孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク・クルド  キルクーク帰属とトルコ越境攻撃

2007-12-19 14:42:11 | 国際情勢

(07年4月2日、キルクークで警察署を狙った自動車爆弾による自爆テロがありました。この事件で少なくと13名が死亡しましたが、近くの学校の生徒たちの多くが巻き添えになりました。 “flickr”より By القعقاع)

クルド自治政府のネチルバン・バルザニ首相は17日、年内に予定されていたキルクークの帰属を問う住民投票を半年延長することを容認しました。
首相は「技術的な問題」を理由に挙げていますが、早期の住民投票実施がクルド人とアラブ人の民族対立を悪化させかねないとの懸念があるとみられています。

イラクの石油埋蔵量は世界第3位ともいわれますが、そのイラクの中心的油田であるキルクークの帰属問題については、10月11日の当ブログ「クルド自治区 進む「脱イラク」志向」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071011)でも取り上げたように、05年に制定されたイラク憲法140条で「2007年12月31日までにキルクーク(及びその他の係争領土)を正常化し、国税調査及び住民投票を実施する」ことが規定されており、イラク情勢を一気に不安定化させかねない重要問題として注目されていました。

住民投票の結果クルド自治区編入となると、反発するアラブ対クルドという国内対立激化が想定されますが、クルド自治区の勢力強化は、同じクルド人反政府勢力に手を焼くトルコ、イランにも大きな利害が関係します。
トルコのグル外相(当時)は今年2月、「キルクークがクルドに帰属すれば、最悪のシナリオはイラクの分断だ」と述べ、住民投票中止を訴えていました。
最近の動きでは、イランのモッタキ外相が住民投票の2年延期を提案したことが報じられています。【11月2日 日経NET】
なお、このイランの提案にイラク政府報道官は「助言は受け入れるが、内政干渉は拒否する」と語ったそうです。
「余計なお世話だ」というところでしょうか。

キルクーク州は従来クルド人とトルクメン人が住民の多数を占めていましたが、クルド人を弾圧した旧フセイン政権はアラブ人を移住させる「アラブ化政策」を推進しました。
03年のイラク戦争後、クルド自治政府はキルクークヘの住民の帰還を奨励しています。
一方、イラク中央政府は今年に入り、アラブ人に対しキルクークから別の土地への再移住補助金を打ち出しましたが、アラブ人の間には反発が根強いようです。

住民投票実施を担当するイラク政府委員会ファハミ委員長は11月26日、住民投票は(1)現在のキルクーク州住民のうち、アラブ化政策で流入した人々の元の居住地への帰還を促進する「正常化」(2)選挙人名簿作成のための人口動態調査-のプロセスを経て実施するが、今年3月に完了しているはずだった「正常化」がまだ済んでいない状態だであることを明らかにしました。
そのうえで、「手続き、準備にあと数カ月が必要」と述べ、憲法が規定する年内実施は困難との見方を示していました。
これに対し、自治政府のマスード・バルザニ議長も「手続き的な理由」ならば「数カ月の延期」は受け入れるとしており、住民投票の延期はほぼ確実と報じられていました。【11月27日 共同】
なお、委員長は、選挙人名簿はアラブ化政策実施前の最後に実施された1957年の国勢調査を基に作成する方針であることも明らかにしています。

こうした流れからすれば、クルド側の“住民投票延期受け入れ”は予定どおりとも言えますが、あくまでも「数ヶ月の延期」ということであり、また、「数ヶ月」で現在の状況の根本が変わるとも思われませんので、問題は先送りされただけです。
このキルーク問題はイラクの国民融和を巡る試金石の一つとも、またはイラク情勢を吹き飛ばしかねない時限爆弾とも言えます。
 
ところで、トルコはクルド労働者党(PKK)がイラク領内のクルド自治区を拠点としてトルコ領内で反政府・テロ活動を行っているとして、PKK討伐のためのイラクへの越境攻撃を承認する議会議決を行っています。

PKKはトルコ議会の越境承認議決前の10月22日、トルコ軍の攻撃中止を条件に停戦を提案しましたが、トルコ側は「停戦というのは2国間および2つの軍隊の間の問題であり、テロ組織と論じる問題ではない。これはテロの問題だ」と停戦を拒否しました。
また、11月9日には、「完全な武装放棄につながる対話を始める用意がある」との声明を発表しましたが、12日にはイラク領内のPKK監視所とみられる地点をトルコ軍が空爆しており、事態は進展しなかったようです。

その後は比較的落ち着いた状態でしたが、今月12月に入りトルコ軍の行動が活発化しています。
トルコのエルドアン首相は11月30日、軍に対し、PKKが潜伏するイラク北部に越境攻撃する許可を与えたことを正式に明らかにしました。
トルコは12月1日、イラク北部のテロリスト50-60人に大きな損害を与えたと発表。
更に、トルコ軍は16日未明、PKKを掃討するため、潜伏拠点のあるイラク北部に戦闘機からの空爆と地上からの砲撃による「広範囲な越境攻撃」を行ったと発表しました。
イラク外相は「PKKの存在に対するトルコ側の懸念は理解できるが、今回の爆撃では一般市民が巻き添えになった。イラク政府と調整した上で行動を起こすべきだ」とトルコを批判しています。

また、トルコ陸軍参謀総長は16日、地元メディアに対し、米国は「情報」を提供し、イラク北部の領空を開放することで空爆作戦を暗黙に承認したことになると語っています。

18日未明には約300人規模のトルコ地上軍の越境攻撃が行われました。
トルコ軍の地上進攻は10月以来初めてとなります。
トルコ軍は同日夜には撤退した模様です。

18日にはキルクーク帰属問題に関し、ライス米国務長官がキルクークを予告なしに“電撃訪問”しました。
相互に対立するイラクの諸宗派・民族の指導者に対し国民和解を急ぐよう促すのが狙いと言われています。
しかし、クルド自治政府のマスード・バルザニ議長はライス米国務長官との会談を拒否したそうです。
トルコがPKK掃討のためクルド自治区内で越境攻撃を行うことをアメリカが事実上容認していることに対する抗議であるとの見方を、自治政府のネチルバン・バルザニ首相は示しています。

トルコの越境攻撃とキルクーク帰属の住民投票、この厄介な二つの問題が互いに絡み合う形で、改善の兆しが見えているとも伝えられるイラク情勢に影を落としそうです。

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パレスチナ支援会議  各国から要請額を上回る拠出表明、されど・・・

2007-12-18 14:47:53 | 国際情勢

(ガザ地区をパトロールするイスラエル軍 “flickr”より By cromacom)

パレスチナ自治政府の経済復興などを支援するためにパリで17日開かれたパレスチナ支援会議には、87の国と機関が参加、パレスチナ自治政府の要請額(56億ドル)を上回る総額74億ドル(約8400億円)の拠出表明がありました。
主な拠出国と金額は以下のとおりです。【12月18日 AFP】

EU:3年間で6億5000万ドル(約730億円)
米国:2008年に5億5500万ドル(約620億円)
サウジアラビア:会議主催者によると3年間で5億ドル(約560億円)、パレスチナによると7億5000ドル(約850億円)
英国:3年間で4億9000万ドル(約550億円)
スペイン:3年間で3億6000万ドル(約400億円)
フランス、ドイツ、スウェーデン、クウェート、アラブ首長国連邦:3年間で3億ドル(約340億円)
カナダ:5年間で3億ドル(約340億円)
オーストラリア:2008年に4500万ドル(約50億円)
ロシア:1000万ドル(約11億円)

日本も、医療状況改善に向けた人道支援や、日本政府が進める「平和と繁栄の回廊」構想に基づく農業支援などを中心に1.5億ドル(約170億円)の無償資金協力を高村外相が表明しました。

イスラエルの侵攻が繰り返されるパレスチナ自治区は、前回和平交渉が決裂した00年以来7年間で住民1人当たりの所得は40%減少しているそうです。
アッバス議長は「会議で得られる支援は自治政府予算に70%、教育や健康など開発案件に30%を投入し、和平プロセスをより強固なものとするシグナルを送りたい」と語っています。

