孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス 「欧州が共有する価値観」の真価が問われる 息をひそめるイスラム社会 脱出の動きもあるユダヤ人

2015-01-11 13:05:45 | 欧州情勢

(テロへの抗議が、異質なものへの攻撃・排斥とならないように最大限の注意を払う必要があります。 “flickr”より By Mundo33 https://www.flickr.com/photos/87718284@N06/16040060889/in/photolist-qrpvgX-qsqN8o-qrhvYU-qrrmjx-qrcQ4F-qFH6yP-qrUsjC-qsMspz-qGAnMo-qsvGy8-qrkT1L-qHEjVH-qJSpMM-qDq2cH-qK1dLM-pMGS9B-qsbuid-qsHV6D-qswsv6-qFrRx7-qJxrB7-pMrBLP-qrGYe8-qrhgay-qrqQqK)

【「(事件は)宗教に対する戦争でも、宗教間の戦争でもない。許し難いテロ攻撃であり、犯罪行為だ」】
フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド本社襲撃を初めとする一連の事件は、フランス内外に大きな衝撃を与えています。

****反テロ行進「全フランス人が参加を」…仏大統領****
フランスのオランド大統領は9日のテレビ演説で、相次いだ銃撃事件に屈しない姿勢を示すため、パリで11日に大規模な行進を行うと述べ、「民主主義や自由の価値を掲げるため、すべてのフランス人に集まってほしい」と訴えた。

英独伊など欧州各国首脳も行進に加わり、団結をアピールする。フランスがイスラム過激派の掃討作戦を続けるマリ、ニジェール両国の大統領らアフリカ首脳も駆けつける。

欧州各国首脳は9日、パリでの行進に参加する意向を続々と表明。キャメロン英首相はツイッターで、銃撃を受けた政治週刊紙「シャルリー・エブド」が「発行を続けることを称賛する」と述べた。

メルケル独首相は、北部ハンブルクでの集会で「このような時こそ仏独の友好を示すことが重要だ」と連帯の必要性を強調。「報道の自由」など「欧州が共有する価値観を守る」と訴えた。レンツィ伊首相や欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)らも行進への参加を表明した。

米国のオバマ大統領は9日、遊説先のテネシー州で、フランスを最大限支援する方針を強調しつつ、「仏政府はテロの脅威にさらされ続ける。事態は流動的で、警戒を維持する必要がある」と話した。【1月10日 読売】
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“「報道の自由」など「欧州が共有する価値観を守る」”の“など”の部分に含まれる、「報道の自由」と並ぶ重要な価値観があります。
それは異なる民族・異なる文化を排斥しないという「寛容の精神」です。

イスラム過激派によるテロを批判する結果、イスラム社会・ムスリム全体を敵視・憎悪するというダークサイドに陥ることがないようにすることが、目下の喫緊の課題でもあります。

****狂信者、イスラム教と関係ない=宗教対立に懸念―仏大統領****
フランスのオランド大統領は9日、同時立てこもり事件の終結を受けてテレビ演説し、「狂信者らはイスラム教とは何の関係もない」と述べ、一連の事件と宗教対立を結びつける見方を否定した。

フランスは北アフリカ系など多数のイスラム教徒の移民を抱えている。風刺週刊紙シャルリー・エブドのパリ本社銃撃事件後、国内のイスラム教関連施設にいやがらせなどが続いており、改めて国民の融和と団結を呼び掛けた。【1月10日 時事】
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国連の潘基文(バン・キムン)事務総長も9日、「(事件は)宗教に対する戦争でも、宗教間の戦争でもない。許し難いテロ攻撃であり、犯罪行為だ」と強調しています。

【「分かっていても、疑心暗鬼にならざるをえない」】
しかし、実際にはイスラムを標的とした攻撃も強まっています。

****フランスでイスラム教徒標的の攻撃相次ぐ、パリ新聞社襲撃後****
フランスの複数の都市で7日夜から8日未明にかけて、イスラム教の礼拝所などが攻撃される事件が相次いで起きた。検察当局者が8日、述べた。

パリ西部のル・マンでは8日午前0時過ぎ、モスク(イスラム教礼拝所)に手りゅう弾3発が投げ込まれた。手りゅう弾は爆発しなかった。

また、仏南部ナルボンヌ近郊のポールラヌーベルではイスラム教の夜の礼拝の直後に、礼拝に使われていた建物に向けて発砲があった。

さらに8日、仏東部ビルフランシュシュルソーヌでは、モスクそばのケバブ店で爆発があった。けが人はいなかったが、当局者は、爆発は「犯罪行為」によるものと述べ、警察当局が捜査に着手したと語った。【1月8日 AFP】
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****仏テロ 欧州の反イスラム伸長 事件の傷痕、強まる不信感****
フランス風刺週刊紙シャルリー・エブド本社への銃撃事件に端を発した一連のテロは9日、容疑者の殺害で一応の終幕を迎えたかにみえる。だが、事件が残した傷痕は深い。イスラム教徒への不信が強まり、「反移民」などを掲げる政党には一段の追い風となる恐れもある。その影響は仏国内にとどまらず、欧州の動揺は簡単に収まりそうにない。

オランド仏大統領は9日夜、「狂信者はイスラム教徒とは関係ない」と述べ、過激派との関係が指摘されるアルジェリア系移民の実行犯らと他のイスラム教徒を区別し、国民に団結を訴えた。国民に反イスラム感情が拡大するのを強く懸念しているためだ。

だが、ある年金生活の男性(62)は「分かっていても、疑心暗鬼にならざるをえない」と語る。

シャルリー・エブドの銃撃事件が起きた7日、国内では「屈服」という小説が出版され、注目された。将来、イスラム教徒の大統領が同国に誕生し、シャリーア(イスラム法)に基づき統治する内容だ。

景気低迷などで移民増加への不満が強まる中、「イスラム教の影響が暮らしの中で強まっている感じがする」と男性は漏らす。別の40代の店員は「移民差別は強まる」と明言した。

今回の事件でイスラム教徒への不満が強まると、利するのは極右政党の国民戦線(FN)との見方が大勢だ。ルペン党首は9日夜、「イスラム主義者はフランスに戦争を仕掛けた」と主張し、その監視や国境管理の強化の必要性を訴えた。

オランド大統領はこれに先立つ同日、ルペン氏を大統領府に迎えた。状況について話し合うためで、他党党首も招いたとはいえ、異例の対応だ。だが、11日にパリで予定される国民集会への出席は認めず、FNの主張に共感する有権者の反発を招くともみられている。

中東から帰国した若者がテロを起こす懸念もあり、イスラム教徒への不安が強まっているのはフランスだけでなく、その不安を好機とみる勢力もいる。

ドイツでは東部ドレスデンで昨秋から実施されている「反イスラム」デモが拡大。デモを企画するグループは「パリをみろ。イスラム主義者は暴力と死が解決策と考えている」と主張。反欧州連合(EU)や反移民を掲げる英国独立党のファラージュ党首は、実行犯らを“スパイ”呼ばわりし、英国でも起こりうると強調した。

反イスラム的な機運が高まり、これらの勢力が一段と伸長すれば、イスラム系の若者がさらに過激化する土壌ともなる。それは多様性と寛容を重視するEUの精神と逆行する動きであり、英ロンドン大学キングス校過激化・政治暴力研究国際センターのニューマン所長は「欧州社会にとり危険なときだ」と強調している。【1月11日 産経】
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【「過激派と一緒にしないでほしい」】
イスラム社会はこうした動きに不安を募らせています。

****過激派と一緒にしないで」=移民街のイスラム教徒―パリ****
フランス風刺週刊紙シャルリー・エブドの本社襲撃に端を発し、計17人が犠牲となったパリ連続テロ事件。イスラム過激思想に共鳴した3容疑者の凶行に仏国民は大きな衝撃を受けた。

急転直下の事件終結から一夜明けた10日、北アフリカ出身のイスラム教徒が多いパリ北部の移民街グットドール地区で、住民らは「過激派と一緒にしないでほしい」と訴えた。

同地区で中東風デザインの布地店を営むチュニジア出身のファウジ・キャラズさん(46)は、事件を受け「私はイスラム教徒だが、過激派とは違う。混同されては困る」と憤慨。

シャルリー・エブドが掲載した預言者ムハンマドの風刺画については「ムハンマドは平和的な人物。悪人のように描かれるのは不愉快」と否定的だが、「だからといってテロを起こすのは間違いだ」と話す。

多くの住民にとって連続テロ事件は触れられたくない話題らしく、取材に口を閉ざす人も少なくない。雑貨店を経営するモロッコ系仏人の50代男性は、匿名を条件に話に応じたものの「事件には驚いたが、私の生活には関係ない」と言葉少な。

北アフリカ料理店の店主は「テロの件ですが」と話し掛けると即座に表情を曇らせ、「その質問には答えられない。ほかを当たってくれ」と取り付く島もなかった。(後略)【1月11日 時事】 
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多くのイスラム教徒にとっては、イスラム過激派のテロが賛同できなものであると同時に、宗教への批判も“冒涜”として受け入れがたいものです。

****<仏連続テロ>殉職警官名掲げ、事件批判…イスラム教徒ら****
仏週刊紙「シャルリーエブド」の襲撃テロ事件で、表現の自由を守るため同紙に連帯を示すスローガン「私はシャルリー」がフランス全土だけでなく、世界に広がっている。短文投稿サイト「ツイッター」でのツイート(つぶやき)は500万件を超え、米国の駅などでも表示された。

一方、週刊紙がイスラム教徒の預言者ムハンマドを風刺していたことから、一部のイスラム教徒は襲撃テロ事件で死亡した警官、アハメド・メラベさん(40)の名を借り「私はアハメド」の名で事件を批判、週刊紙と一定の距離を置いている。(中略)

 一方、イスラム教徒の活動家はこの(「私はシャルリー」という)スローガンに距離を置いている。

7日のシャルリーエブド社襲撃事件では、付近をパトロール中に駆けつけた警官アハメドさんが、逃走しようとしたクアシ容疑者兄弟に射殺された。

活動家はツイッターに「私はシャルリーでなくアハメド。殺された警官です。シャルリーエブド紙が私の神や文化をばかにしたために私は殺された」と書き込み、週刊紙を批判しながらアハメドさんへの支援を訴えた。書き込みを拡散するリツイートは3万2000件(日本時間10日午後7時)にのぼった。(後略)【1月10日 毎日】
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【「(嫌がらせされないように)私が一緒に歩いてあげる」】
イスラム社会とその外では溝があるのは事実であり、融和は多大な困難に直面することも事実ですが、それでも両者が歩み寄ろうとする心情を忘れてしまっては「欧州が共有する価値観」は地に落ちてしまいます。それはテロへの敗北でもあります。

オーストラリア・シドニーで起きたイスラム教徒による立てこもり事件後の、ある女性の行動からツイッターを通して始まった#illridewithyou運動に希望を感じます。

****<豪立てこもり>対イスラム 移民大国に「反感」と「融和****
・・・・事件後、厳しい目にさらされるイスラム教徒を守ろうとする動きも始まった。列車内でイスラム教徒の女性が人目を気にしてスカーフを脱いだところ、そばにいた別の女性が「(嫌がらせされないように)私が一緒に歩いてあげる」と声を掛けた。ネット上で話が広まると、ツイッターなどでこの行為に賛同する声が35万件以上寄せられている。

現場近くでは16日、多くの市民が献花に訪れ、昼休み時間帯には行列ができるほどだった。元看護師のキャット・デルニーさんは、涙を流す参列者のためにティッシュペーパーを持って配った。「キリスト教徒といっても200年ほど前に来たばかり。隣人同士理解しようとすれば、必ず皆で団結できる」。自分に言い聞かせるように話していた。【12月16日 毎日】
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11日のパリでの反テロ行進に、仏極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首は招待されませんでした。
“死亡した容疑者とイスラム過激派とのつながりが指摘される中、アラブ系移民らに批判的立場を取るFNが加わることで、行進が「反イスラム」的と見なされることを警戒したとみられる。”【1月11日 時事】 

欧州で拡大する反ユダヤ主義
イスラム社会だけでなく、ユダヤ教徒向けのスーパーが9日に襲撃され、人質のユダヤ人4人が犠牲になったユダヤ人社会にも動揺が広がっています。

****<仏テロ連鎖>ユダヤ社会衝撃 イスラエルへ「脱出」加速も****
パリ東部のユダヤ教徒向けのスーパーが9日に襲撃され人質4人が殺害された事件が、ユダヤ人社会に大きな衝撃を与えている。

欧州各国では右傾化が進むなか、昨年夏のイスラエルとパレスチナ自治区ガザの戦闘に伴い、各地でイスラエル批判が拡大。反ユダヤ主義を掲げる暴力事件も相次ぎ、イスラエルなどへの「脱出」を目指すユダヤ人が急増していた。事件を機に、こうした波紋がさらに広がる可能性がある。

「今回の事件で、さらに多くのユダヤ人がフランスを去ることになるかもしれない。すでに私の所には襲撃を恐れるユダヤ人からの電話が数百件もかかっている」。ユダヤ系のフランス国会議員、メイル・ハビブ氏は9日、イスラエル・メディアに強い懸念を語った。

欧州各地では数年前から、ユダヤ人を迫害したナチス・ドイツを称賛するような極右政党が台頭。特にイスラム系人口の多いフランスやドイツ、英国では、反ユダヤ感情の拡大が目立っている。

フランスでは、昨年夏に起きたイスラエルとガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘に伴い、各地でイスラエルの攻撃を「過剰」と批判する大規模デモが発生。約400人が「ユダヤ人に死を」と叫びながらユダヤ教礼拝所(シナゴーグ)や商店を襲撃する事件も起きた。

また、昨年5月にはベルギー・ブリュッセルのユダヤ博物館が、イスラム過激派組織「イスラム国」に参加していたアルジェリア系フランス人の男に襲撃され、イスラエル人の夫妻2人を含む4人が射殺された。

2012年3月にも、フランス南部トゥールーズで、アルジェリア系フランス人のイスラム教徒の男がユダヤ人学校を襲撃し子供ら4人を殺害している。男はイスラエルがパレスチナの子供を殺害したことへの報復だと訴えた。

