雨の東京多摩地方より、こんにちは。
世界ミステリ名作劇場の時間がやってまいりました。
「ぱちぱちぱちッ! ネーさ、がんばッてェ~!」
ありがとう、テディちゃ。
ネーさ、精一杯勉めさせていただきます。
さあ、名作劇場の、開幕、開幕~!
皆さま、拍手でお迎え下さい~!
―― 闇からの声 ――
著者はイーデン・フィルポッツさん、原著は1925年に発表されました。
原題は《A VOICE FROM THE DARK》。
主人公のジョン・リングローズさんは、もと警察官。
ロンドン警視庁にその人ありと知られた名刑事さんでありました。
このたび、後進に道を譲って引退し、
では回顧録でも書いてやろうかと、
保養を兼ねて田舎のホテルへやってきたのですが……
深夜になり、思わぬものに目を醒まさせられます。
救けを求める子どもの悲痛な叫び!
「わァッ、たいへんでスゥ!
おきてッ、おきてェッ!」
リングローズさんの眠気は吹っ飛びました。
起き上がり、部屋の明かりをつけて――
いや、しかし?
誰も、いません。
子どもの姿など、どこにも。
隣の部屋にも、窓の外にも、人影のひとつもない。
ホテル全体が深閑としています。
夢か? 幻聴だったのか?
だが、あの悲鳴が偽物だったとは、信じられない……。
刑事魂を刺激されたリングローズさん、密かに調べ始めます。
そして知ったのは……
確かに、子どもはいたのでした。
少年貴族、ルドヴィク・ビューズ卿。
12歳で、病死。
リングローズさんが夜中の悲鳴を聞くより、1年も前に。
「むきゃああァッ、こわいィッ! ほらーですゥッ!」
英国というお国柄のためか、
リングローズさんが重視するのは超常現象や霊の声云々ではありません。
子どもが亡くなった
しかもその死には謎がある――
という点に、彼は憤り、立ち上がります。
子どもを死に至らしめたものは何だったのか?
何に怯え、少年貴族は夜中に悲鳴をあげたのか?
少年の死は……仕組まれたものだったのか?
警察という機構から既に離れたリングローズさんには、
組織的捜査など望むべくもありません。
孤独に、ただひとりで、少年を害した《悪》を追及してゆきます。
《悪》の姿を、やがて彼は見出しますが……。
「こ、こわいィようッ~、
どきどきィするでスよゥ~」
真の正調英国サスペンスです!
名作中の名作を、まだ読んでいないミステリ好きさんは、ぜひ!
日本語の文章には古めかしい箇所もありますが、
そんなこと気にせずに、先ずは読んでみましょう!
「うゥッ、こわくてもォ?」
怖くても、難しくとも、なんのその!
絶対のお奨め本ですよ!
「ふァ~、がんばッてみるゥ~、でス……」