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ひゅ~ひゅ~、ひゅうぅぅ~、と
冷たい風が吹く旅行には不向きな季節が本格的にやってきましたね。
こんにちは、ネーさです。
「こんにちわッ、テディちゃでス!」
「がるぐる!」(←訳:虎ですよ!)
「さむいィからァ、はらまきッ、しなくちゃッ!」
はいはい、腹巻でも鉢巻きでも、御存分に。
でも、活字マニアさんは、ちょちょいっと季節の時計を巻き戻す準備をしてくださいな。
準備が出来たら……さあ、こちらの御本を、どうぞ~!
―― ばら色タイムカプセル ――
著者は大沼紀子さん、’10年8月に発行されました。
可愛らしいイラストの表紙画には、
バラのお花と、
ぽつんとたたずむひとの姿……
「ふむッ?
しゅじんこうさんッ、でスかァ?」
「ぐるるるーがるぐる?」(←訳:どことなーく変わったヒトだね?)
そう、主人公さん、
少々ルックスが変わっていると言えなくもありません。
髪の毛が、真っ白。
染めたのでは、ないんです。
何も手を加えていない、
純粋な、総白髪。
総白髪の彼女は、
13歳。
「えッ?? じゅうさんッ???」
「ぐるるるーがる?」(←訳:13歳で髪が全部真っ白に?)
お医者さまは、ストレスが原因ではないか、と診断しました。
ストレス?
13歳の彼女――森山奏(もりやま・かなで)ちゃんは
それほどの重圧を感じているのでしょうか?
ええ、そうなのかもしれません。
でなければ、
小さなピンク色のリュックだけを手に、
家出をして、
ここ、房総の海に面した崖の上まで、
やって来る必要もなかったでしょう……
そうして今、
奏ちゃんは走ってゆきます。
崖の向こうの、何もない空間へと――
「わあああァッ! だめだよゥッ!」
「がるるるるー!」(←訳:誰か止めてー!)
崖から海へ。
飛び込んだ奏ちゃんは、
幸いにも、いえ、本人は『不幸にも』と言うかもしれませんが、
助かりました。
「ほッ!」
「がるぐるる!」(←訳:良かったよ!)
奏ちゃんを救った、というか、拾ったのは……
屈強なライフセーバーさん?
漁師さん?
それともイルカさんでしょうか?
答えは……どれもハズレ。
救い手の《天使》さんたちは、
海の近くにある老人ホームの入居者さんたち。
『ラヴィアンローズ』。
バラ色の日々、或いは、薔薇色の人生という意味合いの名を持つその施設に、
奏ちゃんは居場所を得ました。
入居者さんたちの、雑用係として。
「ふゥッ! たすかッたねッ!」
「ぐるがるる~」(←訳:もう安心だ~)
13歳の奏ちゃんと、
奏ちゃんの何倍もお年を召した老婦人さんたち。
ホームの庭を占めるバラの世話をしながらの、
不思議な暮らしが始まります。
奏ちゃんの、13年間の人生。
老婦人さんたちの、それぞれの人生。
それらは優雅なワルツのように、
思いもよらぬかたちを結び作るのですが……
ミステリ?
青春もの?
サスペンス?
それとも哲学系ファンタジー?
そのどれでもありどれでもないような、
摩訶不思議で、でも読み出したら止まらない《力》を秘めた物語です。
ジャンルや先入観に縛られることなく、
虚心のままに頁を捲ってみて下さい。
バラの庭への、
奏ちゃんの旅路を、
皆さまも、ともに!
「ばらはァ、いかなるなまえでもォ、ばらッ!」
「ぐるるrがるる!」(←訳:王さまの、花です!)