「ジューイシュ・クロニクル」のステファン・ポーラード編集長は「彼らはイスラエル政府を支持するユダヤ人を攻撃しているのではない。ユダヤ人だから襲うのだ」と指摘。ユダヤ人全体への無差別攻撃だと批判する。

フランス・ユダヤ教会によると、13年、フランスを去りイスラエルなどに移住したユダヤ人は3000人以上に達した。11、12年の1.5倍以上で、さらに昨年は第1四半期だけで1700人以上にのぼり、年間で推計5000~6000人がフランスを出たという。【1月10日 毎日】
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こうした動きにイスラエル政府も反応しています。

****仏からの移住歓迎=欧州の「反ユダヤ」受け呼び掛け―イスラエル首相****
フランスでの襲撃事件を受け、イスラエルのネタニヤフ首相は10日、在仏ユダヤ人に「イスラエルはあなたたちの家だ」と訴え、移住希望者を歓迎する姿勢を表明した。(後略)【1月11日 時事】 
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ただ、欧州から逃げイスラエルで暮らすことではなく、欧州で今までどおりユダヤ人もイスラム教徒も安全に暮らせることこそが望まれることです。

テロに屈して寛容の精神を失うのか。
今、「欧州が共有する価値観」の真価が問われています。
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キューバ  21日からアメリカとの関係改善交渉  孤立感を強めるベネズエラの焦燥

2015-01-10 21:58:14 | ラテンアメリカ

(カストロ前議長(左)を師と仰ぐチャベス・ベネズエラ大統領(右) 良きにつけ悪しきにつけ、大国アメリカを向こうに回して活躍した二人ですが、チャベス氏はすでに亡く、カストロ前議長も健康不安が懸念されています。 “flickr”より By babak mozaffari https://www.flickr.com/photos/bobi/4691411/in/photolist-q3Ap-DpZte-5i31qP-RfwD-CUN1t-7yhJZ7-bpCHZH-bsqxDB-fGX4Jk-EAA3Z-4doYHK-bpZEn8-7RNFTt-6AV5oS-5Zu2qR-5Lw1cZ-foZTF-dZbHEX-5DTMqW-dYLk7U-ahySyB-fn7hKs-3oYoQo-ahbHCa-boAu2X-bqrcGt-eSKTqA-5DPCog-CKh8y-faeKam-inFuvF-7iUgK7-GyH5t-uy5Do-nmPXJ4-qLvGS-5zRDiE-9zWpjX-4ze9h4-dZB7Bw-mxu9Xc-5xxgQ5-5NBHnj-561bG1-oRy6LP-5NBFEL-gAdgSP-zZTkb-9VT2MV-dTLiiD)

アメリカ:賛否はあるものの「鉄拳で押さえこむ時代でない」】
議会を主導する共和党との対決も辞さずレガシーづくりに乗り出した感もあるアメリカ・オバマ大統領が、半世紀にもわたって続けてきたキューバ封鎖政策を「失敗だった」と認め、国交正常化・禁輸措置緩和に向けて大きく舵を切る方針を発表したことは、昨年12月18日ブログ「アメリカ・オバマ大統領  対キューバ政策の歴史的転換 中間選挙敗北で逆に強気姿勢へ豹変」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141218で取り上げました。

「カストロ政権との関係は、キューバ人たちが自由を得るまで正常化はおろか、検討もされるべきではない」(共和党のベイナー下院議長)「誤っており、キューバの政権の性格を十分に理解していない」(上院の外交委員長でキューバ系のメネンデス上院議員(民主党))といったように反対論もアメリカ議会内にはあります。

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オバマ氏はキューバへの制裁解除や国交正常化について「議会による健全な議論」を呼びかけたが、(共和党の上院院内総務)マコネル氏はオバマ氏の方針に反対する考えを示している。共和党は上院が持つ大使人事の承認権限で大統領による駐キューバ大使の指名を認めず、ハバナへの米大使館開設の予算措置も阻む構えを見せる。【1月2日 産経】
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上下両院で共和党が多数を占めることになった議会は1月6日に召集されたましたが、今後激しい議論が行われると思われます。

アメリカ経済界は歓迎ムードです。共和党の姿勢にも影響することも考えられます。
アメリカが経済制裁を解けば、両国間の貿易額は年間100億ドル(約1兆2000億円)規模に膨らむとの分析もあります。

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オバマ米政権とキューバが国交正常化交渉に乗り出すことを受け、米産業界は歓迎の意向を示している。キューバは米国から目と鼻の先といえるほど距離が近く、観光資源も多い有力市場。農産品の輸出増が期待されているほか、株式市場では旅行関連産業の株価も上昇している。【12月19日 産経】
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フロリダ州を中心としたキューバ系住民の間でも世代などで評価は分かれるところではあります。
カストロ体制で弾圧された経験を有する者には根強い反対もありますが、“世論調査では国交正常化を望むキューバ系米国人が68%、若者に限れば90%もいる。若手共和党支持者の中にも「鉄拳で押さえこむ時代でない」(32歳男性)と話す者もいた。”【12月21日 産経】とも

米ギャラップ社が12月27~29日に実施した世論調査によると、オバマ大統領の支持率は48%に達し、2014年中では最高を記録したとのことですから、一般国民の間ではオバマ大統領の一連の強気姿勢は功を奏しているようにも思われます。

キューバ:「どれほど長くこの瞬間を待ちわびたことか」】
キューバ側はアメリカとの関係正常化に前のめりの間があります。

****米国との国交正常化支持=キューバ国会が満場一致で****
キューバの国会に相当する人民権力全国会議は19日、米国との国交正常化に向けたラウル・カストロ国家評議会議長の決断を満場一致で支持した。キューバの国営通信社が報じた。

会議には、米国が釈放した情報機関員3人も出席。キューバの長年の懸案だった情報機関員の帰国が実現したことに対し、執行部から感謝の意を表明する文書も読み上げられた。【12月20日 時事】 
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背景には、キューバの苦しい経済事情があります。

****経済改革へ現実路線 ラウル政権、「反米」転換に布石****
・・・・ラウル政権は、現社会主義体制を維持するため、人々の暮らしを改善し、政権への不満の高まりを防ぎたい。そのために、市場主義経済を取り入れ、経済改革を推し進めないといけない。海外投資を招くべく新たな外国投資法もできた。

だが、14年の経済成長率は対前年比1・4%にとどまる見込みで、改革は思うように進んでいない。庶民の給料はここ数年横ばいなのに、物価は値上がりを続けている。07年と14年の価格を比べると主食のコメは4割上がり、トイレットペーパーは2倍になった。

そこで、米国との国交正常化が改革を進めるエンジンになると期待する。米国がキューバの「テロ支援国家」指定を外すことも、イメージ向上につながる。「政権は現実的。米国との関係を改善させた方が改革を進めやすい」との指摘は多い。政権の「反米色」はその前提のように薄まっていた。

ただ、米国が求める複数政党制や言論の自由といった要求をそのまま受け入れる見込みは薄い。市民の間でも、それよりはまず、暮らしが良くなる方が先決、という声が多いようだ。(後略)【12月20日 朝日】
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友好国ベネズエラが自国経済の破綻に瀕しており、これまでのような支援を期待できないことも、キューバの判断に大きく影響していると思われます。

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キューバはこれまで反米路線で協調していたベネズエラから、破格の安さで原油を輸入してきた。

だが、同国は原油生産量の減少やばらまきに近い社会政策から、近年は経済状況が急激に悪化。最近の原油の国際価格の大幅下落を受け、今後はさらに厳しい局面に陥るとみられている。

キューバの対米姿勢の変化は、行き詰まるベネズエラ経済を背景に、ぎりぎりの生き残り策を探った結果との側面もある。【12月19日 朝日】
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キューバ国民は歓喜に沸いています。

****ハバナ、喜び爆発 カストロ兄弟支持を叫ぶ****
「フィデル万歳! ラウル万歳! 革命よ永遠なれ!」--。米キューバ両政府による国交正常化協議開始の発表を受け、キューバの首都ハバナでは教会の鐘が鳴り響いた。繁華街には約100人の学生が繰り出し、1959年のキューバ革命以来国を率いてきたカストロ兄弟への支持を叫び、喜びを爆発させた。

タクシー運転手の男性はロイター通信の取材に、「どれほど長くこの瞬間を待ちわびたことか」と感極まった様子。米国による制裁は貧困の拡大を生み、男性の家族も米国への移住を余儀なくされた。「分断された家族の苦しみは言葉では言い表せない」。男性は涙を拭った。

一方、50年以上にわたる国交断絶が解消するのかとの不信感を訴える人もいる。自動車整備士の男性は「本当に合意できるのか、にわかには信じがたい」と心情を吐露した。【12月18日 毎日】
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交渉を加速させたいキューバ政府はアメリカとの約束に沿う形で、テロ行為を計画したなどの理由で拘束していた政治犯の釈放を始めています。

****キューバ 対米交渉本格化前に政治犯を釈放****
キューバ政府は、アメリカと国交正常化に向けた交渉を本格化させるのを前に、反体制活動家の政治犯36人を釈放し、交渉を円滑に進めるねらいがあるものとみられます。

50年以上にわたって対立を続けてきたアメリカとキューバは先月、国交正常化に向けた交渉を始めることで合意し、アメリカ国務省は今月21日から2日間の日程でキューバの首都ハバナに政府高官を派遣して交渉を本格化させることにしています。

これに先立って、キューバの反体制派グループ、UNPACU=キューバ愛国同盟は、キューバ政府が8日までに反体制活動家の政治犯36人を釈放したことを明らかにしました。

交渉開始の合意にあたってキューバはアメリカに対し、53人の政治犯を釈放すると約束しています。今回の釈放はその一部とみられ、キューバ政府は交渉の本格化を前に約束どおり政治犯を釈放することでアメリカとの交渉を円滑に進めるねらいがあるとみられます。

ただ、アメリカの野党・共和党からは、53人全員の釈放が確認され、キューバの人権状況が改善されるまでは交渉を始めるべきではないなどと反発の声が上がっていて、キューバ政府が合意に基づいて残る政治犯全員を釈放するかどうかが、交渉の行方を左右することになりそうです。【1月10日 NHK】
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上記記事にもあるように、21日にはアメリカ政府高官がハバナを訪れ交渉がスタートします。

****米高官、21日にキューバ訪問…外交樹立も議題****
米国務省のサキ報道官は8日の記者会見で、ジェイコブソン国務次官補(西半球担当)が21、22日にキューバを訪問すると発表した。

キューバから米国への移民問題に関する定期協議が主目的だが、サキ氏は「外交関係の樹立も当然、議題となる」と語った。

米国とキューバが先月、国交正常化交渉の開始で合意して以来、初の公式協議となる。両国は1961年から断交しており、米次官補のキューバ訪問は長く行われていなかった。

相互の首都への大使館開設やビザ発給など、国交正常化に向けた実務面の懸案が協議されるとみられる。【1月9日 読売】
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姿が見えないカストロ前議長
キューバ側で気になるのは、フィデル・カストロ前国家評議会議長(88)の姿が最近見えないことです。

すでに第一線を退いているカストロ前議長ですから、その安否は政策に直接には影響しませんが、なんといっても“カストロあってのキューバ”でしたから、アメリカとの関係改善交渉と併せて時代の変化しつつあることを感じます。

****カストロ前議長、公の場から姿消して1年 困惑するキューバ国民****
50年以上にわたり国交を断絶していたキューバと米国が、近く国交正常化に向けた交渉を始める──しかし、キューバ革命の指導者、フィデル・カストロ前国家評議会議長(88)は公の場から姿を消したまま沈黙を守っており、支持者の間からは困惑の声が上がり始めている。

カストロ氏が公の場から姿を消してから8日でちょうど1年が経過した。長引く不在により、体調不良の憶測も出ている。

国交正常化交渉の開始を控え、米国は拘束していたキューバの工作員3人を解放した。3人は「英雄」扱いされ、帰還の歓迎式典も開かれたが、ここにもカストロ氏は姿を見せなかった。

キューバ国民の間には困惑が広がっている。ダンサーのドレイリス・ヒメネスさん(20)は「フィデルは英雄がキューバに戻っても姿を見せなかったし、米国との国交正常化についても何もコメントしていない。これには正直驚いている。健康状態がとても悪く、自宅に引きこもっていると噂されているよ」と述べ、政府は国民に何らかの説明をすべきと訴えた。

カストロ氏は2006年7月、健康上の理由から弟のラウル・カストロ氏に、国家評議会議長および閣僚評議会議長などの権限を暫定的に委譲したが、08年に正式に退任を発表している。

最後に公の場に姿を見せたのは14年1月8日だ。7月には首都ハバナの自宅で中国の習近平国家主席およびロシアのウラジーミル・プーチン大統領とそれぞれ会談し、国営メディアにも時折寄稿していたが、それも10月を最後に途絶えている。

美容師のパトリシア・リゴンドウさん(42)は「みんな司令官に会いたいと思っている。元気なのか病気なのか、それとも亡くなっているのか…誰にも分からない」とコメントした。【1月9日 AFP】
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ベネズエラ:デフォルトに陥る確率は97% 「中国の援助なしに生き残れない」】
一方、キューバの方針転換で取り残された形の友好国ベネズエラも慌てているようです。

****孤立焦るベネズエラ キューバ正常化交渉で一転躍起 米に秋波、中露にすり寄り****
米国と長らく対峙(たいじ)してきたキューバが国交正常化交渉に乗り出したことで、キューバと盟友関係にある南米ベネズエラのマドゥロ政権が焦燥感を強めている。

マドゥロ大統領は今年に入り、敵対関係にあった米国との関係改善を模索する一方、5日から友好国のロシアや中国を訪問するなど、“孤立回避”に躍起となっている。

「彼の勇気ある歴史的な取り組みを認めないわけにはいかない」
マドゥロ氏は昨年末、オバマ大統領が対キューバ政策を転換したことを高く評価した。

マドゥロ氏は今月1日にブラジルでバイデン米副大統領とも接触するなど、対米関係改善を本格的に模索し始めている。

ベネズエラは、反米左翼のチャベス前政権時代に米国と激しく対立した。また、米国で昨年、ベネズエラの反政府デモ弾圧をめぐり、関係者へのビザ発給拒否を規定した法律が成立した後、マドゥロ氏は米国を「ヤンキー帝国」などと呼んで激しく批判した。

