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カルテット!人生のオペラハウス

2013年05月04日 03時14分40秒 | 洋画2012年

 ☆カルテット!人生のオペラハウス(2012年 イギリス 94分)

 原題 Quartet

 staff 原作/ロナルド・ハーウッド『想い出のカルテット~もう一度唄わせて~』

     監督/ダスティン・ホフマン 脚本/ロナルド・ハーウッド

     撮影/ジョン・デ・ボーマン 美術/アンドリュー・マッカルパイン

     音楽/ダリオ・マリアネッリ 衣裳デザイン/オディール・ディックス=ミロー

 cast マギー・スミス トム・コートネイ ビリー・コノリー ポーリン・コリンズ

 

 ☆1851年3月11日、リゴレット初演

 ヴィクトル・ユーゴー原作といえば『レ・ミゼラブル』が有名だけど、

 映画の題材になっている『リゴレット』も、ユーゴーの原作だ。

 正しくいえば、ユーゴーの戯曲『王は愉しむ』をもとにして、

 フランチェスコ・マリア・ピアーヴェが台本を書き、

 ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全3幕からなるオペラが『リゴレット』で、

 その第3幕の4重唱『美しい恋の乙女よ』が、映画の題材。

 女たらしの公爵マントヴァ、せむしの道化リゴレット、

 公爵に捨てられる道化の娘ジルダ、殺し屋の妹マッダレーナの4重唱なんだけど、

 映画の中では、

 女たらしのトム・コートネイ、妻の浮気が元で結婚9時間後に離婚したビリー・コノリー、

 離婚されたマギー・スミス、永遠の天然少女で痴呆が始まりかけたポーリン・コリンズが、

 経営難になった音楽家たちの老人ホーム「ピーチャム・ハウス」の資金を集めるべく、

 紆余曲折の後に、数十年ぶりにカルテットを再結成するってことになってる。

 上手な映画だった。

 ダスティン・ホフマンの演出は、

 どうして75歳になるまで監督をしなかったんだろうっておもえるくらいで、

 ことに、

 4人の役者は演技はできても歌声を披露することはできないだろうっておもってたら、

 佳境、歌う瞬間にホームの全景にカットが変わり、大クレーンでの俯瞰に移るとか、

 いやまあ小技の効いたものになってる。

 ダスティン・ホフマンは、ぼくの中ではいつまでも青春スターなんだけど、

 やっぱり年をとってる。

 そんな彼が来日にしてインタビューに答えた際、

「老いた音楽家たちはいまだに現役で歌ったり奏でたりできるのに、

 ここ20年も仕事がもらえずにいる」

 というのがあった。

 映画に登場してくる老人ホームの入居者たちは、皆、本物の音楽家で、

 たしかに、かれらの歌や演奏は見事なものだ。

 かれらは、ダスティン・ホフマンに声をかけられたとき、

 喜んで出演を承諾したそうだけど、そりゃあたりまえだよね。

 だって、年はとっても現役なんだもん。

 年をとるのは、ある意味、とても哀しい。

 仕事ができるのに、年のせいでもらえなくなるっていうのは、辛い。

 たしかに、クラシックの演奏家にロックを弾けといわれても難しいし、

 オペラ歌手にラップを歌えといわれてもなかなか歌えない。

 でも、その逆だっておんなじなんだよね。

 年があらたまるたびに演奏家の数は増え、新人歌手が登場してくる。

 どんな世界でもおなじことなんだけど、年寄りはどんどん引退に老いこまれる。

 それが世の中ってものだってことは、まあ、わかる。

 だから、辛いんだよね。

 ダスティン・ホフマン自身、そういう辛さを抱えてるのかもしれないけど、

 でも、見事に監督してくれた。

 老いてゆく者たちにとって、これほどちからづよい見本はないよね。

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