許可を内容とす1月19日に始まった6週間の第一段階が3月1日に終了しました。

予定では、ハマスは残りの人質全員を解放、イスラエル軍は完全撤退し、恒久的戦闘停止を宣言するという第2段階に入ることとされていましたが、その高いハードルを超える交渉はほとんど進まず、先行きはまったく不透明、戦闘再開も視野に・・・といった状況になっています。

なお、第3段階はガザの復興です。

イスラエルは第2段階へ進む道筋が見えないなか、とりあえず第1段階の一時停戦を延長するとしているのに対し、ハマスは第1段階延長を拒否し、イスラエル軍完全撤退・恒久的戦闘停止の第2段階にすみやかに以降することを求めています。

****ハマス、停戦第1段階延長を拒否=1日期限、イスラエル案に反発****
イスラム組織ハマス幹部は1日、パレスチナ自治区ガザでの停戦について、イスラエル側が「第1段階延長を提案した」と述べた上で、これを拒否する考えを示した。中東のテレビ局アルアラビーヤのインタビューで語った。

イスラエルは残る人質の奪還に関し、軍完全撤退を含む第2段階移行ではなく、第1段階延長を模索している。

第1段階は1日が期限で、これまで停戦はおおむね維持されてきた。双方とも期限切れによる戦闘再開は望んでいないとみられるが、ハマス側は予定通り2日に恒久停戦を見据えた第2段階に入るよう求めており、協議は難航。ガザで4万8000人以上が死亡した戦闘が再燃する恐れもあり、先行きは不透明だ。【3月1日 時事】
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これに対しイスラエルは第1段階延長としての人質解放をハマスに求め、ガザへの援助物資の搬入を停止してハマスへの圧力を強めています。 第1段階延長はアメリカ・トランプ政権の提案とのことで、イスラエルはこのアメリカ提案を受け入れるとしています。

****イスラエル、ガザへの物資搬入停止 ハマスは「停戦合意違反」と反発****
パレスチナ自治区ガザ地区の停戦を巡り、イスラエル首相府は2日、米国が提案した停戦の「第1段階」の延長案を受け入れたと発表した。

イスラム教の断食月「ラマダン」とユダヤ教の祝祭「過越祭」の期間中は停戦を維持するという案。ただ、イスラム組織ハマスは恒久的停戦につながる「第2段階」への移行を求めており、第1段階の延長案を拒否しているという。

1月19日に発効した第1段階は42日間で、3月1日に期限を迎えた。この期間中にイスラエルとハマスは第2段階に向けた協議を始めるとされていたが、第1段階の継続に力点が置かれ、停戦を維持しながらの交渉が続いている。

ラマダンは2月28日ごろに始まっており、3月29日ごろまで。過越祭は4月12日ごろから20日ごろ。第1段階の延長案はトランプ米政権の中東担当特使、ウィットコフ氏が提案したという。

イスラエル首相府によると、延長案の期間は42日間で、初日にハマスが拘束している人質の半数を解放する。その後、恒久的停戦で合意すれば、ハマスは残りの人質も解放する。イスラエルは42日間の延長後、交渉が効果的ではないとの印象を受けた場合は戦闘を再開できるという。

イスラエル首相府は、ハマスがこの延長案を拒否しているとして、ハマスが態度を変えるなら直ちに交渉に入ると主張している。

また、イスラエルのネタニヤフ首相は2日、ガザ地区への人道支援物資を含むすべての物資の搬入の停止を決定したと発表した。停戦の第1段階が終了したことに加え、ハマスが米国の提案を拒否したためだと主張している。イスラエル軍はガザ地区のすべての検問所を閉鎖した。

これに対してハマスは、ネタニヤフ氏の人道支援物資の搬入停止の決定を、停戦合意違反だと反発。イスラエルが米国の停戦延長案を受け入れたことについては「停戦の第2段階の交渉に入ることから逃れようとする露骨な試みだ」と非難。人質の解放の唯一の方法は、合意を守り、第2段階に向けた交渉に入ることだと主張した。【3月2日 毎日】
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イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルは人質の解放なくして停戦を認めない」とし、「もしもハマスが拒否を続ければ、さらに重大な結果を招くだろう」とけん制しています。

これに対してハマスは「脅迫だ」と反発し、「合意に対するあからさまなクーデターだ」と非難。エジプトとカタールによる仲介を求めています。【3月3日 ロイターより】

【イスラエルはガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断してハマスに圧力 高まる戦闘再開の懸念】
イスラエルがガザへの援助物資の搬入を停止していることで、結果的にガザ住民全員を人質にとったような形にもなっていますが、アメリカは「理解している」とのこと。

****「食料を武器に使うな」アラブ諸国がイスラエル非難 ガザ停戦、対立先鋭化で継続見通せず****
イスラエルが2日、パレスチナ自治区ガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断したことを受け、アラブ諸国から非難が相次いだ。

イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスのガザの停戦合意は第1段階が1日に期限を迎え、停戦維持に向けた交渉は続く可能性があるが対立は先鋭化しており、波乱含みの情勢だ。

物資搬入の停止を受け、両者の協議を仲介するカタールの外務省は「食料を武器として使っている」とし、停戦合意や国際人道法に違反していると非難した。地域大国サウジアラビアの外務省も、住民が人道危機に直面するなかでの搬入停止は「集団的懲罰」だと批判する声明を出した。