今回、関係改善へと動く背景には、日量で10万バレルもの石油を提供し、中南米の“反米国家”として共闘してきた盟友キューバが突如、対米政策を転換し、「かつてない孤立」(米紙マイアミ・ヘラルド)にベネズエラが危機感を抱いたことがある。

マドゥロ氏は一方、ロシアを5日に訪問し、露政府高官と会談した。駐カラカス外交筋によれば、マドゥロ氏は露政府と対米関係をめぐり連帯していくことを確認し合ったという。

マドゥロ氏は続く中国への訪問で習近平国家主席と会談し、多額の支援を得ることに成功した。「(両国間の)協力は今年加速することになる」と、中国を持ち上げている。【1月9日 産経】
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キューバの方針転換については、“向きは称賛の姿勢を見せたが、実際はキューバから突然、はしごを外された格好になった。”【12月22日 朝日】とのこと。

かねてよりの経済破綻に加え、昨年後半からの急速な原油価格下落は、外貨準備高に占める石油収入の割合は実に96%に上るベネズエラ財政に致命的な影響を与えつつあり、デフォルト(債務不履行)も言及される状態にあります。

“12月には格付け会社フィッチレーティングスがベネズエラ国債の格付けをBからCCCに引き下げ、ブルームバーグは同国が15年末までにデフォルトに陥る確率は97%だと報道した。”【1月6日 Newsweek】

ベネズエラもアメリカとの関係の改善に遅まきながら乗り出した形ではありますが、喫緊の問題としては「中国の援助なしに生き残れない」(マドゥロ大統領)と、中国の支援をあてにしているようです。

中国と中南米諸国が協力関係の推進について話し合う「中国・中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)フォーラム」に併せた今回の訪中では、“200億ドル(約2兆4千億円)の新規投資”【1月9日 産経】が約束されたようです。

もちろん、中国の狙いは“「米国の裏庭」と呼ばれる中南米諸国に照準を合わせ、2015年の外交を始動させた”【1月9日 産経】ということですが、瀕死状態のベネズエラにどこまで肩入れするのか・・・やや疑問でもあります。
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スリランカ  「権力の私物化」「親中国路線」を批判されたラジャパクサ大統領敗北 政権交代へ

2015-01-09 22:20:53 | 南アジア(インド)

(8日 投票所前で手を振るシリセナ氏  外見で判断はできませんが、あくの強そうなラジャパクサ大統領に比べると温和な感じもしますが・・・・実際はどうでしょうか? 【1月9日 AFP】)

【『既知の悪魔』より『未知の天使』を選択した国民
8日に行われたスリランカ大統領選挙で、野党候補が現職ラジャパクサ氏を破り政権交代が実現することになりました。

****10年ぶりに政権交代=親中路線、大統領権限見直し―スリランカ****
インド洋の島国スリランカの大統領選挙で、選挙管理委員会は9日、野党候補のシリセナ前保健相(63)が当選したと発表した。

2009年に四半世紀に及ぶ内戦が終結し、急速な経済成長を遂げる同国で、10年ぶりの政権交代が実現した。大統領の任期は6年で、9日夜に就任式が行われる見通し。

シリセナ氏は中国傾斜を深めるラジャパクサ政権を批判し、中国が主要都市コロンボで開発を進める港湾都市計画の見直しを約束。今後は「親中国路線」の見直しを進めることになる。

選管の集計結果によると、得票率はシリセナ氏51%、ラジャパクサ氏48%。ラジャパクサ氏は勝利を確信して選挙を前倒ししたが、与党幹部ら20人以上の造反に遭い、苦杯を喫した。投票率は82%に上った。【1月9日 時事】 
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少数派タミル人武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」との内戦に勝利した“英雄”として2010年に再選されたラジャパクサ大統領は、2期目には憲法を改正して大統領の3選禁止条項を撤廃。

まだ任期を約2年残していますが、近年の経済成長の実績をアピールして権力基盤が安定しているうちに3選を目指したい思惑から前倒しして大統領選挙に打って出ました。

当初は楽勝かとも思われましたが、縁故主義・強権支配を批判する与党幹部の造反・立候補、与党議員の離反などにより接戦の展開となりました。

****与党幹部が相次ぎ離反 「権力私物化」に批判も-スリランカ大統領選****
スリランカ大統領選が8日、投開票される。2010年に再選されたラジャパクサ大統領は任期を約2年残すが、権力基盤が安定しているうちに3選を決めようと、選挙の前倒しを決めた。だが、大統領の「独裁」に反発する与党幹部らの離反が相次ぎ、接戦が予想されている。

与党スリランカ自由党の事務局長シリセナ氏は、ラジャパクサ大統領が出馬を表明した翌日、保健相を辞任し、対抗馬として立つと宣言した。

シリセナ氏は、大統領が兄弟を閣僚や議会議長、国防次官に据えていることを取り上げ、「一族が経済や政府、政党を支配してきた」と、権力の私物化を批判している。

選挙戦では、これまでに閣僚や与党議員ら20人以上がラジャパクサ陣営から離反。野党の統一国民党や少数民族タミル人の政党もシリセナ氏支持に回り、両者による事実上の一騎打ちの様相を呈している。【1月4日 時事】
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「権力の私物化」の一例としては、大統領の弟であるゴタバヤ・ラジャパクサ氏が国防・都市開発省次官(兄の大統領が国防長官を兼務しているので実質トップ)を務め、同じく弟のバジル・ラジャパクサ氏も経済開発大臣という要職にあり、スリランカ投資庁(BOI)も担当していることが挙げられます。

更に、チャマル・ラジャパクサ国会議長もラジャパクサ大統領の弟とか。

ここまで兄弟で国政を担う要職を固めてしまえば、「権力の私物化」批判はやむを得ないところです。
また、一族への権力集中は、不透明な汚職・腐敗体質や一族への批判を許さない独善性にも必然的につながります。

2013年1月には、政府に批判的とされたバンダラナイケ最高裁長官を罷免し、独裁色を更に強めています。

「大統領一族が国家財政を完全に牛耳り、事業の契約金の10~15%を手数料としてせしめてきた。すべてが大統領に支配されている」(野党陣営関係者)

野党候補シリセナ氏は選挙戦で、「ラジャパクサとその一族、側近集団は貧しい者を犠牲にして繁栄し、特権を得てきた」「スリランカに新しい政府ができる」と訴えました。

クマラトゥンガ前大統領もシリセナ氏支持を表明。
前回の大統領選で敗れ、投獄されたフォンセカ前軍参謀長率いる民主国民連合(DNA)や少数派民族タミル人のタミル国民連合(TNA)など主要野党も、シリセナ氏を野党統一候補として支援。

選挙戦は野党候補シリセナ氏が急速にラジャパクサ大統領を追い上げる展開となりました。

これに対しラジャパクサ大統領陣営は、ファウジー都市問題相が「国会議員が離反しても、国民はこうした議員を支持していない。大統領は親族の支持があってテロリストを壊滅し、開発を進めることができた。縁故者登用批判は正しくない」と反論。グナセカラ人的資源相も「汚職批判はあっても経済政策のプラス評価がそれを上回るはずだ」と主張しました。【1月7日 産経より】

経済成長率は、2010年8.02%、2011年8.25%、2012年6.34%、2013年7.3%(IMF推計)、2014年7.0%(同)と、確かに順調に推移しています。

“ラジャパクサ氏は2010年以降、年平均7%以上の経済成長をもたらした実績を強調。「『未知の天使』より『既知の悪魔』の方が信頼できる」と支持を訴えた。”【1月8日 時事】

『既知の悪魔』・・・・“悪魔”の認識が自分でもあるのでしょうか。

ただ、高い経済成長率は大統領の経済政策の結果というより、長い内戦が終結し復興の時期にあることや外資の流入によるものでしょう。

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シリセナ氏は今後、野党、統一国民党(UNP)党首のウィクラマシンハ元首相を首班とする挙国一致内閣を設立。ラジャパクサ氏が2010年の憲法改正で行った大統領の3選禁止条項の撤廃、最高裁長官や検事総長の大統領による任命といった規定をすべて廃止し、強大になりすぎた大統領の権限を縮小する。

反汚職独立委員会も設立するとしており、ラジャパクサ一族の汚職疑惑についても捜査のメスが入る可能性がある。【1月9日 産経】
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今後の進展が望まれる国民融和
ラジャパクサ大統領を評価するうえでは、「権力私物化」や強権姿勢のほかに、スリランカが抱える最大の課題とも言える少数民族タミル人との国民融和が進められるのかという問題があります。

この点に関しては、かつて政府軍と少数民族タミル人反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の間で戦われた7万人以上の犠牲者を出す激しく長い内戦の舞台となった北部州で、2013年9月21日、初の州議会選の投票が行われた際の
2013年9月28日ブログ「スリランカ 北部州議会選でタミル人政党圧勝  懸念される自治権拡大を目指す州政府と中央政府の対立」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130928
2013年9月20日ブログ「スリランカ タミル人居住エリアの北部州で内戦後初の州議会選挙実施」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130920
でも取り上げました。

総じて言えば、「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」を打ち破った勝利を誇るラジャパクサ大統領に、タミル人の心情を汲んだ国民融和の取り組みはあまり期待できません。

今回、シリセナ氏を少数民族タミル人の政党も支持に回ったことで、新政権での国民融和に向けた新たな取り組みが行われることを願います。

中国依存を改めてバランス重視の外交を展開する見通し
対外的な面では、ラジャパクサ大統領は内戦終結時に住民の人権を無視した無差別殺害を行ったとして、国際的評判は劣悪です。

内戦終結後も超法規的殺害や拷問をはじめ、人権活動家やジャーナリスト、司法の独立などへの脅迫や報復の報告が続いているとも批判されています。

****日本は棄権 国連人権理事会がスリランカに説明求める決議案採択****
国連人権理事会(UNHRC)は21日、ジュネーブで開かれていた会合で、少数民族タミル人への人権侵害が批判されているスリランカ政府に対し和解と説明を求める決議案を採択した。米国が提出し、インドなど23カ国が賛成。13カ国が反対し、日本など8カ国が棄権した。【2013年3月21日 産経】
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カナダ首相は、スリランカのコロンボで2013年11月に開かれる英連邦首脳会議をボイコット。
国内にタミル人を抱えるインド・シン首相(当時)も会議を欠席しました。

こうした国際的に孤立している国が頼るのが、例によって中国です。
ラジャパクサ大統領は中国への依存を強める形でインフラ整備を進めてきました。
今回選挙は、こうした中国へ傾斜した外交姿勢も争点となりました。

****スリランカ:大統領選投開票 中国依存度も焦点****
・・・ラジャパクサ氏は中国の援助で港湾などのインフラ整備を進めてきたが、国民には「多額の援助が汚職を招いた」との不満もある。シリセナ氏は中国依存を見直す方針とみられ、今後の外交を占う選挙となりそうだ。

「中国の援助で港湾ができても、仕事は増えていない」。コロンボ中心部の投票所で、シリセナ氏に投票したチンタクさん(43)は力を込めた。かつては大工として生計を立てていたが、現在は失業中。「1国だけ頼ってもだめだ」と語る。

大統領選の不正監視団体「選挙関連暴力監視センター(CMEV)」によると、今回の選挙では台湾から招いた監視要員十数人が外務省に査証(ビザ)の発給を拒否されたという。CMEVのマンジュラさん(36)は「『一つの中国』政策があるからだろう」と、中国の影響を指摘する。

シリセナ陣営は中国だけでなくインドなどとの良好な関係構築を主張。中国の援助でコロンボに建設する港湾都市計画も白紙に戻すことを表明するなど、対中政策を見直す姿勢を明確にしている。

西側外交筋は「大統領が代われば、中国依存を弱めることになるだろう」と話している。【1月8日 毎日】
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勝利したシリセナ氏は、中国依存を改めてバランス重視の外交を展開すると見られています。

****スリランカ大統領選 前保健相が現職破り勝利 中国依存を「浅はかな外交」と脱却目指す****
・・・・シリセナ氏はラジャパクサ氏の親族登用や大統領への権力集中、汚職体質を強く批判してきた。

中でも、外国支援を受けた道路建設事業などで、借入金の大半が一部の人間の懐に入り、スリランカは国民の孫の世代になっても借金を返済し切れず、土地は担保として外国人の手に渡るとしていた。

名指しこそしていないが、「真珠の首飾り戦略」を通じ、スリランカなどインド洋周辺諸国の港湾整備を支援している中国を念頭に、援助の在り方を非難した形だ。

そのうえで、シリセナ氏は、「スリランカは浅はかな外交政策、戦略によってイメージが破壊され、急速に国際社会からの孤立を深めていた」と主張。

今後は「アジアの主要国であるインド、中国、パキスタン、日本との友好関係を強化し、新興国との関係も区別せず促進する」として、中国依存を改めてバランス重視の外交を展開する見通しだ。

シリセナ氏の法律顧問のM・M・ズハイル元イラン大使は、「国内製造業に資金が使われず、生活費は高くなるばかりだっだ。外交は、伝統の非同盟主義に立ち返る」と述べた。(後略)【1月9日 産経】
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当然ながら中国はこうした動きを警戒しています。

****友好政策の維持求める=スリランカ新大統領に中国****
スリランカの大統領選で「親中国路線」の見直しを主張するシリセナ氏が当選したことについて、中国外務省の洪磊・副報道局長は9日の記者会見で「新しい政府が引き続き対中友好政策を実行し、両国の各分野の協力を積極的に推し進めることを希望し、信じる」と良好な関係維持に期待を表明、政策変更をけん制した。【1月9日 時事】 
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おそらく中国共産党政権からすれば、これまでの協力関係を瓦解させるような“民主的選挙制度”というのは、理不尽で邪悪なものに思えることでしょう。

ラジャパクサ氏は敗北を認め、すでに大統領府を離れているとされており、接戦の選挙結果でゴタゴタすることが多い中にあって、このことは喜ばしい評価できる点です。
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フランス  風刺週刊紙襲撃事件で煽られる憎悪 笑うのは誰か?

