「こんにちわッ、テディちゃでス!
そこはァ、おんがくのォ~みやこッ!」
「がるる!ぐるるがるる~!」(←訳:虎です!歴史もあるよ~!)
こんにちは、ネーさです。
歴史ある音楽の都、といえば、まず思い浮かぶのは、
オーストリアの首都ウィーンでしょうか。
本日の読書タイムは、
ウィーンを舞台とするこちらの御本を、さあ、どうぞ~♪
―― 中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク ――
著者は中野京子(なかの・きょうこ)さん、
2024年6月に発行されました。
『kLIMT AND TWILIGHT OF THE HABSBURGS』
と英語題名が付されています。
「ふわァ~…めんせきィおおきいィのでスゥ!」
「ぐるがる!」(←訳:大国だね!)
1848年、オーストリア帝国は
ヨーロッパ東域に君臨する大国でした。
当時、ドイツという国は存在せず、
イタリアも建国前夜……
フランツ=ヨーゼフ一世を君主に戴く大国として、
勢威をふるっていましたが。
視える者には、視えていたかもしれません。
そこかしこに生じたひび割れが、
時間を経て亀裂へ、
さらには巨大なクレヴァスとなって国土を分断し、
長く続いた王座さえも傾いてゆくのを。
そんなオーストリア帝国の
首都ウィーン郊外バウムガルテンで、
1862年7月14日、
グスタフ・クリムトさんは誕生しました。
「おとうさんはァ、しょくにんさんッ!」
「がるるるぐるるるがる!」(←訳:彫刻師で金細工師さん!)
クリムト家は貧しかった、と伝えられています。
貧しくて、子だくさんで、
時にはパンも買えぬほどでしたが、
働き者のお父さんは頑張り、
長男グスタフさん、
弟のエルンストさんやゲオルグさんも頑張りました。
職人を養成する工芸学校に
奨学金を得て14歳で入学、
弟さんたちも同じ道を選んで、
クリムト家の兄弟たちは
めきめきと頭角を現してゆきます。
当時のウィーンは、建築ラッシュ。
十代の若さで建物の内部装飾の仕事を請け負い、
評判を高めていったおかげで、
クリムト家のお財布も豊かになりました。
「ふゥ! よかッたでスゥ!」
「ぐっるがっるぐるるがるる!」(←訳:もっともっと有名になろう!)
黄金細工に長けたクリムト家を言祝ぐかのように、
ウィーンの空は金色に輝きます。
『接吻』(1907~1908)他、
数々の傑作を世に送り出したグスタフさんの名声は
欧州中に鳴り響き、
前途は洋々――
「ううゥ! おてんきィ、きゅうへんッ!」
「がるる!」(←訳:雷雲だ!)
黄昏の美しい空を
暗黒に染めてゆくのは、
激変してゆく時代と社会。
王家の終焉、戦争、疫病……
クリムトさんも、
同時代の芸術家さんたちも、
抗うことなど出来ない、暗い波。
「まだァ、わかかッたのにィ~…」
「ぐるるがるる……」(←訳:55歳でした……)
1918年2月8日、
グスタフ・クリムトさんは永眠しました。
その生涯と併せて、
著者・中野さんが描くのは、
王都ウィーンに明滅する最後の光。
歴史好きな活字マニアさんに
おすすめの一冊です。
図版も豊富に収録されていますので、
アート好きな方々も、
ぜひ、手に取ってみてくださいね~♪