テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

しがみつけ《笑》に!

2010-12-10 23:33:31 | ブックス
  

 夕暮れの空に、お月さまがきれいでした……明日も東京・多摩地方は晴れ!&寒い!んでしょうか。
 こんにちは、ネーさです。

「こんにちわゥ~、テディちゃでスゥ~!」
「がるるぅ~!」(←訳:虎ですぅ~!)

 お月さまに見守られてお家へ帰りついたら、
 僅かな間ではあっても、読書タ~イム!
 本日の活字マニアさん向けメニューは、はい、こちらを、どうぞ~!


 
                   ―― 必死のパッチ ――



 著者は桂雀々(かつら・じゃくじゃく)さん、’08年10月に発行されました。
 前回の記事では英国のSF作家J・G・バラードさんの自伝を御紹介しましたけれど、
 この御本も、雀々さんが御自身の少年時代を綴った半生記です。

「ふァいッ! ネーさッ、しつもんでスゥ!
 『ぱッち』ッてェ、なにィでスかッ??」
「ぐるるがる?」(←訳:暗号かなあ?)

 必死のパッチ――
 御本の巻頭には、こう記載されていますわ。
 
   関西における『一生懸命』の最上級語。

 本文では、
 大阪弁で言うところの『必死のさらに上』、
 『必死』と『死に物狂い』を足して『がむしゃら』を翔けたようなもの、
 とも説明が為されています。
 とにかくもう、めちゃくちゃ必死、ってことなんでしょうね。

 雀々さんは、1960年、大阪に生まれました。
 本名は、松本貢一さんと申されます。
 その貢一少年が、必死に、死に物狂いで必死にならざるを得なかった
 人生の大事件とは、
 いったい何だったのか、というと……?

「うむッ! というとォ……?」
「がるるぐる?」(←訳:なんだろう?)

 貢一少年が、小学校の6年生だったときのこと。
 おかん――おかあさんが、いなくなってしまいました。
 
 或る日、突然、おかんは家を出て行ったのです。
 息子の貢一くんに、別れも告げずに。

「ええッ?!?」
「がるるっ?!!」

 中学生になった貢一少年は、父と子、
 ふたりの生活を余儀なくされます。
 しかし、ここでも難題が……!

 夫婦の不和のもととなったギャンブルを、
 おとん――お父さんは止められません。
 借金は膨らみ、
 取り立ての怖いオニイさんたちが連日押しかけてくるようになりました。
 起死回生の苦肉の策、ピラニアの養殖に失敗したお父さんは、
 前後の見境をなくしたのか、
 信じられない所業に出ます。

  一緒に死んでくれ!

 我が子に、無理心中を迫ったのでした……!

「ええええええェッ???」
「がるぐるがるるー!!」(←訳:まさかのまさかー!!)

 まさかの夢、であったら良かったのに。

 幸いにも、心中は未遂に終わりました。
 が、翌日、お父さんは家を出てゆきました……
 貢一少年、12歳。

 彼は《ひとり》になったのです。

「しッ、しんじィられないィでスゥ!」
「ぐるるるーがるる!」(←訳:嘘だと言って欲しいー!)

 信じられなくても事実でした。
 おかんも、おとんも、出ていってしもた……
 
 でも、孤独な貢一少年に力を貸してくれるひともいます。
 近隣の、やさしい人たち。
 民生委員の方々。
 学校の友人、ヤンピ。
 そして何より、貢一少年は発見したのでした。

 落語を。

 漫才でも、スタンダップコミックでもない、
 落語に、少年は惚れこみ、打ち込みます。
 
 ボクには落語がある! 
 こんなに楽しい世界が!

「すすすすッ、すごいィでスゥ!」
「がるっ!!」(←訳:うんっ!!)

 落語という『楽しい世界』への入り口までの、
 きつい、苦しい、悲しい半生を、
 雀々さんが回想する筆は、
 ここが言葉のプロたる御方のスキルと申しましょうか、
 実にリズミカルに、
 マイナスをプラスに転じさせる勢いに溢れています。
 涙を笑いに変えさせてみせる!
 落語の力、ボクの地力で、そうさせてみせる……!

 応援せずにはいられない、
 貢一少年の、落語家・雀々さんのものがたり!
 上方落語に詳しい御方もそうでない御方も、
 ぜひ一読を~!

「じゃくじゃくさんッ!
 ふぁんにィ、なりましたでスゥ!」
「がるるるぐるがる!」(←訳:背負って立ってね上方落語を!)
コメント
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