2015-01-08 22:22:43 | 欧州情勢

(フランス・ルーアン 事件を悼み、テロに抗議する人々 この怒りがどこへ向かうのか? “flickr”より By Frédéric BISSON https://www.flickr.com/photos/zigazou76/16223786522/in/photolist-qHD9vh-qr33im-qrcSUa-qr9G4u-qrhaNx-qFs5oh-qHPD9T-pLDQRQ-pLUeNy-qHBC1G-qr9imU-qrbina-pLLupd-qFfBkw-qrhKUX-qrdWgu-pLK7Qd-pLLyKN-qHEC4b-qHzEHH-qHMheR-qre7Do-qr67Ea-qHBf8H-pLWmLX-qrnPP2-qrmRRZ-qrDjgn-qHE89X-qrg7x5-qr2cLu-qrapo3-qri6be-qqYWFJ-qHE7NB-qHHkRZ-pLCA4L-qrgi72-pLFPzY-qr8nhc-qrjGzu-qHQy7o-pM7k5S-qHxFUS-pLuHV3-qri3h8-qHJ9YV-qrc5St-qrjjKg-qrbfP7)

フランス:少数派イスラム教徒が欧州最多で全人口の1割
フランス・パリで、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画などでこれまでも物議を醸していた週刊紙の本社が襲撃され12人が射殺された事件が、フランス社会を大きく揺るがしています。

****容疑者1人を逮捕=残る2人確保へ写真公表―仏風刺紙銃撃事件****
フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブドのパリの本社が銃撃され、12人が死亡した事件で、犯行に必要な物資の調達などを手伝ったとみられるハミド・ムラド容疑者(18)が7日夜、仏北東部シャルルビルメジエールの警察署に出頭、逮捕された。

実行犯とされるパリ出身の兄弟、サイド・クアシ(34)、シェリフ・クアシ(32)の両容疑者は依然逃走中で、当局は身柄の確保へ写真を公表した。

同紙はイスラム教の預言者ムハンマドを題材にした風刺画を繰り返し掲載。事件では犯行の手口が手慣れていたほか、犯人が現場で「ムハンマドへの侮辱に報復した」と発言したとの情報もあり、イスラム過激組織の関係者による犯行との見方が強まっている。

シェリフ容疑者は、過去に過激組織メンバーのイラクへの渡航を手伝った前科があり、当局が関連を調べる。

仏誌ルポワン(電子版)などによれば、銃撃はこの兄弟が実行。2人はいずれも黒い覆面をかぶりカラシニコフ自動小銃とみられる銃で武装していた。

逃走時には3人だったとの目撃情報もあり、逮捕されたムラド容疑者が兄弟の逃走を手助けした可能性がある。

検察当局によると、実行犯は7日午前に車でシャルリー・エブドが入居するビルに到着し、受付にいた1人をまず殺害。その後3階の同社内に侵入して銃を乱射し、社内で警備に当たっていた警官1人や同社編集長ら計10人を死亡させた。【1月8日 時事】 
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フランスでは、昨年末からイスラム教絡みと思われる事件が連続し、当局も警戒を強めているなかでの事件でした。

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フランスでの一連の襲撃事件は昨年12月20日、中部ジュエレトゥールで始まった。

アフリカ系フランス人の男(20)が「神は偉大だ」と叫びながら警察署に押し入ろうとし、警察官3人に刃物でけがをさせ、射殺された事件。男はフェイスブックにイスラム国の旗を掲載していた。

同21、22日には東部ディジョン、西部ナントでそれぞれ男が車で通行人に突っ込む事件が相次ぎ、ナントで1人が死亡。2件で20人以上が重軽傷を負った。治安当局は、イスラム過激派との関連がないか調べている。

検察当局によると、ディジョンの事件で逮捕された男(40)は精神科の通院歴があり、ナントの事件で逮捕された男からは法定量の4倍のアルコールが検出された。【1月7日 毎日】
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しかし、昨年末の一連の事件が精神的な問題を抱えたように思われる者による突発的なものだったのに比べ、今回の事件は、事前に編集会議の日時・出席者を調べ、“処刑”のように射殺していることなど、犯行の手口や計画性はこれまでの事件とは異なり、軍事訓練を受けたイスラム過激組織の関係者の犯行とも見られれいます。

昨年末の一連の事件と、フランスで移民排斥の風潮が強まることも懸念されることは、12月22日ブログ「フランス イスラム教徒による事件が連続 国民不満の受け皿となる右翼政党・ルペン氏」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141222で取り上げました。

そこでも触れたように、こうしたイスラム教に絡む事件が多発する背景には、フランスは少数派としてのイスラム教徒の人口がヨーロッパで最も多い国で、非公式の統計ではフランス国内のイスラム教徒はおよそ600万人とされ、全人口のおよそ1割を占めていることがあります。

当然、そこには社会的・経済的・文化的軋轢が存在し、フランスはブルカ禁止法に見られるようなイスラム恐怖症やイスラム排斥も強い国でもあります。
イスラム教徒の側からすれば、不当に差別されているという不平不満があります。

排斥とそれに抗する動きの拮抗
一連の事件を受けて、イスラム教徒を敵視するような言動が強まるなかで、そうした風潮に抗する動きもない訳ではありません。

“事件後、厳しい目にさらされるイスラム教徒を守ろうとする動きも始まった。列車内でイスラム教徒の女性が人目を気にしてスカーフを脱いだところ、そばにいた別の女性が「(嫌がらせされないように)私が一緒に歩いてあげる」と声を掛けた。ネット上で話が広まると、ツイッターなどでこの行為に賛同する声が35万件以上寄せられている。”【12月16日 毎日】

フランス社会にこうした排斥に向かう動きと、それに抗する動きの両方が存在することは、対イスラムだけでなく、ロマ差別の問題でも見られます。

****ロマ人女児の埋葬を市長が拒否か、フランス全土に怒り広がる****
フランス・パリ近郊のシャンプランで、少数民族ロマ人の赤ちゃんの亡きがらを市営墓地に埋葬することを拒否したとして、保守派の市長が人種差別だと批判されている。

市長は発言が誤解されたと弁明したが、怒りの声はフランス全土に広がり、行政監察官が調査を開始した。

パリの南方23キロほどにあるシャンプランのクリスチャン・ルクレー市長は、「空き区画がほとんどない」との理由で、昨年末に死亡した生後およそ2か月のロマ人女児を市営墓地に埋葬することを拒否したとされる。
仏大衆紙パリジャンは3日、ルクレー市長は「地方税の納税者を優先するべきだ」と述べたと伝えた。

これに対し、埋葬拒否の真の理由はロマ人差別に基づくものだとの批判が巻き起こった。

地元のロマ支援団体は「人種差別であり、外国人嫌悪であり、らく印を押す行為だ」と市長を強く非難。
仏政府のロランス・ロシニョル家族担当相もマイクロブログのツイッターに、埋葬拒否は「非人道的な屈辱」を女児の遺族に与えたと批判するコメントを、フランス語で「恥」「面汚し」を意味する「#honte」のハッシュタグを付けて投稿した。

批判を受けてルクレー市長は4日、AFPの取材に、発言が「文脈から切り離されて伝わった」と釈明。自分は「誤解」の犠牲になったとして「埋葬を拒否したことは断じてない。話に尾ひれが付いて広がっている」と主張し、騒動が大きくなったことを「たいへん遺憾だ」と述べた。

■ロマ人めぐるあつれき浮き彫りに
しかし、人権擁護派のジャック・トゥーボン元文化相は4日、人権問題オンブズマン(行政監察官)がこの問題について調査を開始したと発表。「あまりの衝撃に、あぜんとしている」と語った。

マニュエル・バルス首相も、ツイッターで「出自を理由に子どもの埋葬を拒否するのは、その子どもの人生に対する侮辱であり、フランスへの侮辱でもある」と批判した。

フランスでは、主に東欧諸国から流浪してきたロマ人と地元住民とのあつれきが社会問題となっている。
全土に暮らすロマ人口は約2万人だが、生活に必要最低限の物資さえ足りないのが現状だ。死亡した女児の一家も、シャンプランの街はずれに建てた小屋で電力も水道もない暮らしを送っている。

地元のロマ支援団体によると、女児は昨年10月14日に生まれたが12月26日の早朝、授乳しようとした母親が冷たくなっているのに気付いた。急いで病院に連れて行ったが死亡が確認され、乳児の突然死と診断されたという。女児の両親は共に30代で、フランスには少なくとも8年間住んでいるという。

歴代のフランス政府は、複数のロマ人居住キャンプを強制撤去したり、子どもを含むロマ人一家を強制送還するなどして批判されている。【1月5日 AFP】
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煽られる憎悪が利する極右台頭
排斥と支援の両方のベクトルが存在するなかで、計画的で凄惨な今回事件がイスラム教徒への憎悪を煽ることになり、結果として、そうした憎悪・不満の受け皿としてマリーヌ・ルペン氏率いる極右政党・国民戦線が政治的に躍進する可能性が更に大きくなったように思われます。

停滞する欧州経済のなかにあって、国家の介入・管理が多岐にわたり、また、労働者の権利が手厚く保護されている半面で労働コストが高いフランス経済は国際競争力を失い、失業率は10%程度に高止まりし、オランド政権に対する国民の強い不満が存在しています。

経済的な苦境にあって、不満を抱える国民は寛容や余裕を失い、手近なところで攻撃できる、現在の苦境の責任を負わせることができる相手を求めます。
移民やロマなどは、そうした攻撃の対象としてはうってつけの存在です。

****イスラムへの憎悪を煽るパリ週刊誌銃撃事件****
フランスのシャルリ・エブドはあらゆる宗教を風刺してきた。イスラム教も例外ではない。特にイスラム過激派は同誌にとっては格好の笑いの種だった。

同誌は06年にデンマークの新聞に掲載されて問題になったイスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画を再掲載。

11年にはパロディー版シャリーア(イスラム法典)を巻頭特集にし、表紙の風刺漫画で「客員編集者」のムハンマドに「これを読んで笑い死にしなかったら、ムチ打ち100回の刑」と言わせて物議をかもした。

12年には裸でポーズをとるムハンマドの風刺画を掲載。最新号の巻頭特集では、イスラム過激派に支配され、女性が抑圧される近未来のフランスを描いたミシェル・ウエルベックの小説『服従』を紹介していた。

一部のターゲットにとっては、同誌のこうした内容は笑い事では済まされない。11年には本社ビルに火炎瓶が投げ込まれて火災が起きた。編集部にはその後も脅迫が繰り返され、公式サイトがハッカーに荒らされたこともある。

そして7日の襲撃だ。覆面をした男たちが侵入して銃を乱射し、編集長らスタッフ10人と警官2人を射殺した。男たちは犯行時、「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫び、ツイッターに「預言者のための報復」というアラビア語のハッシュタグ付きで襲撃画像をアップした。

パリ警察は容疑者3人の身元を特定。うち2人は34歳と32歳の兄弟で、パリ生まれのアルジェリア系だという。もう1人の18歳の男は7日深夜にフランス北部の警察署に出頭した。

彼らはイスラム教の名誉を守ると称しているが、その行為は逆効果だ。アッラーの名の下に殺人を犯せば、イスラム教徒は過激で危険だという偏見を助長することになる。穏健なイスラム教徒がいくら否定しても、風刺の現実味は増すばかりだ。

シャルリ・エブドのターゲットはイスラム教だけではない。最新号にはキリストの存在に疑問を突きつける議論のパロディーが掲載されているが、キリスト教徒が編集部を銃撃することはない。(中略)

フランスの大半のイスラム教徒を代表する穏健派は、残虐な犯行として銃撃テロを厳しく糾弾している。

しかし、じわじわと支持を伸ばしてきたフランスの極右政党・国民戦線が事件をきっかけに一気に勢力を拡大し、政権獲得に駒を進める可能性もある。

ウエルベックは新作小説を書き換えたほうがよさそうだ。近未来のフランスの悪夢を描くなら、イスラム過激派ではなく、排他的な右翼に支配される筋書きのほうがより現実的だ。

万一そんな事態になったら、極右政権が感謝すべき相手は、シャルリ・エブドではなく、同誌を襲ったイスラム過激派だろう。【1月8日 Newsweek】
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シャルリー・エブド本社襲撃事件で死亡した同紙編集長の風刺漫画家、ステファヌ・シャルボニエ(通称シャルブ)氏は自己の信念を貫きとおした人物です。

****ひれ伏すより立って死ぬ」=過激主義との対決貫く―仏銃撃事件で殺害の風刺画家****
フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド本社の銃撃事件で死亡した同紙編集長の風刺漫画家、ステファヌ・シャルボニエ(通称シャルブ)氏(47)は、度重なる脅しにも動ぜずにイスラム過激主義を皮肉る漫画を描き続けた。

生前は地元メディアに「ひれ伏して生きるより立って死ぬ方がいい」と語っており、最後まで妥協しない姿勢を貫いた。

同紙はイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画をたびたび掲載。最近もイスラム過激主義者からとみられる脅迫が相次いでいた。

7日発行の最新号に掲載されたシャルブ氏の漫画は仏国内のテロを題材とし、イスラム過激組織の活動家が「新年のあいさつは1月末までできる」と月内の実行を示唆する内容。図らずも「予言」が発行当日に現実となった。

シャルブ氏は2012年の仏紙ルモンドのインタビューで、自身がさまざまな宗教を風刺しているにもかかわらず、激しい反発が起きるのはイスラム教だけだと指摘。

「イスラム風刺がカトリック風刺並みに当たり前になるまで続ける」と語り、「私には子どもも妻もいない」と捨て身の覚悟で取り組む姿勢を強調していた。【1月8日 時事】 
********************

ただ、激しい攻撃的な姿勢は攻撃された対象の過剰な反発を招き、いたずらに対立が高まるなかで良識は埋没し、社会はあらぬ方向へ流されていく・・・・というのは残念な結果です。

事件をも誘発するような激しい対立を煽ることで、社会の覚醒を促すことが本来の目的であったというなら、もはや言うこともありません。ただ、それはイスラム過激派のテロ行為にも通じるようにも思えますが。

