テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

迫りくる、恐怖?

2015-03-23 21:30:42 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 くううゥ~、にげちゃッたでス!」
「がるる!ぐるるるるー!」(←訳:虎です!行かないでー!)

 こんにちは、ネーさです。
 ようやく来てくれた春の使者・ウグイスくん……なのですが、
 近所でドカーンバコーンと解体工事をしているせいでしょうか、
 早々に逃げちゃったみたいです。
 野鳥ってセンシティヴなんだわ~と工事現場をちょっと恨みつつ、
 本日の読書タイムは、
 こちらも充分にセンシティヴ?な一冊を、どうぞ~!  

  



               ―― あなたの本 ――



 著者は誉田哲也(ほんだ・てつや)さん、単行本は2012年に、
 画像の文庫版は2014年12月ひ発行されました。
 誉田さんの代表作っていったら、
 映画・ドラマ化された『ストロベリーナイト』の《姫川玲子》シリーズを筆頭に、
 《武士道》シリーズの『武士道シックスティーン』などの――

「けいじものォ、でスッ!」
「ぐるぅるるがる!」(←訳:アクションもの!)

 が多い、と思っていたのですけれど、
 あららららら、
 この御本を読んでビックリいたしました。

 こういう作風&作品も、巧い!!

 7編の短編作品が収録されているのですが、
 表題作品の『あなたの本』は、
 もう見事なSFです!

「えすえふゥ~??」
「がるぐるがる?」(←訳:空想科学小説?)

 物語の舞台や設定には、一見、
 SF的な気配は微塵もありません。

 昭和から平成にかけての現代日本に生きる、
 主人公の“私”は、
 簡単に、淡い初恋の夢は破れ、
 高校受験ではミスをするし、
 大学受験でも二浪してしまう青年です。

「うゥ~むゥ? ふつうゥ、でスねェ?」
「ぐるがるるるぅ?」(←訳:ごく平凡だよぅ?)

 ごく平凡そうに見える“私”――吉川(よしかわ)さん、
 実は、或る秘密を抱え持っています。

 一冊の、本。

 『あなたの本』と題された、
 父の書斎で見つけた本。

 そこには、
 彼の人生が記述されている……

 誕生から、幼時の振舞いやケガ、
 小学生、中学生の時代の出来事。
 吉川さん本人が忘れてしまったことまでも、
 きっちりと書いてある、本。

「ふァ? なにかのォ、じょうだんでスかッ?」
「がるるぐる?」(←訳:ただの偶然?)

 冗談や偶然にしては、
 当たりすぎている、その内容。

    これは、私の人生を書いた本なのか?

 そうと気付いた吉川さんは怖ろしくなります。
 過去の人生を再認識するだけならまだしも、
 ここにはどうやら将来のことも書いてある……?

 明日の私、
 明後日の私、
 その先の、何十年後の、私……。

「ぎょえええッ!」
「ぐるっ!」(←訳:うそっ!)

 『あなたの本』の頁をめくる
 吉川さんの手が止まります。

    未来を、知りたいか?
    これから私の人生に何が起こるか、
    知りたいのか?

「えッとォ、えええェ~とォ?」
「がるるるる??」(←訳:どうしよう??)

 未来を知りたいか、知りたくないか。

 そこには幸福、だけでなく不幸も記されているのだろうか。
 良いことも悪いことも、
 ああ知らなければよかったのに、と
 永遠に後悔するようなことも?

 慄然とする吉川さんが、はたして、
 『あなたの本』に対し
 取った行動とは……?

「そそッ、それはァ、きゅうきょくのォ?」
「ぐる!!」(←訳:選択!!)

 読むか、読まぬか。
 未来を、
 自分の世界を変えてしまう選択。
 その恐怖。

 ええ、これってSF精神ですよね。
 それも、H・G・ウェルズさんが主題としたような、
 王道古典路線の傑作SFです。

「できればァ、ほんやくしてェ~」
「がるるるるぐるぐるがるる~」(←訳:世界中の活字好きさんに~)
「よんでいただきたいィでス!」

 ぜひ、皆さま、
 最後の一行まで気を抜かず、
 読み切ってくださいね~♪


コメント
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