テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 怪物たちをつなぐ糸 ~

2010-03-01 23:18:54 | ブックス
 3月ですね!
 三月ウサギくんが踊り、ヤマネくんも目覚め、マッドハッターさんもお茶会する3月!
 こんにちは、3月が割と好きなネーさです♪

「こんにちわゥ、テディちゃでス!」
「がるーるー!」(←訳:虎でーす!)

 さあ、3月最初に御紹介いたしますのは、ガツン!と強力な一冊です。
 いま話題のこちらを、皆さま、どうぞ~!


 
           ―― フランケンシュタイン・コンプレックス ――


 
 著者は小野俊太郎さん、’09年11月に発行されました。
 『人間は、いつ怪物になるのか』と、副題が添えられています。

「ふらんッ、ふらんけんけんこんぴぴィ……あれッ?」
「がるるるーる!」(←訳:舌が回ってないよ!)

 早口言葉じゃありませんよ、テディちゃ。
 でも、フランケンシュタイン・コンプレックス……?
 いったい何のことなんでしょうか?
 
「おばけがァこわいィ、とかァ……?」
「がる~るぐる?」(←訳:映画が怖いとかかな?)

 著者・小野さんは記しています。
 これを提唱したのは、アイザック・アシモフさんなのだと。
 SF作家にしてシェイクスピア研究家、博士号も持っていた20世紀の巨匠さんは、
 ある種の《不安》をこう表現したのでした。
 その《不安》とは――

  自分が造り出したもの、
  自分より劣るはずのものが、自分よりも優れている?
  創造者-被創造物という隷属的な関係がいつか覆されるのでは、
  或いは、
  乗っ取られる/立場を取って代わられるんじゃないだろうか、
 
 というような感情です。

 『怪物』を造り出したヴィクター・フランケンシュタイン、
 そして、ヴィクターに造られた『怪物』……。

「ふむふむッ! テディちゃ、えいがでェみたことあるでス!
 ふらんけんッ!」
「がるるるっ!」(←訳:怖かったよね!)

 多くの方々が思い浮かべるボリス・カーロフさん主演の映画と、
 メアリー・シェリーさんによる原作の間には
 大きな隔たりがあります。
 科学の信奉者・ヴィクターと、その《子》ともいうべき怪物。
 
 両者の絆は、いかなるものであったのか?
 創造者と、
 怪物と、
 それぞれの行き着く先は?

 《怪物》の似姿を、
 私たちはさまざまな場所で見出します。
 『2001年宇宙の旅』のHAL9000。
 ごく近いところでは、『アバター』で惑星パンドラに襲いかかる地球人たち。
 著者・小野さんは、
 アシモフさんのロボットをテーマにした作品や、
 『透明人間』、『吸血鬼ドラキュラ』、
 『ジキル博士とハイド氏』といった小説の中にも、
 フランケンシュタイン・コンプレッスが底流にあると考察するのです。

 さらには、実際に起こった『理解しがたい悲惨な犯罪』すら、
 ヴィクターの《不安》に重ねるようにして、
 細密に考証してゆきます。

 怪物は、どこから来たのか。
 ……我々の、内側から?

「むむゥ~、めまいィがしそうゥ~……」
「がる~るるぐる~……」(←訳:深い闇だね……)

 以前に御紹介しました小野さんの作品『モスラの精神史』も素晴らしかったけれど、
 この新作も知力全開!
 読んでいてわくわくする御本です!
 混沌の現代に甦るメアリー・シェリーさんの《創造物》の真髄を、
 あらためて小野さんの研究書で眺め直しましょう!

「むずかしィけどォ、おもしろいッ!でスゥ~」
「がるぐるがるるっ!」(←訳:複雑だけどぉ面白いよっ!)

 活字マニアさん、ぜひぜひ!
コメント
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