****フランスでイスラム教徒標的の攻撃相次ぐ、パリ新聞社襲撃後****
フランスの複数の都市で7日夜から8日未明にかけて、イスラム教の礼拝所などが攻撃される事件が相次いで起きた。検察当局者が8日、述べた。

パリ(Paris)西部のル・マンでは8日午前0時過ぎ、モスク(イスラム教礼拝所)に手りゅう弾3発が投げ込まれた。手りゅう弾は爆発しなかった。

また、仏南部ナルボンヌ(Narbonne)近郊のポールラヌーベルではイスラム教の夜の礼拝の直後に、礼拝に使われていた建物に向けて発砲があった。

さらに8日、仏東部ビルフランシュシュルソーヌでは、モスクそばのケバブ店で爆発があった。けが人はいなかったが、当局者は、爆発は「犯罪行為」によるものと述べ、警察当局が捜査に着手したと語った。【1月8日 AFP】
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ベトナム  南シナ海の領有権をめぐる中国への抑えきれない不満  日本の支援事業完成

2015-01-07 22:36:07 | 東南アジア

(ハノイ郊外、ホン川(紅河)に架かる、つり橋型の橋としては東南アジア最長となる長さ1500メートルの「ニャッタン橋」、通称「日越友好橋」 【三井住友建設HP】 http://www.smcon.co.jp/2015/010510549/

【「ベトナムの一貫した政策は、中国の一方的な領有権の主張を拒否することだ」】
隣接する国家間では、侵略・衝突の歴史や経済的力関係などもあって、両者の国民感情はあまり芳しくないことが多いように思われます。

中国への警戒感・反感が根強いベトナムも、そうした一例でしょう。

ただ、ベトナムにとって中国は国境を接する経済関係も強い大国であり、また、1979年にはカンボジアへのベトナムの侵攻を巡って実際に戦火(中越戦争)を交えたこともありますので、中国に対する強い警戒心はあるものの、中国批判デモをときには容認したり、再び抑え込んだりと、対中国関係には慎重で過熱しすぎないような対応をこれまでもとってきました。

昨年5月には、西沙諸島に近いベトナム中部沖約220キロの排他的経済水域内で中国が大型油田掘削施設(オイルリグ)を使って石油の試掘に着手したことで、ベトナムは猛反発し国内では大規模な反中デモが起きました。
5月14日にはベトナム中北部のハティン省で、中国系企業を狙う大規模襲撃事件が発生しています。

しかし、その後両国は批判のトーンを抑制。
中国は7月にオイルリグを撤収。8月には習近平国家主席がベトナム特使の訪中を受け入れ、両国は関係改善をアピールしました。

11月上旬にミャンマーで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議でベトナムなどは中国批判を抑制し、中国はASEANとの協調ムードの演出に成功したように見えました。

もっとも話はそう簡単ではないようで、ここにきて、再び南シナ海をめぐる中国・ベトナムも対立が表面化しています。

“中国は西沙以外でもベトナムやフィリピンと領有権を争う南沙(英語名スプラトリー)諸島で岩礁を埋め立てるなど実効支配を強化。一方、ベトナムとフィリピンは対中国を念頭に、関係を緊密化している。
ベトナム海軍の軍艦2隻が(昨年11月)24日、親善訪問のためにフィリピンのマニラ湾に初寄港。「中国に挑戦する意図はない」としつつも各国外交関係者を艦内に招待して、南シナ海で中国と領有権を争う両国間の連携をアピールした。”【2014年 11月28日 毎日】

****<中国船>ベトナム漁船に体当たり 西沙周辺海域****
中国とベトナムなどが領有権を争う南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島で26日、ベトナム漁船が中国公船から体当たりや放水を受けていたことが分かった。ベトナム国営メディアが28日、伝えた。

西沙周辺海域では今年5~7月、中国の石油掘削を巡り両国の公船が衝突。その後、関係修復に向かっていたが、トラブルが続けば対立が再燃する可能性もある。

ベトナム側の報道によると、26日朝、西沙周辺で漁をしていたベトナム漁船2隻を中国沿岸警備隊の船が妨害。その後、さらに2隻の中国船が加わり、放水や体当たりを始めた。一部の乗組員はベトナム漁船に乗り移り、船室や装備品を破壊したという。(後略)【2014年11月28日 毎日】
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****中越対立再び?=南シナ海で非難合戦****
南シナ海の領有権をめぐる中国とベトナムの争いが、再び顕在化してきた。きっかけは中国が7日にフィリピンの国際仲裁手続きを拒否したことで、ベトナム外務省は事実上のフィリピン擁護とも取れるコメントを発表。中国側は「絶対に受け入れられない」と反発している。

越外務省報道官は11日、中比の仲裁手続きに関して「ベトナムの一貫した政策は、中国の一方的な領有権の主張を拒否することだ」とコメントをウェブサイトに掲載。国際仲裁裁判所に、ベトナムの主権尊重を求めたことも明らかにした。【12月12日 時事】 
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こうした対立の顕在化を早期に沈静すべく、中国側も対応をとってはいるようです。

****中国序列4位が訪越へ****
新華社電によると、中国共産党中央対外連絡部は22日、党序列4位の兪正声・全国政治協商会議(政協)主席が今月下旬にベトナムを公式訪問すると発表した。

中越関係は5月に中国が南シナ海の係争海域で石油試掘を強行したのを受けて悪化。対立の火種が残る一方、関係改善を模索する動きも続いている。【12月22日 時事】
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ベトナム政府:事故を起こした中国企業に「是正要求」】
こうした微妙な関係にある両国ですが、中国企業が請け負う都市鉄道建設現場で大きな崩落事故が発生したことで、ベトナム政府は中国企業へ厳しい姿勢を見せています。

****おから工事の輸出」と中国ネット民が皮肉る声も・・・中国企業がベトナムの都市鉄道建設で崩落事故を起こし、ベトナム政府から「是正要求」=中国版ツイッター****
ベトナム政府は12月31日、同国内の都市鉄道建設現場で大きな崩落事故が発生したとして、建設プロジェクトの総請け負い事業者である中国企業に対し、是正を要求する書簡を出した。ベトナムメディア・ベトナム青年報の1日付報道を、中国メディア・中国日報が同日伝えた。

記事は、12月31日にベトナム交通運輸相が、ハノイ市内のガットリンとハドンを結ぶ都市鉄道建設プロジェクトの総請け負い企業である「中国鉄路第6グループ公司」について、ただちにハドン駅の工事中に発生した足場の崩落事故による被害の処理を行うとともに、施工時の安全確保を求めるよう要求する書簡を出したと紹介。

また、書簡が、同社が短期間のうちに同プロジェクトにおいて2件の重大事故を起こしたことを挙げて「総請け負い業者に能力、経験、専門性が不足していることの表れだ」、「社会や公衆に対する責任意識に掛け、労働上の安全確保措置を取らず、付近の住民に心理的な不安をもたらした」と指摘したとした。

そして、交通運輸相が「同社はすべての法的責任を負わなければならない」と語るとともに、契約規定に基づく責任を履行していないことを厳しく警告したと伝えた。同省はまた、同社を「前科」のある請負企業リストに入れるよう交通工事建設管理当局に命じたという。

記事はさらに、洪小勇・駐ベトナム中国大使に対しても、同社を是正し、中国大使が同社、さらに同プロジェクトの監督企業とともに具体的な行動計画を提出するよう求める書簡を副交通運輸相から送ったことを併せて伝えた。(後略)【1月5日 Searchina】
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中国と政治的・安全保障上の問題を抱える日本は、同じように中国と対立するベトナムに接近する形で中国をけん制しています。

ベトナムが中国と厳しく対峙していた昨年6月には、南シナ海に臨むベトナム中部ダナン市に海上自衛隊の輸送艦「くにさき」が入港。
自衛隊員に加え、米軍とオーストラリア軍の隊員が参加し、ダナン市内で医療支援活動を行っています。

また、昨年8月には岸田文雄外相がベトナム・ハノイでファム・ビン・ミン外相と会談し、巡視船に転用できる中古船6隻を供与すると表明しています。

経済支援でも、ベトナムを含む東南アジアは日中の支援競争の主戦場となっていますが、先述の中国企業の失態に対し、日本の支援事業完成が報じられています。

****ハノイに日本支援の「ニャッタン橋」完成 インフラ輸出の「橋頭堡」に****
ベトナムの首都ハノイで4日、空の表玄関であるノイバイ国際空港の「第2旅客ターミナルビル」と、同空港とハノイ中心街のアクセスを改善する大型の道路橋「ニャッタン橋(日越友好橋)」の完成式典がそれぞれ開かれた。

両事業は日本が計1千億円超の円借款を供与、官民連携のインフラ輸出の「橋頭堡(きょうとうほ)」として注目される。式典には日本からも太田昭宏国土交通相が出席した。

第2旅客ターミナルビルは、急増する旅客需要に対応するために新設され、大成建設などが施工し、すでに昨年末に開業した。

ニャッタン橋はホン川(紅河)にかかり、全長3755メートル。複数の塔から斜めに張ったケーブルを橋桁につないで支える「斜張橋」部分の長さは東南アジア最大の1500メートルに達する。IHIインフラシステムや三井住友建設が工事を手掛けた。

式典終了後、太田国交相は「ベトナムの発展にとって画期的だ。日本との協力関係を強化し、戦略的なパートナーシップを増進するために努めたい」と述べた。【1月4日 産経】
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もっとも、日本のベトナムでのODA事業に問題がない訳ではありません。

****新規円借款を一時停止=「蜜月」仕切り直し―ODAリベート疑惑・ベトナム****
日本外務省は2日、ベトナム・ハノイで開いた政府開発援助(ODA)不正防止対策協議会で、鉄道コンサルタント会社「日本交通技術(JTC)」のリベート疑惑発覚を受け、ベトナム政府に対し新規円借款供与の一時停止を通告した。

2012年の統計で、日本の最大のODA供与国はベトナム。同国にとっても、日本はODA受け入れ総額の約4割を占める断トツの支援国だったが、リベート疑惑で「蜜月」は仕切り直しとなった。

また、ベトナムへの円借款停止は、08年の日系コンサル会社の贈収賄事件に次いで2度目で、深刻な汚職体質が浮き彫りになった。【2014年6月2日 時事】
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東南アジアでの日中の支援競争
東南アジアでの日中の支援合戦全般で見ると、体力で勝る中国の台頭に著しいものがありますが、その傾向は今後も変わることはないでしょう。

そうした中で、欧米から批判を浴びるタイ軍事政権は中国への接近を進めています。

****中国とタイが「鉄道建設」で協力 「アジア横断鉄道の実現に向けて前進」=中国メディア****
中国メディアの参考消息は20日、中国とタイが19日、タイ国内で全長867キロメートルの鉄道建設に向けて協力することで覚書を交わしたことを伝え、海外メディアが「中国のタイ国内における影響力を強めることになる」との見方を示したことを伝えた。

記事は、中国の李克強首相が19日にタイのバンコクを訪問し、タイ国内の鉄道網の建設でタイと中国が協力することで一致、覚書を交わしたと伝え、「鉄道建設はタイの貿易および観光業の発展に寄与することになる」との見方を示した。

続けて、タイの日刊紙バンコク・ポストの報道を引用し、タイと中国が鉄道建設だけでなく農業分野においても協力を強化すると伝え、関係者の話として「今回の一致はタイと中国の関係が日増しに熱を帯びていることを示すもの」と論じた。

さらに、覚書の内容として、中国はタイ東北部のノーンカーイ県と東部のラヨーン県を結ぶ734キロの路線のほか、首都バンコクとサラブリー県を結ぶ133キロの路線を建設すると紹介した。

また記事は、香港メディアの成報が「李克強首相が強力な鉄道外交を展開している」と報じたことを伝えた。

さらに、中国鉄道事業の海外輸出は、中国とドイツを結ぶ「渝新欧鉄道」、「イランやトルコを経由して欧州へつなぐ路線」、「中国とパキスタンをつなぐ路線」、「アジア横断鉄道」の4つの方向性のもとで展開されているとし、今回のタイとの覚書締結は「アジア横断鉄道の実現に向けて大きな前進」との見方を示したことを紹介した。【12月24日 Searchina】
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中国の“鉄道外交”などの攻勢のなかで、中国と南シナ海問題を抱えるベトナムの他、欧米接近を進めるミャンマーでは日本の進出が成功しているようです。

****ミャンマーに投資する日本 狙いは「中国の代替」か=中国メディア****
中国メディアの参考消息は16日、米メディア・「クリスチャン・サイエンス・モニター」の報道を引用し、日本がミャンマーの銀行業から通信業にいたるまで「ミャンマーのあらゆる産業における重要な投資国」になっていると伝えた。

記事は、長年にわたって経済制裁を受けているミャンマーをサポートしてきた中国の影響力は今なお同国に残っているとする一方、軍事政権から民主主義政権へと代わったミャンマーにおいて、日本が「ミャンマー新政府のパートナーになりつつある」と指摘。さらに、安倍晋三首相は米国のオバマ大統領とともにミャンマーにおける中国の影響力を希薄化させようとしていると伝えた。

続けて、ミャンマーの首都ヤンゴン市から南東へ約20キロメートルにあるティラワ経済特別区の「Class-A地区」開発プロジェクトにおいて、日本政府と日本企業が49%を出資して事業主体を設立したことを紹介。同プロジェクトでは発電所や道路、送電線などを建設するとし、「仮に同プロジェクトが成功すれば日本が最大の受益者になる」と伝えた。

また記事は、米国は今なおミャンマーに対して制裁を行っていることを指摘する一方で、日本のミャンマーへの関与は米国の対ミャンマー政策にも影響を及ぼす可能性があると指摘。現在のミャンマーで鍵を握る投資国は日本をはじめ、韓国やシンガポールなどの国であり、特に日本企業はミャンマーを「日中関係の悪化を背景とした工場移転先の有力候補として見ている」と伝えた。【2014年11月21日 Searchina】
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資金力や国家体制の違いで、中国と体力勝負をしても難しいところが多々あるように思われます。
日本としては、どういう視点から、どういう事業に支援するのかを絞って、日本らしさをアピールしていくことが必要に思われます。
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パレスチナ問題で非妥協的姿勢を強めるイスラエル 解決を遠ざけ、国際的には孤立化も

2015-01-06 22:10:14 | パレスチナ

(“(ガザ地区では)イスラエルの爆撃で自宅を壊され、今も国連の学校で避難生活を送る市民は1万9000人にのぼる。建設資材が搬入されず、市民はがれきの山から鋼材などを収集、家屋再建に役立てようと懸命だ。”【12月28日 毎日】 写真は“flickr”より By mutasem Mesleh https://www.flickr.com/photos/127516842@N07/16194570971/in/photolist-qF4pJT-qnJrQ3-pGsWys-pHis9T-qCTQ4C-qEqNMV-qqahfk-qFVnzr-qpmssC-qFRfbd-qpm5uw-qDBCiJ-qpicJq-qDzC9u-pJS95A-qpiVTh-qFS6dz-pK6mir-qoVCbr-qD5VRS-qD5VNW-qoNv4d-qoNuQN-qoNuxU-qoX7JV-qD5VaG-qFcHMv-qoKXxo-qon78U-pHVXZd-qEVVCR-qovE7g-pJabsc-pJabrF-qokEuU-qEPGHS-qEPGGj-qok1Pw-qENSek-pJ39pi-qond16-qEDdvP-qofFvG-qCwr83-qofFkb-qonaDx-qEtXKV-qoenyi-qEDAZF-qo5R6b)

【“インティファーダ”も想起させる緊張状態
イスラエルとパレスチナの関係は14年秋以降、エルサレムなどを中心として衝突が相次ぎ、“インティファーダ”(抵抗運動)再来をも懸念させる緊張が高まっています。

11月20日ブログ「イスラエル シナゴーグ襲撃、犯人自宅破壊命令・・・・緊張は危機的状況に」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141120
11月7日ブログ「イスラエル 東エルサレムでパレスチナ住民と治安部隊の衝突 高まる緊張」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141107

こうした緊張状態のなかでイスラエル軍は12月20日、8月のハマスとの停戦合意以降初めてとなるガザへの空爆も行いました。

****<イスラエル>ガザ空爆、停戦合意後初…負傷者確認されず****
イスラエル軍は20日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの関連拠点を空爆したと発表した。イスラエル軍によるガザ空爆は今年8月末のハマスとの停戦合意以降、初めて。

ガザ地区から19日、イスラエル南部にロケット弾1発が発射されたことに対する報復という。負傷者は確認されていない。

イスラエルとハマスは今夏50日間に及び戦闘。ガザでは2100人以上が犠牲となり、イスラエルでも兵士ら70人以上が死亡した。【12月20日 時事】
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12月24日には、ガザ地区の境界線付近で、イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスが一時交戦し、イスラエルはハマスが報復に出る可能性があるとして、イスラエル側の住民の一部に避難を呼びかけるなど更に緊張が高まりました。
この戦闘では、ガザを実効支配するハマスの司令官が殺害されました。

イスラエル側の強硬姿勢の背景には、“イスラエルでは12月31日にネタニヤフ首相の率いる右派リクードの党内選挙があるほか、来年3月に総選挙が実施される。これに先立ち、保守系議員らは競ってタカ派的な発言を繰り返している。”【12月25日 毎日】という国内事情もあるようです。

ハマス側は、“弔問に訪れたハマスの軍事部門「カッサム旅団」の戦闘員らは、「突然イスラエルから攻撃を受けた」と主張した。「ガザは今、戦闘に興味はない」とも語り、今後の展開は「イスラエル次第だ」と口をそろえた。”【同上】ということで、反撃は控え、仲介役のエジプトが中断した交渉の再開を望んでいる模様とも報じられています。

実際問題としては、ハマス側は昨年の長期にわたるイスラエルとの戦闘で相当に戦力を消耗していることが背景にあると推測されます。

自治政府は国内不満を受けて外交攻勢 イスラエルはこれに報復
ただ、昨年秋以来の緊張の高まりを受けてパレスチナ内にはイスラエルへの不満も募っており、パレスチナ自治政府はそうした国内圧力に応じる形で、外交攻勢をかけています。

国連安全保障理事会の非常任理事国ヨルダンはパレスチナ自治政府の意を受ける形で12月29日、パレスチナとイスラエルの2国家共存につながる和平案を1年以内にまとめるよう求めるという期限を明示した決議案を提出しました。
拒否権を持つアメリカの対応が注目されていましたが、そこまでに至らず決議案は否決されました。

****<国連安保理>イスラエル撤退求める決議案否決****
国連安全保障理事会(15カ国)は2014年12月30日、イスラエルとパレスチナによる和平交渉の1年以内の合意を目指し、イスラエルに対しては17年末までの占領地からの撤退を求める決議案の採決を行った。

賛成は8カ国で、採択必要な過半数プラス1カ国の計9カ国に届かず、否決された。

反対は米国とオーストラリアの2カ国のみで、棄権は英国など5カ国。フランスやルクセンブルクは賛成しており、欧米諸国でも対応が割れた。

決議案はパレスチナが主導し、非常任理事国のヨルダンが提出。東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づける表現もあった。イスラエルはエルサレム全域を「永久不可分の首都」と主張している。

否決後、パワー米国連大使は「決議案は著しくバランスを欠く」と強調し、「イスラエルの安全保障上の懸念を考慮せずに撤退期限を設定することは、非建設的だ」と反対の理由を述べた。採決で9カ国以上が賛成したとしても、常任理事国の米国の拒否権行使で廃案は確実だった。

一方、パレスチナのマンスール国連大使は、欧州各国の議会でパレスチナ国家を承認する動きが出ていることを踏まえ、「イスラエルによる占領の終結を求める声は世界中で明らかだ」と主張。15年も安保理への働きかけを継続する姿勢を強調した。

イスラエルのネタニヤフ首相は14年12月31日、反対票を投じた米国などに「感謝の意を表する」と述べた。また棄権したルワンダ、ナイジェリアの両大統領とは事前に電話で話し「決議案は支持しないと約束してくれていた」と語り、自ら理事国への説得活動を行っていたことを明らかにした。(後略)【12月31日 毎日】
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アメリカは、恣意的な期限設定が交渉に悪影響を及ぼすという立場で、パワー米国連大使は採決後「(決議案は)2国家共存を実現するための機運を取り戻す努力を損なうものだ」と反対理由を述べています。

また、棄権したイギリスのライアルグラント大使は「パレスチナ指導部が(行動するよう内部の)圧力にさらされているのは理解するが、通常かつ必要な交渉がなかったことに失望している」と述べ、パレスチナ側の安保理メンバー国との調整不足も指摘されています。【12月31日 時事より】

パレスチナ自治政府は今回の否決への対抗措置として、国際刑事裁判所(ICC)を規定するローマ条約に加盟しイスラエルの「戦争犯罪」を追及することなども検討しています。

****パレスチナ、国際刑事裁条約に署名=イスラエルと米国は反発****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は31日、国際刑事裁判所(ICC)設立条約に署名した。地元メディアが伝えた。

パレスチナ問題に関する国連安保理決議案が否決されたことを受けた措置で、イスラエルとの対立がさらに先鋭化する恐れがある。

パレスチナがICCに加盟すれば、ICCがイスラエル指導者の「戦争犯罪」などを追及することが可能になる。しかし、同様に、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのイスラエルに対する無差別ロケット弾攻撃も捜査対象となり、戦争犯罪と見なされる可能性が高い。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ICCについて心配しているのは、ハマスとの統一政権下にあるパレスチナ自治政府の方だ」と主張。対応措置を取ると宣言した。

また、イスラエルの同盟国である米国も声明で、今回のパレスチナの行動は「完全に逆効果」だと非難。イスラエルとパレスチナの2国家共存の実現に寄与しないと強調した。

2014年4月にイスラエルとの和平交渉が中断して以降、ガザの戦闘、エルサレムの聖地をめぐる対立などを受け、緊張が激化。交渉再開のめども立たない中、パレスチナ内部から、現状打破に向けた行動を取るようアッバス議長に対する圧力が強まっていた。【1月1日 時事】
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イスラエルは、パレスチナに代わり代理徴収する税金の送金を停止するという報復措置に出ています。

****<イスラエル>送金凍結 代理徴収の税金、パレスチナに報復****
イスラエルのネタニヤフ首相は3日までに、パレスチナに代わり代理徴収する税金約5億シェケル(約150億円)の送金を凍結することに決めた。地元メディアが伝えた。

パレスチナ自治政府が国際刑事裁判所(ICC)への加盟を申請し、イスラエルの「戦争犯罪」を追及するとしたことへの報復措置という。

パレスチナ自治政府の財政難を加速させるのは確実で、パレスチナ内部で対イスラエル強硬策を求める声がさらに高まりそうだ。

イスラエルは1994年にパレスチナと交わしたパリ協定などに基づき、パレスチナに入る関税や税金を代理徴収し、毎月送金している。

ただ、イスラエルは和平交渉推進の一環としてこれらの合意を履行しているという理解で、パレスチナ側が交渉継続を損なう「一方的な行為」をした場合、その意思がないとみなし、送金を一時的に凍結可能との見解でこれまでも断続的に同様の措置を繰り返してきた。

しかしこうした対応は国際法で禁じられた「集団的懲罰」にあたるとの批判もある。

イスラエルのネタニヤフ首相は4日、閣議前の会見で「イスラエル軍兵士や司令官がICCに召喚される事態は許さない」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。

パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長は3日、ICC加盟という合法的な手続きに、イスラエルが「国際法に反する略奪行為」で応じたとする非難声明を発表。4日には、送金が凍結されれば「職員の給料も学校や病院の維持も不可能になる」と述べた。

一方、米議会の歳出法は、パレスチナがイスラエルを「戦争犯罪」でICCに訴えた場合には支援を制限するなどと定めており、米国の今後の対応も注目される。米国は毎年、計4億ドル(約480億円)のパレスチナ支援金を拠出している。【1月4日 毎日】
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また、ロイターによると、イスラエルは、親イスラエル団体を通じ、自治政府のアッバス議長らを米国などで刑事告発することも検討しているもようとも報じられています。

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アッバス氏が率いる自治政府主流派ファタハが昨年、イスラエルが「テロリスト」とみなすイスラム原理主義組織ハマスとの間で、統一政府樹立で合意したことを念頭に置いた動きとみられる。

パレスチナのICC加盟が実現した場合、イスラエル側を戦争犯罪の罪などで訴える道が開かれる。イスラエル側もこれに対抗し、民間人へのロケット弾攻撃を行うハマスと「協力関係にある」との論理でアッバス氏らを告発し得ると牽制(けんせい)した形だ。【1月4日 産経】
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イスラエルの自信から生まれた独善が、今や中東の新たな紛争の源に
アメリカは、自治政府・イスラエルの双方に自重を要請していますが、関係は険悪になる一方です。

****<米国>援助の影響言及 パレスチナ国際刑事裁加盟申請で****
パレスチナ自治政府がイスラエルの戦争犯罪追及を目指し国際刑事裁判所(ICC)への加盟申請を国連に提出したことに関し、米国務省のサキ報道官は5日、「深く困惑している」と述べ、米国の対パレスチナ援助に影響が出る可能性に言及した。

一方で、イスラエルが代理徴収した税金のパレスチナへの送金凍結を決めたことも「緊張を高める」と批判。両陣営に対し直接の和平交渉再開に向け緊張緩和に取り組むよう改めて求めた。(中略)

サキ報道官によると、ケリー米国務長官は週末にネタニヤフ首相と電話協議、両陣営の措置に「強い反対」を表明し、緊張緩和を求めた。【1月6日 毎日】
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3月に予定されているイスラエルの議会選挙では右派勢力の優勢が見込まれており、今後イスラエル側の対応は一層強硬なものになることが想定されます。

しかし、昨年後半にはスウェーデンの「パレスチナ国家」正式承認に続いて、イギリス、フランス、スペインなどEU加盟国の議会が「政府に承認を求める」動議を相次いで採択。12月17日には欧州議会まで、承認原則支持の決議を採択するなど、イスラエルに厳しい流れも強まっており、イスラエルの強硬姿勢固執は国際的孤立化を招くことにもなります。

****第三次インティファーダ」が始まった****
米国の無策が招くイスラエルの「混沌」
イスラエルが占領するヨルダン川西岸と東エルサレムのアラブ人居住地域で、暴力事件が相次ぎ、「第三次インティファーダ」の様相を強めている。

今年三月十七日に国会(クネセト)選挙を控えるイスラエルでは、反アラブ色の強い右派勢力が一段と力をつけており、今年のイスラエル情勢は、「イスラム国(IS)」など国際的な過激派組織も巻き込んで、大きな焦点になりそうだ。

「目には目を」の報復を呼びかけ
(中略)
今回の暴力の波は、中東和平交渉の失敗とイスラエル政治・社会の右傾化に原因がある。

六年前にオバマ大統領が就任した後、米政府は「今こそ対話を」と、ネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長を、和平交渉の場に引っ張り出した。

だが、ネタニヤフは、パレスチナ国家を樹立してイスラエルとの共存を図る「二国家解決」に最初から懐疑的で、交渉は結局頓挫した。

その間、ユダヤ人の西岸への入植は続き、昨年の入植者人口は三十五万五千人で、〇八年より六万五千人以上も増えた。

「パレスチナ人にとって、和平交渉は『入植地拡大をするためのごまかし』に見える。『二国家解決』案への不信も高まっている」と前出特派員は言う。

イスラエルはタブーの領域にも踏み込んだ。

エルサレム旧市街にある、イスラム教徒の聖域「ハラム・シャリーフ(ユダヤ教では『神殿の丘』)」は、「岩のドーム」と「アル・アクサ・モスク」を擁し、国際的合意でイスラム教徒の礼拝のみ認められていた。ユダヤ教徒は、ハラムの外の「嘆きの壁」で礼拝する。

ところが、ユダヤ教徒は聖域内でも礼拝する権利を求め、昨年十月末には、ニル・バラカト・エルサレム市長がハラムを訪れて、イスラム教徒に衝撃を与えた。

市長はウイルス対策ソフトの会社で財を成した実業家。エルサレムを「ユダヤ人の西、アラブ人の東」に分割することに反対し、入植地建設の熱心な擁護者としても知られ、今のユダヤ政界の大衆迎合主義を代表する政治家だ。