資金援助以外では、フランスのサルコジ大統領は「時期と条件が整えば、パレスチナの治安を支援する国際部隊の創設と展開を提案する」と表明しています。

要請額を上回る拠出表明というのもすごいですが、「金で解決できるものなら・・・」というところでしょうか。
別に皮肉ではなく、まさに資金的な面で解決しうる問題、あるいは資金がないと解決しない問題も多々あるでしょうから、多くの協力が国際的に得られることは大変喜ばしいことだと思います。
経済的に安定すれば民心も落ち着き、解決へ向けた取り組みも可能になります。

その肝心のパレスチナとイスラエルの交渉のほうは、なかなか難しいようです。
アッバス議長は開会演説でイスラエル側に対し、パレスチナ自治区におけるすべての入植の凍結、127におよぶ不法入植地の解体、軍事作戦の解除、「分離壁」建設の中止、イスラエルに拘束されているパレスチナ人の解放などを求めています。

しかし、イスラエルは最近、東エルサレムにあるユダヤ人入植地に住宅約300戸を新設する計画を発表、占領地ヨルダン川西岸一帯の入植地では、数百戸以上の新規住宅が建設許可を取得済みとも伝えられています。【12月12日 毎日】

一方のイスラエルはハマスなどによるロケット弾攻撃の停止を求めていますが、12日だけで約20発の手製ロケット弾がガザ地区から撃ちこまれ、イスラエル軍は11日、ガザ地区南部に戦車などを投入して少なくとも武装勢力メンバー6人を殺害した・・・という状況です。
また、イスラエル南部のZikimキブツ(集団農場)で16日、ガザ地区から発射されたロケット弾が着弾し2歳の幼女が負傷したと報じられています。【12月17日 AFP】

このような状況で12日、イスラエル、パレスチナ双方の和平交渉チームが「2国家共存」に向け、エルサレムで7年ぶりの本格交渉を正式再開しましたが、パレスチナ側の暴力停止とイスラエル側の入植活動凍結という“交渉の入り口”で紛糾しており、今後の見通しがたっていません。


(ガザ地区のパレスチナ、イスラエル各支配地域及び入植地分布図 “flickr”より By Benjamin Ludman)

ガザ地区について見ると、ハマスが今年6月にパレスチナ自治区のガザ地区を武力制圧してから14日で半年が過ぎ、また、ちょうどハマス創設20周年にあたることもあって、15日にはガザ市で30万人(ガザの人口は約150万人)を集めて記念集会が開かれました。
この集会は、先月ファタハが開いたファタハ創設者である故アラファトPLO議長没後3年追悼集会に対抗する意味もあります。

ハマス独自の「ガザ政府」のハニヤ首相は「我々は絶対にイスラエルの存在を認めない。聖戦と抵抗こそが解放への唯一の道だ」と訴えたそうです。
また、ファタハ支持の広がりに危機感を抱いたハマスは、ファタハ活動家を次々と拘束するなどして、ファタハの活動を封じ込めているとも言われています。【12月15日 朝日】

しかし、イスラエルからの生活物資・燃料供給を制限されているためガザ住民の生活は困窮しており、また、検問所の閉鎖で病気の治療のための近隣国への移動もままならず、この半年間で患者37人が死亡したとも言われています。
病院施設の多くで備蓄燃料が底をつき始めており、停電も1日4時間以上続いています。

「ハマスはエジプトとの境界の地下トンネルを通じて現金や物資を密輸している。」「金に困らず、司法機関などをすべて掌握した以上、支配はさらに続く」という見方もあるようです。【同上】
ハニヤ前首相はファタハに対して「無条件」で話し合いに応じるよう求めていますが、アッバス議長は、ハマスとの交渉には前向きに応じる構えがあるものの、ハマスがガザ地区を「クーデター」以前の状態に戻し、その統治権をパレスチナ自治政府に戻すことが条件だとの姿勢を崩していません。【12月16日 AFP】

今回の支援会議によって西岸地区は相当に回復するかもしれませんが、ガザ地区住民の困窮は当分続きそうな気配です。
イスラエル・パレスチナ関係が改善しない限り中東は安定しない、イスラエル・パレスチナ関係が改善して中東・アラブが安定すれば、現在世界を揺さぶっているイスラム対その他世界の対立の構図も変化するかも・・・そうした思惑で、“死に体”となりつつあるブッシュ政権も何らかの実績を残すべく中東和平に最後の力を注いでいるのでしょうし、支援会議参加各国も要請を上回る支援を実施しているのでしょうが、ハマスのガザ支配が喉に棘となって突き刺さっているようです。


(パレスチナの支配地域変遷 緑がパレスチナ、白がイスラエル 西岸地区は“壁”によって虫食い状態になっています。 “flickr”より By FREEPAL)

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イギリス  スコットランド独立って本当にあるのか・・・

2007-12-17 17:45:03 | 世相

(スコットランド伝統のハイランドダンスを披露して観客におじぎ。 “flickr”より By Randy Son Of Robert)

スコットランドがイギリスから独立するというのは・・・と言う話。

周知のように、イギリスの正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」。
グレートブリテンはさらに、イングランド、スコットランド、ウェールズという三つの地域にわかれます。
歴史を遡るとそれだけで万巻の書があるところですが、ゲルマン系のアングロ・サクソン人がイングランドを中心にブリテン島に進出する以前からこの地に住んでいたケルト系の民族の文化がイングランド以外の地域に残存しています。
スコットランドはウェールズと異なりローマ帝国の支配も受けていません。

スコットランドはイングランドから文化的影響をうけながらも、独自の王国として緊張・対立関係が長く続きましたが、イングランドと共通の国王をいただく同君連合を経て、産業革命で圧倒的経済力を獲得したイングランドの圧力に屈する形で、1707年スコットランド議会は自らを解散して完全にイングランドと一体化することになりました。
現在でも形式的には、イギリスは共通の国王をいただく4王国の連合体です。

また、イギリス国歌「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」の第6節には「反体制的なスコットランド人」を粉砕するため神の助けを懇願する部分があるそうです。
国歌が様々な歴史的経緯によって、現在の価値観に照らしたとき“いかがなものか・・・”という表現を含んでいるのはイギリスに限った話でありません。
伝統・文化として受け入れるかどうか・・・ということになりますが、“「反体制的なスコットランド人」を粉砕する”とまで言われるとどうでしょうか?
イングランドとスコットランドの間にある溝をうかがわせる話でもあります。

そういった文化的・歴史的事情があって、スコットランドには今もイギリスからの“独立志向”が強く存在しているそうです。

***スコットランド独立支持が急増=3カ月で5%上昇*****
英国からのスコットランド独立を支持する者が過去3カ月で5%増えていたことが、世論調査で明らかになった。日曜紙サンデー・ヘラルドが16日報じた。
世論調査会社TNSシステム・スリーによると、スコットランド人のうち約40%が英国との300年にわたる連合を解消することに賛意を示した。これは8月時点の35%を上回る。
一方で、英国との関係継続を支持する者は44%に上るが、8月時点の50%から低下。
独立支持が多い年齢層は25-34歳で、53%。逆に65歳以上のグループは57%が独立に反対した。【12月16日 時事】
********************************

97年ブレア政権のもとで、地方分権化の流れもあって、スコットランド・ウェールス・北アイルランドに独自の議会(従来からある地方議会とは別物で、スコットランドであればスコットランド王国の議会という位置づけ)を置くことになりました。
議会は独自の行政府を選出し、イギリス中央政府から地域の教育、福祉、医療などに関する、立法や徴税、予算配分について決める権限が委譲されました。

