テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 彩雲の黄泉路 ~

2024-11-17 22:03:46 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 そこはァ、おんがくのォ~みやこッ!」

「がるる!ぐるるがるる~!」(←訳:虎です!歴史もあるよ~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 歴史ある音楽の都、といえば、まず思い浮かぶのは、

 オーストリアの首都ウィーンでしょうか。

 本日の読書タイムは、

 ウィーンを舞台とするこちらの御本を、さあ、どうぞ~♪

  

 

 

    ―― 中野京子と読み解く クリムトと黄昏のハプスブルク ――

 

 

 著者は中野京子(なかの・きょうこ)さん、

 2024年6月に発行されました。

 『kLIMT AND TWILIGHT OF THE HABSBURGS』

 と英語題名が付されています。

 

「ふわァ~…めんせきィおおきいィのでスゥ!」

「ぐるがる!」(←訳:大国だね!)

 

 1848年、オーストリア帝国は

 ヨーロッパ東域に君臨する大国でした。

 当時、ドイツという国は存在せず、

 イタリアも建国前夜……

 フランツ=ヨーゼフ一世を君主に戴く大国として、

 勢威をふるっていましたが。

 

 視える者には、視えていたかもしれません。

 

 そこかしこに生じたひび割れが、

 時間を経て亀裂へ、

 さらには巨大なクレヴァスとなって国土を分断し、

 長く続いた王座さえも傾いてゆくのを。

 

 そんなオーストリア帝国の

 首都ウィーン郊外バウムガルテンで、

 1862年7月14日、

 グスタフ・クリムトさんは誕生しました。

 

「おとうさんはァ、しょくにんさんッ!」

「がるるるぐるるるがる!」(←訳:彫刻師で金細工師さん!)

 

 クリムト家は貧しかった、と伝えられています。

 貧しくて、子だくさんで、

 時にはパンも買えぬほどでしたが、

 働き者のお父さんは頑張り、

 長男グスタフさん、

 弟のエルンストさんやゲオルグさんも頑張りました。

 

 職人を養成する工芸学校に

 奨学金を得て14歳で入学、

 弟さんたちも同じ道を選んで、

 クリムト家の兄弟たちは

 めきめきと頭角を現してゆきます。

 

 当時のウィーンは、建築ラッシュ。

 十代の若さで建物の内部装飾の仕事を請け負い、

 評判を高めていったおかげで、

 クリムト家のお財布も豊かになりました。

 

「ふゥ! よかッたでスゥ!」

「ぐっるがっるぐるるがるる!」(←訳:もっともっと有名になろう!)

 

 黄金細工に長けたクリムト家を言祝ぐかのように、

 ウィーンの空は金色に輝きます。

 

 『接吻』(1907~1908)他、

 数々の傑作を世に送り出したグスタフさんの名声は

 欧州中に鳴り響き、

 前途は洋々――

 

「ううゥ! おてんきィ、きゅうへんッ!」

「がるる!」(←訳:雷雲だ!)

 

 黄昏の美しい空を

 暗黒に染めてゆくのは、

 激変してゆく時代と社会。

 

 王家の終焉、戦争、疫病……

 

 クリムトさんも、

 同時代の芸術家さんたちも、

 抗うことなど出来ない、暗い波。

 

「まだァ、わかかッたのにィ~…」

「ぐるるがるる……」(←訳:55歳でした……)

 

 1918年2月8日、

 グスタフ・クリムトさんは永眠しました。

 その生涯と併せて、

 著者・中野さんが描くのは、

 王都ウィーンに明滅する最後の光。

 

 歴史好きな活字マニアさんに

 おすすめの一冊です。

 図版も豊富に収録されていますので、

 アート好きな方々も、

 ぜひ、手に取ってみてくださいね~♪

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする