テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

風吹く丘の上には……?

2010-02-16 23:12:02 | ブックス
 2月は完全に日照不足な東京・多摩地方から、
 こんにちは、ネーさです。
 寒くて、どんより……お日さまは何処ですか~?

「こんにちわッ、テディちゃでスッ!」
「がるるっ!」(←訳:虎ですっ!)
「ネーさッ! たぶんッ、おひさまはァ、あッちにィいまスッ!」

 見上げれど、目に映るのはダークな空ばかり……
 そして、本日ご紹介いたしますのも、とびきりダークな物語……
 さあ、ホラーファンの皆さま、こちらを、どうぞ~!


 
                ―― 私の家では何も起こらない ――


 
 著者は恩田陸さん、’10年1月に発行されました。
 ダ・ヴィンチ増刊誌『幽』に連載された作品をもとに出来上がったのが
 この御本です。
 ……おや? どうしましたか、テディちゃ? 震えてますね?

「あわあわあわうゥ~……ほらァー!
 ネーさッ、ほらーッてェ、いッたでスゥ!」
「がるがる!」(←訳:うん、言った言った!)
「こわいィ~!」

 ええ、そうです。
 これは、怖~い御本です。
 だって、舞台となっているのが、
 『幽霊屋敷』とか、
 『バケモノ屋敷』などと呼ばれている
 丘の上の古いお家なんですから。

 その家でかつてどんな悲惨な事件が起こったのか、
 或いは思い出すのも怖ろしいような出来事があったのかを、
 いまも人々はひそかに囁き合います。
 怪異は現在も止んでいないのだ、とも……。
 
「あうううゥゥゥ~ぶるるッ」
「がる~ぐる!」(←訳:怖いかも~!)

 怖くて怖くて、ダーク一辺倒なホラー譚――な筈が、
 ……読んでいるうちに、印象がずれてゆきます。
 怖いことは怖いんですけど、
 これは本当に《怖い》だけの物語なのでしょうか?
 
 まるで……落語を聞いているうような?

「ふァ? らくごォ??」
「がるーるっ?」(←訳:笑えちゃうのっ?)

 笑いや、面白おかしい御話が落語のすべてではありません。
 落語には、歴史や、怪奇を主題にしたものもあるのです。
 丘の上の幽霊屋敷のおはなしは
 著者・恩田さんが語る恩田さん流の落語なのでは……とも思われるのです。

「それでもォ、こわいィ~ッ!」
「がるぐるー!」(←訳:ホラーだもんね!)

 ミステリアスな御話の名手・恩田さんが描く
 ホラーともファンタジーとも捉え得る
 ダークサイド版『胡蝶の夢』は、
 後半、小さな丘の世界から
 広大な現実世界へ拡散してゆくかのようです。
 ふと御本から顔を上げれば、
 ほぉら、あなたのお家の隣にも、
 丘の上のあのお家が……?

「ひゃうゥひィィ~ッ! やぱりィこわわわいィィ~ッ!」
「がるーがるる!」(←訳:うん、怖い!)

 恐怖もユーモアもアイロニーも哲学も扉の陰に隠し持つ、
 とある古いお家のものがたり、
 活字マニアの皆みなさまに、おすすめです!

「あううわうゥ~……!」(←とうとうバッタリ?)
「がるーるるがる!」(←訳:怖がりさんは要注意!)
コメント
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