スコットランド議会には、スコットランドのイギリスからの独立を主張するスコットランド国民党(SNP)が存在しています。
「独立したほうがいいか?」という世論調査と、現実の政治選択としてのSNPの議席数は必ずしも一致しません。
98年当時世論調査では独立支持が50%を超えていましたが、99年選挙ではSNP得票は30%にとどまり、統一維持を主張する全国政党である労働党が42%で第一党になりました。
それは、ブレア政権の引止め政策の効果もありますし、「精神的アイデンティティーはスコットランドに感じるが、現実に独立した場合のもろもろのことを考えると・・・」という住民の常識的な判断でもあるでしょう。

その後、03年選挙では129議席中SNPは29議席(第一党は50議席の労働党)でしたが、今年5月の選挙では47議席を獲得、46議席の労働党を抑えて第一党になりました。
これにより、スコットランド政府の首相もSNP党首が就任しています。

日本でも琉球王国の伝統・独自の文化を、あるいは基地問題という独自の問題を持つ沖縄にあっては、“独立志向”があっても不思議ではありませんし、実際に沖縄独立を主張する地方政党もありますし、戦後米軍も当初は“独立”の方向だったとも聞きます。
現在でも日本とは区別した沖縄という存在に精神的アイデンティティーを感じる沖縄人は多いでしょうが、昔も今も“独立”は現実的な選択肢としては大きくなっていません。

スコットランドの場合は、“独立”は沖縄よりはるかに現実味を帯びています。
歴史・文化の問題もありますが、独立派の現実的・財政的裏づけとなっているのが北海油田の存在です。
今は中央政府に吸い上げられている石油からの利益をスコットランドが使えるようになれば・・・という思惑です。
一方、“独立”を思いとどまらせているのは、中央政府のスコットランドへの手厚い予算配分のようです。
独立してしまうとこの恩恵をうけられない・・・。

しかし、中央政府の予算にすがっているだけでは将来への展望がひらけないのは日本の地方自治体もスコットランドも同じです。
独自財源で独自の地域密着の政策をおこなってこそ、経済浮揚のきっかけもつかめるのでは・・・という発想がスコットランドでも次第に広まってきているとも聞きます。
最近の“独立志向”の高まりにもそのような背景があるのでは。

“独立”については、ヨーロッパの場合、もうひとつ別の要素が加わります。
EUの存在です。
現実に“独立”を考えると、「独立して果たして経済的にどうなるのか?」「外交はどうするのか?」という“面倒な問題”がありますが、EUという大枠を利用すれば、グローバル市場に参加でき、また、外交等の国際関係も一定にフォローされます。
EUの大枠のなかで、スコットランド独自の政策に専念する・・・それなら敢えて“イギリス”という中途半端な存在はなくても・・・という考えも出てきます。

もちろん、EUの基本条約改正を行うリスボン条約の批准に関して、国民投票を各国が嫌がり議会決議で済まそうとするように、EUという理念が広くヨーロッパ国民に受け入れられている訳ではないですし、今後の方向も不確実なところがあるのは事実です。
しかし、ヨーロッパ社会においてEUというものが一定のプレゼンスを持ってきているのも、また事実ではないでしょうか。

ベルギーでは相変わらずオランダ系のフラマン語圏とフランス語圏の政治対立が根強く、いまだ組閣ができないようです。
将来的にスコットランド独立、イギリス解体ということもあるのでしょうか? 
“国家”の意義が問われる時代になってきています。

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アフガニスタン  今日も続く戦い、日本は?

2007-12-16 15:48:15 | 国際情勢

(カブールの墓地を行くアフガン女性 “flickr”より By willy61)

アフガニスタン国防省は今月10日、アフガニスタン国軍とNATO主導の国際治安支援部隊(ISAF)などが、今年2月からタリバンが占領を続けていた南部ヘルマンド州ムサカラ地区中心部を奪還したとの声明を発表しました。
ムサカラ地区はイギリス軍がタリバンとの休戦協定を結び撤退した後、タリバンが侵入し、国内最大のタリバン出撃拠点となっていました。

今回の作戦は、アフガニスタン軍とISAF部隊に加え、米軍主導の多国籍軍から米兵約200-300人が参加して行われましたが、(実態はわかりませんが)アフガニスタン軍を前面に立てた作戦であるとされています。
ブラウン英国防相は「これは重要な作戦である。最も重要な点は、アフガン軍が作戦を主導していることだ」と語っています。
また、ヘルマンド州の英軍報道官は「作戦はムサカラの入り口を突破するまで継続する。突破口が開ければ、アフガン軍が進攻する」と述べていました。【12月10日 時事】

ムサカラ地区奪還には成功しましたが、ISAFの状況は相変わらず厳しいようで、指揮するNATO、また、アメリカからは苛立ちとも思える発言が相次いでいます。

ゲーツ米国防長官は11日、アフガニスタンで紛争が激化しているとして、NATO同盟諸国に対し、アフガニスタン駐留部隊の兵力、装備などを増強するよう呼び掛けています。
また、統合参謀本部マレン議長は、NATOが主導するISAFの働きを評価しながらも、作戦能力に不足があると説明。同時に、米軍はイラクでの作戦も抱えており、アフガンでできることは限られていると強調しています。
【12月12日 時事】

来日したNATOのデホープスヘッフェル事務総長は14日、アフガニスタンでの支援活動について、「地上部隊についても空軍部隊についても完全には満足していない」と同盟国からの部隊派遣が不足していることに苛立ちを明らかにしました。
同事務総長は、“NATOはタリバンと戦うために必要な地上兵力の約90%しか得られておらず、残る10%を補充することができない現状にある”と語っています。【12月14日 AFP】

アフガニスタンに駐留軍部隊を派遣している主要8か国の国防相会議が14日イギリスで開催され、タリバンとの戦闘が激化しているアフガン南部で各国が負担共有を進めることで合意しました。
米英軍は、タリバンの攻勢で死者数と駐留経費が増大しており、今後は他国にも南部での任務分担を強く求める方針だそうです。
ブラウン英国防相は、「我々は同盟国に対し、アフガニスタンの難問解決への貢献を求めていく」と語っています。【12月15日 読売】

日本の支援を呼びかける声も出ています。
以前からも同様の話がありますが、先述のNATOデホープスヘッフェル事務総長は「ヘリコプターや輸送機など輸送能力が足りない」「日本の憲法の制約は承知しているが、例えば文民による支援として民間のヘリをアフガンに派遣することはできないか」と提案し、日本側の関係者にもこうした案を伝えたそうです。 【12月14日 時事】

その日本はアフガニスタンに関しては新テロ特措法によるインド洋上での給油活動ということになる訳ですが・・・。
聞こえてくるのは“国際貢献”とか“日米関係”といった言葉ばかり。
最近に至っては、衆議院における再可決、参議院での首相問責決議、解散総選挙といった政局がらみの話ばかりです。

今アフガニスタンで繰り広げられている戦いが何のための戦いなのか?
なぜタリバンではだめなのか?
なぜカルザイ現政権を支援するのか?
そのことはアフガニスタンに暮らす人々にとってどういう意味があるのか?
そういった一番入り口になるべき議論が殆ど聞こえてきません。

また、ISAFの苦境が報じられたりしますが、現在の全般的戦況はどうなっているのかも定かではありません。
軍事的支援によらない活動が、日本や他の国々でどのように展開せれているのかもよくわかりません。

個人的にもわからないことだらけです。
基本的なことで恥ずかしいのですが、ISAFと“米軍主導の多国籍軍”の関係がわかりません。
ISAF設立根拠である安保理決議1386は、ボン合意の付帯文書の規定に基づきその履行措置として採択されたそうです。【ウィキペディアより】

付帯文書内容は要約すれば、「この会議の参加者一同は,アフガニスタン新政府が自国の責務としての治安・秩序を維持し、安全な環境下で国連・NGO等の活動ができるように、保安部門及び国軍の創設についてアフガニスタン新政府を支援する。当面の措置としては、国連の安全保障理事会に対し、カブールならびにその周辺地域での治安維持支援を行う国連授権のある部隊の早期派遣を求める。」というものでしょうか。