イスラエル首相府は2日、トランプ米政権のウィットコフ中東担当特使が提示したとされる一時停戦案に同意すると表明した。しかし、ハマスは合意に従い第2段階に移行すべきだとしてこの案の受け入れを拒否し、イスラエルが物資搬入を止めた。ネタニヤフ首相は「ハマスが物資を盗む」のを防ぐためだと理由を述べた。

第2段階では双方が停戦恒久化に向けた措置を行う見通し。ただ、ハマス壊滅を目標とするネタニヤフ氏は「停戦は一時的だ」と述べ、戦闘再開に含みを残してきた。サール外相は物資搬入を停止したイスラエルの決定について、米国は「理解している」とした。

ハマスは物資の搬入停止は「脅迫」だとし、第2段階に向けた協議を始めない限り、拘束する人質は解放しないと表明している。【3月3日 産経】
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そもそも、イスラエルはハマス壊滅を目指しており、ハマスが残存する形での完全撤退・恒久的停戦はあり得ないでしょう。 その点で、もともとこの停戦合意は実効性をもたない、とりあえずの一時停戦・人質解放のための「方便」にすぎないものだったと考えられます。

ハマスが圧力に屈して第1段階がアメリカ案に沿って延長されても、その延長期限が切れたらまた同じ問題が起きるでしょう。

イスラエル極右勢力は早期の戦闘再開を求めており、いずれ何らかの理由をつけて戦闘が再開される可能性が高いと思っています。

【ガザの将来は「中東のリビエラ」か、さもなくば・・・?】
上述のように停戦すら危うい状況で、ガザの復興云々を語る状況でもないように思われますが、例のトランプ大統領のガザ再開発プラン動画・・・・もうガザ住民のことなどまったく視野になく、振り切れています。

****ガザを金ぴかリゾートに? トランプ氏がAI生成動画を投稿 「ガザ所有」構想を拡散****
トランプ米大統領は26日、自身の交流サイト(SNS)アカウントに、パレスチナ自治区ガザが豪華なビーチリゾートに変貌した様子を描いたイメージ動画を投稿した。

ガザを米国が「所有」するとの自身の主張を広げる狙いとみられるが、パレスチナや国際社会の反発は必至だ。
人工知能(AI)で生成された約30秒の動画では、廃虚となったガザからトンネルを抜けると近代的な高層ビルやマンションが立ち並ぶリゾート地が出現。

アップテンポのダンス音楽とともに、金色の巨大トランプ像や、空から降り注ぐ紙幣に大喜びする子供、「トランプ・ガザ」の看板を掲げたカジノ風の建物などが次々と映し出される。

ほかにも、プールサイドで日光浴する海水パンツ姿のトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相や、満面の笑みで食べ物をほおばる大富豪のイーロン・マスク氏が登場。

イスラム原理主義組織ハマスのメンバーに擬したとみられるひげの男性がベリーダンサーの格好で踊ったり、トランプ氏が酒場で女性と踊ったりする戯画的な表現が盛り込まれている。

トランプ氏は今月4日、イスラエルとハマスの停戦に関連し、すべてのガザ住民をエジプトやヨルダンなどの第三国へ移住させた上で、ガザを米国が「所有」し不動産開発を行う構想を発表。ガザを「中東のリビエラ」にすると語った。

トランプ氏は今回の動画を投稿することで自身が思い描くガザの「未来予想図」の一端を表明した格好だ。【2月27日 産経】
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もちろん批判は多々ありますが、トランプ大統領はこの動画、気に入ってるとか。

では、住民を排除しての中東のリビエラで出なければ、ガザの未来はどうなるのか?

****米ガザ構想代替案「用意できた」=停戦第2段階の協議訴え―エジプト****
トランプ米大統領が公表した米国によるパレスチナ自治区ガザの所有や住民移住の構想に対し、アラブ諸国が検討している代替案について、エジプトのアブデルアティ外相は2日の記者会見で、用意ができたと語った。ロイター通信が報じた。

代替案は住民がガザ域外に出ないことを前提にしており、4日にカイロで開かれるアラブ連盟の首脳会議で提示される見通し。アブデルアティ氏は代替案が首脳会議で採択されれば、国際的な支援や資金提供を求めていく考えを強調した。

また、別の報道によれば、アブデルアティ氏はガザ停戦交渉に関し、恒久停戦を目指す第2段階の協議を開始する必要性も指摘。「困難だが、始めるための政治的な意志が必要だ」と述べた。【3月3日 時事】
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サウジアラビアは砂漠の中に全長170km(mではなくkm!!)、高さ500m、幅200mの壁状の超高層ビル群からなる新都市をつくる計画に着手していますが、その費用は1千億から2千億米ドルと推定されていおり、1兆ドルに達するという試算もあるようです。

そのほんの一部でもガザに投資されれば・・・という勝手な思いも。

いずれにしても、現在の停戦がどうなるのか? 第2段階に移行できるのか?、それとも戦闘が再開し、ハマスが壊滅するまで、ガザに人が住めなくなるまで続くのか? それによってガザの「将来」も変わります。

戦闘再開で更にガザが破壊され、住民の隠れ場もないような状態になれば、案外「中東のリビエラ」も現実味を増してくるのかも。

しかし、その“リビエラ”は旧ガザ住民の「第2のナクバ」への怨嗟で呪われた存在となり、常にテロの恐怖に怯えるリゾートになりそう。ビーチで水着姿のトランプ大統領とネタニヤフ首相がくつろぐ・・・ようなものにはならないかも。
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