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フライトプラン

2013年05月17日 23時57分15秒 | 洋画2005年

 ◇フライトプラン(2005年 アメリカ 98分)

 原題  Flightplan

 staff 監督/ロベルト・シュヴェンケ 脚本/ピーター・A・ダウリング ビリー・レイ

     撮影/フロリアン・バルハウス 音楽/ジェームズ・ホーナー

     美術/ケヴィン・イシオカ セバスチャン・T・クラウィンケル

 cast ジョディ・フォスター ショーン・ビーン ピーター・サースガード エリカ・クリステンセン

 

 ◇手を変え品を変え

「バルカン超特急」は、当時、最新の移動手段だった。

 かつ動く密室として、コンパートメントは最適だった。

 これに対抗しうるものがあるとすれば、客船か旅客機しかない。

 ジョディ・フォスターがどうしてこの映画への出演を承諾したのかよくわからないけど、

 ただ、かなり昂ぶった演技になってることはまちがいない。

 夫の突然の死によって精神的にぼろぼろになっていたところへ、

 まちがいなく同乗したはずの6歳の娘が機内から忽然と姿を消し、

 まわりの乗客はおろか、客室乗務員も同乗していたことを否定し、

 娘の荷物、パスポートからチケットまでなにもかも消え失せ、

 さらには乗員名簿にも名前がないどころか、

 六日前に死亡したなどと告げられては、

 自分はもしかしたら気が狂ってしまったんじゃないかと怯え悶えるのもわかる。

 ジョディ・フォスターにしてみれば、ここが見せ所だとおもったんだろう。

 けど、子供がいきなり消え失せ、その存在までなかば否定され、

 さらに母親に対しては精神疾患の疑いまでかけられるという興味深い展開は、

 実をいえば、この作品が最初じゃない。 

 たしかに動いてゆく密室の中で人間が消え失せ、

 その知り合いを探し回るものが幻を観ているようにおもわれる展開は、

「バルカン超特急」だけど、そこに子供の影はない。

 別の作品なら、ある。

「バニー・レークは行方不明」という作品で、こちらは子供が消え失せる。

 しかも、主人公のキャロル・リンレイが、ブロンドの髪をひっつめにし、

 なんとも神経質そうに動き回るんだけど、

 これがまた「フライトプラン」のジョディ・フォスターとよく似ている。

 で、ほんとのところをいうと、

 この映画は「バルカン超特急」と「バニー・レークは行方不明」の、

 どちらも下敷きにして製作されたことになってるらしい。

「なるほど、だから動く密室の中で子供が消え失せるのか」

 って感じだけど、これ、大変だよね。

 企画が決まった時点であらすじができているのはいいけど、

 それは同時に、決して外れることが許されない大筋なわけで、

 この条件をクリアでき、

 しかも現代の動く密室、巨大旅客機を舞台にしなくちゃいけないなんて、

 まあ、さぞかし、脚本家も苦労させられただろう。

 この映画が、容疑者の置かれ方や身代金についての安易なやりとり、

 さらに同乗している他の乗客たちのあまりにも無関心な態度、

 くわえて客室乗務員たちの乗客に対する責任と配慮の無さなどについて、

 あれこれと批評が出てくるのは、そうした成立過程のせいかもしれないね。

 だから、前半こそ、

 ジョディ・フォスターの計算されつくしたような知的な演技に引っ張られるものの、

 後半は、徐々に辻褄合わせが見え隠れしてくるのは仕方のないことかも。

 ちなみに、

 破損した旅客機の修理費は、誰が払うんだろね?

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