一方、アメリカの「不朽の自由作戦(OEF)」の法的根拠は、国連憲章第51条の規定に基づき、攻撃開始の当日である2001年10月7日に米英両国により安保理に提出された次の書簡にあるとされています。【ウィキペディアより】

書簡は要約すれば、「米国は9.11の軍事攻撃に対する個別的又は集団的な固有の自衛の権利の行使として他の諸国とともに行動を開始したことを、国連憲章第51条の規定に基づき報告する。」ということでしょうか。

明確に趣旨は異なる二つの活動ですが、段階的に指揮権がOEFからISAFへ委譲され、06年10月の東部指揮権委譲で全て完了しています。
また、ISAFの参加国としてアメリカは15000名という最大の派兵国です。
ISAFの指揮権は各国持ち回りになっており、今現在はどうかしりませんが、今年2月からはアメリカが担当しています。

よく“ISAFと米軍主導の多国籍軍は”という表現を今でも見ますが、ISAFの枠外に存在する米軍または多国籍軍というのが何のか?インド洋上の活動もそれにあたるのでしょうが、ISAFとの関係がどうなっているのかどうもわかりません。

いずれにしても、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という日本国憲法の趣旨に照らすと、9.11の報復戦争としてのアメリカの軍事行動への協力・参加は排除されるべきもののように思えます。

しかし、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって」という日本国憲法前文の趣旨からすれば、また、アフガニスタンの地で“専制と隷従、圧迫と偏狭”が行われようとしていると考えるのであれば、これを座視して国内に閉じこもっていてよいとはならないかと考えます。

その場合はISAFに繋がる活動か、または、軍事行動とは切り離した文民支援ということになります。
現行憲法とのすり合わせは難しいかもしれませんが、将来的には、他国民を専制と隷従、圧迫と偏狭から救い出し、“基本的人権と人間の尊厳及び価値を確認し、正義を確立し、一層大きな自由の中で市民が生きていけるような世界を創っていく”【国連憲章より】活動であれば、自衛隊派兵・戦闘行為への参加もありえるのではないかと考えています。

また、将来のそのような行為においてはもちろん、現行とりうる活動においても、現地の実情を考えれば参加した日本人の犠牲を完全に避けることはできないと思われます。
決して“国際貢献”といった浮ついた抽象的文言ですむ話ではありません。

以前も別の場所で述べたように、それはその活動の趣旨を国民が理解するのであれば、また、その活動によって救われる現地の人々の生命・人権・自由を考えるのであれば、流す血は日本人としての誇りとすべきものであり、必要以上に厭うべきものではないと考えます。
逆に言えば、そのように思えるかどうか、国民の間で活動の趣旨・意味について十分な議論が行われ、ある程度のコンセンサスを得る必要があろうかと思います。

また戯言になってしまったので今日はおしまい。

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パキスタン 今夏の洪水被害いまだ癒えず、政府食糧配布も中断

2007-12-15 14:28:29 | 災害

(バケツで家から水をくみ出す少女 2007年8月パキスタン・カラチ “flickr”より By -NB)

今年、インド東部・バングラデシュ・ネパールの南アジア地域は6月以来のモンスーン期の豪雨により大規模な洪水にみまわれ、インドが1800人、バングラデシュが569人、ネパールが105人(8月14日時点集計)という2500人近い死者を出しました。
もちろん被害は死者や負傷者だけにとどまらず、住宅・財産の流出、食糧不足による飢餓、農地・農作物の被害、伝染病の蔓延・・・多岐かつ長期にわたります。

バングラデシュは11月にはサイクロン「Sidr(シドル)」の直撃により、再び死者4000人超とも、1万人に上るのではないかとも言われる被害を出したことは、記憶に新しいところです。

上記のインド東部・バングラデシュが豪雨被害を出していた頃、パキスタンでも大きな自然災害がありました。
6月26日、パキスタン南部地域はサイクロン「Yemyin(イエミン)」に見舞われました。
その後のモンスーン暴風雨も重なって洪水が発生。
バロチスタン州全体とシンド州北部に大きな被害を出し、死者420人、行方不明者1千人以上が発生し、被災者は250万人。
10月18日時点の報道でも、なお30万人以上の人々が避難生活を余儀なくされています。【JADE‐緊急開発支援機構】
現地の住宅は日干しレンガづくりのため、水没すると泥化して流出してしまい、住民は難民となってしまうとも聞きます。

当時それほど大きなニュースにもならなかったこともあって、この「イエミン」によるパキスタンの被害を私は今まで知りませんでした。
私を含め一般的には“数百人規模の犠牲者の災害”はアジア・アフリカではさして珍しくもなく、「またか・・・」と見過ごされていきます。

******
パキスタン南部で今夏にあった大洪水の影響が深刻だ。栄養不足で皮膚病やマラリアなどに感染する子どもが相次ぐ。冠水した田畑での作物栽培も当面は難しい。政府の食料配布はすでに中断されており、飢餓の発生が懸念されている。【12月14日 朝日】
******

日本のNGO「JADE―緊急開発支援機構」がシンド州カンバルで11月から巡回診療をはじめ、現地の医師と看護師計6人が二手に分かれ、これまで約3000人を診たそうです。
とくに子どもは栄養不足で抵抗力が下がり、病気にかかりやすくなっていると伝えられています。

JADEの調査によると、農家1世帯あたりの平均年収(月収ではありません。)は被災前の約8万円から約1万3千円に減ったそうです。
来年3月には田植えが始まるが、「すべてを失った農民に種を買う余裕はない。これから多くの餓死者が出る恐れがあり、国連にも警告した」と話すJADE現地責任者の話も紹介されています。

また国際的NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は生活用品(鍋など)、衛生用品(石鹸・浄水剤など)の配給を行っています。
パキスタンもこれから冬を迎えるため、新住居を確保が必要になります。
セーブ・ザ・チルドレンでは、ナツメヤシの葉、マンゴ木、竹などといった自然の素材を利用したシェルターを提案しています。

パキスタン政府は8月、資金難を理由に食料配布を中断。
人びとは生き残った家畜を売ったり、日雇い仕事をしたりしてかろうじて生計を営んでいるとか。

“命の重さ”とか“人権”とか、ここで正義のだんびらを振り回すつもりもありません。
ただ、こういった被災者を救援するような政府の取り組みがあれば、「(世論調査で)67%がムシャラフ大統領の即時辞任を求めている」【12月14日 共同】といった事態も改善できるし、イスラム原理主義に人々を追いやることもなく、国際的にもイスラム過激派との戦いの一画にパキスタンを留め置くこともできるようになるのでは。
政府や国際支援のお金の使い方として“効果的”と考えるのですが。
人々が政府・国際世論に背をむけてしまったあとでは対応は“非効率”です。


(被災地からラクダで避難する住民 “flickr”より By saipahi)
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ジンバブエ  経済崩壊・人権侵害、それでも続くムガベ政権

2007-12-14 14:34:26 | 国際情勢

(05年12月 ジンバブエ首都ハラレの街角 ゴミ捨て場の卵を集める子供 “flickr”より By القعقاع )

*****ジンバブエ与党、ムガベ大統領を次期大統領選の候補として承認*********
ジンバブエの与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線は13日、次期大統領選挙の候補として、同党党首で現職のロバート・ムガベ大統領(83)を承認した。ムガベ大統領は1987年から大統領の座についており、再選されれば6期目となる。【12月14日 AFP】
*******************************************

ジンバブエ(旧ローデシア)のハイパーインフレ(年率5000%超)・経済崩壊(失業率80%)については7月11日にも取り上げました。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070711

事態はその後も悪化するばかりのようです。
8月にザンビアの首都ルサカで南部アフリカ開発共同体(SADC)首脳会議が開催されました。
しかし、経済危機やムガベ政権による反体制派の人権弾圧が続くジンバブエ問題に関しては、具体的な対応策は示さず、「(事態改善へ)進展が見られる」といった意見が出るにとどまったそうです。 【8月18日 時事】
“進展”とは一体何を指してのことでしょうか?

「ジンバブエの政府は8月23日、国内の外資系企業に対して株式の過半数を“ジンバブエの黒人”に譲渡するよう義務付ける法案を国会に提出した。ジンバブエ経済はインフレ率が約7600%に達するなど崩壊状態だが、法案が成立すれば、数少ない外貨獲得源である外資系企業の操業停止や縮小も予想され、経済の崩壊に拍車がかかりそうだ。」【8月24日 毎日】
ムガベ政権は白人所有の農地の強制収用などを実施しており、今回の法案は産業全般の「黒人化」を目指す政策の一環です。
(白人農地強制収用の経緯、ムガベ大統領の「補償を請求するならイギリス政府にすべき」との発言などは上記7月11日ブログ参照)

「年率約7600%にも上る世界最悪の超インフレに苦しむジンバブエで、ムガベ大統領は8月31日までに、国内のすべての企業や政府機関などに対し、商品の価格やサービス料、従業員給料などの値上げを禁止した。
政府は6月末、生活必需品の価格を固定するよう命じたが、買いだめなどで商品が品薄になったことから、8月下旬に一転して一部値上げを認めたばかりだった。」【9月2日 毎日】
経営経験の裏打ちのない性急な“黒人化”、強制的価格統制・・・経済原則を無視した政策は、供給を減らし、ハイパーインフレを加速させるばかりです。

9月、ブラウン英首相は、EUがムガベ大統領に科している渡航禁止制裁を無視し、12月に開催されるEU・アフリカ首脳会議にムガベ大統領が出席する場合、会議をボイコットする意向を表明しました。
実際、12月の8,9日にリスボンで開催された会議をブラウン英首相は欠席しました。
ドイツのメルケル首相は「ジンバブエの状況はアフリカのイメージを傷つけた」とムカベ大統領を批判。
スウェーデン、デンマーク、オランダなど欧州各国も同調。
これに対し、ムガベ大統領は「こうした傲慢さこそ我々が闘うべき対象だ」と反論。
セネガルのワッド大統領も記者会見で「メルケル氏は不正確な情報に基づいている」と述べています。
なお、アメリカも今月に入り、ジンバブエ政府高官・企業に対する渡航制限・金融制裁を強化する方針を出しています。

ハイパーインフレに関しては、ジンバブエ政府は今年7月、物価上昇率が年率換算で7634.8%に達したと発表しました。
経済専門家やムガベ大統領批判勢力は実際の数字はもっと高いとも指摘しており、IMFは今年末までに「10万%増」に到達する恐れがあるとも予測していました。
“10万%”・・・もうなんのことかわからない数字です。

経済崩壊だけでなく、ムガベ政権は人権侵害でも激しく非難されています。
99年にムガベ大統領に反対する「民主変革運動」が結成され、都市部を中心に支持を広げますが、ムガベ政権は活動家、支持者の逮捕するかたちで、これを徹底的に弾圧しました。
特に、05年の総選挙で野党を支持した都市貧困層への弾圧を強化し、「犯罪対策」を名目に貧困層住宅の取壊しを猛烈な勢いで進めました。
国連の報告では70万人が家を失ったと言われています。

この都市貧困層弾圧・住宅破壊は「Murambatsvina(ショナ語でゴミ清掃の意)作戦」、「ごみ一掃」と呼ばれていました。
警察長官は「経済を破壊しようと専心して、這い回っている蛆虫集団から国を清掃こと」を意味すると言っていました。
しかし、「民主改革運動」は、「このキャンペーンは選挙で野党を支持した都市部のものを罰し、都市部からムガベの政党ZANU(PF) が彼らを支配できる農村部に追い払うことを意味している」と述べています。
警察は自分の家の破壊を強制し、従わない場合は不法建造物であるとしてブルドーザーで破壊。
家を失い路上での生活を余儀なくされるもの、農村に帰ったものの生活に困窮するもの、通学できなくなった子供、路上に追いやられたエイズ孤児・・・。

ジンバブエ独立時、総人口の1%程度に過ぎない白人が国土の4割を所有していました。
このようなヨーロッパ先進国によるアフリカ植民地支配という負の遺産を引き継いで、ゼロではなくマイナスからのスタートであったことは認めます。
独立後の一次産品の国際価格や国際的金融情勢が厳しかったこともあるでしょう。
“加害者”であるヨーロッパ各国に、教え諭すようなことを言われる覚えはない・・・という気持ちも理解できます。

しかし、どのような事情があっても現在のジンバブエの情勢は国家的に破綻しているとしか言えず、その責任は20年間にわたり大統領職を務めてきたムガベ大統領にあります。
そのジンバブエ、ムガベ大統領を擁護するアフリカ諸国も、恐らく類似の人権侵害を国内に抱えているのでしょう。
このような状態で「植民地支配の責任」「援助・支援の増額」を訴えても、それはあまりにも自分勝手です。

かつて、ムガベ大統領はアメリカのライス国務長官を評して「あのアンクル・トムの娘は、白人が黒人の真の友にはなり得ないと知るべきだ」と述べたそうです。
そういった人種対立的な敵視・憎しみの観点からスタートする限り、ジンバエブ・アフリカに希望の光がさすのは難しいのではないかと危惧されます。
前回7月11日のブログでは“民主化の社会的基盤のない状態でスタートして、離陸できないまま自滅していく社会の事例を見ると「どうすればいいのか・・・?」と暗澹たる気持ちになります。”という言葉で終わりました。
残念ながら、今、付け加える言葉がありません。

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政治の世界の女神たち

2007-12-13 13:52:23 | 世相

(米ホワイトハウスのペリノ報道官 “flickr”より By flannel.gary)

ロシアは先月29日に欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止のための新法に署名していましたが、今月12日、履行を一時停止した旨を発表しました。
ポーランド・チェコでのミサイル防衛(MD)システム配備計画などを巡る欧米との対立が背景にあり、プーチン政権の対西側強硬路線の一環と見られています。

今日はそのような“堅い話”ではなく、不謹慎のそしりを受けかねない話です。
MDシステム配備計画については、かねがねロシア側は“かつてのキューバ危機を招くような暴挙”とアメリカを批判していました。
そのからみで、こんな記事が。

****批判続出、米35歳女性報道官「キューバ危機」を知らず*****
「キューバ・ミサイル危機のことを(記者から)質問されてパニックになった。実は、キューバ危機って何だか知らなかったから」――。
 米ホワイトハウスの女性報道官、ダナ・ペリノさん(35)が、世界を核戦争の瀬戸際まで追いやった冷戦期の重大事件を知らなかったと、8日放送の公共ラジオの番組で告白、話題を呼んでいる。
 ペリノさんによると、記者会見で、ミサイル防衛をめぐる米露間の対立と、1962年のキューバ・ミサイル危機を比較する質問が出たが、「危機はキューバとミサイルに関することだろう」と想像はついたものの、歴史的事実をなにも知らなかったため、答えようがなかったという。【12月12日 読売】
************************

ときどきTVなどで拝見して、さすがにアメリカの報道官は随分きれいだね・・・と感心していたのですが。
まあ、報道官が政策決定する訳でもないですから、キューバ危機を知らなくても“支障”はないとも言えるかな・・・。
しかし、キューバ危機をしないということは、他の多くのことも知らないのでしょう。
朝鮮戦争とか、“ひとつの中国”とか。
ベトナム戦争はどうでしょう?中東紛争は?