イスラム教徒が怒りの集会を開く中、当局は一時的にハラムを完全封鎖した。これは第二次インティファーダが始まった二〇〇〇年以来のことだ。

国際社会から同情されない
イスラエルとパレスチナが聖地をめぐって、危険な駆け引きを繰り広げる一方で、国を取り巻く環境は、着実に悪化している。

不倶戴天の敵であるイスラム原理主義組織「ハマス」と、レバノン拠点の「ヒズボラ」は過去数年で劇的に武力を整えた。「どちらとの戦争も、『時間の問題』でしかない」とイスラエル外交筋は言う。(中略)

政治的には、「パレスチナ国家承認」の波がさらに強まりそうだ。アラブ各国を中心に百三十以上の国が承認しているのに加え、昨年後半にはスウェーデンの正式承認に続いて、英国、フランス、スペインなど欧州連合(EU)加盟国の議会が「政府に承認を求める」動議を相次いで採択。十二月十七日には欧州議会まで、承認原則支持の決議を採択した。

中東情勢が悪化する中、イスラエル政治は一段と右旋回しそうだ。解散前の内閣には、中道派のヤイル・ラピド財務相とツィピ・リブニ法相が加わっていたが、ネタニヤフ首相は二人を解任して「右派だけの内閣」を作るために、国会を解散した。

最新の世論調査によると、この賭けは見事に当たりそうだ。首相率いる「リクード」を筆頭に、「イスラエル我が家」や「ユダヤ人の家」など右派政党が軒並み議席を増やして、百二十議席のうち過半数を獲得する勢いだ。このため選挙戦は、各党がいかに「ユダヤ人中心」であるかを競う展開になっている。

オンライン新聞「タイムズ・オブ・イスラエル」のデビッド・ホロビッツ編集長は、最新の論説の中で「次期政権は、パレスチナ問題でタカ派。非妥協的になり、入植地拡大を全面的に推し進めるだろう。もしヒズボラ、ハマスから攻撃を受けても、イスラエルは国際社会からあまり同情されないだろう」と予測した。

ホロコースト生存者の国、イスラエルは力で国家存続を守ってきた。その自信から生まれた独善が、今や中東の新たな紛争の源になっている。【1月号 選択】
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アフガニスタン  ケシに代えてサフラン? 自立のために不可欠な農業再生

2015-01-05 21:37:08 | アフガン・パキスタン

(西部ヘラート州のサフラン畑で花を摘む女性 【1月3日 AFP】)

【“責任ある終結”か、“外国の侵略者に対する民衆の勝利”か
アフガニスタンでは、かねてからのスケジュールに沿って、昨年末をもって米軍を中心とする外国戦闘部隊が撤収し、今後は1万2000人規模でアフガニスタン治安部隊の後方支援にあたることになりました。

****アフガンでの戦闘終結―国際部隊=道半ばも、13年の戦いに幕―根強い治安悪化懸念*****
米軍を中心とする駐アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)は28日、首都カブールで、アフガンでの戦闘任務終結を記念する式典を開催した。来年以降は規模を約1万2000人にまで縮小し、アフガン治安部隊の訓練など後方支援に回る。

米英軍による攻撃開始から13年、テロとの戦いは道半ばのまま、アフガン戦争は大きな節目を迎えた。

だが、反政府勢力タリバンはいまだ強い勢力を保ち、各地で攻撃を激化。国際部隊の大幅撤退が治安悪化につながると懸念する声は絶えない。

「われわれは絶望の暗闇からアフガン国民を救い出し、その未来に希望を与えた」。ISAFのキャンベル司令官は28日の記念式典でこう演説し、任務の成功を強調した。

しかし、その言葉とは裏腹に、アフガンの治安は悪化の一途をたどっている。国連アフガン支援団(UNAMA)によると、テロによる2013年の民間人死傷者数は8615人と過去最悪の水準。14年はさらに悪化し、1万人に達すると推測される。

オバマ米大統領は、16年末までにアフガンから完全撤退する道筋を思い描く。だが、アフガンのアブドラ行政長官は「国際部隊の撤収は性急過ぎる」と指摘し、支援継続を要求。米国内でも、出口戦略の見直しを求める声が出始めた。【12月28日 時事】
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オバマ大統領の描く“16年末までにアフガンから完全撤退”というのは、自身の17年1月までの任期を睨んでのものです。
ついでに言えば、昨年末までの活動が「不朽の自由作戦」で、今年1月からは「自由の歩哨作戦」だそうです。

当然ながら、オバマ大統領はイラクに続く“戦争終結”を自身のレガシー(遺産)としてアピールしています。

****アフガン戦闘任務完了を宣言、オバマ氏「史上最長の戦争は終結****
・・・・オバマ氏は、アフガンに展開するNATO主体の国際治安支援部隊(ISAF)がカブールで現地時間28日に任務終了式を行ったのを受けて声明を発表。「アフガンでの戦闘任務は終わり、米国史上で最長の戦争は責任ある終結を迎える」と宣言した。

また、オバマ氏は13年間の作戦で「数え切れない米国民の命が救われた」とする一方、「アフガンはなお危険な場所であり続けている」とも指摘。

そのため、「限定的な軍事プレゼンス」によって、引き続きアフガン治安部隊への支援や「国際テロ組織アルカーイダの残党に対する対テロ作戦」に当たるとした。

09年1月の大統領就任以来、アフガン、イラクの「2つの戦争」の終結を掲げてきたオバマ氏にとり、今回の戦闘任務終結は11年末のイラク完全撤退に次ぐ節目となる。

声明では「大統領就任時は18万人近くの米兵がイラク、アフガンに駐留していたが、今や1万5千人を下回る規模になっている」と強調した。

アフガンでは、米軍を主体とする国際部隊の駐留規模は最大で約14万人に上った。米軍だけで約2200人が戦闘などで死亡。ISAFとしての死者は約3500人に上っている。

米軍は来年初頭まで最大1万800人を駐留させ、15年末までに約5千人に半減。16年末までにカブールの大使館を警護する一部要員を除き全面撤退する。【12月29日 産経】
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一方、タリバンは29日、国際治安支援部隊(ISAF)の任務終了式典について声明を発表し、「ISAFは何ら実質的、あるいは明白な業績をあげることなく、失意と失望の中で旗を巻いた」と主張し、タリバンの勝利をアピールしています。

****タリバンが勝利宣言 国際部隊の撤退で****
アフガニスタンで、13年にわたって駐留してきたアメリカ軍を中心とする国際部隊の戦闘任務が終了して大部分が撤退したことについて、反政府武装勢力タリバンが声明を発表し、みずからの勝利だと位置づけました。(中略)

これを受けて、反政府武装勢力タリバンが声明を発表し、この中で「外国の侵略者に対する民衆の勝利はすばらしい成果だ」として、国際部隊の大部分の撤退をみずからの勝利と位置づけました。

また、「問題の真の解決は、すべての国際部隊が無条件で完全に撤退することだ」として、今後も現地の軍や警察の訓練などに当たる1万2000人規模の国際部隊の撤退を求めています。

一方で、声明では、「アメリカなどが建設的かつ論理的な方法で問題を解決したいのであれば、友好的な形で容易に実現することが可能だ」として、和平交渉の可能性に含みを持たせています。

アフガニスタンではタリバンの攻勢が収まらず、アメリカ軍の撤退後にイスラム過激派組織が勢力を拡大したイラクの二の舞になるのではないかという懸念も出ていて、今後、和平交渉に向けた動きがみられるのか注目されます。【1月1日 NHK】
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消えないアフガニスタン治安部隊への懸念
アメリカなどが期待するアフガニスタン治安部隊については、それなりに装備・訓練も向上し、言われるほどには弱くなく、タリバンとも戦える・・・という見方もありますが、大勢はその脆弱さを懸念する見方です。

****アフガン、不安な治安部隊「タリバン怖い****
・・・・アフガンの治安部隊は十分な訓練を受けておらず、能力不足が指摘される中、テロ攻撃を活発化させている旧支配勢力タリバンにどう対応するかが焦点となる。

「国を守るための心構えはできているか」
首都カブール郊外にある国内最大規模の軍事訓練施設。12月30日、演壇に立ったアフガン軍高官が、3か月の訓練を終えた新人兵士約1100人に問いかけた。20歳代前半の兵士らは競い合うように、「もちろんです」と答えた。

ナデル・シャーさん(21)は「3か月前は武器の扱いさえ知らなかったが、しっかり学んだ。自分たちは強いとタリバンに教えたい」と胸を張った。だが、タリバンの攻勢に話が及ぶと、「タリバンは怖い」と弱気になった。

高官の表情もさえない。兵士らはタリバンが地盤とする東部や南部などに配属されるが、たった3か月の訓練は不十分と承知しているからだ。

アフガンの国軍と警察を合わせた治安部隊は現在、約35万人に上る。2001年の米同時テロ後、米軍などの攻撃でタリバン政権が崩壊したため、治安部隊は散り散りになったが、その後のカルザイ政権が組織の立て直しを図った。

だが、隊員数を短期間で急増させたため、訓練が追いつかず、基本的な戦闘技術を習得しないまま、テロが多い現場を任される兵士が続出した。

兵士を志願した若者のほとんどは地方出身者で、識字率も低い。現場の士気は低く、敵前逃亡も多発。タリバン側に寝返り、「同僚」を殺害する事件も後を絶たないのが実情だ。

タリバン政権崩壊以降、アフガンは、米国主導のISAFに治安維持を頼ってきた。このため、治安部隊の能力はあまり向上せず、一方でタリバンによるテロは増えた。

治安部隊は今後、タリバン対策を懸念する米軍などによる訓練を受けるが、能力が飛躍的に向上することは期待できない。

タリバンは12月31日に声明を出し、「2015年から、外国の部隊が拠点を置く地域を中心に国内全土で攻撃を増やす」と警告した。今後、さらに治安が悪化する恐れがある。

軍事訓練施設のアミヌラ・パトヤナイ司令官は本紙の取材に「タリバンとの戦いに必要な武器がない。空軍力も不足している」と指摘。

人材と資金が不足するアフガンが、外国の支援に頼らざるを得ない実態を語った。ある政府高官は「ISAFの戦闘部隊撤収は時期尚早だった」との見方を示した。【1月1日 読売】
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こうした懸念が現実のものとなったような事件も早速起きています。

****アフガン>結婚式会場で軍誤爆、民間人28人死亡****
アフガニスタン南部ヘルマンド州で12月31日、結婚式の会場でアフガン軍による砲撃があり、AP通信によると、女性や子供を含む民間人少なくとも28人が死亡、51人が負傷した。

同州では旧支配勢力タリバンと軍との間で長期間にわたり戦闘が続いており、誤って民間人を標的にした可能性がある。

AP通信などによると、現場は結婚式の最中で、花嫁を迎えるため招待客が外に出ていたところに砲撃があったという。砲撃は約3キロ離れた軍の前哨基地から行われたとみられる。軍幹部は砲撃の経緯を調査し、関係者を処罰する方針。(後略)【1月2日 毎日】
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米軍などの撤退が時期尚早だったのか、イラクの二の舞になるのか、16年末の完全撤退の見直しが必要になるのか、あるいは、タリバン側との和平交渉が進展するのか・・・こうした話は常々指摘されているところで、耳タコの話でもあります。

国家の基礎のために不可欠な農業再生
少し目新しい話としては、アフガニスタンに蔓延するケシ栽培にかえてサフラン栽培を広めようという動きがあるそうです。

サフランは調味用や医療用に珍重され、非常に高価な商品です。
国民、その大半を占める農民の生活が安定すれば、国家の基礎もかたまり、治安問題も著しく改善します。

****アフガニスタンでサフラン栽培に注目、ケシに代わる作物として****
広大な耕地と多くの労働力が必要であるために世界で最も高価なスパイスとされるサフラン。このサフランの栽培が、国際社会からの経済支援が今後減少すると見込まれるアフガニスタンの経済的な生命線となるかもしれない。

アフガニスタン西部のヘラート州にあるサフランの栽培畑では、少女らや年配の女性らが花を摘みながらゆっくりと進んでいく姿が見られる。ここでは325ヘクタールの耕作地に、4000人の女性を含む約6000人がサフラン栽培に従事している。

労働者らによってプラスチック製の容器に集められた花は、電子計量器に載せられた後、薄紫色の花びら、鮮やかな赤い雌しべの柱頭、淡黄色の雄しべとに慎重に分けられる。これは集中力と熟練した腕が要求される大変な作業だ。

アフガニスタンのサフランは、インド、欧州、米国、中国へと輸出される。スパイスや香料、染料、さらには伝統薬の材料として世界中で珍重されているサフランの赤い柱頭は、色鮮やかで香りが良く、魔法のようなヒーリング効果を持つとされるサフランティーにも使われる。

アヘンの原料であり、旧支配勢力タリバンの資金源となっているケシに代わる作物として、さらにはアフガニスタンのぜい弱な経済を支える農産品として大きな可能性を秘めたサフランだが、生産には莫大なコストがかかる上、厳しい冬には全滅してしまうこともある。

また、世界のシェアの9割を隣国のイランが握っていることもあり、これが簡単でシンプルな解決策となりにくい側面があることも事実のようだ。【1月3日 AFP】
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アフガニスタンでのNGOによるサフラン栽培指導は以前から行われているようです。

サフランが高価なのは、収量が極めて少なく、その栽培には高度な熟練が必要とされるためです。

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サフランが高価なのは、多数の柱頭を手で摘み取るときに、熟練を必要とするからである。
サフランの柱頭にだけ、あの独特の香りと味がある。

その上、それを商取引するには、ある程度の量を確保しなければならない。1ポンド (0.45kg) の乾燥サフランを取るには、約5万本の花が必要で、その耕作面積はサッカーのフィールドと同じ位の面積(約60m角)が必要である。7万5千本が必要とする資料もある。これは、サフランの品種によって、柱頭の大きさが異なるためもある。

しかも、収穫は、サフランの花が満開となる一時期に行わなければならない。1kgの乾燥サフランを得るには約40時間が必要であり、そのため収穫期には驚異的な忙しさとなる。例えばカシミールでは、何千もの農作業者が1週間から2週間の間、昼夜を通したシフト勤務で収穫を行う。

