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『歩』第三歌集

2023-03-25 10:51:22 | 文芸
従姉が主宰する短歌会「歩」の合同歌集、第三集をお贈りいただきました。



発行所は但馬の新井というところ。わたしの父親の故郷です。
同人は9人全員が女性のようです。
「あとがき」にこうあります。《それぞれが自分のできる部分に参加し全員参加での手作り歌集です。》と。
全部声を出して読ませていただきましたが、大体がご年配のご様子。
味わい深い作品が載っています。
それぞれが20首あまりを載せておられますが、今回は主にわたしの独断で「人間」を詠んだものをいくつか紹介します。

先ず、足立幸子さん。
  初孫に対の雛を贈りしが光陰矢のごと今年は二十歳
    実感が伝わります。

足立ゆう子さん。
  剪定中に「眼鏡落とした」とう老いの葉陰に無事にキラリ発見
    仲良し老夫妻の姿が見えます。

今村明美さん。
  屈まりて棚田に稲を刈る老いの麦わら帽子につと赤とんぼ
    のどかな田舎の秋の風景。
  出立ちは鯔背な車夫と思いきや乗れば「あいよっ!」女性の声が
    最近の風情ですね。驚きの共有。
  病院の廊下を歩く靴音を捉える耳が君を見分ける
    仲良し夫婦なればこそ。

うぐ森まる美さん。
  春に合う色は「黄色」と君言えば 黄色のスカーフ巻いてお出かけ 
    「君」とは誰のことなのでしょう?ほのぼのします。
  
大垣ひとみさん。
  はにかみて拍手の中を行進の卒園の児らに舞う紙吹雪
    「はにかみて」がいいですね。よく見ておられる。
    
中治やゑ子さん。
  「酎ハイに意外に合う」と言う君に出し巻き卵を丁寧に焼く
    この「君」はだれ?夫様、あるいはご子息?想像させますね。

中島寿美子さん。
  「いち・に・さん」孫と一緒に跳び超える青空映しいる水たまり
    ほのぼの景色。ばあちゃんも童心に帰って。
  久びさに糊の香のする浴衣着て団扇を使い夕涼みする
    昭和の景色ですね。「久びさに」が時の流れを表して。

羽淵維子さん。
  泣きながら「バイバイ」と孫はその母に手を振り継げばしかと抱きしむ
    切ない気持ち伝わります。
  屋外に放り出されてやんちゃ坊主 愛犬抱いて「ごめんなさい」と
    この短歌、わたし大好きです。このやんちゃ坊主を抱きしめたくなります。
  こたつからゴミ箱めがけ反故を投げ三回はずれて夫は腰あぐ
    まるでわたしのようです。

古屋鶴江さん。
  出勤の息子の車を追いかけて「忘れ物よーっ」と声を限りに
    親心よく伝わります。
  耳の中に水の入りてその音は「ぐじゅぐじゅぐじゅ」と地(つち)虫の声
    リアルですねえ。

楽しく読ませていただきました。
それにしても 《 屋外に放り出されてやんちゃ坊主 愛犬抱いて「ごめんなさい」と 》には感動を受けました。
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