私も“そんなことがあった”程度のことしか知りませんので他人のことはとやかく言えませんし、“2チャンネル”のような批判・罵倒はきらいですが、やはり世界を動かすアメリカの“顔”としては、“お馬鹿な女子アナ”レベルではなくキューバ危機ぐらいは・・・と、年寄りはつい思ってしまいます。
大統領もかなり怪しいところがありますが。
ライス国務長官が苛立っているかも。

最近もうひとりきれいな女性のニュースを見ました。

****首相返り咲きお預け=ティモシェンコ氏-ウクライナ*****
ウクライナ議会は11日、親欧米派のオレンジ連合のティモシェンコ元首相に対する首相任命投票を行ったが、賛成225票で、定数450の過半数に1票足りず、選出に失敗した。
 与党側から一部議員の電子投票機器が作動しなかったとして、再投票の動議が出されたが、これも1票差で否決され、休会に入った。与党側から造反議員が出ていた可能性もある。
 ティモシェンコ氏の首相任命が承認されていれば、約2年ぶりの首相返り咲きとなるはずだった。同氏側は再投票の実施を求めている。【12月11日 時事】
*******************************


(モデルさんではありません。05年にウクライナ首相をつとめ、その後解任されたティモシェンコ元首相です。今回選挙に勝利して首相への返り咲きを狙っている政治家です。実業家・大富豪でもあります。“flickr”より By metaphotos)

2004年のウクライナ大統領選挙をめぐる混乱で、同じ野党陣営のリーダーだったユシチェンコを強力に支持し、ユシチェンコ氏勝利への大きな原動力となったティモシェンコは、「オレンジ革命のジャンヌ・ダルク」ともてはやされました。
ウクライナ人女性の伝統的な髪型である三つ編みを巻いた金髪(地毛は黒)がトレードマークです。

美しさは見てのとおりですが、その生き様はなかなかハードです。
「女性実業家として海賊版ビデオの製作と販売を手掛け、後にガソリン販売、そしてガス事業に進出して大富豪となった。」【ウィキペディア】とのことですが、その過程ではそうとうにあこぎなこともやってきたようです。
顔に似合わず、“海千山千”のつわものです。
今回の投票で“造反”した議員は、ばれると食い殺されるかも。

美しい女性政治家と言えば、まだまだいます。
今話題のパキスタンでご活躍のブット元首相。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070810
88年1回目の首相就任時には、ビープル誌で「世界でもっとも美しい50人」にも選出されています。
それから20年、さすがにふくよかになってこられましたが、まだまだ・・・。
ムシャラフ大統領とのこれまでの交渉は相当に“したたか”な印象。
3度目の首相の座を手繰り寄せつつあります。
演説は滅茶苦茶うまいそうですが、実務能力はどうでしょうか?

ミャンマー民主化の象徴、信念の人、スーチーさんも。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071110

総じて、女性政治家の場合、その容貌はプラスになるみたい。
私を含め、お馬鹿な男どもが多いですから。

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インドネシア  消える森林、守る森林、増やす森林

2007-12-12 17:56:35 | 環境

(インドネシア チェーンソーの手入れをする二人 モザイクがかかっているところをみると違法伐採でしょうか? “flickr” By Films4Conservation )

10日ほど前に目にした記事です。

****地球にも愛を、結婚や離婚の記念に木を植えて温暖化対策、インドネシア******
インドネシアのジャワ島のスラゲンではこのたび、新しく結婚するカップルまたは離婚する夫婦を対象に、植樹が義務化されたという。
愛情をちょっと地球におすそ分けし、地球温暖化対策に貢献しようという試みだ。

報道によれば、結婚予定の人はチークやマホガニーといった広葉樹の苗木5本を植えなければならない。
苗木は自分たちで用意するか、2万5000ルピア(約300円)で買って、結婚式の立会人に提出する。
その後、苗木を受け取った当局が植樹するとしている。

一方、離婚する夫婦の場合は、苗木25本か4万ルピア(約470円)を寄付しなければならないという。
当局者は「寄付金は苗木の購入に充てられ、購入された苗木は夫婦の住む地域に植えられる。地球温暖化対策の一環と位置づけている」と説明している。【12月3日 AFP】
***************************

国連の気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)が開催されているインドネシアでの、話題づくりの一環でしょうか。
非常に面白い記事で記憶に残りました。
特に、離婚の場合も植樹が必要で、しかも結婚時より本数・金額が多いというところがなんとも。
実効性は・・・はなはだ心もとないところがありますが、当局がどれだけ本気(そんなものがあればの話ですが)になるかということ次第でしょう。

ただ、インドネシアの森林破壊はハイペースで進んでおり、世界の森林破壊の中でも相当なウェイトを占めています。
単にCOP13の開催国ということだけでなく、その森林破壊防止を考えると、このような国民ひとりひとりにその意義を周知していく試みが本来は非常に大切であることは間違いありません。

全世界の化石燃料の使用によるCO2排出量が年260億トン、これに対し、森林減少によるCO2排出量は年60億トンほどで、化石燃料の4~5分の1を占めています。
その森林が近年急速に減少しており、その保護・再生がCOP13での主要議題のひとつです。

例えばアマゾン。
******アマゾン熱帯雨林の60%、2030年までに減少の危機*******
世界自然保護基金(WWF)は6日、森林破壊と気候変動によって2030年までに、アマゾンの熱帯雨林の最大60%が消滅または破壊され、世界各地に連鎖的に影響を及ぼすと警告する報告書を発表した。
世界の主要な二酸化炭素吸収源のひとつであるアマゾンが、気温上昇によって干ばつの危機にさらされており、また森林破壊は「地球の肺」と呼ばれるアマゾン一帯に深刻な被害をもたらしかねないと警鐘を鳴らした。
**************

南米の森林破壊は年430万ヘクタールで、食肉確保のための牧畜転換や道路建設が主因。
年400万ヘクタールが失われるアフリカ北部の亜サハラでは、木炭製造のための森林破壊が要因と指摘されています。
一方、インドネシアの森林破壊は年間190万ヘクタールに達していると予想されています。
特にスマトラ島の熱帯雨林は、01年の世界銀行報告では“2010年には全滅する”と予測されていました。
特にその後事態が改善したという話もありませんので、全滅の方向で進行中ということなのでしょう。

インドネシアの森林破壊の主要な原因は、皮肉なことに、最近ヨーロッパでCO2対策として需要が急増しているバイオディーゼルのためです。
このあたりの話については、先日TV(NHK クローズアップ現代)で取り上げていました。
私の当ブログでも12月2日(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071202)であつかいました。

バイオディーゼル原料のアブラヤシ栽培のため森林が破壊されていくだけでなく、それまでCO2を吸収貯蔵していた泥炭層の乾燥で大量のCO2が逆に大気中に放出されます。
そのマイナス影響は、ヨーロッパでのバイオディーゼル変換によるプラス効果をはるかに上回るものになります。

森林の保全・再生のためには、伐採の防止・制限による森林減少防止があります。
再生のためには植林があります。
植林の場合、もともと森林がなかった砂漠周辺地域などでは、用地の確保が困難であるという問題があります。
また、樹木の生長に時間がかかるため、森林減少で排出された量に相当する炭素を再吸収するためには数十年の時間がかかります。

開発途上国の植林を援助促進する仕組みとしては、「クリーン開発メカニズム」(CDM:先進国援助で途上国の森を植林で増やせば、先進国のCO2削減に算入できる仕組み)があります。
しかし、先述のTVで取り上げていましたが、現実にはCO2の取引相場が非常に低いため、植林して炭素クレジットを得ても経済的には全く採算がとれない(1億出資して利益が1000万円程度といったレベル)そうで、実施している企業は“社会貢献・ボランティア”という位置づけでやるしかない・・・という状況で、取り組み例もごく僅かのようです。

なお、今回のCOP13で、増やす植林だけでなく、森が減らないようにする対策を支援しても算入対象とすることになり、パイロットプロジェクトが始まることになりました。
焼き畑農業を続ける農民に別の生計手段を確保するための援助や適切な森林経営の指導などの事業が見込まれています。