採取した柱頭は、すぐに乾燥が必要であり、それを怠ると売り物にならなくなる。伝統的な乾燥方法では、細かい網の目の上に広げ、炭か木で加熱した30℃から35℃のオーブンの中に10時間から12時間入れる。乾燥後は、ガラス容器に密閉する。【ウィキペディア】
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一方で、アヘンの原料となるケシ栽培は簡単・手軽なことが特徴です。

****ケシ栽培から脱却できないアフガニスタンの農民****
2001年の米同時多発テロ発生後、米軍主導のアフガニスタン攻撃が開始されてから10年近くが経つ。しかしケシ栽培は、巨額をかけた追放の取り組みにもかかわらず、多くの農民や旧政権勢力タリバンにとって依然、大きな資金源となっている。

ケシ栽培、そしてタリバンの活動が活発な南部カンダハル州は今も襲撃事件や衝突が止まない。この州のマイワンド地区のある農民は「ケシは手間がかからず、水が少なくて済む上、(ほかの作物よりも)もっと儲かる。この地区の住民の8割はケシを育てているだろう。理由は明らか、簡単だからだ」と語った。

戦火で荒廃したアフガニスタンだが、ケシ栽培は世界の9割を占める。その多くは欧米諸国の都市の街頭でヘロインとして売られるか、アフガニスタン国内の約100万人にも上るドラッグ常用者の手に渡る。

ケシはまたタリバンの反政府活動の資金源でもある。米軍主導の攻撃により政権から追放されて10年近くになるが、タリバンに殺害される外国人兵士の数は年々減るどころか増えている。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)へのアフガニスタン代表、ジャン・リュック・ルマイウ氏はAFPの取材に対し、暴力に満ちた情勢が、農民たちをケシ栽培に駆り立てると言う。

「不安定な状況や紛争下では、ケシは最も栽培に適した植物だ。あなたが農民だったらきっとこう考えるだろう。『彼ら(密売組織の幹部)が農場へやって来て、種をくれ、融資を提供してくれ、収穫まで手伝いに来てくれる』」。
農民たちは、あちらこちらに地雷が埋まり、犯罪組織に襲撃されるかもしれない危険な道路を移動しなくても済む。

欧米政府が率先して行おうとしてきたケシ栽培の撲滅が、欠陥のある解決法だったとみなす関係者は多い。

ある匿名の政府高官は「ケシ畑を攻撃することは地元住民に対する攻撃を意味するに等しい。そんな方法で人びとの心をつかむのは難しい」と語る。

地方部での支持獲得は、アフガニスタンの反政府勢力に対する戦略として欧米軍が中心に置くものの一つだ。しかしアフガニスタンの全世帯の6%の収入源になっていると思われるケシ栽培は、自分から消滅する気配は露とも見せていない。(中略)

農業に頼って家族を養う貧しい村の男たちにとってケシ栽培は、小麦を育てた場合の4倍もの高収入を約束してくれる作物だ。(後略)【2011年5月3日 AFP】
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非常な熟練と労力を必要とするサフランは、簡単・手軽なケシの対極にもある作物で、サフラン栽培を広めるのはなかなか難しいでしょう。

ただ、ケシに依存する農民の生活をなんとかしなければならない・・・という問題は厳然として存在します。

もともとアフガニスタンは農業も盛んな土地でした。
そのアフガニスタン農業を崩壊させたのは、長年の戦乱・内戦であり、その結果としての灌漑施設の破壊です。

本筋で言えば、灌漑施設を復旧させ、ケシ以外の作物が栽培できるようにすることが、アフガニスタン農業、ひいてはアフガニスタンの経済・治安改善に不可欠です。

言うは易し・・・ではありますが、やはりここに踏み込む必要があります。
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未だ日本帰国ならず  香港に臨時着陸  今日中に自宅まで帰れるのか?

2015-01-04 13:46:37 | 東南アジア

(香港 あちこち引き回され、くたびれた乗客 ようやく帰国便搭乗間近になって、ゲート前で座り込み「帰れるまでここを動かないよ!」という帰国難民)

テクニカル・プロブレム発生
年末からのラオスから帰国して、今日の7時半には福岡到着の予定でしたが、実はまだ香港にいます。

ベトナム・ホーチミンシティを今朝1時頃に飛び立ったベトナム航空でしたが、テクニカル・プロブレムが発生したとのことで、香港に臨時着陸。

今の情報では香港時間で16時に福岡に向け出発の予定とのことですが・・・・どうでしょうか。
別の機材をベトナムからもってくるのでしょうか、それとも修理して飛ばそうとのことでしょうか。

早朝に香港空港に急きょ着陸したため、空港がまだ“開いていない”とのことで、機内で1時間以上待機。
機外に出ても、なんだかんだで話が先にすすみません。

エンジントラブルなんて、国際空港ならそんなに珍しいことではないと思いますが、あまり手際がいいという感じではありません。

空港担当者の英語の説明も聞き取りづらいところもあって、「日本人客が大半なのだから、だれか日本語が話せる係員を連れてこいよ」という感も。

8時頃にようやく朝食券をもらえましたが、空港内の店によっては利用を拒否するところもあったりしてイライラしたりもして。

五つ星ホテルに連れてこられたものの・・・
10時くらいに空港外にあるホテルに案内されました。
マリオットホテルという部屋数600を超える五つ星ホテルです。

Agodaで調べると1泊が380ドルぐらいからということですので、税サとか含めれば1泊5万円を超えるのでは。
普段は絶対に利用することなどないタイプのホテルです。
ただし、一人客は他の一人客との相部屋です。

ベトナム航空の出費も大変ではとは思いますが、お昼前後だけの利用で宿泊する訳ではないので、格安料金なのでしょうか。

13時半にはまた空港に戻るとのこと。
実を言うと、アジア各国をよく旅行しますが香港はまだ空港外に出たことがありません。

ショッピングにも興味ないし(お金もないし)、中華料理は一人で食べるのは不向きだし・・・ということで、これまで訪れる機会がありませんでした。

せっかく香港に入国したなら、観光でもしたいところですが、ベトナム航空もそこまでは面倒はみてくれません。
以前、シンガポール航空がドバイでトラブルを起こしたときは、ホテルだけでなく観光旅行もやってくれましたが。

マリオットホテルは空港近くの郊外にあって、市内に出るにはタクシーで20~30分近くかかるような話です。
タクシーを使って、どこか一か所ぐらい観光、あるいは市内で昼食するのも・・・とも考えたのですが、時間が中途半端なこともあって、今回はホテル内で相部屋の方と雑談などして過ごすことに。

予定の16時出発なら、福岡から鹿児島方面への新幹線になんとか間に合うのでは・・・・とも思いますが、それ以上の遅れはアウトです。どこかで1泊しないといけなくなります。

どうなることやら。

【追記】
結局、香港で離陸が1時間以上遅れたのが響いて、福岡到着は9時20分ぐらい。入国手続きや荷物の受け取りなどで新幹線乗り継ぎはアウト。福岡のカプセルホテルで1泊して明日鹿児島に帰ることに。

それにしても、思わぬアクシデントにも誰一人声を荒げる人もなく、日本人らしい・・・1日でした。
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ベトナム・ホーチミンシティ  川のような車の流れに横断をためらい、しばしたじろぐ

2015-01-03 22:46:49 | 東南アジア

(ホーチミンシティのリバーサイド 一応横断歩道らしきものはありますが、信号は常時点滅状態で意味をなしません。見ていると観光客も恐る恐る渡っています。私も以前このあたりのホテルに泊まっていたときは、一人でなんとか渡っていたのですが、今日は、ラオスモードに馴染んでしまって一人では渡る勇気がありませんでした。 海外旅行で危険なのは治安の問題ではなく、この道路横断です)

トランジット入国したものの・・・
今、ベトナム・ホーチミンシティの空港にいます。
ラオスからの帰国途中ですが、ホーチミンでの乗換で約10時間の待ち時間があります。

さすがに10時間はきついので、いったん入国して時間を潰すことに。

最終目的地までのスルーチェックインで荷物も最終目的地まで預けているような場合はトランジットの入国が認められないこともある・・・とも聞いていたのですが、入国審査でもトランジット入国の旨を伝えて、特に問題なく入れてもらえました。

ただ、次回30日以内に再入国する場合、ビザがどうこう・・・という話をベトナム航空の職員が話していましたが、その予定もありませんので。

正直に言って、私のような田舎者はホーチミンのような大都会はそこにいるだけで疲れてしまいます。
昔、市内のスポットも観光したことがあります。

そうは言っても、空港で10時間待つよりは・・・ということでのトランジット入国ですが、市内有数のホテルであるレックスホテルの「レックスロイヤルコート」でのショー付きディナーが目的です。

伝統音楽と伝統舞踊を堪能しながらベトナム料理を・・・と言うより、要はアオザイ姿のきれいなお姉ちゃんを見たいというだけの話ですが。

空港からレックスホテルにタクシーで乗り付け、予約を頼んだところ「グループ客しかダメ」との冷たい回答。

「はるばるラオスからこのためにベトナムまでやってきたのに」と泣き言のひとつも言いたかったのですが、英語でゴチャゴチャ話すのも面倒で、ハラハラと涙を流して退散。

ディナーショーが観れないとなると、市内にいてもやることもありません。
地図すら持っていないので、どこらへんにいるのさえわかりません。

それにラオスと違いベトナム・ホーチミンは暑いです。機内用の長袖を着ていますので、腕まくりしても汗が吹き出します。

とにもかくにも食事でも・・・と、付近を歩き回り、結局、路地裏の小さな寿司レストランに。
寿司とお刺身セットで10万ドン(約570円)と格安の感があります。

都会が田舎より物価が高いかと言えば、必ずしもそういう話でもなく、ある程度の需要が見込める都会の方が安いものも多々あります。それに都会では激しい競争もあります。
市場経済の原理です。

ホーチミン市内まで出てきたのですから、せめて久しぶりにサイゴン川のリバーサイドぐらいブラブラしたと思ったのですが、どちらがサイゴン川方面かもわかりません。

街の人に尋ねても要領を得ません。
そこで交差点の路上でタバコなどを売っていたおばちゃんから地図を入手。

地図を見せながらリバーサイドに行きたいと訪ね歩き、ようやく川が見えてきました。

川の流れに・・・
ここで問題がひとつ。
川沿いの大通りを渡らなければなりませんが、例によって信号がありません。

ものすごい数のバイク・車が切れ目なく流れる川のような広い通りをどうやって横断するのか。
ビエンチャンなどと比べると迫力が格段に違います。

ラオスは国民性でしょうか、車の運転もおとなしい感があり、クラクションもめったに鳴らしません。

幸い、現地の女性が渡ろうとしていたので、一緒にくっついて渡ろうと駆け寄ろうとしたら、斜めに傾いた縁石で足をすべらせて転倒。
年寄りはこれだから・・・・。

転倒の方はジーンズを少し汚したぐらいですみましたが、獲物を逃してしまいました。
しばらく、次の獲物がくるのを待っていると、しばらくして女性二人連れが。

今度は逃すまいと金魚の糞のようにくっついて、ようやく通りを渡ることができました。

渡るときは、向かってくる車におびえて立ち止まったりしてはいけません。駆け出すのはもってのほかです。死にます。
車の流れの中を、ジワジワと一定ペースで進むことが肝要です。

寿司も食べたし、サイゴン川に浮かぶベンゲー号も見たし・・・ということで空港へもどります。
暑い市内を彷徨うより、涼しい空港でブログでも書こうという訳で、今ホーチミンの空港にいます。

出発まではまだ5時間半ありますが、10時間の半分ぐらいは消化できました。
マッサージなどで時間を潰すのもいいかも。

明日の7時半、福岡空港着の予定です。
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ラオス観光  11年ぶりのビエンチャン

2015-01-02 20:45:59 | 東南アジア

(金色に輝くタート・ルアン)

ラオス北部のシェンクアンから首都ビエンチャンに戻ってきました。
明日は帰国ですので、今日午後半日だけのビエンチャン観光です。

かつては「貧相な首都」なんて言われていたビエンチャンですが、11年ぶりに訪れると、高層建築物はないものの、すっかり都会らしくなっています。

もっとも、ビエンチャン観光とは言っても、めぼしいスポットは限られています。
それらだけであれば、半日もあればおつりがきます。

ほかにもいろいろあるのでしょうが、情報もありませんし、11年ぶりに“めぼしいスポット”を再訪するのもいいかな・・・ということで、定番スポットをブラブラとまわります。

寒さ対策が必要だったシェンクアンと異なり、ビエンチャンは東南アジアらしい暑さです。
バンコクやホーチミンほどではありませんが、強い日差しをよけて歩きます。

ビエンチャンの“めぼしいスポット”と言えば、古いお寺のワット・ホーパケオにワット・シーサケート、パリの凱旋門を模した戦没者慰霊塔のパトゥーサイ、そしてビエンチャンのシンボルでもあるタート・ルアンといったところでしょうか。

いずれのスポットも観光客であふれています。
ホテルのある一帯も外国人向け安宿やレストランが並び、バンコクの外国人旅行者街カオサンのような雰囲気です。(田舎町ポーンサワンと違い、食べ物屋さんのメニューに写真が入っている店が多いのは助かります)

それぞれのスポットも変わったところ、変わらないところいろいろですが、詳しくは帰国後に旅行記サイトにアップします。

そのなかで、ビエンチャンのシンボルでもあるタート・ルアン。ミャンマー・ヤンゴンで言えばシュエダゴン・パゴダでしょうか。

ただ、タート・ルアンは圧倒的に小規模です。シュエダゴン・パゴダにたくさんある仏塔のひとつ分といったところでしょうか。

装飾・造形もいたってシンプル。金色一色のその姿は、まるで金色の折り紙で工作したした模型のようでもあります。

おりしも、雲一つない真っ青な青空。

べた塗りしたような青空に、これまたべた塗りしたようなタート・ルアン。
シンプルの極みのような光景で、これはこれでいいかも・・・・。

今日は、宿泊ホテルのWiFi環境が芳しくなく、ロビーの椅子の手すりにPCを置いて作業していたら、PCが思いきり床に落下。思わず息が止まりました。

WiFiだけでなくPC自体もおかしくなったかも。(少しボディもゆがんだような・・・)

とりあえず、なんとかこれだけなんとかアップしようとは思いますが・・・・
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