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トイレット

2013年05月28日 23時21分13秒 | 邦画2010年

 ◇トイレット(2010年 日本、カナダ 109分)

 英題 toilet

 staff 監督・脚本/荻上直子

     撮影/マイケル・レブロン 美術/ダイアナ・アバタンジェロ

     音楽/ブードゥー・ハイウェイ フードスタイリスト/飯島奈美

 cast もたいまさこ アレックス・ハウス タチアナ・マスラニー デイヴィッド・レンドル

 

 ◇ばーちゃん、幽霊?

 またもや、見当違いなことを書いちゃうのかも。

『かもめ食堂』でも『めがね』でも同じことを感じたんだけど、

 荻上直子の作品を観ていると、

 深い山の奥にある湖のほとりに立ったような気分になる。

 その湖面に石ころを投げると、綺麗な円形の波紋が立つんだけど、

 それが周辺に溶け込んで、やがてふたたび静寂が訪れると、

 湖は何事もなかったように、漣ひとつ立たなくなる。

 つまり、

 荻上直子の描いている世界はそれとよく似ていて、

 整然と調和していたはずの世界に異邦人が入り込むことで、

 ほんのつかのま、ざわめき、混沌とした世界になりかけるんだけど、

 まもなく異邦人が世界に同化するのか、あるいは世界が異邦人の色に染まるのか、

 ともかくふたたび調和の保たれた世界が復活する。

 その世界は、湖の底に石ころが沈んだように、

 以前とはやや違う世界になっているはずなんだけど、

 でも、その新しい世界は何気なく見ただけでは以前とほぼ変わらない。

 いや、変わっていないのかもしれないし、

 変わったことがわからないのかもしれない。

 そうした石ころを、荻上直子の常連になっている役者さんたちが演じてきた。

 この映画でいえば、もたいまさこだ。

 もたいまさこは、映画の中の兄弟のほんとの祖母なのか?

 母親が連れてきたのは赤の他人なんじゃないのか?

 いや、そもそも、もたいまさこは生きているのか?

 兄弟たちにだけ見える幽霊なんじゃないのか?

 だから、ご飯も食べないし、トイレも長いし、

 寿司を食べてしまったことで、人間界から去らないといけなくなったんじゃないのか?

 なんていう、あきらかに的外れな想像までしてしまうんだけど、

 実をいえば、そんなことはどうだってよくて、

 ばーちゃんという石がぽちゃりと落ちてきて、

 静かに波紋を広げながらも、その家庭という名の湖に受け入れられ、

 湖を構成するひとつの欠片となり、やがて湖はふたたび静謐に包まれる。

 そういう話なんだから、

 ばーちゃんの正体なんて、どうでもいい。

 にしても、もたいまさこはどうしてあんなにお金を持っているんだろう?

 いや、これは『かもめ食堂』でも『めがね』でもそうだった。

 お金はどこからともかく湧いてくる。

 そんな印象を受けるんだけど、

 世の中、お金の出所なんてセコイことを考えてちゃいけないんだろうね、たぶん。

 みみっちい観方しかできないのが、辛いところだ。

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