森林減少防止については、もっと手っ取り早く、法律で伐採を禁止してしまうこともあります。
アルゼンチンでは、グリーンピース・アルゼンチンなどの市民団体の150万人署名などの活動によって、11月29日に天然林の伐採を中止する国内法が成立しました。
この法令により各州の政府は1年間伐採許可が与えられないそうです。
今後は地方議会と国会の双方が承認しなければ伐採できず、さらに環境影響調査を当局に提出しなければ開発できなくなったそうです。
また伐採承認前の公聴会開催と伐採後の野外での廃材焼却禁止も定められました。
各州の減収は国の自然保護基金から補てんされるそうです。【12月9日 IPS】

しかし、強制的な伐採禁止は違法伐採という抜け穴を生むこともあります。
ジャングルが消えつつあるインドネシアで生産される木材の半分から4分の3近くが違法伐採で、背景には密輸業者の横行などがあるそうです。【12月7日 産経】

また、どのような取り組みも、森の資源を生活の糧にしている現地の人々の生活をどうするのかという視点をなおざりにすると、結局住民の生活を破壊するか、違法伐採が横行する事態になります。
先述のTV番組では現地の人に植林・森林保護へのインセンティブを与える取り組みが紹介されていました。

マイクロクレジットのような小額事業資金を地元住民にNGOが融資します。
融資を受けた住民は、一定本数の植林を行うと利息が免除されます。
更に、植林した樹木の一定割合が成長すると元金返済も免除されるとか。
資金は先進国から出ているみたいでした。
このような融資例として、2万円ほどの融資で魚の養殖を始めた男性とか、肥料・農薬などを販売する店舗を始めた住民などが紹介されていました。

現地で観光旅行をする際、車をチャーターしてガイドを雇うと1日で100ドルぐらいは普通にかかります。
そんな散財をしている身には“耳が痛い”話ではありました。

ただ、代表的なマイクロクレジットであるバングラデシュのグラミン銀行の場合、利率自体は事業資金では20%程度とかなり高くなっています。(それでも現地の金融事情からするとかなり有利な条件なのでしょうが。)
返済も数人の連帯責任で完済が求められます。
先日のサイクロン被害の際にも、大勢の利用者が被害にあいましたが、ノーベル平和賞も受賞したグラミン銀行創始者のユヌス氏は「支払いの免除はしない。返済条件はいくらでも相談に応じる。払えるまで待つ。今免除したら今後何かあるたびに免除を求めるようになってしまう。」という対応でした。

そういうグラミン銀行と比較すると、植林を絡めた先の融資事業は、詳細がわかりませんが、随分と利用者・住民に有利なシステムのようにも思えます。
その分、融資資金のかなりが戻って来ないので原資を常に出資国に頼らざるを得ないことになります。
また、借り手のモラルハザードなどはどうでしょうか?
大規模にうまくまわる仕組みであるなら、非常に結構な話かと思います。

本格的に市場メカニズムを駆使してCO2を減らしていこうとするなら、すべての生産財・消費財がその生産過程でCO2放出・削減にどれだけかかわっているかを何らかの形で明示して、そのスコアに応じた負担を環境税などで求める仕組みが必要でなないでしょうか。
それによってCO2が“コスト”として明確に意識され、生産者はできるだけCO2削減につながる方向に向かいますし、消費者も購入時にその商品がどれだけ環境に負荷をかけているかが確認でき、高負荷商品は割高になるということで需要も抑制される・・・そこまで行けばCO2削減は本格化するでしょう。

そうなると、恐らくCO2相場はいまよりはるかに高くなるでしょうから、炭素クレジットを媒介としたCDMやREDDなどの植林・森林防止援助事業もまた採算がとれるようにもなるでしょう。
言うだけならいとも簡単なことですが・・・。
しかし、もし温暖化に地球の、人類の将来がかかっているのなら誰か検討してもいいのでは?

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イラク  国会議員さんはメッカ巡礼中

2007-12-11 16:03:09 | 世相

(メッカ 中央の四角く黒い建物がカーバ 黒色は全体を覆う布の色だそうです。このカーバの周囲を7回まわります。 画面全体に何十重と取り巻く小さい白いぽつぽつしたものは人間です。全体で100万人収容できるそうですが、見ているだけで酸欠で息苦しくなりそうな・・・そんな感じです。 “flickr”より By alfredogutierrezch)

どこの国でも文化の違いによるストレスはあるものです。
イラクのこんなニュースも、そのひとつでしょうか?

*****メッカ巡礼による議員の大量欠席でイラク国会休会*****
毎年恒例のメッカへの巡礼のため、イラクでは国会議員70人以上が国会を欠席する事態となっており、イラク国会は国民和解に向けた法案など重要な議題が残されているにもかかわらず、休会を余儀なくされている。
6日に開かれた前回の国会では、275議席中、出席したのはわずか160人だったという。
国民和解に向けた成果を上げられないヌーリ・マリキ政権に米政府がいら立ちを示すなか、イラクの政治的惰性が見られている。【12月10日 AFP】
*********************************

以前も“夏休み”で同様のことがありました。
今年5月、「石油収入の再分配」「地方選挙の実施」「バース党員の公職復帰を認める」などの懸案の法案が1つも成立していない状態で、イラク国会議員が2ヶ月の夏休みを予定していることに対し、アメリカが「イラク国会の休会は国際社会だけでなくイラク国民に間違ったメッセージを伝えることになる」と苛立ちをつのらせていました。
イラク議員からは「これは不要な干渉。議会には責任感があり、緊急に法律を制定する必要があると判断すれば休会しない」「米国の干渉は理解しがたく、望ましくない結果をもたらす」といった批判・不満が出ていました。【5月6日 AFP】

夏休みのほうは結局1ヶ月に短縮されました。
法案が成立していない状態のままの休会には変わりありませんでしたが。

この手の問題は国際関係に限らず、企業進出・海外生活でも、普通の観光旅行でも、誰でも経験するところです。
個人的にはアメリカの苛立ちに同情しますが、今回の場合、具体的な“文化の違い”として三つほど考えられます。

ひとつは、一般的な時間の使い方、仕事の効率性に関する意識の違い、要するに日米に比べて“のんびりした”国が多いということ。
二つ目は、現地の事情がよく理解できないこと。今回のケースで言えば、“メッカ巡礼”がどれだけ現地の人々にとって重要なものであるか、外国人である日米の人間には理解できない部分があるのでは。
外国人からすれば、“この時期にメッカ巡礼などしなくても・・・”と思ってしまいますが、ひょっとしたら現地の人にとっては“メッカ巡礼より大切なものがあるのか!”という問題かも。

三つ目は、日本でもそのようなところがありますが、欧米的な“議会”を必ずしも絶対的なものとは考えていない・・・という意識の差があるのでは。
アメリカ人が考える“民主的議会”とは機能の仕方が少し異なるところがあるのかも。
日本の場合も、“国会においてオープンで真摯な質疑が交わされ、そこで何らかの合意が成立する”というケースはあまり見ません。
重要な部分は、有力者間の非公式な折衝の中で決まっていくのでは・・・、国会って結局形式的な儀式の場では・・・という思いが拭えません。
イラクでも、“重要な部分は族長や宗派指導者などの有力者間の話で決まり、国会は所詮・・・”というところもあるのでは?

ところで、イラク情勢は引き続き落ち着いているようです。
ゲーツ米国防長官は5日バクダッドで会見し、武力衝突の発生率がこの2年で最低であること、相当数の難民が帰還していること、また約7万人のイラク人が米軍と共に国際テロ組織アルカイダの掃討作戦に参加していることなどを挙げ、「イラク全土で治安状況は劇的に変化している」と、イラクの安定化および民主化は実現間近なところまできていることを主張しています。【12月6日 AFP】

また、ペトレアス多国籍軍司令官は6日の記者会見で、イラク国内の治安が改善傾向にある理由として、「イランが提供した武器絡みの典型的な攻撃」が減少したことや、シーア派民兵組織を率いる反米指導者サドル師が武装活動停止を宣言したことを挙げています。
高性能路上爆弾などのイラン製武器の減少については、「在庫が尽きたのか、(武器支援を)停止するよう指示があったのか」はわからないとのこと。【12月8日 毎日】

もちろん落ち着いているのかどうかは比較の問題で、治安改善を伝えるニュースと一緒に、いまだに爆弾テロのニュースも絶えません。
5日にはバグダッドのシーア派居住地域で車に仕掛けられた爆弾が爆発、14名死亡、28名負傷。
この爆発は、上記のゲーツ米国防長官が会見を始める直前に起きたそうです。
8日には北部のバイジで車両爆弾による警察建物への自爆攻撃があり、少なくとも6人が死亡しました。

ブラウン英首相は今月9日、2週間以内にバスラ州の治安権限をイラク側に移譲すると発表しましたが、最重要な原油の輸出拠点であるバスラ等の南部支配権をめぐっては、かねてよりシーア派の2大勢力、サドル師の民兵組織マフディ軍と治安部隊の実権を握るイラク・イスラム最高評議会の間で対立があります。
イラク治安部隊が先月17日ディワニヤで、マフディ軍に対する掃討作戦を開始したとの報道もありました。【11月19日 AFP】
イギリスからの権限委譲に伴って、この対立が火を噴かないといいのですが。


(くどいですが、これも同じカーバの様子 “flickr”より By ♥♥QATAR.♥♥.Hams al-Shefaayef.♥♥)


 
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台湾  時代は変わる・・・しかし、何処をめざすのか?

2007-12-10 13:23:35 | 国際情勢

(かつての軍事最前線“金門島”も今は観光スポット 戦車を前にポーズをとる女性は台湾からの観光客でしょうか?それとも中国本土からでしょうか。 “flickr”より By hui hui71)

台湾の“金門島”というと、中国・台湾が対峙する超緊張状態のホットスポット・・・というイメージを私は持っていましたが、随分時代遅れの考えだったようです。
金門島は台湾本島からは台湾海峡をはさんで300km近く離れ、逆に中国本土の厦門(アモイ)とは狭いところではわずか2.1kmという、殆ど本土に接するような島です。
かつては、58年の金門砲戦で多数の死傷者をだすなど文字通り“軍事最前線”で、砲台が築かれ、地雷が埋設された要塞の島でした。



しかし、軍事的にも大砲を打ち合うような時代は終わりミサイルの時代となって、金門島の軍事的意味は大きく変わったようです。
台湾駐留軍の人員は最盛期の20分の1に減らされ、昨年6月からは地雷の一部が撤去されています。
それ以上に変わったのが経済的関係で、01年、アモイ・金門間で「小三通(直接通航・通商・通信)」と呼ばれる政策が実施されて、中国との関係について規制緩和が進んできました。
今では両岸を結ぶ直航フェリーは1日12往復にまで増便され、島内には中国人専用の観光バスが走り回る状況だそうです。

福建省からがアモイ経由で金門島にわたる観光ルートが開通したのは04年12月。
05年の観光客は3320人、06年には1万7000人と、爆発的な増加を遂げているそうです。
地元商店にとって、金払いのいい中国人観光客は「最上客」だとか。

台湾本島では“独立”が焦点ですが、金門では逆に“アモイとの間に橋を架け、大陸からの大型投資を呼び込む・・・”という本土との一体化を進めたい意向があるそうです。【12月6日 産経】

“時代の変化”を感じさせる話題がもう1件。
*****蒋介石元総統の座右の銘の看板、取り外しへ******
台湾の観光名所「台湾民主記念館」(中正記念堂)の広場で、正門に掲げられた蒋介石元総統の座右の銘「大中至正」の看板が取り外されることになった。
6日、広場で賛成、反対両派のもみ合いがあり、地元記者5人がけがを負った。
「大中至正」は中庸が最も正しいという意味で、蒋介石の座右の銘。蒋は「蒋中正」とも名乗ったため、蒋介石統治の象徴とも見られてきた。
看板は、90年代に民主化運動がこの広場で起きたことにちなみ「自由広場」に変更される。
蒋介石への個人崇拝を否定し、「脱中国化」を目指す陳水扁政権の方針で、今年5月の記念館の名称変更に沿う措置。ただ国民党などには立法院(国会に相当)の議決のない名称変更は認めないとの意見もある。【12月7日 朝日】
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陳総統は6日、自身のメールマガジンで「蒋介石の威光を維持し続けることは反民主、反人権であり、反台湾でもある」と説明。
一方、国民党の総統候補、馬英九・前主席は「狙いは対立を作り、選挙で優位に立つことにある」と批判。
民進党の戦略に乗らず、冷静に対処すべきだと呼びかけたとか。【12月8日 毎日】
蒋介石を擁することが“反台湾”ね・・・、これまた時代は変わるもです。

金門島に中国本土からの観光客があふれ、蒋介石ゆかりの看板が撤去される・・・中国との“一体化”と“独立”という全く逆の流れを象徴するようですが、確実なのは時代が変化しているということのようです。
しかし、この変化は先の見えない危ういものをはらんでいます。

これまで中国と台湾の関係は「ひとつの中国」というキワードのもとで、互いにその代表権を争うというのが基本的な構図でした。
そして「ひとつの中国」が具体的に意味するもの、現実とのギャップ、あるいは、もし両者で軍事衝突が起こった場合、アメリカは中国と事を構えて軍事介入するのか・・・そういった事柄については敢えて“玉虫色”にすることでお互いが都合のいいように解釈する、その“あいまいさ”によって東アジア秩序の現状が維持されてきました。

「ひとつの中国」というあいまいなフィクション・虚構を捨てて、“独立”というかたちで白黒をはっきりさせたい・・・という台湾における民族的機運の高まりは、国連再加盟も門前払いされる現状を考えると、理解できるところです。
ただ、台湾の心情は理解はできますが、中国にとっても台湾の帰属は他のいかなる問題にも優先する特殊問題であり、“国際世論を考慮して”自制することが困難な問題でもあります。
どんな理性的な中国人でも、話が台湾に及ぶと表情が一変する・・・とも言います。

一旦事が起こると、アメリカを巻き込み、更には“集団的自衛権”から日本も決断をせまられる場面もありえます。
また、逆に台湾を再度非情に切り捨てる行為も出来ればとりたくもありません。
東アジアの住人である万事“事なかれ”主義の私としては、「ひとつの中国」に代わる枠組みができていない段階での性急な行動は控えてもらいたいというのが本音です。

アメリカも基本的には同様の考えから、台湾の独立志向をけん制してはいますが、こういう動きは中国・アメリカが外から圧力をかけるほど台湾内部で燃え盛る・・・という性格もあります。
来年3月には総統選挙が予定されています。

“統一”を党是とする国民党の馬英九候補も“現状維持”を公約に掲げており、台湾の人々も多くは“事を荒立てることはしたくない”という気持ちではないでしょうか。
その意味で今回の総統選挙自体は“統一”・“独立”がぶつかるものではないですが、総統選挙に併せて「台湾の名で国連に新規加盟を行うことに賛成か、反対か」を問う公民投票が予定されています。
北京オリンピックを控えた中国が事を荒立てることは、直ちにはないと思いますが・・・。

その中国も10月の共産党大会において胡錦濤総書記は、「いかなる台湾の政党であれ、(台湾海峡)両岸が一つの中国に属することを認めるならば、交流・交渉を願っており、いかなる問題でも話し合うことができる」と述べ、かつての江沢民総書記の「「武力行使放棄の約束はできない」などの強硬発言からすると、対話を重視する姿勢を示しています。
一方で胡錦濤総書記は「いかなる名義、方式であろうと、台湾を中国から切り離すことは絶対許さない」「主権や領土に関する問題は台湾同胞を含む全中国人が決定する」と語気を強め、台湾の国連加盟の住民投票計画などを暗に非難したそうです。【10月15日 読売】

落としどころの見えない問題ですが、時代は変化します。
中国も国民党も、中国・台湾の経済関係も。
中国の民主化が進展すれば、台湾側の議論もまた変わるのでは。
あと20年後ぐらいには、もう少し話し合える余地が出来てくるのでは。

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