カラ~ン、コロ~ン、カララ~ン♪……
いずことも知れぬ、ここ、パラレルワールドの英国に響くのは、
セントポ-ル寺院の鐘の音でしょうか、
ビッグベンの点鐘でしょうか……。
ええ、そうです、またしても。
やってまいりました新春特別企画!
一年ぶりに目覚めたのは、あの名探偵氏!
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「しんねんだねッ、とらくんッ!」
「ぐるるるーがるる!」(←訳:もう大晦日も暮れるよ!)
ベーカー街221Bの下宿の居間で、
名探偵テディちゃムズ氏と
友人の虎くんは、
暖炉に近い安楽椅子でゆったりと、
新しい年の到来を待っております。
「ことしはァ、おだやかなァ、としのせッ、だねェッ!」
「ぐるぐるがるるる!」(←訳:平和がいちばん!)
「うむッ!
きょねんはァ、たいへんだッたァ……!」
思い起こせば、ちょうど一年前のこと。
あの『バスカビル家の虎』事件で、
テディちゃムズは虎くんと知り合ったのでした。
ああ、今年こそは!
怖ろしい犯罪などとは無縁に、穏やかに、
新年を迎えたいものです!
ところが、そこに。
ドタドタドタタ。
下宿の階段を駆け上がる足音は、はて?
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「テディちゃムズ!
事件だ!!」
テディちゃムズの盟友にして伝記作家、
白クマのユキノジョン・H・ワトソン博士が、
ここぞとばかり叫びまする。
「クマリング侯爵夫人のネックレスが盗まれた!
《白い宝玉》と呼ばれる
家伝の名品だそうだよ!」
嗚呼、《白い宝玉》!
テディちゃムズが素早く紳士淑女録を書棚から取り出し、
ページを捲れば……ありました!
クマリング侯爵家に伝わる《宝玉》の記述が!
「むぽゥ!
とくだいィのォ、おぱーるッ?!?」
「鳩の卵より大きいって!」
「がるがるぐるぐるる!」(←訳:真珠より美しいって!)
ユキノジョン・H・ワトソン博士、
これを、と手紙を差し出します。
フォートナム&メイスンへ新作ハチミツを買いにゆこうとしたところへ、
ランガムホテルの少年給仕さんが走ってきて、
名探偵テディちゃムズさんに!と
手紙を渡されたのでした。
侯爵夫人はテディちゃムズさんの出馬を切望しております!
とも言うのです。
「うゥ~むむゥ……!」
テディちゃムズ、少しだけ、肩を落とします。
名探偵の宿命とはいえ、
どうやら今年も、
安楽椅子でみかんを食べながら
紅白クマ歌合戦をラジオで聴きふけるという
ささやかな願いは叶わぬようでございます……。
いえ、愚痴は口にしますまい。
探偵を名乗る者なら、
受け入れましょう、この運命!
いざや、出発!
大晦日だろうと真夜中だろうと、
犯罪の現場へ、いますぐに!
コートを羽織って、
帽子を被り、
仕込み杖を忘れずに!
「さあッ、ゆくぞッ!
とらくんッ、ゆきのじょんッ!
あくにんをォ、たおすのだッ!」
ベーカー街221Bのドアを開け――
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名探偵テディちゃムズ、
霧けぶるロンドンの街に歩き出したのでした……!
~ つづく ~
いずことも知れぬ、ここ、パラレルワールドの英国に響くのは、
セントポ-ル寺院の鐘の音でしょうか、
ビッグベンの点鐘でしょうか……。
ええ、そうです、またしても。
やってまいりました新春特別企画!
一年ぶりに目覚めたのは、あの名探偵氏!
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「しんねんだねッ、とらくんッ!」
「ぐるるるーがるる!」(←訳:もう大晦日も暮れるよ!)
ベーカー街221Bの下宿の居間で、
名探偵テディちゃムズ氏と
友人の虎くんは、
暖炉に近い安楽椅子でゆったりと、
新しい年の到来を待っております。
「ことしはァ、おだやかなァ、としのせッ、だねェッ!」
「ぐるぐるがるるる!」(←訳:平和がいちばん!)
「うむッ!
きょねんはァ、たいへんだッたァ……!」
思い起こせば、ちょうど一年前のこと。
あの『バスカビル家の虎』事件で、
テディちゃムズは虎くんと知り合ったのでした。
ああ、今年こそは!
怖ろしい犯罪などとは無縁に、穏やかに、
新年を迎えたいものです!
ところが、そこに。
ドタドタドタタ。
下宿の階段を駆け上がる足音は、はて?
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「テディちゃムズ!
事件だ!!」
テディちゃムズの盟友にして伝記作家、
白クマのユキノジョン・H・ワトソン博士が、
ここぞとばかり叫びまする。
「クマリング侯爵夫人のネックレスが盗まれた!
《白い宝玉》と呼ばれる
家伝の名品だそうだよ!」
嗚呼、《白い宝玉》!
テディちゃムズが素早く紳士淑女録を書棚から取り出し、
ページを捲れば……ありました!
クマリング侯爵家に伝わる《宝玉》の記述が!
「むぽゥ!
とくだいィのォ、おぱーるッ?!?」
「鳩の卵より大きいって!」
「がるがるぐるぐるる!」(←訳:真珠より美しいって!)
ユキノジョン・H・ワトソン博士、
これを、と手紙を差し出します。
フォートナム&メイスンへ新作ハチミツを買いにゆこうとしたところへ、
ランガムホテルの少年給仕さんが走ってきて、
名探偵テディちゃムズさんに!と
手紙を渡されたのでした。
侯爵夫人はテディちゃムズさんの出馬を切望しております!
とも言うのです。
「うゥ~むむゥ……!」
テディちゃムズ、少しだけ、肩を落とします。
名探偵の宿命とはいえ、
どうやら今年も、
安楽椅子でみかんを食べながら
紅白クマ歌合戦をラジオで聴きふけるという
ささやかな願いは叶わぬようでございます……。
いえ、愚痴は口にしますまい。
探偵を名乗る者なら、
受け入れましょう、この運命!
いざや、出発!
大晦日だろうと真夜中だろうと、
犯罪の現場へ、いますぐに!
コートを羽織って、
帽子を被り、
仕込み杖を忘れずに!
「さあッ、ゆくぞッ!
とらくんッ、ゆきのじょんッ!
あくにんをォ、たおすのだッ!」
ベーカー街221Bのドアを開け――
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名探偵テディちゃムズ、
霧けぶるロンドンの街に歩き出したのでした……!
~ つづく ~